男性側の検査結果を夫婦で受け止める夜

男性不妊とご夫婦で取り組む妊活ケアを表すブログ画像

「精子の数が少ないと言われました」

「運動率が基準より低かったです」

「精索静脈瘤があるかもしれないので、泌尿器科へ行くよう言われました」

結果を聞いた瞬間、

夫は黙ってしまった。

妻も、どう声をかければいいのか分からない。

そんなことがあります。

9月10日の
「精索静脈瘤って何?」
では、男性不妊の代表的な要因の一つである精索静脈瘤についてお話ししました。

そして9月13日の
「夫が受診を迷うときに伝えたい言葉」
では、男性側の検査をどう切り出すかをお伝えしました。

今夜はその先です。

実際に検査を受け、

結果が出たあと。

ご夫婦でその数字をどう受け止めればよいのかを、一緒に整理してみましょう。

目次

まず覚えておいてほしいことがあります

精液検査の結果を見たとき、

最初に知っておいてほしいことがあります。

それは、

一度の精液検査だけで「妊娠できる・できない」が決まるわけではない

ということです。

WHOの精液検査マニュアルでは、精液量、精子濃度、総精子数、運動率、形態などを一定の方法で評価します。

ただし、これらの基準値は、

「ここを下回ったら不妊」

という境界線ではありません。

精液検査は、

男性側の現在の状態を知り、今後必要な検査や治療を考えるための情報

です。

結果表だけを見て、

「もう自然妊娠は無理なんだ」

「自分には子どもをつくれない」

と決めつけないでください。

精液検査の数値は、同じ人でも変動します

精液所見は、

採取した日によっても変動します。

そのため、最初の検査で基準を下回る項目があった場合、

再検査を行うことがあります。

欧州泌尿器科学会(EAU)は、最初の精液検査に異常があった場合には、少なくとも2回の精液検査を行うことを推奨しています。

米国泌尿器科学会・米国生殖医学会(AUA/ASRM)でも、精液所見は変動の大きい生物学的指標であり、特に最初の結果に異常がある場合は複数回の検査が重要とされています。

ですから、

「1回目の結果=ずっとこの状態」

とは限りません。

病院から再検査を勧められた場合には、

まずその結果も含めて評価してもらいましょう。

「基準値を下回った」=妊娠できない、ではありません

精液検査では、

精子濃度。

総精子数。

運動率。

正常形態率。

など、いくつもの項目を見ます。

でも、

一つの数値だけで妊孕性を判断することはできません。

WHOも、精液検査だけで一人の男性が「妊娠させられる・させられない」と確認することはできないとしています。

またAUA/ASRMも、

精子濃度、運動率、形態など一つひとつの項目だけでは、原則として男性不妊を確定できないと説明しています。

複数の項目に大きな変化がある場合ほど、専門的な評価の意味が大きくなります。

つまり、

数字は「判決」ではなく、次に何を確認するかを決める情報

なのです。

結果を見て、夫が黙ってしまうことがあります

「運動率が低い」

「精子数が少ない」

と言われたとき、

男性が急に黙ってしまうことがあります。

妻からすると、

「何か話してほしい」

「これからどうするの?」

と思うかもしれません。

でも男性側では、

「自分が原因だったのか」

「妻に申し訳ない」

「男性として問題があると言われた気がする」

「子どもを持てないのでは」

と、一度にいろいろなことを考えている場合があります。

そんなときは、

すぐに治療の話を始めなくても構いません。

まず、

「結果を聞いて、びっくりしたよね」

くらいでも十分です。

「あなたが原因だったんだね」と決めない

妻側も、

これまで何度も検査を受けてきたかもしれません。

卵管検査。

採血。

内診。

注射。

採卵。

胚移植。

それだけ頑張ってきた中で、

男性側の検査に変化が見つかると、

「私はずっと頑張っていたのに」

という気持ちが出ることがあります。

その気持ちまで否定する必要はありません。

ただ、

検査結果を、

「どちらが原因だったのかを決める材料」

にしないことは大切です。

妊活では、

男性側にも女性側にも要因がある場合があります。

どちらにも明確な原因が見つからないこともあります。

そして、ご夫婦それぞれの状態を合わせて治療方針を考えます。

だから、

「あなたのせい」

ではなく、

「二人の妊活について、新しい情報が一つ分かった」

と考えてみてください。

夫から「俺のせいだ」と言われたら

もし夫が、

「結局、俺が悪かったんだな」

と言ったら、

無理に、

「そんなことないよ!」

と全部打ち消さなくても構いません。

たとえば、

「誰が悪いかを調べるための検査じゃないと思うよ。これからどうするか考えるための結果として見ていこう」

と伝えてみてください。

そして、

「治療できることがあるか、一度専門の先生に確認してみよう」

と続けます。

検査結果は、

責任を決めるためではなく、

次の選択肢を増やすために使います。

男性不妊では「原因を調べる」意味があります

精液検査の数値が低かった場合、

すぐに、

「では人工授精」

「では顕微授精」

と進むだけではなく、

男性側に治療できる原因がないか確認することも大切です。

たとえば、

精索静脈瘤。

ホルモンの問題。

精路の問題。

射精に関する問題。

感染など。

状況によって、さらに確認することがあります。

AUA/ASRMでは、精液検査に異常がある男性について、「男性生殖医療に詳しい専門家による診察」を受けることを勧めています。

男性側をきちんと調べることで、

治療できる原因が見つかる場合もあります。

だから、

「悪い結果が出た」

だけで終わらせないでください。

精索静脈瘤が見つかった場合

男性不妊で比較的よく知られているのが、

精索静脈瘤

です。

精巣の周囲にある静脈が拡張し、精巣の環境へ影響することがあります。

触診で確認できる精索静脈瘤があり、不妊で精液所見にも異常がある場合には、手術治療が検討されることがあります。

これは、

男性側で原因を確認し、必要なら治療できる可能性がある

ということです。

精索静脈瘤について詳しくは、9月10日の記事で解説しています。

「何かサプリを飲めばいい?」と急がなくていい

検査結果を見たその日から、

亜鉛。

CoQ10。

ビタミン。

いろいろなサプリメントを調べ始める方もいます。

「何かしなければ」

と思いますよね。

でもまずは、

なぜ精液所見が変化しているのかを確認すること

を優先してください。

精索静脈瘤のように専門治療を検討できる状態があるなら、

サプリメントだけで様子を見続けるより、泌尿器科で評価を受けることが大切です。

自分たちだけで治療方針を決めなくてもいいのです。

再検査では、同じ項目だけを見るとは限りません

精液所見によっては、

精液検査を繰り返すだけでなく、

男性不妊を専門とする泌尿器科で、

身体診察。

精巣の状態。

ホルモン。

超音波。

遺伝学的検査。

などを必要に応じて検討する場合があります。

全員がすべて受けるわけではありません。

精子数や症状などによって必要な検査は変わります。

だから、

インターネットで、

「運動率が○%だからこの病気」

と自己判断せず、

自分の場合は何を確認する必要があるのか

を専門医へ相談してください。

男性側の結果だけで、夫婦の治療方針は決まりません

ここも大切です。

男性側で精液所見に変化があったとしても、

ご夫婦の治療方針は、

男性側の結果だけで決めるわけではありません。

女性側の、

年齢。

卵巣予備能。

卵管。

子宮。

採卵歴。

凍結胚の有無。

なども合わせて考えます。

たとえば、

男性側の治療に時間が必要でも、

女性側では年齢や卵巣予備能を考慮して採卵を先に進めることがあります。

一方で、

男性側の治療後の再検査を待ちながら進められるケースもあります。

だから、

「夫の治療が終わるまで、妻は全部待つ」

とも限りません。

男性不妊の専門医と生殖医療の主治医、両方の説明を聞きながら、ご夫婦に合った順番を考えていきましょう。

その夜に「これからどうする?」まで決めなくていい

検査結果を聞いた夜は、

お互いに気持ちが追いついていないことがあります。

そんな日に、

「じゃあ手術する?」

「人工授精どうする?」

「顕微授精になる?」

と全部決めようとすると、

話し合いが苦しくなることがあります。

今夜は、

「結果を聞いた」

ところまででも構いません。

次の診察日。

再検査。

専門医への受診。

そこから順番に整理します。

妊活では判断することが本当に多いからこそ、

すべてを一晩で決めなくてもいいのです。

妻も「しっかりしなければ」と頑張りすぎない

男性側の結果が出ると、

妻が、

「私が支えてあげなきゃ」

と考えることがあります。

病院を調べ、予約先を探し、食事やサプリのことを考え、夫を励ましながら、自分自身の通院も続ける。
そうして気づかないうちに、また妻側が抱えることが増えてしまうことがあります。

でも、

夫の検査結果まで、

妻が全部背負う必要はありません。

男性側の身体については、

本人と専門医に任せる部分もつくる。

そして女性は、

自分の身体を整えることも忘れない。

ご夫婦で妊活するというのは、

妻が二人分頑張ることではありません。

男性側の検査結果が出たあと、女性の身体が緊張することもあります

「男性側にも原因があるかもしれない」

と分かると、

安心するとは限りません。

これからどうなる?

手術する?

治療は遅れる?

採卵はどうする?

今までの治療は?

と、また新しい不安が増えることがあります。

すると、

眠れない。

首肩がこる。

胃腸が乱れる。

身体にずっと力が入る。

という方もいます。

だから、

男性側の結果が出たときこそ、

女性自身の身体も一度休ませてあげてください。

鍼灸は「次の治療が決まってから」始めるものではありません

男性側の精密検査中。

再検査待ち。

精索静脈瘤の手術を検討している。

そんな時期には、

「治療方針が決まるまで何もできない」

と感じることがあります。

でも女性側は、その間も生活しています。

月経が来る。

仕事をする。

眠る。

食べる。

次の採卵や胚移植を考える。

だからこそ、

結果待ちの時間も、身体を整える時間として使うことができます。

鍼灸では、

男性側の検査結果だけを見るのではなく、

女性側の治療予定や今の体調まで確認して施術します。

蓮心はり灸堂では、ご夫婦の「今いる場所」から施術を考えます

たとえば、

夫の精液検査で運動率が低く、再検査を待っている。

精索静脈瘤が見つかり、泌尿器科へ通っている。

男性側の治療を進めながら、女性側は採卵を続けている。

凍結胚があり、次は胚移植を予定している。

同じ「男性不妊があるご夫婦」でも、

状況はまったく違います。

蓮心はり灸堂では、

男性側の検査や治療状況も可能な範囲で確認しながら、

女性側について、

治療周期。

月経。

睡眠。

胃腸。

冷え・のぼせ。

疲労。

首肩や背中の緊張。

などを見ていきます。

夫の結果と妻の身体を別々のものとして考えず、ご夫婦の妊活の流れを見ながら施術する。

そこを大切にしています。

男性側も鍼灸を取り入れたい場合は?

当院は基本的に女性専用の鍼灸院ですが、

既存患者様からのご紹介、またはご夫婦でご来院いただく場合に限り、男性の施術もお受けしています。

男性側に精液所見の変化がある場合には、

まず泌尿器科などで必要な評価を受けてください。

そのうえで、

睡眠。

疲労。

身体の緊張。

生活リズム。

など、身体全体を整える方法として鍼灸を取り入れることができます。

医療機関で原因を確認し、

必要な治療を受ける。

そして、ご夫婦それぞれの身体を整える。

どちらか一つではなく、必要なものを組み合わせながら妊活を進めていく。

そんな考え方で大丈夫です。

結果が出た夜に、夫婦で確認するなら3つだけ

今夜すべてを決める必要はありません。

まず確認するなら、

1.再検査は必要?

最初の精液検査に変化があった場合、次にいつ確認するのかを聞いておきます。

2.泌尿器科・男性不妊専門医へ行く?

基準を下回る項目がある場合は、専門的な評価が必要か主治医へ確認します。

3.女性側の治療はどう進める?

夫の検査を待つのか。

採卵は進めるのか。

人工授精や胚移植はどうするのか。

ご夫婦全体の時間軸で相談します。

この3つが分かれば、

今夜すべての答えを出さなくても大丈夫です。

「悪い結果」ではなく、「次へ進むための情報」に変えていく

精液検査の紙に、

基準を下回る数字がある。

それを見ると、

どうしても、

「悪かった」

と思ってしまいます。

でも、

その結果によって、

再検査をする。

専門医へ行く。

精索静脈瘤を見つける。

必要な治療を考える。

ご夫婦の治療計画を組み直す。

という次の選択肢が見えてきます。

だから、

検査結果は、

ご夫婦の未来を決める点数ではなく、次の一歩を考えるための情報

として使っていきましょう。

男性側の結果が出て、また新しい不安が増えた方へ

「夫の検査が終われば少し安心できると思っていた」

それなのに、

結果が出たら、

また考えることが増えてしまった。

そんな方もいると思います。

妊活では、

一つ確認できるたびに、

次の判断が始まることがあります。

だからこそ、

ずっと自分で身体を緊張させながら進まなくてもいいのです。

蓮心はり灸堂では、

男性側の検査や治療状況。

女性側の採卵・人工授精・胚移植予定。

使用している薬。

まで確認しながら、

睡眠、胃腸、月経、冷え・のぼせ、疲労、首肩の緊張など、その時期の身体を丁寧に整えていきます。

検査結果を変えるためだけではなく、

妊活という時間を過ごしているご自身の身体を、少しでも楽な状態にしておくために。

鍼灸を使っていただけます。

「夫の結果が出て、これからどうしたらいいか分からない」

という段階からでもご相談ください。

一緒に状況を整理しながら、次へ向かう身体づくりを考えていきましょう。

参考・出典

日本泌尿器科学会「男性不妊症診療ガイドライン2024年版」

世界保健機関(WHO)「ヒト精液検査・処理ラボマニュアル 第6版」

世界保健機関(WHO)「不妊症の予防・診断・治療ガイドライン」

米国泌尿器科学会・米国生殖医学会(AUA/ASRM)「男性不妊症の診断と治療に関するガイドライン」

欧州泌尿器科学会(EAU)「男性不妊症ガイドライン」

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