妊活中の夫婦喧嘩の背景にあるもの

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「また妊活のことで喧嘩してしまった」

そんな夜に、

「私たち、このままで大丈夫なのかな」

と思ったことはありませんか?

治療を始める前は、それほど喧嘩しなかった。

それなのに妊活を始めてから、病院、タイミング、検査、お金、仕事の休み方など、話し合うことがどんどん増えていく。

夫に相談すると反応が薄い。

妻から言われるほど、夫は話したくなくなる。

そして、本当に伝えたかったこととは違う言葉をぶつけてしまう。

妊活中の夫婦喧嘩は、必ずしも「仲が悪くなったから」起きるわけではありません。

二人とも余裕がなくなっているのに、その疲れ方や表し方が違うことで、すれ違いが大きくなることがあります。

今日は、「どちらが悪い?」ではなく、喧嘩の背景に何があるのかを整理してみましょう。

目次

不妊や不妊治療は、夫婦二人にとって大きな負担になります

世界保健機関(WHO)は、不妊が不安や抑うつ、社会的孤立など、心理社会的な負担につながることを指摘し、2025年に公表した不妊症ガイドラインでも継続的な心理社会的支援の重要性を示しています。

欧州生殖医学会(ESHRE)も、不妊の診断から治療まで、患者さんの心理的・社会的なニーズは治療段階によって変化するとしています。

つまり、妊活中に心が揺れることは珍しいことではありません。

ただ、その負担が夫婦で同じ形に表れるとは限りません。

「私ばかり頑張っている」と感じる理由

女性側には、身体的な負担が集中しやすい場面があります。

内診や採血を受ける。

薬や注射を使う。

卵胞の状態に合わせて通院する。

採卵や胚移植を受ける。

さらに、仕事の予定を調整しながら治療を続ける方もいます。

日本で不妊治療を受ける働く女性を調査した研究では、治療が仕事へ影響すると感じている方が非常に多く、通院や治療による生活・仕事への負担が生活の質にも関係していました。

そんな状態で夫から、

「病院どうだった?」

とだけ聞かれると、

本当は心配してくれているのに、

「私はこんなに頑張っているのに、それだけ?」

と感じることがあります。

これは、単に夫への不満だけではなく、積み重なった身体的・時間的負担が背景にあることもあります。

一方、男性側が何も感じていないとは限りません

夫があまり話さないと、

「この人は妊活に興味がない」

と感じるかもしれません。

でも、男性不妊に関する研究では、男性側にも不安、落ち込み、自尊心の低下、孤立感などがみられ、気持ちを表に出しにくいことも報告されています。

特に精液検査で異常を指摘された場合、

「自分が原因なのか」

「妻に申し訳ない」

「自分に何ができるんだろう」

と考えていても、それをうまく言葉にできない方がいます。

9月13日の
「夫が受診を迷うときに伝えたい言葉」
でもお話ししましたが、男性側の沈黙をすぐに「協力する気がない」と決めつけないことも大切です。

妊活への「温度差」は、気持ちの差だけではありません

よく、

「夫婦で妊活への温度差があります」

という相談があります。

でも、その温度差の中身を見てみると、単純な「子どもが欲しい気持ちの強さ」だけではないことがあります。

妻は、毎月の排卵日や通院日が生活の中心になっている。

夫は、仕事をしながら「病院に任せればいい」と考えている。

妻は治療について調べ続けている。

夫は、調べれば調べるほど不安になるので検索しない。

こうした情報量や治療への関わり方の違いが、気持ちの温度差のように見えることがあります。

「言わなくても分かってほしい」が増えていませんか?

妊活中は、

「今日が排卵日だと分かっているはず」

「明日が判定日だと覚えているはず」

「採卵後だから身体がつらいと分かっているはず」

と思うことがあります。

でも、相手には同じ身体感覚がありません。

伝えなくても分かってくれたらうれしい。

その気持ちは自然です。

ただ、

分かってほしいことほど、相手が分かっていないときの傷つきが大きくなります。

「覚えていてよ」ではなく、

「明日は判定日だから、今ちょっと不安なんだ」

と、自分の状態まで言葉にすると伝わり方が変わることがあります。

夫は「解決しよう」とし、妻は「聞いてほしい」ことがある

これはすべての男女に当てはまる話ではありませんが、会話の目的がずれて喧嘩になることがあります。

たとえば妻が、

「また採卵になったらしんどいな」

と言ったとき、夫が、

「でも、やるしかないんじゃない?」

と答える。

夫は解決策を返したつもりでも、妻が求めていたのは、

「そうだよね。しんどいよね」

という共感だったかもしれません。

反対に、夫が治療について現実的な話をしようとしているとき、妻は「冷たい」と受け取ることもあります。

内容だけではなく、

今は答えが欲しいのか、気持ちを聞いてほしいのか

を確認してみると、すれ違いを減らせることがあります。

タイミング法が「夫婦生活」ではなく「予定」になることもあります

妊活では、排卵日を考えて夫婦生活を持つことがあります。

すると、

「今日だから」

「明日もお願い」

という会話が増え、二人の時間だったはずの夫婦生活が「治療予定」のように感じられることがあります。

男性側では、妊活や男性不妊に関連した心理的負担が性生活や夫婦関係に影響することも報告されています。

もしタイミングを取ること自体が大きな負担になっているなら、

「頑張らないと」

だけで続けるのではなく、主治医へ相談してください。

治療方法を含めて考え直すことで、夫婦だけで抱えなくてよくなる場合があります。

「また生理が来た」が、夫婦で同じ出来事とは限りません

月経が来たとき、

妻は朝から身体の変化を感じているかもしれません。

トイレで出血を見た瞬間に、

「今回もダメだった」

と落ち込む。

一方、夫は仕事中で、妻からLINEが届いて初めて知る。

同じ出来事でも、受け取る時間も身体感覚も違います。

だから、夫がすぐに同じ強さで落ち込まなかったとしても、

その瞬間の反応だけで「この人は悲しくないんだ」と判断しない

ことも大切です。

「原因はどちら?」という言葉が関係を苦しくすることがあります

不妊の原因は、女性側だけにあるものではありません。

男性側の要因が関係することもあり、男女双方に要因が見つかる場合や、検査をしても明確な原因が分からない場合もあります。

だから検査は、

「どちらが悪いのか」

を決めるために行うものではありません。

必要な治療を考えるために行います。

男性側の検査結果が出たときの受け止め方については、9月15日の
「男性側の検査結果を夫婦で受け止める夜」
でも詳しくお話ししています。

原因を責任へ変えず、

「二人の治療を考えるための情報が一つ増えた」

と捉えることが、夫婦関係を守るうえでも大切です。

お金の話が喧嘩になるのも珍しくありません

妊活では、

検査。

薬。

採卵。

胚移植。

交通費。

仕事を休むことによる影響。

など、さまざまな負担が生じます。

WHOも、不妊治療には心理的負担だけでなく、経済的負担が伴うことを指摘しています。

「あと何回まで治療する?」

「どこまでお金を使う?」

という話は、子どもを望む気持ちと家計の現実が同時に出てくるため、感情的になりやすいテーマです。

大きな判断ほど、喧嘩の最中に決めないことをおすすめします。

二人とも落ち着いている時間に、

「今日決めること」と「まだ決めなくていいこと」を分けて話す

だけでも、負担を減らしやすくなります。

喧嘩をしたこと自体を「妊活に悪い」と責めない

夫婦喧嘩をしたあと、

「こんなにストレスを感じたから、今周期はダメかもしれない」

と心配する方がいます。

でも、一度喧嘩したことを妊娠結果へ直接結びつけて、自分を責める必要はありません。

妊活中は、ただでさえ考えることが多い時期です。

喧嘩してしまったら、

「喧嘩した自分たちはダメな夫婦」

ではなく、

「二人とも少し余裕がなくなっていたのかもしれない」

と考えてみてください。

そこから関係を戻せばいいのです。

妊活中は「夫婦の問題」と「治療の問題」を分けてみる

たとえば、

「夫が病院へ行ってくれない」

という喧嘩。

その中には、

受診が必要かどうかという医療の問題と、

「私だけ頑張っている気がして寂しい」という夫婦の気持ちの問題

が同時に入っていることがあります。

ここを一緒に話すと、

「行く・行かない」

だけの言い争いになってしまいます。

医療的に必要なことは主治医や専門医に確認する。

そして夫婦では、

「私はどう感じている?」

を話す。

問題を分けるだけでも、会話は少し整理しやすくなります。

二人で同じ量を頑張る必要はありません

「夫婦で妊活するなら、同じくらい頑張ってほしい」

と思うことがあります。

でも現実には、女性側にしかできない治療があります。

男性側にしか受けられない検査もあります。

だから、

すべてを50対50にすることは難しいかもしれません。

大切なのは、同じ作業量にすることではなく、

「今、相手には何が負担になっているのか」を二人とも知っていること。

です。

妻の通院が続いているなら、家事を少し引き受ける。

夫が男性不妊の検査結果で落ち込んでいるなら、すぐに答えを求めず少し時間を置く。

その時期によって、支える側が変わってもいいのです。

東洋医学では、気持ちと身体を切り離さずに見ます

夫婦喧嘩そのものを東洋医学の体質で説明するわけではありません。

ただ、妊活の緊張が続いている方には、身体にも変化が出ることがあります。

肝鬱気滞(かんうつきたい)|緊張が続き、身体が張る状態

ため息、首肩のこり、胸やお腹の張り、月経前のイライラなどが重なることがあります。

脾虚(ひきょ)|疲れや緊張が胃腸へ出やすい状態

食欲低下、胃もたれ、軟便、身体のだるさなどを合わせて見ます。

血虚(けっきょ)|疲労や眠りの浅さが重なる状態

疲れやすさ、眠りの浅さ、立ちくらみなどを合わせて考えます。

これは、

「この体質だから夫婦喧嘩をする」

という意味ではありません。

妊活や夫婦のことを考え続けて疲れている身体を、どこから整えていくかを見るための考え方

です。

喧嘩のあと、身体に力が入り続けていませんか?

言い合いが終わっても、

肩に力が入っている。

頭の中で会話を何度も繰り返す。

お腹が痛くなる。

食欲がなくなる。

布団へ入っても眠れない。

そんなことがあります。

話し合いは必要です。

でも、身体が緊張したままでは、もう一度話そうとしても同じように感情がぶつかりやすくなることがあります。

まず身体を休ませる。

それから話す。

この順番でも構いません。

鍼灸を「夫婦の問題を解決する治療」と考える必要はありません

鍼灸で夫婦喧嘩そのものを解決することはできません。

でも、妊活中の女性では、不安や緊張に対して鍼灸を補助的に取り入れる研究が行われています。

2025年に公表された、体外受精(IVF)を受ける女性7,400人を含むシステマティックレビュー・メタ解析でも、鍼灸を取り入れた群で不安の軽減が報告されています。

妊活のことで頭がいっぱいになり、

眠れない。

胃腸が乱れる。

首肩が固まる。

ずっと身体に力が入っている。

そんなとき、

誰かと話し合う前に、まず自分の身体を休ませる時間として鍼灸を使う。

そんな取り入れ方もあります。

蓮心はり灸堂では、夫婦の妊活の流れも確認します

当院では、女性の身体だけを切り取って見るのではなく、可能な範囲で、

  • 現在の治療段階
  • 採卵・胚移植などの予定
  • 男性側の検査状況
  • ご夫婦で困っていること
  • 睡眠、胃腸、月経、疲労
  • 首肩や背中の緊張

などを確認します。

夫の精液検査を待っている。

夫が泌尿器科を受診するか迷っている。

採卵が続き、妻が疲れている。

治療方針について夫婦で意見が分かれている。

そんな時期にも、身体を整えながら状況を整理する時間を持つことができます。

当院は基本的に女性専用の鍼灸院ですが、既存患者様からのご紹介、またはご夫婦でご来院いただく場合に限り、男性の施術もお受けしています。

話し合う前に、まず確認したい3つ

1.今、何について喧嘩している?

「妊活のことで喧嘩した」ではなく、通院、夫婦生活、お金、検査、家事など、テーマを一つに絞ります。

2.本当に伝えたいのは怒り?

怒りの奥に、「寂しかった」「怖かった」「一人で頑張っている気がした」という気持ちが隠れていないか確認します。

3.今日、答えを出す必要がある?

治療方針など急いで確認すべきことは主治医へ相談し、今夜決めなくてもよいことは後日に回します。

全部を一度に解決しようとしないことも、夫婦を守る方法の一つです。

二人だけで話すほど苦しくなるなら、第三者を頼ってください

同じことで何度も激しい言い争いになる。

妊活の話をすると、どちらかが完全に黙り込む。

夫婦生活そのものが苦痛になっている。

不安や落ち込みが強く、日常生活にも影響している。

そんな状態なら、二人だけで頑張り続けなくても構いません。

WHOは不妊ケアに心理社会的支援を組み込むことを重視しており、ESHREも治療中の夫婦双方を治療過程へ関与させ、必要に応じて専門的な心理社会的支援につなぐことを勧めています。

不妊カウンセリング。

心理職。

主治医。

男性不妊の専門医。

必要な専門家へ頼ってください。

誰かに入ってもらうことは、夫婦関係が弱いという意味ではありません。

二人だけでは整理しにくくなった問題を、整理するための方法です。

喧嘩の回数だけで、夫婦関係を判断しない

妊活では、

結果が出る。

次の治療を決める。

予定が変わる。

お金がかかる。

期待したあとに落ち込む。

ということを繰り返します。

その中で、一度も意見がぶつからない夫婦でいることが目標ではありません。

大切なのは、

ぶつかったあとに、また二人で話せる場所へ戻れること。

です。

喧嘩をしない方法だけではなく、

喧嘩したあとにどう戻るかも知っておきましょう。

このテーマの続きは9月24日の夜に

今朝は、妊活中の夫婦喧嘩の背景にある負担やすれ違いについて整理しました。

でも実際に喧嘩したあとには、

「何て声をかければいい?」

「謝りたいけど、また喧嘩になりそう」

という問題が残ります。

このテーマの続きは9月24日夜公開の
「夫婦喧嘩のあとに関係を戻す3つの言葉」

で、勝ち負けを決めるのではなく、もう一度会話を始めるための具体的な言葉をお伝えします。

「こんなに喧嘩するなら妊活を始めなければよかった」と思った方へ

妊活を始めたから、

夫婦仲が悪くなった。

そう思ってしまう夜もあるかもしれません。

でも、その喧嘩の奥に、

妻の身体的な負担。

夫の言葉にしにくい不安。

時間への焦り。

お金。

仕事。

治療への温度差。

いろいろなものが重なっていることがあります。

相手を責める前に、

「今、二人とも何に疲れているんだろう」

と考えてみてください。

そして、ご自身の身体まで疲れ切っているなら、そこも後回しにしなくて大丈夫です。

蓮心はり灸堂では、現在の治療予定やご夫婦の状況も確認しながら、睡眠、胃腸、月経、冷え・のぼせ、疲労、首肩の緊張など、妊活を続けている身体全体を整えています。

夫婦で答えを出す前に、まず身体を休ませたい。

そんなときにも鍼灸を利用してください。

二人で妊活を続けるために、自分一人で全部抱え込まない身体づくりを。

一緒に考えていきましょう。

参考・出典

世界保健機関(WHO)「不妊症の予防・診断・治療ガイドライン」

世界保健機関(WHO)「不妊とともに生きる」

欧州生殖医学会(ESHRE)「不妊・生殖補助医療における日常的な心理社会的ケア」

BMC Psychology「不妊を経験する女性・カップルの夫婦間親密性に対するカウンセリングの効果:システマティックレビュー」

Psychology & Health「生殖補助医療を受けるカップルにおける男性パートナーのサポート、不安・抑うつ」

International Journal of Nursing Studies「体外受精を受ける女性に対する鍼灸:システマティックレビュー・メタ解析」

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