夫に精液検査の話をするときのやさしい伝え方

男性不妊とご夫婦で取り組む妊活ケアを表すブログ画像

8月6日の
「男性不妊でよく出てくる用語をやさしく解説」
では、精子濃度、運動率、正常形態率、無精子症など、男性不妊の検査で使われる言葉についてお伝えしました。

でも、

「検査が必要なのはわかった」

としても、別の難しさがあります。

それが、

「夫にどう話すか」

です。

自分は婦人科へ通っている。

採血を受けた。

内診もした。

卵管造影も受けた。

薬も飲んでいる。

それなのに夫へ、

「一度、精液検査を受けてほしい」

と言おうとすると、なぜか言葉を選んでしまう。

「傷つけないかな」

「俺に原因があるって言いたいの?と思われないかな」

「嫌がられたら、またけんかになるかも」

と不安になる方も少なくありません。

でも、精液検査について話すことは、

「あなたに原因があるか調べたい」

という話ではありません。

男性側と女性側、両方の情報をそろえて、

二人に合った妊活の進め方を考えるための確認

です。

今夜は、精液検査の話を「責める会話」にしないための伝え方を一緒に考えていきましょう。

目次

精液検査は「夫に原因があるか調べる検査」ではありません

妊活では、女性側の受診が先に始まることがよくあります。

月経周期を確認する。

ホルモン検査を受ける。

超音波で卵胞を見る。

卵管を調べる。

そのため、いつの間にか、

「妊活の検査=女性が受けるもの」

のようになってしまうことがあります。

けれど、不妊には、

・男性側の要因
・女性側の要因
・双方に関係する要因
・検査をしても明確な原因がわからない場合

があります。

WHOも、不妊は男性または女性の生殖器系に生じる疾患であり、男性側・女性側・原因不明の要因があるとしています。

AUA・ASRMの男性不妊ガイドラインでも、不妊の初期評価では、男性側と女性側を並行して評価することが推奨されています。

つまり精液検査は、

「夫を疑うため」

ではなく、

夫婦二人の検査の一つ

と考えるのが自然です。

「女性の検査が全部終わってから」でなくてもよい

夫から、

「まずそっちの検査が終わってからでいいんじゃない?」

と言われることがあります。

でも、男性側の検査を最後まで後回しにすると、

女性側の検査や治療を何か月も進めたあとに、男性側にも確認が必要な状態がわかることがあります。

妊活では、特に女性の年齢によって治療上の時間が重要になる場合があります。

そのため、

女性側の検査がすべて終わるまで待ってから男性側を調べる必要はありません。

男性側と女性側を並行して確認することで、治療方針を早めに整理できる場合があります。

なぜ男性は精液検査を嫌がることがあるの?

「必要な検査なのに、どうして受けてくれないの?」

と感じることもあるでしょう。

ただ、男性側にも言葉にしにくい気持ちがあるかもしれません。

「男として否定される気がする」

精子の数や運動率を調べることを、

「男性としての能力を測られる」

ように感じる方がいます。

実際には、

精子の状態と、

・男性らしさ
・性欲
・夫としての価値
・人としての価値

はまったく別のものです。

それでも本人にとっては、非常にデリケートな検査に感じることがあります。

検査方法そのものに抵抗がある

精液検査では、一般的に指定された方法で精液を採取します。

「病院で採取するのが嫌だ」

「緊張してできないと思う」

「誰かに知られるのが恥ずかしい」

と感じる男性もいます。

施設によっては、自宅で採取して一定時間内に持参できる場合もあります。

検査方法が理由で抵抗しているのであれば、

「どういう方法なら受けやすいか」

を確認してみると、話が進むことがあります。

悪い結果を知るのが怖い

検査そのものより、

結果を見ることが怖い

男性もいます。

「もし自分に原因があったら」

「妻に申し訳ない」

「治療が必要と言われたら」

と考え、検査を避けていることがあります。

検査を嫌がっているように見えても、

その奥に不安が隠れていることがあります。

話す前に、一つだけ決めておきたいこと

精液検査について話す前に、

自分の中で、

「今日の会話の目的は何か」

を決めておきましょう。

たとえば、

「今日中に予約してもらう」

までを目標にすると、相手が迷ったときに会話が強くなりやすくなります。

最初は、

「精液検査について一度話す」

だけでも十分です。

今日話す。

考えてもらう。

わからないことを調べる。

後日もう一度話す。

という段階があっても構いません。

話すタイミングも大切です

内容が正しくても、タイミングによっては受け取りにくくなります。

たとえば、

夫が仕事から帰宅した直後。

けんかをしている最中。

義両親の話をしたあと。

自分が診察で落ち込んだ直後。

寝る直前。

などは、話が感情的になりやすいことがあります。

できれば、

二人とも少し時間に余裕があるとき

に話しましょう。

「ちょっと妊活のことで話したいんだけど、今大丈夫?」

と先に確認するだけでも違います。

「あなたも検査して」から始めない

精液検査の話を切り出すとき、

「私ばっかり検査してるんだから、あなたも受けてよ」

と言いたくなることがあります。

実際、女性側の身体的な負担が大きくなっている場合には、そう感じるのも無理はありません。

ただ、この言葉から始めると、

夫側には、

「責められている」

と伝わってしまうことがあります。

必要なことを伝えながらも、最初の入口を少し変えてみましょう。

使いやすい伝え方①「二人の検査として」

たとえば、

「妊活って女性だけじゃなくて、男性側も一緒に調べるものなんだって。私の検査と並行して、一度精液検査も受けてもらえると助かるんだけど、どうかな?」

という伝え方です。

ポイントは、

「あなたに問題があるかもしれない」

ではなく、

「二人の検査」

として話すことです。

使いやすい伝え方②「病院で言われたことを共有する」

主治医から男性側の検査について説明を受けた場合は、そのまま共有して構いません。

「今日病院で、女性側だけじゃなくて男性側も早めに調べておいた方が治療方針を決めやすいって言われたよ。一度検査について一緒に考えてもらえる?」

と伝えます。

ここでも、

「先生が受けろと言っている」

と命令のようにするより、

「こういう説明を受けた」

という共有にすると話しやすくなります。

使いやすい伝え方③「自分の気持ちを主語にする」

「あなたは何もしてくれない」

ではなく、

自分がどう感じているか

を伝える方法です。

たとえば、

「検査や通院が私だけで進んでいる感じがして、少し心細くなってる。一緒に確認してもらえると、私はすごく安心する」

という言い方です。

これは、

「あなたが悪い」

ではなく、

「私はこう感じている」

という伝え方になります。

使いやすい伝え方④「予約する前に情報だけ一緒に見る」

検査を強く嫌がっている場合は、

いきなり、

「いつ予約する?」

まで進めなくても構いません。

「どんな検査なのか、一回一緒に見てみない?」

から始める方法もあります。

・どこで受けられるか
・自宅採取が可能か
・費用はいくらか
・何日前から禁欲が必要か
・結果はいつわかるか

など、具体的な情報がわかると、漠然とした抵抗感が小さくなる場合があります。

「俺に原因があるって言いたいの?」と言われたら

この言葉が返ってくることもあります。

そのとき、

「そうじゃなくて!」

とすぐ反論したくなりますが、

一度、

何を心配しているのか

を確認してもよいでしょう。

たとえば、

「そういう意味じゃないよ。どちらに原因があるって決めたいわけじゃなくて、二人の情報がそろった方が今後を考えやすいと思ってる」

と伝えます。

さらに、

「結果がどうでも、責めたいと思ってないよ」

と加えてもよいでしょう。

「自分は大丈夫」と言われたら

「普通に射精できるから大丈夫」

「性機能には問題ないから」

と思っている男性もいます。

しかし、

性機能に問題がないことと、精液所見が基準範囲内であることは同じではありません。

見た目や自覚症状だけでは、精子濃度や運動率などは判断できません。

その場合は、

「体調が悪いから調べる検査じゃなくて、妊活の基本的な確認の一つみたいだよ」

と伝えるとよいでしょう。

「自然にできるまで待てばいい」と言われたら

夫婦で妊活への時間感覚が違うこともあります。

夫は、

「焦らなくてもいい」

と思っている。

自分は、

「年齢のこともあるから、時間を大切にしたい」

と思っている。

この場合、精液検査だけを議論しても話がかみ合わないことがあります。

まず、

妊活をどのくらいの期間で考えているのか

を共有する必要があります。

たとえば、

「私自身は年齢のこともあって、半年、一年をすごく長く感じてる。だから、できる検査は今のうちに一緒に確認しておきたいと思ってる」

と伝えてみましょう。

「検査するのが恥ずかしい」と言われたら

この場合は、

「みんな受けているんだから大丈夫」

だけで終わらせない方がよいでしょう。

本人にとって恥ずかしいものは、恥ずかしいからです。

「そう感じるんだね。採取方法とか、少しでも受けやすい方法があるか一緒に調べてみようか」

と、具体的な負担を減らす方向へ進めます。

自宅採取ができるかどうかなどは施設によって異なるため、通院先へ確認してください。

「結果が悪かったら怖い」と言われたら

この場合、

「大丈夫だよ」

と結果を保証することはできません。

代わりに、

「どんな結果でも、そこから二人で次を考えるための検査だと思ってる」

と伝えることができます。

精液検査で所見が基準を下回ったとしても、その結果だけで自然妊娠が不可能と決まるわけではありません。

また、精液所見には変動があるため、必要に応じて再検査や男性不妊を専門とする泌尿器科での評価が行われます。

検査は、

可能性をなくすためではなく、次の選択肢を考えるため

のものです。

一度断られたら、そこでけんかを続けなくてもいい

思い切って話したのに、

「嫌だ」

と言われると、

悲しくなったり、怒りが出たりすることがあります。

「私はこんなに検査しているのに」

と思うこともあるでしょう。

ただ、その場で結論を出そうとすると、

検査の話から、

「どちらが妊活を頑張っているか」

という争いへ変わってしまうことがあります。

一度、

「わかった。でも私にとって大切なことだから、また少し考えて話したい」

と区切っても構いません。

ただし、ずっと我慢し続ける必要もありません

やさしく話すことと、

自分の希望を言わないことは違います。

何度話しても、

「絶対に検査しない」

「妊活はそっちの問題」

と言われ、自分だけが通院・検査・治療を背負い続けているのであれば、

自分がどう感じているかを、もう少しはっきり伝えてよい

と思います。

たとえば、

「検査を受けるかどうかだけじゃなくて、妊活を二人で進めたいと思っている。今のままだと私一人で抱えているように感じてつらい」

という伝え方です。

相手を責めるためではなく、

夫婦として妊活をどう位置づけるか

を話す必要があります。

女性側の検査を「交渉材料」にしすぎない

「私は痛い卵管造影もしたのに」

「私は毎回内診されているのに」

「採卵はもっと大変なのに」

と思うことがあります。

それは事実です。

でも、

「私がこれだけつらいことをしたんだから、あなたも」

という形になると、

妊活が、

苦痛の量を競うもの

になってしまいます。

自分の負担については、別の問題としてきちんと伝えてよいのです。

ただ、精液検査を受ける理由は、

女性側が我慢した見返りではなく、

二人の治療に必要な情報を確認するため

と分けて考えましょう。

結果を聞いたあとに気をつけたい言葉

検査を受けてもらったあと、結果が思わしくなかった場合には、言葉に迷うことがあります。

避けたいのは、

「やっぱりあなたにも原因があったんだ」

「だから早く調べればよかったのに」

という言葉です。

本人も結果を見て、ショックを受けているかもしれません。

まずは、

「受けてくれてありがとう」

で構いません。

そして、

「次に何を確認したらいいか、一緒に聞いてみよう」

と、結果から次へ進む言葉を選びましょう。

精液検査の結果を妻が管理しすぎないことも大切

妊活では、女性が治療スケジュールを管理していることが多く、

夫の検査結果についても、

「運動率は?」

「濃度はいくつ?」

「次の検査は?」

と、すべて把握したくなることがあります。

もちろん夫婦で共有することは大切です。

ただし、

男性本人が、

「自分の身体について自分で医師に質問する」

ことも大切です。

男性不妊を専門とする泌尿器科へ受診する場合には、

可能であれば本人から、

・検査結果の意味
・再検査の必要性
・考えられる原因
・生活習慣
・治療の選択肢

について確認してもらいましょう。

妊活を、

妻が夫を病院へ連れていく構図

だけにしないことも、長く一緒に治療を続けるうえでは大切です。

精液検査に異常があったら、生活習慣だけで済ませない

精液検査で異常が認められたとき、

「お酒を減らせばいい?」

「サプリを飲めばいい?」

と生活習慣だけで何とかしようとすることがあります。

もちろん、

喫煙。

飲酒。

睡眠。

肥満。

サウナや長風呂などによる精巣の温めすぎ。

など、生活習慣を確認することは大切です。

しかし、精液所見の異常には、

・精索静脈瘤
・ホルモンの問題
・精路の問題
・遺伝学的な要因

などが隠れている場合もあります。

AUA・ASRMのガイドラインでは、精液検査に異常が認められる男性や男性不妊が疑われる男性には、男性生殖医療に詳しい専門家による評価が推奨されています。

「とりあえずサプリを飲んで3か月様子を見る」だけで済ませず、必要な医療評価を受けること

も大切です。

「精液検査をお願いする日」にしなくてもいい

今夜の会話で、

検査の予約まで進まなくても構いません。

まず、

「女性だけを調べるものではないみたい」

と伝える。

夫が何を嫌だと感じているのか聞く。

検査方法を一緒に確認する。

そのあと考えてもらう。

それでも一歩です。

ESHREの心理社会的ケアに関する推奨でも、不妊治療では双方のパートナーを治療過程に関与させ、意思決定を支援することが大切とされています。

妊活を二人のことにするというのは、

二人が同じ量の検査をすることではなく、必要な情報や気持ちを共有し、一緒に判断していくこと

なのだと思います。

東洋医学では、ご夫婦のストレスも身体の状態として見ていきます

精液検査について何度も話し合い、

夫婦の会話がぎくしゃくしてくる。

言いたいことを飲み込む。

夜になると考え続ける。

そんな状態が続けば、身体にも緊張が現れることがあります。

東洋医学では、

・ため息が増える
・胸や喉が詰まる
・イライラする
・肩や首に力が入る
・眠りにくい

といった状態を、

肝鬱気滞(かんうつきたい)=緊張や我慢などによって気の巡りが滞っている状態

として捉えることがあります。

また、

考えすぎや心配が続き、

・食欲が落ちる
・胃が重い
・軟便になる
・疲れやすい

場合には、

脾虚(ひきょ)=胃腸の働きや身体を支える力が弱っている状態

という見方をすることもあります。

これは、

「夫婦げんかをすると妊娠しにくくなる」

という意味ではありません。

妊活に伴う負担が身体へどのように表れているのかも含めて、身体全体を見る

という東洋医学的な考え方です。

話す前に覚えておきたい3つのこと

1.「原因を探す話」ではなく「情報をそろえる話」にする

「あなたに原因があるかもしれない」

ではなく、

「二人の検査をそろえて今後を考えたい」

と伝えます。

2.一度の会話で結論を出そうとしない

その場で予約まで進まなくても構いません。

まず相手が何を不安に思っているか聞くことも大切です。

3.自分の気持ちも我慢しすぎない

相手を傷つけないことばかり考え、

自分のつらさを全部飲み込む必要もありません。

「私は一緒に取り組んでほしい」

という気持ちは伝えてよいのです。

一番使いやすい言葉を一つ選ぶなら

何と言えばよいかわからないときは、

まずこんな言葉からでも構いません。

「私の検査だけじゃなくて、男性側も一緒に確認した方が今後の方針を決めやすいみたい。一度、精液検査について一緒に考えてもらえる?」

これなら、

「受けて」

と命令せず、

「あなたが悪い」

とも言わず、

必要性も伝えられます。

もし夫が戸惑ったら、

「何が一番嫌に感じる?」

と聞いてみてください。

採取方法なのか。

結果なのか。

恥ずかしさなのか。

自分に原因があると言われる怖さなのか。

理由がわかれば、

解決できることと、時間が必要なことを分けて考えられます。

精液検査は「夫婦のどちらが悪いか」を決めるためのものではありません

妊活は、結果が出ない期間が長くなるほど、

「何が悪いんだろう」

「誰に原因があるんだろう」

という方向へ気持ちが向きやすくなります。

でも、

検査の目的は責任者を決めることではありません。

今わかっていることを整理し、

必要なら治療する。

次にどの方法を選ぶか考える。

そのための材料です。

精液検査を受けてもらうことがゴールではありません。

夫婦で、

「自分たちの妊活をどう進めるか」

を話せる関係をつくること。

その中の一つに、精液検査があります。

上手に話せなかった日があっても構いません。

何度か話しながら、二人なりの進め方を探していきましょう。

【参考・出典】

世界保健機関(WHO)「不妊の予防・診断・治療に関するガイドライン」

世界保健機関(WHO)「不妊症」

米国泌尿器科学会・米国生殖医学会(AUA・ASRM)「男性不妊の診断と治療に関するガイドライン」

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)「不妊・生殖補助医療における日常的な心理社会的ケア」

Human Reproduction「不妊・生殖補助医療における日常的な心理社会的ケアのガイドライン」

ご夫婦の妊活について、ひとりで抱え込んでいる方へ

「夫に検査の話をしたいけれど、けんかになりそうで言えない」

「自分ばかりが通院しているように感じてつらい」

「夫婦で妊活について話すこと自体が負担になっている」

そんなこともあると思います。

ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、女性側の治療経過や身体の状態を確認しながら、

・妊活や不妊治療の段階
・睡眠
・胃腸の状態
・冷えやほてり
・疲労
・身体の緊張
・生活習慣
・治療に伴う心身の負担

などを一緒に整理しています。

男性不妊を「夫だけの問題」にするのでも、女性だけが治療を背負うのでもなく、

ご夫婦の妊活として、今必要なことを整理していくこと

を大切にしています。

当院は女性専用を基本としております。

男性への施術は、既存患者様からのご紹介がある場合、またはご夫婦でご来院いただく場合に限りご相談を承っています。

「夫婦で相談したい場合はどうしたらいい?」

「男性への対応について事前に確認したい」

という方は、LINEからお問い合わせください。

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