9月に入り、
「少し日が短くなった気がする」
「夕方になると、何となく寂しく感じる」
「理由はないのに気分が落ちる」
そんな変化を感じていませんか?
妊活中の方では、
「夏はそれなりに元気だったのに、最近また治療のことばかり考えてしまう」
「秋になると気持ちが内向きになる」
と感じることもあります。
まずお伝えしたいのは、
秋だから必ず気分が落ちるわけではない
ということです。
そして、
9月に少し気分が落ちたからといって、季節性うつ病という意味でもありません。
ただ、季節の変化に伴って、
日照時間。
睡眠。
気温。
生活リズム。
夏の疲れ。
などが少しずつ変わり、それが心身の状態に影響することはあります。
そこへ妊活や不妊治療の負担が重なると、
「最近、何となくしんどい」
と感じやすくなる方もいます。
今回は、秋口に心と身体が揺れやすくなる理由を整理してみましょう。
秋になると変わる「光」と身体のリズム
私たちの身体には、
概日リズム(サーカディアンリズム)
と呼ばれる約24時間周期のリズムがあります。
睡眠と覚醒。
ホルモン分泌。
体温。
など、さまざまな身体機能がこのリズムと関係しています。
そして、その調節に大きく関わるものの一つが、
光
です。
秋から冬へ向かうにつれて日の出・日の入りの時間が変化し、日照時間も短くなっていきます。
こうした光環境の変化が、睡眠や気分に関わる身体のリズムへ影響する可能性が研究されています。
特に、季節性情動障害(SAD)では、
- 日照時間
- メラトニン
- セロトニン
- 概日リズム
などとの関連が考えられています。
ただし、
「秋になって日が短くなったからセロトニンが減って落ち込む」
と全員に当てはめられるほど単純ではありません。
季節に伴う気分の変化には個人差があります。
「秋の物悲しさ」と季節性うつ病は同じではありません
日が短くなり、
「少し寂しい」
「夏が終わったな」
と感じることは珍しくありません。
一方、
季節性情動障害(SAD)
は、季節に関連して繰り返し現れるうつ病の一つです。
冬型の場合は一般的に晩秋〜冬に症状が現れ、
- 強い気分の落ち込み
- 以前楽しめていたことを楽しめない
- 強い疲労感
- 集中力低下
- 過眠
- 食欲の変化
- 人との関わりを避ける
などがみられることがあります。
ですから、
「9月に何となく元気がない」
というだけで、
「私は季節性うつなのかな」
と自己診断する必要はありません。
大切なのは、
症状の強さと、どのくらい続いているか
を見ることです。
実は「夏の疲れ」が秋に出ていることも
9月の不調を、すべて秋のせいにする必要もありません。
8月まで、
暑くて眠れなかった。
冷房の中で長時間過ごした。
食欲が落ちていた。
冷たいものが増えた。
旅行や帰省で生活リズムが崩れた。
暑くて身体を動かさなくなった。
そんな生活が続いていた方では、
夏の疲れを9月まで持ち越している
こともあります。
身体が疲れていれば、
普段なら受け流せることでも重く感じることがあります。
「最近メンタルが弱くなった」
ではなく、
「身体が疲れているのかもしれない」
という視点も持ってみてください。
睡眠が乱れると、気持ちまでしんどく感じやすくなる
身体と気分を考えるときに、睡眠は切り離せません。
寝る時間が遅い。
夜中に何度も目が覚める。
朝起きても疲れている。
休日になると昼近くまで寝てしまう。
こうした状態が続いていると、
身体が回復しにくくなり、日中の集中力や気分にも影響することがあります。
特に妊活中は、
夜になってから、
「この症状は大丈夫?」
「次の採卵はどうなる?」
「今回の胚移植は?」
と検索を続けてしまうことがあります。
※妊娠超初期症状などを夜まで検索し続けてしまう方は、こちらの記事も参考にしてください。
身体は布団へ入っていても、
頭の中ではまだ妊活が終わっていない状態
になっているのです。
気分の落ち込みを感じたときは、
「もっと前向きになろう」
とする前に、
最近、きちんと休めているかな?
と確認してみてください。
睡眠・食事・通院リズムをまとめて見直したい方は、こちらの記事で具体的な整え方をご紹介しています。
妊活中の秋は「結果」が重く感じることもあります
妊活をしていると、季節の変化にも別の意味が加わります。
「もう9月になった」
「今年もあと数か月しかない」
「今年中に妊娠したかった」
「また一つ年齢が上がる」
「あと何回採卵できるのだろう」
カレンダーが進むこと自体が、焦りにつながる場合があります。
周りから見れば、
「まだ9月」
でも、
治療を続けている本人にとっては、
「もう9月」
なのです。
だから、
季節のせいだけではありません。
日照時間や睡眠の変化に、
夏からの疲れ。
治療の積み重ね。
年齢への焦り。
結果が出なかった周期の気持ち。
などが重なっていることがあります。
「ストレスを感じるから妊娠しない」と考えないでください
ここは妊活中の方へ、特にお伝えしたいことです。
落ち込む。
不安になる。
泣く。
イライラする。
そうすると、
「こんなにストレスを感じているから妊娠できないのかな」
と思ってしまう方がいます。
でも、
気分が落ち込んだことを、そのまま妊娠できない原因に結びつける必要はありません。
妊娠は、
「前向きに過ごせたら成立する」
ものではありません。
妊活中に不安になること自体を、新しい失敗にしないでください。
必要なのは、
不安をゼロにすることではなく、身体まで疲れ切ってしまわないようにすること
です。
秋の朝にまずしてほしいことは「光を入れる」
季節による身体のリズムを考えるうえで、朝の光は大切です。
朝起きたら、
カーテンを開ける。
可能であれば外へ出る。
通勤や買いもののときに少し歩く。
それくらいでも構いません。
季節性情動障害のセルフケアでも、日中に自然光を取り入れ、睡眠・起床時間をなるべく一定にすることが勧められています。
ただし、
「朝日を浴びればうつ病が治る」
という意味ではありません。
日常の生活リズムを整える一つの方法として取り入れてください。
秋に気分が落ちたとき、まず確認したい3つ
1.最近の睡眠
- 何時に寝ている?
- 夜中に起きる?
- 起床時間は大きくずれていない?
- 朝から疲れていない?
まずここを確認します。
2.食事と胃腸
気分が落ちているときは、
食欲が落ちる方もいれば、
甘いものばかり食べたくなる方もいます。
「また食生活を乱してしまった」
と責める前に、
食事を抜いていないか。
胃腸が疲れていないか。
を確認してみましょう。
3.今抱えている妊活の課題
- 次の採卵が不安
- 判定日が近い
- 病院を変えるか迷っている
- 夫婦で意見が合わない
- 年齢が気になる
気分だけを見ていると、
「なぜこんなに落ち込むの?」
と思います。
でも、書き出してみると、
落ち込んで当然なくらい多くのことを抱えていた
と気づくこともあります。
東洋医学では秋と「肺」の関係を考えます
東洋医学では、秋は**肺(はい)**と関係の深い季節と考えます。
ここでいう「肺」は、西洋医学の肺だけではありません。
呼吸。
皮膚。
身体の水分。
外から身体を守る働き。
などを含む東洋医学独自の概念です。
また古典的な東洋医学では、秋と「悲(ひ)」という感情にも関連があると考えてきました。
ただし、
「秋だから悲しくなる」
という医学的な因果関係を表すものではありません。
季節によって身体や心の状態を振り返るための、昔からの一つの見方として考えてください。
妊活中にみられやすい東洋医学的な3つの状態
肝鬱気滞(かんうつきたい)|考えすぎて身体まで緊張する
- ため息が増える
- 首肩がこる
- 胸やお腹が張る
- イライラする
- 寝つきが悪い
という方です。
気持ちを無理に前向きにするより、
まず身体に入っている力を抜く
ことを優先する場合があります。
脾虚(ひきょ)|疲れと胃腸の弱りが重なる
- 食欲がない
- 軟便になる
- 胃が重い
- 身体がだるい
- 考え事が続くと食べられない
という方です。
この場合は、
「気分転換をしなければ」
よりも、
食べられるものを食べ、身体を休ませる
ことを大切にします。
血虚(けっきょ)|疲れているのに休まりにくい
- 疲れやすい
- 立ちくらみ
- 眠りが浅い
- 夢が多い
- 気持ちが不安定になりやすい
などが重なる場合があります。
これらは病名ではなく、
身体の状態を整理する東洋医学的な見方
です。
「私はこのタイプだから妊娠しにくい」
と考えるものではありません。
「呼吸を整えよう」と言われても、うまくできないことがあります
不安なときに、
「深呼吸してください」
と言われた経験はありませんか?
でも、本当に緊張しているときは、
深く吸おうとしても苦しい。
呼吸に集中すると余計に不安になる。
そんなこともあります。
だから、
無理に大きく吸う必要はありません。
まずは、
息を吐く時間を少し長くする。
肩を少し下げる。
顎の力を抜く。
それだけで構いません。
このテーマの続きは、
9月14日夜公開の「秋の夜に不安が増える人の呼吸とツボ」
で、実際に自宅でできる呼吸法とツボを詳しくご紹介します。
セルフケアだけでは気分や身体が戻らないとき
朝の光も意識している。
睡眠にも気をつけている。
食事もしっかり摂っている。
それでも、
眠れない。
首肩がずっと緊張している。
胃腸の調子が落ちている。
疲れが抜けない。
不安で身体が休まらない。
という場合があります。
そんなときに、
「もっと前向きにならないと」
「もっとセルフケアをしないと」
と課題を増やす必要はありません。
自分だけでは身体の緊張を抜きにくくなっているときに、施術を受けて休む時間をつくる。
鍼灸を取り入れる意味の一つは、そこにあります。
妊活中に鍼灸を取り入れるメリット
鍼灸を、
「ストレスをなくす施術」
「うつ病を治す施術」
として考えるものではありません。
一方で、鍼灸と不安症状については研究が進んでおり、2026年のランダム化比較試験をまとめたメタ解析では、不安症状が短期的に軽減したという結果が報告されています。
ただし研究間のばらつきは大きく、長期的な効果についてはさらに研究が必要です。
また、不妊治療中の女性を対象とした研究でも、鍼灸によってIVFに伴う不安がわずかに軽減する可能性が示されていますが、エビデンスの確実性は非常に低いとされています。
そのため当院では、
「鍼灸をすれば気持ちが前向きになる」
という説明はしていません。
それよりも、
- 首肩の緊張
- 背中のこわばり
- 睡眠
- 胃腸
- 冷え・のぼせ
- 月経
- 疲労
などを確認し、
気持ちだけではなく、気持ちと一緒に疲れている身体を整える
ことを大切にしています。
「気持ちを何とかする」のではなく、身体から休む
妊活中は、
自分の気持ちまで管理しようとしてしまうことがあります。
落ち込んではいけない。
考えすぎてはいけない。
イライラしてはいけない。
前向きでいなければ。
でも、
感情まで毎日コントロールするのは、とても疲れることです。
鍼灸を受ける時間は、
「前向きにならなければ」と頑張る時間ではありません。
施術中だけは、
スマートフォンを置く。
治療について検索しない。
誰かと比べない。
身体を預ける。
そうした時間を持つこと自体が、妊活が長くなっている方には必要な場合があります。
「リラックスしなければ」
まで自分の宿題にしない。
それも鍼灸を取り入れるメリットの一つだと考えています。
蓮心はり灸堂では「気分」だけを切り離して見ません
「最近何となく落ち込む」
という相談があったときも、
気持ちだけを聞いて終わるわけではありません。
たとえば、
今は採卵周期なのか。
胚移植を控えているのか。
判定日を待っているのか。
何周期か結果が出ていないのか。
治療を休んでいるのか。
という背景を確認します。
そのうえで、
- 月経周期
- 使用している薬
- 睡眠
- 胃腸
- 便通
- 冷え・のぼせ
- 首肩の緊張
- 疲労
などを合わせて身体を見ます。
同じ「気分が落ちる」でも、
睡眠不足が強い方。
採卵後の疲れが残っている方。
胃腸が弱っている方。
判定日前で身体に力が入っている方。
では、必要なサポートは同じではありません。
妊活の治療段階・季節・今の身体を切り離さずに考える。
これは、当院が妊活中の女性を施術するときに大切にしていることです。
鍼灸だけで抱え込んではいけない気分の落ち込みもあります
ここは、とても大切です。
秋だから。
妊活中だから。
疲れているから。
と考えて、強い気分の落ち込みを我慢しないでください。
特に、
- 気分の落ち込みが長く続いている
- 好きだったことを楽しめない
- 仕事や家事ができない
- 食事や睡眠が大きく乱れている
- 強い絶望感がある
という場合には、医療機関へ相談してください。
季節性情動障害を含むうつ病には、心理療法や薬物療法、状況によっては光療法など、医学的な治療があります。
また、
自分を傷つけたい、消えてしまいたいという気持ちがある場合は、セルフケアや鍼灸だけで様子を見ず、速やかに医療機関や緊急の支援につながってください。
鍼灸は、必要な医療の代わりになるものではありません。
秋に少し気持ちが揺れる日は、それだけで失敗ではありません
夏より少し日が短くなった。
朝晩が涼しくなった。
今年もあと数か月だと気づいた。
治療の結果が思うように出ていない。
そんなことが重なれば、
少し寂しくなる日があっても不思議ではありません。
今日は元気。
明日は少し落ち込む。
そのくらいの揺れまで、
「メンタルが弱い」
と評価しなくても大丈夫です。
妊活中だからこそ、
気持ちを整えることより、
気持ちが揺れても身体まで疲れ切らないようにしておくこと
を意識してみてください。
朝は少し光を入れる。
食べられるものを食べる。
夜は検索を終える。
疲れた日は休む。
身体がこわばっていたら、少し息を吐く。
それくらいで十分な日もあります。
秋になると、心も身体も少し重く感じる方へ
「最近、治療のことを考える時間が増えた」
「眠りが浅く、身体も疲れている」
「気分だけではなく首肩や胃腸までつらい」
「次の採卵や胚移植に向けて、一度身体を休ませたい」
そんなときは、気持ちだけを自分で何とかしようとしなくても大丈夫です。
蓮心はり灸堂では、妊活・不妊治療の予定や月経周期を確認しながら、睡眠・胃腸・冷え・疲労・身体の緊張まで含めて、その時の身体に必要な施術を考えています。
前向きになるためではなく、頑張り続けている身体を一度休ませる。
そんな目的でも鍼灸を取り入れていただけます。
参考・出典
アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)「季節性情動障害」
英国国民保健サービス(NHS)「季節性情動障害」
Journal of Clinical Psychology「不安に対する鍼灸のランダム化比較試験のシステマティックレビュー・メタ解析」
Reproductive BioMedicine Online「IVFに関連する不安に対する鍼灸の効果に関するシステマティックレビュー・メタ解析」

