男性不妊でよく出てくる用語をやさしく解説

男性不妊とご夫婦で取り組む妊活ケアを表すブログ画像

妊活や不妊治療を始めると、聞き慣れない言葉が次々に出てきます。

男性側の検査でも、

「精子濃度」

「運動率」

「正常形態率」

「乏精子症」

「精子無力症」

など、初めて聞く用語が多くあります。

精液検査の結果を見ながら、

「この数字は悪いのでしょうか」

「自然妊娠は難しいということ?」

「自分に原因があると言われた気がする」

と、不安になる男性も少なくありません。

パートナーから検査結果を聞いた女性も、

「どう声をかければよいのだろう」

「詳しく聞いたら傷つけてしまうかな」

と戸惑うことがあります。

けれど、精液検査の結果は、男性を評価するための成績表ではありません。

現在の状態を確認し、次に必要な検査や治療を考えるための医療情報です。

今回は、男性不妊の診察や精液検査でよく出てくる言葉を、一つずつやさしく整理していきます。

目次

男性不妊とは?

男性不妊とは、妊娠に至りにくい背景に、男性側の生殖機能に関係する要因がある状態を指します。

男性側の要因には、

・精子がつくられにくい
・精子の数が少ない
・精子の動きが低い
・精子が通る経路に問題がある
・射精がうまくいかない
・勃起や性交に関する問題がある
・ホルモンの働きに問題がある

など、さまざまなものがあります。

また、男女双方に要因がみつかる場合や、検査をしても明確な原因を特定できない場合もあります。

WHOも、不妊は男性側・女性側のいずれにも起こり得るもので、男性側では精子の数、運動性、形態、精液が排出される経路などが関係するとしています。

大切なのは、

「どちらが悪いか」を決めることではなく、二人に必要な検査や選択肢を一緒に考えることです。

精液検査とは?

精液検査は、男性側の妊孕性を評価する基本的な検査の一つです。

採取した精液について、主に、

・精液量
・精子濃度
・総精子数
・精子運動率
・前進運動率
・正常形態率
・精子生存率

などを調べます。

WHOの精液検査マニュアルでは、世界中で検査結果をできるだけ比較しやすくするため、検体の取り扱いや測定方法が標準化されています。

ただし、精液の状態は毎回まったく同じではありません。

・発熱
・体調不良
・睡眠不足
・強い疲労
・禁欲期間
・採取方法
・検体を提出するまでの時間
・一時的なストレス

などによって変動することがあります。

そのため、一度の結果だけですべてを判断せず、必要に応じて再検査が行われます。

「基準値を下回った=妊娠できない」ではありません

精液検査の結果には、基準となる数値が記載されていることがあります。

この数字を下回ると、

「自分は不妊なのだ」

「自然妊娠はできない」

と思ってしまうかもしれません。

しかし、精液検査の基準値は、

妊娠できる人と、できない人を完全に分ける境界線ではありません。

基準値を下回っていても妊娠に至ることはあります。

反対に、すべての項目が基準範囲内でも、妊娠まで時間がかかる場合があります。

数値は一つずつ切り離して見るのではなく、

・女性側の年齢や検査結果
・妊活期間
・性交や人工授精の状況
・精液検査全体の結果
・これまでの治療経過

などと合わせて判断します。

検査票の数字だけを見て、自分たちで治療の可能性を決めつけないことが大切です。

精液量とは?

「精液量」は、射精によって採取された精液全体の量です。

精液量と精子の数は、同じ意味ではありません。

精液は、精子だけでできているわけではなく、精嚢や前立腺などから分泌される液体も含まれています。

精液量が少ない場合には、

・採取時に一部をこぼした
・禁欲期間が短かった
・射精管など精液が通る経路の問題
・精嚢や前立腺に関係する問題
・精液が膀胱側へ流れる逆行性射精
・生まれつき精管が形成されていない

など、さまざまな可能性を考えます。

一度少なかったからといって、すぐに病気と決まるわけではありません。

採取時に全量を容器へ入れられなかった場合は、隠さず医療機関へ伝えてください。

精子濃度とは?

「精子濃度」は、精液1mLの中に精子がどのくらい存在するかを示す数字です。

よく「精子の数」と表現されますが、正確には、

一定量の精液の中に含まれる精子の密度

を表しています。

精子濃度が低い状態は、

乏精子症(ぼうせいししょう)

または、

乏精子症・乏精子状態

と呼ばれることがあります。

ただし、濃度だけでは精液全体に存在する精子数はわかりません。

精液量も合わせて考える必要があります。

総精子数とは?

「総精子数」は、採取した精液全体に含まれている精子のおおよその数です。

精子濃度が同じでも、精液量が違えば総精子数は変わります。

たとえば、

・精子濃度は低めでも精液量が多い
・精子濃度は高めでも精液量が少ない

ということがあります。

そのため、精液検査は一つの項目だけを見るのではなく、複数の項目を組み合わせて評価します。

精子運動率とは?

「精子運動率」は、精子のうち動いているものがどのくらいいるかを示す割合です。

精子の動きは、すべて同じではありません。

前へ進んでいる精子。

動いているけれど、前へあまり進まない精子。

動いていない精子。

このような動き方を分けて評価します。

精子の運動性が低い状態は、

精子無力症(せいしむりょくしょう)

と呼ばれることがあります。

「無力」という言葉から、

「自分の精子には力がない」

と強く落ち込む男性もいます。

しかし、これは医学的な状態を表す名称であり、男性自身の体力や性機能、人としての能力を表す言葉ではありません。

前進運動率とは?

「前進運動率」は、動いている精子のうち、前方へ進んでいる精子の割合を示します。

精子は卵子へ到達するために、前へ進む必要があります。

そのため、単に動いているかだけではなく、

前へ進む動きができているか

も確認します。

ただし、前進運動率が低かったからといって、その数値だけで治療方法が決まるわけではありません。

総精子数や女性側の状況などを合わせて、タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精などの選択肢を検討します。

正常形態率とは?

「正常形態率」は、精子の形を一定の基準で観察し、正常な形態と判定された精子の割合です。

精子は、

・頭部
・中片部
・尾部

などの形を顕微鏡で確認します。

結果を見て、

「正常な精子が少ししかいない」

と驚く方もいます。

ただ、精子の形態評価には厳しい判定基準が使われます。

また、正常形態率だけで、妊娠の可能性や受精能力のすべてが決まるわけではありません。

正常形態率が低い状態は、

精子形態異常症

または、

奇形精子症(きけいせいししょう)

と呼ばれることがあります。

「奇形」という表現に大きな不安を感じるかもしれませんが、これは精子の外見上の形態を分類した医療用語です。

将来生まれる赤ちゃんに奇形が起こるという意味ではありません。

OAT症候群とは?

検査結果や紹介状に、

「OAT」

と書かれていることがあります。

これは、

・Oligozoospermia:乏精子症
・Asthenozoospermia:精子無力症
・Teratozoospermia:精子形態異常症

の頭文字を組み合わせたものです。

日本語では、

乏精子・精子無力・精子形態異常症

などと表現されます。

精子の濃度、運動性、形態の複数に低下がみられる状態です。

ただし、OATという言葉だけで治療方法が決まるわけではありません。

程度や再検査の結果、女性側の状態などを合わせて判断します。

総運動精子数とは?

「総運動精子数」は、英語で

Total Motile Sperm Count(TMSC)

と呼ばれます。

精液全体の中に、動いている精子がどのくらいいるかを推定した数です。

精子濃度や運動率を単独で見るのではなく、

・精液量
・精子濃度
・運動率

を組み合わせて考える指標です。

特に人工授精を検討するときに、洗浄・調整後の運動精子数などが判断材料として使われることがあります。

ただし、治療方針は総運動精子数だけで決めるものではありません。

無精子症とは?

「無精子症」は、射出された精液の中に精子が確認できない状態です。

英語では、

Azoospermia(アゾースペルミア)

と呼ばれます。

無精子症は、大きく次の2つに分けられます。

閉塞性無精子症

精巣では精子がつくられていても、精管など精子が通る経路に詰まりや欠損があり、精液中へ出てこられない状態です。

非閉塞性無精子症

精巣での精子形成そのものが低下している状態です。

無精子症と診断された場合も、一度の簡易的な確認だけで判断するとは限りません。

精液を遠心分離して詳しく調べるほか、ホルモン検査、診察、超音波検査、遺伝学的検査などが必要になることがあります。

また、原因や状態によっては、精巣や精巣上体から精子を採取し、顕微授精に使用できる可能性もあります。

「精液中に精子がいない」という結果だけで、すぐにすべての可能性がなくなるわけではありません。

隠れた精子が見つかる「潜伏精子症」とは?

通常の観察では精子が確認できなくても、精液を遠心分離して沈殿部分を詳しく調べると、ごく少数の精子が見つかることがあります。

この状態は、

潜伏精子症(せんぷくせいししょう)

または、

クリプトゾースペルミア

と呼ばれます。

精子が非常に少ないため、通常の精液検査では無精子症と区別が難しいことがあります。

検査結果を正確に確認するためにも、男性不妊を専門とする泌尿器科などでの評価が重要です。

精子生存率とは?

動いていない精子が、すべて死んでいるとは限りません。

動いていなくても生きている精子がいる場合があります。

「精子生存率」は、精子が生きているかどうかを調べる項目です。

運動率が非常に低い場合などに、生存率の検査が行われることがあります。

精子が生きていて動いていないのか、死んでいるのかでは、検査結果の意味や治療上の考え方が異なります。

白血球精子症とは?

精液の中に白血球が多く認められる状態を、

白血球精子症

と呼びます。

感染や炎症などが関係する場合がありますが、白血球が多いからといって、必ず感染症があるとは限りません。

必要に応じて、追加の検査や泌尿器科での評価が行われます。

抗菌薬などを自己判断で使用するものではありません。

精索静脈瘤とは?

「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」は、精巣の周囲にある静脈が拡張した状態です。

左側にみられることが多く、

・陰のうに違和感がある
・立っていると重く感じる
・静脈が浮き出て見える
・特に症状はないが検査で見つかる

など、状態は人によって異なります。

精索静脈瘤は、精巣周囲の温度や酸化ストレスなどを通じ、精子形成に影響する可能性があります。

ただし、見つかった精索静脈瘤をすべて治療するわけではありません。

AUA・ASRMのガイドラインでは、妊娠を希望しており、触診で確認できる精索静脈瘤があり、精液所見にも異常が認められる場合などに、手術を検討するとされています。

超音波だけで見つかった小さな精索静脈瘤などは、対応が異なることがあります。

FSH・LH・テストステロンとは?

男性不妊の検査では、血液検査でホルモンを調べることがあります。

FSH

脳下垂体から分泌され、精巣での精子形成に関わるホルモンです。

精子をつくる働きが低下している場合に、FSHが高くなることがあります。

LH

脳下垂体から分泌され、精巣でテストステロンをつくる働きに関係します。

テストステロン

男性の性機能や筋肉・骨、精子形成などに関係するホルモンです。

ただし、妊娠を希望している男性が、自己判断でテストステロン製剤を使用するのは避けてください。

外からテストステロンを補うと、脳から精巣へのホルモン指令が抑えられ、精子形成が低下することがあります。

筋力増強などを目的としたホルモン製剤やアナボリックステロイドの使用歴がある場合も、過去に使用していた薬剤の影響が残ることがあるため、医師へ伝えることが大切です。

精子DNA断片化とは?

通常の精液検査では、精子の数、動き、形などを調べます。

一方、

精子DNA断片化

は、精子が持つDNAにどの程度損傷があるかを調べる考え方です。

検査結果は、

DFI(DNA Fragmentation Index)

などで表されることがあります。

精子DNA断片化と、受精・胚発育・流産などとの関連が研究されていますが、検査方法が複数あり、結果の解釈や治療への生かし方には注意が必要です。

AUA・ASRMのガイドラインでは、精子DNA断片化検査を男性不妊の初期評価として全員に行うことは推奨していません。

反復流産など、状況に応じて検討される検査です。

「詳しい検査だから、最初から受けた方がよい」

というものではありません。

IUI・IVF・ICSIとは?

男性不妊の説明では、治療方法の略語もよく出てきます。

IUI:人工授精

採取した精液を洗浄・調整し、運動性のある精子を子宮内へ注入する方法です。

排卵のタイミングに合わせて行います。

IVF:体外受精

卵子と精子を体外で一緒にし、受精を待つ方法です。

ICSI:顕微授精

選んだ精子を、細い針を使って卵子の中へ直接注入する方法です。

精子の数や運動性が低い場合、過去に受精障害があった場合などに検討されます。

ただし、

「顕微授精の方が高度だから、全員に適している」

というわけではありません。

2026年のASRM委員会見解でも、男性側の適応がない場合に一律で顕微授精を行うことは、必ずしも治療成績を改善しない(妊娠率が上がるわけではない)とされています。

TESE・micro-TESEとは?

「TESE」は、

精巣内精子採取術

を意味します。

精巣の組織から精子を探して採取し、顕微授精に使用する方法です。

「micro-TESE」は、手術用顕微鏡を使い、精子がつくられている可能性のある精細管を探しながら採取する方法です。

主に非閉塞性無精子症などで検討されます。

無精子症の種類やホルモン検査、精巣の状態などによって適応が異なるため、男性不妊を専門とする泌尿器科での評価が必要です。

検査結果は「男性らしさ」を示すものではありません

精液検査の結果が思わしくなかったとき、

「男として否定された気がする」

「妻に申し訳ない」

「自分のせいで治療をさせている」

と感じる男性もいます。

しかし、

・精子の数
・精子の動き
・精子の形
・性欲
・勃起や射精
・男性らしさ

は、それぞれ別のことです。

精子濃度が低いことと、性機能が低いことは同じではありません。

男性不妊があることと、人としての価値や夫としての価値も関係ありません。

検査結果は、

責任の所在を決めるための情報ではなく、二人が妊娠を目指すために必要な情報

として受け取ってください。

一度の検査結果だけで決めつけないことも大切です

精液所見は変動します。

最初の検査で基準を下回っていても、再検査では異なる結果になることがあります。

一方で、結果が大きく低下している場合や無精子症が疑われる場合は、早めに男性不妊を専門とする泌尿器科などへ相談することが大切です。

AUA・ASRMのガイドラインでも、精液検査に異常がある男性や男性不妊が疑われる男性には、生殖医療に詳しい男性専門医による評価が推奨されています。

「もう一度調べればよくなるはず」

と必要な受診を先延ばしにするのではなく、結果の程度に応じて主治医へ相談しましょう。

男性側の検査は、女性の検査と並行して進めます

妊活では、女性側の通院や検査が先に進み、男性側の検査が後回しになることがあります。

しかし、男性側の要因も決して珍しいものではありません。

男性側と女性側の評価は、

どちらかが終わってから始めるのではなく、可能であれば並行して進める

ことが大切です。

女性だけが何か月も検査や治療を受けたあとで、男性側の要因が見つかると、治療開始が遅れてしまうことがあります。

精液検査は、誰かを責めるためではありません。

二人に合った治療方法を考えるための、基本的な確認の一つです。

当院での男性への対応について

当院は、女性専用の鍼灸院として運営しています。

そのため、初めての男性お一人での施術は、基本的に受け付けておりません。

ただし、

既存患者様からのご紹介がある場合や、ご夫婦でご来院いただく場合に限り、男性への施術をご相談いただけます。

男性不妊の記事を読んで、

「自分も施術を受けられるのかな」

と思われた方は、事前にLINEからお問い合わせください。

また、男性への直接施術を行わない場合でも、女性側への施術を通じて、検査結果の受け止め方やご夫婦で見直したい生活習慣などを一緒に整理することはできます。

精液検査で明らかな異常がある場合は、鍼灸だけで対応しようとせず、男性不妊を専門とする泌尿器科などでの評価を優先してください。

精液検査の話を、責めずに切り出すために

用語の意味がわかっても、

「夫に検査の話をしたら嫌がられそう」

「結果が悪かったとき、どう声をかけたらいい?」

という悩みは残ります。

正しいことを伝えようとするほど、

「あなたも検査して」

「女性ばかり負担が大きい」

という言葉になってしまい、相手が責められたように感じて心を閉ざしてしまうこともあります。

このテーマの続きは、8月12日の
「夫に精液検査の話をするときのやさしい伝え方」
で、実際に使いやすい言葉と話を切り出すタイミングについてお伝えします。

男性に検査を押しつけるのではなく、二人の妊活として話し合う方法を一緒に考えていきましょう。

【参考・出典】

世界保健機関(WHO)「不妊の予防・診断・治療に関するガイドライン」

世界保健機関(WHO)「ヒト精液の検査と処理に関するWHOラボマニュアル 第6版」

世界保健機関(WHO)「不妊症」

米国泌尿器科学会・米国生殖医学会(AUA・ASRM)「男性不妊の診断と治療に関するガイドライン 2024年改訂版」

米国生殖医学会(ASRM)「不妊・生殖医療に関する国際用語集 2025」

米国生殖医学会(ASRM)「男性因子以外を適応とする顕微授精に関する委員会見解 2026」

Global Andrology Forum「精子DNA断片化に関する臨床ガイドライン」

ご夫婦の妊活として、検査結果を整理したい方へ

精液検査の結果を受け取ったあと、

「この数字をどう考えたらよいのかわからない」

「夫にどこまで聞いてよいのか迷っている」

「二人で生活習慣を見直したいけれど、責めるような話し方になってしまう」

と感じることがあります。

ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、女性側の治療経過や現在のお身体を確認しながら、

・睡眠
・冷えや疲労
・食事
・喫煙や飲酒を含む生活習慣
・治療に伴うご夫婦の負担
・精液検査や病院での説明について気になっていること

などを一緒に整理しています。

男性不妊を「夫だけの問題」にするのでも、女性が一人で抱えるのでもなく、

ご夫婦の妊活として、今できることを考えていくこと

を大切にしています。

当院でのご相談から施術までの進め方は、こちらでご案内しています。

当院は女性専用を基本としており、男性への施術は、既存患者様からのご紹介またはご夫婦でご来院いただく場合に限りご相談を承っています。

「男性も一緒に相談できるか確認したい」

「まずは女性側の身体づくりについて相談したい」

という方は、LINEからお問い合わせください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次