手足が冷える人を東洋医学ではどう見る?|「腎」の考え方

東洋医学の視点から体質改善を伝える奈良・上牧町の鍼灸院ブログ画像

寒くなってくると、

「足先だけが冷たい」

「布団に入っても足がなかなか温まらない」

「手がいつも冷えている」

という方が増えてきます。

妊活中の方からも、

「冷えていると妊娠しにくいですか?」

「東洋医学では“腎が弱い”と言われたのですが、大丈夫でしょうか」

と聞かれることがあります。

東洋医学では、冷えを考えるときに「腎(じん)」という言葉が登場することがあります。

ただし、最初に大切なことをお伝えしておきます。

東洋医学でいう「腎」は、西洋医学でいう腎臓そのものを意味する言葉ではありません。

また、

手足が冷たい=腎が弱い

という単純なものでもありません。

今日は、妊活中にも耳にすることがある東洋医学の「腎」について、できるだけ分かりやすくお話しします。

目次

東洋医学の「腎」は、腎臓そのものではありません

西洋医学でいう腎臓は、血液をろ過して尿をつくるなど、身体の中で重要な働きをする臓器です。

一方、東洋医学で使う「腎」という言葉は、もっと広い身体の働きを表す概念です。

伝統的には、

成長。

発育。

加齢。

生殖。

水分代謝。

骨や髪など。

さまざまな働きと関連づけて考えられてきました。

そのため、

「腎虚(じんきょ)ですね」

と言われたからといって、

「腎臓に病気があります」という意味ではありません。

ここを混同しないことがとても大切です。

血液検査や尿検査で腎機能について指摘されている場合は、東洋医学の体質判断とは別に、医療機関で適切に確認する必要があります。

なぜ「腎」と冷えが一緒に語られるの?

東洋医学では、「腎」は身体を温める働きや、生命活動を支える力とも関連づけて考えられてきました。

そのため、

足腰が冷える。

疲れやすい。

夜間の排尿が増える。

腰や膝がだるい。

年齢とともに体力の変化を感じる。

といった状態が重なる場合に、「腎」の考え方を使って身体を見ることがあります。

日本東洋医学会の漢方医学の症例記載でも、「腎虚」という東洋医学的な状態に四肢の冷えや腰・下肢の症状などを伴う例が示されています。

ただし、

冷えているだけで「腎虚」と判断するわけではありません。

ここはとても大切です。

冷えの原因を「腎」だけで考えない

東洋医学では、冷えにもいろいろな見方があります。

日本東洋医学会でも、冷えは「気・血・水」それぞれの異常によって生じる可能性があると説明しています。

たとえば、

身体を温める力が足りないように見える人。

血の巡りが滞っているように見える人。

疲れていてエネルギーが不足しているように見える人。

水分の偏り(むくみなど)を伴っている人。

東洋医学では、このように身体全体の状態を見ながら考えていきます。

同じ

「足が冷たい」

という訴えでも、

月経の状態。

疲れ方。

食欲。

便通。

睡眠。

むくみ。

ほてり。

肩こり。

などが違えば、身体の捉え方も変わります。

だから、

「冷えるから、このツボ」

「冷えるから、腎を補う」

と最初から決めるわけではありません。

「手足が冷たい」と「身体全体が冷えている」は同じではありません

手足が冷たいからといって、必ず身体全体が冷えているとは限りません。

たとえば、

手足は冷たいのに顔はほてる。

夜になると身体が暑い。

汗をかきやすい。

という方もいます。

反対に、

身体全体が寒い。

温かい場所へ行ってもなかなか温まらない。

冬になると活動するのがおっくうになる。

という方もいます。

「冷え」と一言で言っても、感じ方はさまざまです。

そのため当院でも、

「手が冷たいですね」

だけで体質を決めることはありません。

本人がどんなふうに冷えを感じているのか。

いつ冷えるのか。

どこが冷えるのか。

温めると楽なのか。

ほてりはないか。

そうしたことを確認していきます。

妊活中の「冷え」を必要以上に怖がらなくて大丈夫

妊活中は、

「身体を冷やしてはいけない」

という情報をたくさん目にします。

すると、

冬でも靴下を何枚も履く。

カイロを貼り続ける。

冷たいものを絶対に口にしない。

毎日長時間お風呂に入る。

と、冷えないように頑張る方もいます。

でも、

手足が冷たいことだけで、不妊の原因だと決めることはできません。

不妊には、女性側だけでも排卵、卵管、子宮、年齢などさまざまな要因があります。

男性側の要因が関係することもあります。

「私は冷え性だから妊娠できないんだ」

と、自分を責める必要はありません。

冷えがつらければ、その不快感を少し楽にする。

眠りやすくする。

身体の緊張を和らげる。

そのための身体づくりとして考えてみてください。

東洋医学の「腎」と妊活を直結させすぎない

東洋医学では、「腎」と生殖の働きを関連づけて考えてきた歴史があります。

そのため妊活の記事では、

「腎を補えば妊娠力が上がる」

「腎虚だから妊娠しにくい」

といった表現を目にすることがあります。

しかし、これは注意して受け取る必要があります。

東洋医学の「腎」は身体を見る一つの考え方です。

「腎虚」という東洋医学的な状態が、そのまま西洋医学上の不妊原因を意味するわけではありません。

また、「腎を補えば妊娠する」という単純な関係でもありません。

当院でも、妊活中の方に東洋医学的な見方を使いますが、

採卵数。

AMH。

精子の状態。

卵管。

子宮内膜。

など、医療機関で確認する情報を東洋医学だけで置き換えることはしません。

必要な医学的評価は医療機関で受ける。

そのうえで、

睡眠。

冷えやほてり。

胃腸。

月経。

疲労。

など身体全体をみる一つの方法として、東洋医学を使っています。

年齢とともに感じる変化にも「腎」の考え方を使います

東洋医学では「腎」を、加齢による身体の変化とも関連づけて考えます。

以前より疲れが抜けにくくなった。

冬の冷えがつらくなった。

髪や肌の変化を感じる。

腰や膝が疲れやすくなった。

こうした複数の変化をまとめて身体を見るときに、「腎」という考え方を使う場合があります。

ただ、

「年齢が上がったから腎が弱った」

と悲観する必要はありません。

年齢とともに身体が変化するのは自然なことです。

その変化に合わせて、

以前と同じように無理を続けるのではなく、

休む時間を増やす。

睡眠を守る。

食事を抜かない。

身体を冷やしてつらいときは心地よく温める。

そんな生活へ少しずつ変えていく。

それも東洋医学でいう養生の一つです。

冷えが気になるときに、まず見直したいこと

冷えを感じたとき、

「どのツボを押せばいい?」

と考える前に、日常生活を一度確認してみてください。

睡眠時間が短くなっていないか。

食事を抜いていないか。

長時間座りっぱなしになっていないか。

薄着で身体が冷えていないか。

仕事で疲れ切っていないか。

こうした基本的なことも、身体の感じ方に関係します。

また、

冷えが急に強くなった。

強いだるさがある。

息切れや動悸がある。

月経量がかなり多い。

指先の色が白や紫に変わる。

など、気になる変化がある場合には、貧血や甲状腺疾患、血流に関わる病気などが隠れていることもあります。

「冷え性だから」と決めつけず、必要に応じて医療機関へ相談してください。

鍼灸では冷えている場所だけを施術するわけではありません

「足が冷えるので、足に鍼をするんですか?」

と聞かれることがあります。

もちろん、足のツボを使う場合もあります。

でも、当院では足だけを見るわけではありません。

お腹の状態。

腰や背中。

肩や首。

脈。

月経。

胃腸。

睡眠。

疲れ方。

そして現在の不妊治療。

そうした情報を合わせながら施術を考えます。

冷え症に対する鍼灸研究でも、冷えている部位だけを見るのではなく、全身の状態を含めて評価する必要性が報告されています。

東洋医学の特徴は、

症状一つだけではなく、その人全体を見ること

にあります。

だから、

「冷えに効くツボをお願いします」

ではなく、

「最近、足が冷えて、疲れも抜けにくい」

という話から始めてもらって構いません。

今夜は「温める」だけでなく「休ませる」

手足が冷えていると、

もっと温めなければ。

何かしなければ。

と思うかもしれません。

でも、身体が疲れているなら、

温めること以上に、

早く休む。

睡眠を取る。

予定を減らす。

ことが必要な日もあります。

東洋医学でいう養生は、何かを追加し続けることではありません。

今の身体に合わせて、

少し負担を減らすことも養生です。

11月11日夜公開の
「冷えや疲れが抜けにくい夜に|東洋医学のセルフケア」
では、冷えに加えて疲労感も残っている夜に、自宅でどのように身体を休ませるかを具体的にお伝えします。

「腎」という言葉に振り回されなくて大丈夫

東洋医学には、

腎。

気。

血。

水。

瘀血。

など、初めて聞くと難しく感じる言葉がたくさんあります。

でも、大切なのは、

「私は腎虚だから」

と自分に体質名をつけることではありません。

今、

何がつらいのか。

どんなときに冷えるのか。

眠れているのか。

食べられているのか。

疲れは取れているのか。

そこを丁寧に見ていくことです。

ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、東洋医学の考え方を使いながらも、

「あなたはこのタイプです」

と決めつけることより、

今の身体を一緒に確認することを大切にしています。

手足の冷えが気になっている方も、

妊活だから冷えをなくさなければ、

と頑張りすぎなくて大丈夫です。

身体が出している小さな変化の一つとして、

少しずつ整えていきましょう。

参考・出典

・一般社団法人 日本東洋医学会「漢方について」
・一般社団法人 日本東洋医学会「臨床報告」
・全日本鍼灸学会雑誌「冷え症に対する鍼灸治療の効果」
・日本東洋医学雑誌「成熟期女性の冷え症に対する温灸によるセルフケアの効果」

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