「一度、精液検査を受けてほしい」
そう伝えているのに、
「まだ必要ないでしょ」
「自分は大丈夫だと思う」
「病院までは行きたくない」
と言われてしまう。
一方で自分は、
採血。
超音波検査。
薬。
卵管の検査。
人工授精。
採卵。
などへ進んでいる。
そんな状況が続くと、
「どうして私だけ?」
という気持ちになることがあります。
今朝は、
男性側の受診がなぜ大切なのか。
そして、
パートナーが受診を嫌がるときに、どう話したらよいのかを整理します。
この記事のポイント
・不妊の評価は女性だけでなく、男性側も同時に進めるのが基本
・男性の最初の評価には、問診と精液検査が含まれる
・受診を嫌がる背景は「妊活への意識が低い」だけとは限らない
・「あなたに原因があるか調べて」ではなく「二人の情報をそろえたい」と伝える
・説得を妻一人の仕事にしない
・異常があれば男性不妊を扱う専門医へつなぐことが大切
不妊の検査は「まず女性、あとで男性」ではありません
ここは最初に知っておきたいところです。
AUA(米国泌尿器科学会)とASRM(米国生殖医学会)の男性不妊ガイドラインでは、
不妊の初期評価では、男性と女性を並行して評価する
ことが勧められています。
男性側の初期評価には、
生殖に関する問診。
そして、
1回以上の精液検査
が含まれます。
WHOも2025年に初めて公表した世界的な不妊ガイドラインで、不妊を男性または女性の生殖器系に関わる疾患として扱い、男性因子を含めた診断・治療を独立した重要項目として示しています。
つまり、
精液検査は「妻の検査で何もなかったときに最後にする検査」ではありません。
精液検査は「男性として大丈夫か」を判定する検査ではありません
男性が精液検査を嫌がる理由の一つに、
検査結果を、
「男としての能力」
のように感じてしまうことがあります。
でも、
精液検査はそのような検査ではありません。
WHOの精液検査マニュアルでは、
精液検査は男性の生殖機能を評価するための重要な情報の一つとして位置づけられています。
確認するのは主に、
・精液量
・精子濃度
・精子数
・運動性
・形態
などです。
※精液検査で出てくる「精子濃度」「運動率」「正常形態率」などの言葉がわかりにくい方は、
「男性不妊でよく出てくる用語をやさしく解説」で詳しくまとめています。
そして、
精液検査だけで「妊娠できる・できない」を決めることもできません。
WHOも、精液検査の基準値を単純な「妊孕性の合格・不合格ライン」として扱うものではないことを説明しています。
パートナーが受診を嫌がる理由は一つではありません
「受診してくれない=妊活に協力する気がない」
と感じてしまうことがあります。
でも実際には、
いくつかの理由が隠れているかもしれません。
結果を知るのが怖い
「もし自分に原因があったらどうしよう」
という不安です。
受診しなければ、
悪い結果を聞かなくて済みます。
そのため、
必要性は理解していても動けないことがあります。
精液検査そのものに抵抗がある
採精。
提出方法。
病院での説明。
などに恥ずかしさを感じる方もいます。
女性側からすると、
「私の検査に比べたら簡単なのに」
と思うかもしれません。
ただ、
身体的な負担の大小と、心理的な抵抗の大きさは別
です。
「自分は健康だから大丈夫」と思っている
運動している。
病気もない。
性機能にも問題がない。
だから、
精子も問題ないだろう。
と思っている場合があります。
しかし、
見た目の健康状態だけから精液所見を判断することはできません。
不妊=女性側の問題だと思っている
今でも、
妊娠しないと、
まず女性が検査するもの。
というイメージを持っている方もいます。
でも現在のガイドラインでは、
最初から男女双方を評価する
という考え方が基本です。
「あなたに原因があるか調べて」は避けたい言葉
受診してほしい気持ちが強いほど、
つい、
「私ばかり検査しているんだから、あなたも受けて」
「あなたに原因があるかもしれないでしょ」
と言いたくなります。
気持ちとしては当然です。
ただ、
相手には、
「あなたが不妊の原因かもしれない」
と責められているように聞こえることがあります。
「二人の情報をそろえたい」と伝える
たとえば、
こんな言い方があります。
「私の検査だけ進めるより、二人の状態を一度確認した方が次の治療を決めやすいみたい」
または、
「あなたに原因があるかを調べたいんじゃなくて、二人の情報をそろえて次を考えたいんだ」
ポイントは、
「あなたを検査する」から「二人の妊活を調べる」へ変えること
です。
「必要性はわかったけれど、実際にどう切り出せばいい?」という方は、
「夫に精液検査の話をするときのやさしい伝え方」もあわせてご覧ください。
実際に使いやすい言葉を具体的に紹介しています。
「異常がなかったら、それも大切な情報」
精液検査を、
悪いところを探すための検査、
と考えると受けにくくなります。
でも、
問題がなかった。
という結果も、
治療方針を決めるための大切な情報です。
「何もなければ、それがわかるだけでも次へ進みやすいみたい」
と伝えてもよいでしょう。
精液検査で異常があったら、どうなる?
一度の結果だけで、
すぐ男性不妊の治療が決まるわけではありません。
精液所見は変動することもあります。
そしてAUA・ASRMは、
精液検査で一つ以上の異常がある場合や、男性不妊が疑われる場合には、
男性生殖を専門とする医師による問診・診察と、必要に応じた追加検査
を勧めています。
そこから、
精索静脈瘤。
ホルモンの問題。
射精障害。
閉塞。
遺伝学的な要因。
そのほか治療可能な状態。
がないかを確認する場合があります。
つまり、
精液検査で異常=すぐ体外受精
とも限りません。
受診を先延ばしにすると、女性側だけの治療が進むことがあります
ここは少し重要です。
男性側を調べないまま、
女性側だけ、
検査。
薬。
人工授精。
と進んでいくと、
後になって男性側の要因がわかることがあります。
すると、
「もっと早く調べておけばよかった」
となることがあります。
だからこそ、
男性側の評価は、
女性側の検査がすべて終わってからではなく、
なるべく並行して進める
ことが勧められています。
ここまでのポイント
男性側の受診は、
「夫に原因があるか確かめるため」だけではありません。
二人の情報をそろえて、
・タイミング法を続けるのか
・人工授精へ進むのか
・体外受精を考えるのか
・男性側に治療できるものがないか
を判断するためです。
「誰のせい?」
ではなく、
「次の治療を選ぶための情報集め」
と考えてみてください。
受診を勧めるときの3つの伝え方
1.自分の気持ちから話す
「あなたが受診してくれない」
ではなく、
「私だけ検査が進んでいる状態が少し不安なんだ」
と伝えます。
2.目的を具体的にする
「精液検査をして、次もタイミング法でいいのか一度確認したい」
のように、
何のために受けるのか
を伝えます。
3.相手にも選択肢を持ってもらう
「今月なら、いつ頃なら受診できそう?」
「まず検査だけなら受けられそう?」
と聞きます。
妻が、
病院を探して。
予約して。
持ち物を確認して。
前日に念押しして。
すべて管理する必要はありません。
「私ばかり頑張っている」と感じたら
女性側では、
身体を使う検査や治療が多いため、
完全に同じ負担にはできません。
だからこそ、
負担を同じにすることより、妊活への責任を一人へ集中させないこと
が大切です。
ESHREの心理社会的ケアガイドラインでも、不妊治療の過程では両方のパートナーを積極的に関与させることが推奨されています。
たとえば、
夫は、
精液検査を予約する。
自分の生活習慣を見直す。
検査結果を聞く。
妻は、
自分の治療を管理する。
そして、
治療方針は二人で確認する。
それぞれに役割があって構いません。
精液検査だけでなく、喫煙・飲酒・睡眠などの生活習慣について話すときも、伝え方によっては「責められている」と感じさせてしまうことがあります。
ご夫婦で生活習慣を見直したい方は、「夫婦で生活習慣を見直すときに責め合わない話し方」も参考にしてみてください。
優しく伝えても受診してくれない場合
伝え方を変えても、
何度話しても、
「行かない」
という場合があります。
そのとき、
さらに説得方法を探し続けて、
妻だけが疲れ切らないことも大切です。
WHOは、2025年の不妊ガイドラインで、医学的な治療だけでなく、不妊による心理的・社会的負担への支援も重要としています。
夫婦だけでは話が進まないなら、
主治医。
看護師。
男性不妊を扱う泌尿器科医。
不妊カウンセラー。
など、
第三者から説明してもらう方法もあります。
「先生から一度説明してもらう」でも構いません
妻から、
「検査した方がいい」
と10回言われるより、
生殖医療の医師から、
「男性側も一緒に調べましょう」
と一度説明された方が受け入れやすいこともあります。
それは、
妻の説明が悪かったからではありません。
夫婦関係と、
医学的な説明をする役割。
を分けるということです。
妊活を夫の受診待ちだけにしない
夫がなかなか動いてくれないと、
一日中そのことを考えてしまう方もいます。
「いつ予約するの?」
「まだ行ってないの?」
と気にし続け、
そのたびに自分も緊張する。
でも、
パートナーの行動だけに、
自分自身の身体まで引っ張られ続けなくても構いません。
睡眠。
胃腸。
月経。
疲労。
肩や首の緊張。
自分自身の身体も、
同時に見ていきましょう。
妊活に鍼灸を取り入れるのも「夫を変えるため」ではありません
鍼灸で、
夫が精液検査へ行くようになるわけではありません。
必要な男性不妊の評価は、
生殖医療機関や男性不妊を扱う泌尿器科で受ける必要があります。
その一方で、
夫婦間の妊活ストレスが続いている女性には、
眠れない。
胃腸が不安定。
肩や首に力が入る。
疲れが取れない。
月経前に不調が強くなる。
といった身体の変化が出ることがあります。
当院では、
現在の不妊治療と一緒に、
その治療を続けている女性自身の身体も見ていきます。
「病院で調べること」と「身体を整えること」は別々に進めていい
妊活では、
夫の精液検査。
妻の検査。
生活習慣。
食事。
身体づくり。
すべてが一度に整ってからでないと進めない、
というものではありません。
男性側は、
必要な検査を進める。
女性側は、
必要な検査・治療を受ける。
そして、
治療を続ける身体には、
鍼灸などを使って、
睡眠。
胃腸。
疲労。
緊張。
月経。
などから整えていく。
それぞれを並行して進める方法があります。
今日からできる3つのこと
1.「受診して」ではなく、受診する目的を伝える
「二人の情報をそろえて、次の治療を考えたい」
と伝えます。
2.今夜すべて決めない
今日は、
「精液検査についてどう思っている?」
まででも構いません。
3.妻一人で説得し続けない
話が進まなければ、
次回の診察で、
「男性側の検査について先生から説明していただけますか?」
とお願いする方法もあります。
受診は「誰が悪いか」を決めるためではありません
精液検査を受ける。
女性側の検査を受ける。
どちらも、
原因を押しつけ合うためではありません。
二人の今の状態を知り、
これからどの方法で妊娠を目指すのかを考えるため
です。
男性側に何か見つかっても、
「あなたのせい」
ではありません。
女性側に何か見つかっても同じです。
妊活を、
原因探しから、
次の選択肢を一緒に考える時間
へ変えていきましょう。
このテーマの続きは、9月2日の
「男性不妊の話を切り出す夜の会話テンプレ」
でお話しします。
【参考・出典】
世界保健機関(WHO)「不妊の予防・診断・治療に関するガイドライン」
世界保健機関(WHO)「ヒト精液の検査と処理に関するWHO検査室マニュアル 第6版」
米国泌尿器科学会・米国生殖医学会(AUA・ASRM)「男性不妊の診断と治療に関するガイドライン」
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)「不妊・生殖補助医療における心理社会的ケアガイドライン」
妊活を一人で背負っているように感じる方へ
「夫が受診してくれない」
「私だけ治療がどんどん進んでいる」
「この話をするとけんかになるので、もう言いたくない」
そんな状態が続くと、
妊活以外の時間まで疲れてしまいます。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、
・現在の不妊治療の段階
・これまでの検査や治療経過
・ご夫婦の検査状況
・月経
・睡眠
・胃腸や便通
・疲労
・冷えやほてり
・身体の緊張
などを確認しながら、妊活を続ける女性の身体づくりをサポートしています。
男性側に必要な精液検査や医学的評価は、
男性不妊を扱う泌尿器科・生殖医療機関で受けることが基本です。
そのうえで、
病院で必要な検査や治療を進めながら、自分自身の睡眠・胃腸・疲労・月経・緊張まで含めて身体を整えていく。
それも、妊活に鍼灸を取り入れる一つの方法です。
パートナーが動いてくれるのを待つ間も、
自分自身の身体づくりまで止める必要はありません。
「夫婦の検査状況も含めて、これからの妊活を一度整理したい」
「病院での治療と並行して、自分自身の身体も整えたい」
という方は、LINEからお気軽にご相談ください。
なお、当院は女性専用を基本としております。
男性への施術は、既存患者様からのご紹介がある場合、またはご夫婦でご来院いただく場合に限りご相談を承っています。

