「一度、精液検査を受けてほしい」
そう思っているのに、なかなか言い出せない。
「あなたにも原因があるかもしれない」と言っているように聞こえないかな。
プライドを傷つけないかな。
喧嘩になったらどうしよう。
「自分は何度も病院へ行って検査を受けているのに、なぜ私からお願いしなければいけないのだろう」
そんな気持ちが重なって、話したいのに話せなくなっている女性も少なくありません。
前回の記事
「パートナーが受診を嫌がるときの向き合い方」
では、男性が受診をためらう背景についてお話ししました。
今回はその続きとして、
実際にどのような言葉で話を切り出せばよいのか
を具体的に考えてみましょう。
大切なのは、男性不妊の可能性を「指摘する」ことではありません。
「私の問題」「あなたの問題」ではなく、「二人の妊活として一緒に確認したい」と伝えること。
これだけでも会話の雰囲気は大きく変わります。
男性側の検査は「疑っているから」受けるものではありません
妊活では、女性側の検査から始まることが多いため、
「排卵しているか」
「卵管は通っているか」
「AMHはどうか」
「子宮内膜はどうか」
など、どうしても女性側に注目が集まりやすくなります。
そのため男性側も、
「妻の検査が終わってからでいいのでは?」
「自分は特に症状がないから大丈夫だろう」
と思ってしまうことがあります。
しかし男性不妊は、見た目や体調だけでは判断できません。
精子の数や運動率などに変化があっても、日常生活では自覚症状がないことがあります。
現在の不妊診療では、女性側だけを調べるのではなく、男性側も並行して評価することが基本的な考え方です。
つまり精液検査を提案することは、
「あなたに原因があると思っている」
という意味ではありません。
妊娠までに必要な条件を、二人分確認しておこう
ということなのです。
最初の一言で「誰の問題か」を決めない
男性不妊の話が難しくなりやすいのは、
「あなたを調べる」
という構図になってしまうからです。
たとえば、
「私は検査したんだから、あなたもしてよ」
「私には問題ないみたいだから、次はあなたじゃない?」
と言われると、責める意図がなくても、
「自分に原因があると言われている」
と受け取られることがあります。
そこで、主語を変えてみましょう。
「あなた」ではなく、
「私たち」
を主語にします。
会話テンプレ①
まず一緒に確認したいと伝える
「私の検査も少しずつ進んできたから、次は二人の状態を一度そろえて確認しておきたいなと思ってるんだけど、どうかな?」
この言い方では、
「あなたがおかしい」
とは言っていません。
二人の情報をそろえる
という目的になっています。
男性側の検査を特別なものにしないことがポイントです。
会話テンプレ②
「原因探し」ではなく「次へ進むため」と伝える
「どちらが悪いかを調べたいわけじゃなくて、これからどう進めるのがいいのか先生と相談するために、一度二人分の検査結果があった方がいいかなと思ってる。」
妊活では、
「原因」
という言葉そのものが負担になることがあります。
原因を突き止めて誰かを責めるためではなく、
これからの選択肢を考えるための情報
として検査を位置づけると、受け入れやすくなることがあります。
会話テンプレ③
自分の気持ちを伝える
「病院に行くたびに一人で全部背負っている感じがして、最近ちょっとしんどく感じていて。検査を受けてもらえたら、二人で進めている感じがして私は少し安心できると思う。」
これは、
「検査して」
という要求だけではありません。
自分がどう感じているか
を伝えています。
「あなたが何もしてくれない」ではなく、
「私はこう感じている」
という言葉に変えることで、相手を攻撃しにくくなります。
会話テンプレ④
すぐ答えを求めない
「今日決めなくてもいいから、一回考えてみてほしい。」
男性不妊の話を初めてされた側は、その場ですぐ気持ちを整理できないことがあります。
驚いたり、
「自分にも原因があるかもしれない」
という不安を感じたりすることもあります。
そのため、最初の会話で
受診日まで決めることをゴールにしなくても大丈夫です。
まず知ってもらう。
少し考えてもらう。
翌日や数日後にもう一度話す。
それでも十分前進です。
「あなたのため」より「私たちのため」
伝えるときには、
「あなたのためにも検査した方がいいよ」
より、
「私たちが次を考えるために確認しておきたい」
の方が自然です。
男性側からすると、
「自分は困っていないのに、なぜ自分のため?」
と感じる場合があるからです。
妊活は誰か一人の身体だけの問題ではありません。
検査も治療も、
夫婦の次の選択を考えるための情報
と捉えてみてください。
こんな言葉は少し避けた方がいいかもしれません
気持ちが限界に近いと、つい強い言葉が出てしまうこともあります。
特に、
「私ばっかり検査してる」
「あなたにも原因があるかもしれないでしょ」
「普通は夫も検査するよ」
「精液を出すだけなんだから簡単でしょ」
「私の方がもっと大変なんだから」
といった言葉は、事実の一部を含んでいたとしても、相手を防御的にさせてしまうことがあります。
特に、
「精液検査なんて簡単」
とは言わない方がよいでしょう。
採血や内診に比べて身体的負担は少なくても、
男性にとっては、
- 検体を採取することへの抵抗
- 結果を知る怖さ
- 男性として評価されるような感覚
- 自尊心への影響
など、別の心理的負担があります。
女性側の大変さと男性側の大変さを競わせないことが大切です。
「嫌だ」と言われたとき、その場で説得しきらなくていい
勇気を出して話したのに、
「今はいい」
「俺は大丈夫だと思う」
「そこまでしなくてもいいだろう」
と言われることもあります。
そんなとき、
「どうして分かってくれないの?」
と追いかけて説得したくなるかもしれません。
でも、感情が高ぶっているときに話を続けても、なかなか前には進みません。
その場合は、
「分かった。今日はここまでにするね。ただ、私は二人で一度確認しておきたいと思っていることだけ覚えておいてほしい。」
くらいで終えて構いません。
これは諦めることではありません。
会話を壊さず、次に話せる余地を残すこと
も大切な妊活のコミュニケーションです。
夜遅く、疲れているときには話さない方がいいことも
この記事は「夜の会話テンプレ」ですが、
寝る直前の23時や24時に重要な話を始めることをおすすめしているわけではありません。
お互いに疲れている。
明日の仕事が気になっている。
眠たい。
そんな状態では、いつもなら流せる言葉にも敏感になりやすくなります。
話すなら、
- 食事が終わって少し落ち着いたとき
- 翌朝が早くない日
- テレビやスマートフォンを一度置ける時間
- 30分程度余裕があるとき
などがおすすめです。
大切なのは、
「今日中に結論を出す」ではなく、「落ち着いて話せること」
です。
受診をお願いする前に、情報を一緒に見る方法もあります
言葉だけで説明すると、
「あなたがネットで見つけてきただけでは?」
と思われることがあります。
そんなときは、医療機関や公的機関が発信している男性不妊の情報を、一緒に見る方法もあります。
そして、
「男性側も一緒に調べるのが一般的みたいだよ」
と伝えます。
これなら、
妻から夫への要求
ではなく、
二人で医学的な情報を確認している
という形に変えられます。
精液検査で異常が出ても、一度の結果だけで決めつけません
男性が検査を嫌がる理由の一つが、
「悪い結果だったら怖い」
という気持ちです。
ここも事前に知っておいてください。
精液所見は、
- 体調
- 発熱
- 禁欲期間
- 睡眠
- ストレス
- 採取状況
などによって変動することがあります。
そのため、一度の精液検査だけで男性の妊孕性のすべてが決まるわけではありません。
結果に異常がある場合には、必要に応じて再検査や泌尿器科・男性不妊を専門とする医師による評価が行われます。
検査は「合格・不合格」を決めるものではありません。
次に何を確認すればよいかを知るためのものです。
このことを夫婦で共有しておくと、検査への心理的なハードルを少し下げられるかもしれません。
妊活の会話で疲れている女性へ
男性不妊について話を切り出す側の女性も、決して楽ではありません。
自分自身も、
- 排卵チェック
- 採血
- 内診
- 薬や注射
- 人工授精
- 採卵
- 胚移植
などを経験しながら、
さらに、
「夫にどう説明しよう」
「機嫌を悪くさせないようにしよう」
と考えている方もいます。
気を遣い続けているうちに、
首や肩がこわばる。
眠れなくなる。
食欲が落ちる。
胃腸の調子を崩す。
月経前になると気持ちが大きく揺れる。
そんな身体の変化が出ることもあります。
ここで大切なのは、
妊活のストレスを感じること自体が悪いのではない
ということです。
それだけ大切なことに向き合っているからこそ、心も身体も疲れることがあります。
鍼灸を取り入れる意味は「妊娠させること」だけではありません
妊活鍼灸というと、
「妊娠率を上げるために受けるもの」
というイメージを持たれることがあります。
しかし当院では、それだけを目的とは考えていません。
妊活が続く女性には、
- 首肩の緊張
- 睡眠の乱れ
- 胃腸の不調
- 冷え
- 月経痛
- 疲れやすさ
- 結果を待つ間の強い緊張
などが重なっていることがあります。
鍼灸では、その時の身体の状態を確認しながら、妊活や治療を続ける身体そのもののコンディションを整えていくことができます。
また施術中は、
「夫に検査の話をしたいけれど言えない」
「治療をどこまで続けるか迷っている」
といった、病院ではなかなか時間を取って話せない悩みを整理する時間にもなります。
身体を整えることと、頭の中を一度整理すること。
その両方が必要な時期もあります。
当院では、ご夫婦の治療状況も確認しながら考えます
蓮心はり灸堂では、女性側の身体だけを切り離して見るのではなく、
- 現在どの治療段階なのか
- 男性側の検査は済んでいるか
- タイミング法か
- 人工授精を予定しているか
- 採卵・胚移植へ進んでいるか
- ご夫婦の間でどこに不安があるか
なども確認します。
そして、
睡眠、胃腸、月経、冷え、疲労、緊張などを合わせながら、その時期に必要な身体づくりを考えています。
妊活の悩みは、
検査結果だけではありません。
夫婦で温度差があること。
話したいのに話せないこと。
自分ばかり頑張っているように感じること。
そうした気持ちも含めてご相談いただいて大丈夫です。
男性の施術について
当院は基本的に女性専用の鍼灸院です。
そのため、この記事を読んで男性の方が直接ご予約いただく形は、原則としてお受けしておりません。
ただし、
既存患者様からのご紹介の場合、またはご夫婦でご来院いただく場合に限り、男性の施術もお受けしています。
男性不妊についてお悩みの場合も、まずは女性側の妊活サポートの中で、ご夫婦の検査や生活について一緒に整理することができます。
男性側に専門的な検査や治療が必要と考えられる場合には、男性不妊を診る泌尿器科などへの相談が大切です。
今夜、全部を解決しなくて大丈夫
妊活について夫婦で話すとき、
「ちゃんと分かってもらわなければ」
「今日、受診すると言ってもらわなければ」
と思うほど、会話が苦しくなることがあります。
今夜の目標は、
説得することではありません。
「私はこう考えている」
「一緒に確認してほしい」
と伝えられたら、それで十分な日もあります。
妊活は長い話し合いになることがあります。
一回の会話ですべてを決めなくても大丈夫です。
あなた対パートナーではなく、
二人対“今の妊活の課題”
という形を少しずつつくっていきましょう。
妊活をひとりで背負っているように感じる方へ
パートナーにどう伝えるかまで自分一人で考えていると、それだけでも疲れてしまいます。
「夫にどう話せばいいか分からない」
「男性側の検査について、どこまで勧めればいいのか迷う」
「治療も夫婦関係も大切にしたい」
そんなときもご相談ください。
蓮心はり灸堂では、治療スケジュールや身体の状態だけではなく、妊活の中で感じている不安やご夫婦の状況も確認しながら、その方に合った身体づくりを一緒に考えています。
何でも一人で整理してから来院する必要はありません。
まだ気持ちがまとまっていない段階からでも、一緒に整理していくことができます。
参考・出典
世界保健機関(WHO)「不妊症」
世界保健機関(WHO)「不妊症の予防・診断・治療に関するガイドライン」
アメリカ泌尿器科学会・アメリカ生殖医学会(AUA/ASRM)「男性不妊症の診断と治療に関するガイドライン」

