胚移植が終わると、
「無事に終わってよかった」
と少しほっとする一方で、今度は判定日までの時間が始まります。
「ちゃんと着床しているかな」
「何も症状がないけれど大丈夫?」
「昨日はお腹がチクチクしたのに、今日は何も感じない」
「検索するといろいろな症状が出てくるけれど、自分には当てはまらない」
数日から十数日ほどの期間でも、妊娠を願って待っている方にとっては、とても長く感じるものです。
朝起きた瞬間から身体の変化を確認したり、トイレへ行くたびに出血していないか気になったり。
いつもなら気に留めない小さな変化まで、
「これは着床したサイン?」
と考えてしまうこともあるでしょう。
でも、判定日までにぜひ知っておいていただきたいことがあります。
症状があるか、ないかだけで、妊娠が成立しているかを判断することはできません。
今回は、胚移植を終えてから判定日を迎えるまでに知っておきたいことを、一つずつ整理していきます。
判定日は何を確認する日?
胚移植後の「判定日」では、妊娠が成立している可能性があるかを確認します。
妊娠すると、着床後に**hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)**というホルモンが作られるようになります。
妊娠判定では、このhCGを尿検査や血液検査で確認します。
ただし、
「胚移植から○日目なら必ず判定できる」
と一律に決まっているわけではありません。
・移植した胚の発育段階
・新鮮胚移植か凍結融解胚移植か
・使用している薬
・検査方法
・各施設の治療方針
などによって、判定日の設定は異なります。
そのため、インターネットで見かけた
「私は移植後○日目で陽性だった」
という情報ではなく、通院先から指定された判定日を基準にしてください。
胚を戻したあと、すぐに結果が決まるわけではありません
胚移植が終わると、
「もう着床したのかな?」
と気になると思います。
胚を子宮内へ戻したあと、着床に向かう過程では、
・胚盤胞がその後の発育を続ける
・胚を覆っていた膜から出る
・子宮内膜と接触する
・内膜へ入り込んでいく
・着床後にhCGが作られ始める
といった変化が進んでいきます。
ただし、この過程を日常生活の中で自分自身が感じ取ることはできません。
「今日は何も感じないから、まだ着床していない」
「昨日チクチクしたから、あの瞬間に着床した」
と判断することもできません。
身体の感覚と、実際に胚の中で起きている変化は分けて考えることが大切です。
「着床痛」はわかるもの?
判定日まで検索していると、
「着床痛」
という言葉を目にすることがあります。
下腹部が、
「チクチクした」
「引っ張られるような感じがした」
「生理痛のような違和感があった」
という体験談もあります。
ただし、こうした症状だけから、
「今、着床しました」
と特定することはできません。
移植後の下腹部の違和感には、
・ホルモン剤の影響
・腸の動き
・便秘やガス
・月経前にも起こる身体の変化
・治療後の身体への意識が高まっていること
など、さまざまな理由が考えられます。
痛みがないから着床していないわけでもありません。
反対に、チクチクしたから妊娠していると判断できるわけでもありません。
「何も症状がない」と不安になる方へ
判定日を待つ間の相談で、とても多いのが、
「本当に何も症状がありません」
という不安です。
SNSや検索結果を見ると、
「胸が張った」
「眠くて仕方なかった」
「下腹部がチクチクした」
「体温が高かった」
「食欲が変わった」
など、たくさんの体験談が出てきます。
それを見るほど、
「私は何もない」
と心配になってしまうことがあります。
でも、妊娠初期の症状には大きな個人差があります。
さらに、判定日前という非常に早い時期では、何も自覚症状がないこともあります。
ですから、
症状がないことは、結果が悪いという意味ではありません。
今、何も感じなくても、それだけを理由に結果を決めつけないでください。
反対に「症状がある=妊娠」とも限りません
ここも大切なところです。
胚移植後に、
・胸が張る
・眠い
・身体がだるい
・下腹部が重い
・お腹が張る
・少し気持ち悪い
・頭痛がする
・おりものが変わった
などの症状があると、
「妊娠したかもしれない」
と期待したくなると思います。
ただし、胚移植周期では、黄体ホルモンであるプロゲステロンなどを補充している方も多くいらっしゃいます。
プロゲステロン製剤では、
・疲労感
・眠気
・めまい
・腹部膨満感
・腹痛
・吐き気
・頭痛
・胸の張りや痛み
・少量の出血
などがみられることがあります。
つまり、
妊娠初期にみられることがある症状と、治療で使用している薬による症状が似ていることがあります。
そのため、
「胸が張ったから陽性」
「症状がなくなったから陰性」
と判断することはできません。
昨日まであった症状がなくなっても大丈夫?
これもよくある不安です。
昨日は胸が張っていた。
今日は張っていない。
昨日はお腹がチクチクした。
今日は何も感じない。
そんな変化があると、
「急に症状がなくなった」
「何か起きたのでは」
と心配になることがあります。
でも、身体の感覚は毎日一定ではありません。
睡眠、食事、便通、疲労、薬を使用した時間、日中の活動量などによっても変わります。
判定日前の症状が一日ごとに変化したからといって、それだけで妊娠経過を判断することはできません。
症状を毎日比べ続けるほど、不安が強くなってしまうこともあります。
少量の出血があったら、もうダメ?
判定日前に出血があると、
「生理が来た」
「今回もダメだった」
と考えてしまう方が多いと思います。
しかし、少量の出血だけで結果を判断することはできません。
胚移植後は、
・ホルモン剤の影響
・腟剤による刺激
・子宮頸部や腟からの出血
・妊娠初期にみられる出血
など、さまざまな理由で出血することがあります。
そのため、出血があったとしても、指定された判定日までは自己判断で薬を中止しないことが大切です。
実際に、胚移植後の患者さん向け案内でも、判定日前に出血しても処方薬を自己判断で中止せず、指定された日に妊娠検査を行うよう案内されています。
ただし、
・出血量が多い
・強い腹痛を伴う
・急に体調が悪くなった
・強いめまいやふらつきがある
などの場合は、通院先へ相談してください。
黄体補充は判定日まで続ける?
凍結融解胚移植や新鮮胚移植では、
・プロゲステロンの腟剤
・内服薬
・注射
・エストロゲン製剤
などを使用していることがあります。
「出血したからもうやめてもいいかな」
「症状がないから薬が効いていないのでは?」
と思うことがあっても、自己判断で薬を減らしたり中止したりしないでください。
薬をいつまで続けるかは、移植方法や治療計画によって異なります。
判定後も継続する場合がありますので、必ず通院先から指示された方法を守りましょう。
飲み忘れや腟剤の入れ忘れに気づいた場合も、薬によって対応が異なります。
不安な場合は、自己判断で2回分使用するなどせず、通院先へ確認してください。
フライング検査をしたくなる気持ち
判定日までが長く感じると、
「今日ならもう出るかも」
「みんな移植後○日目に検査している」
と、市販の妊娠検査薬を使いたくなることがあります。
その気持ちはとても自然です。
結果がわからない状態で待ち続けるより、
「早く知りたい」
と思うのは無理もありません。
ただ、早すぎる検査には注意が必要です。
検査する時期が早ければ、妊娠していてもhCGがまだ十分な量に達しておらず、陰性になる可能性があります。
また、新鮮胚移植などで採卵前にhCGを含む排卵誘発の注射を使用している場合、その影響がしばらく残り、妊娠していなくても検査薬が陽性になることがあります。
つまり、
早く検査すれば、早く確実な答えが得られるとは限りません。
一時的に安心するつもりの検査が、
「線が薄い」
「昨日より濃くなっていない」
「陰性だった」
と、新しい不安につながることもあります。
フライング検査については、8月12日の
「判定日前にフライング検査をしたくなるとき」
でも、もう少し詳しくお伝えします。
基礎体温を何度も確認しなくても大丈夫です
妊活中に基礎体温を測ってきた方ほど、移植後も体温が気になると思います。
「昨日より0.2℃下がった」
「高温期なのに思ったほど高くない」
「今日だけ急に上がった」
と、一日の変化に意味を探してしまうことがあります。
ただし、基礎体温は、
・睡眠時間
・測定時刻
・室温
・途中で目が覚めたか
・体調
・飲酒
・ホルモン剤
などの影響も受けます。
特にホルモン補充周期では、使用している薬が体温に影響する場合もあります。
一日の体温の上下だけで、着床や妊娠の成立を判断することはできません。
体温測定について通院先から特別な指示がなければ、数字に振り回されてつらくなる場合は、測定を続ける必要があるか一度相談してみてもよいでしょう。
判定日まで仕事をしても大丈夫?
「移植後はなるべく動かない方がいいのでは?」
という心配については、前回の記事でもお伝えしました。
胚移植後に長時間安静にすることで妊娠率が高くなるという根拠はなく、体調に問題がなければ普段に近い生活を送ることができます。
デスクワークや通常の日常生活まで避ける必要はありません。
一方で、
・強い疲労が続いている
・屋外の暑い環境で長時間働く
・重い物を繰り返し持つ
・休憩をほとんど取れない
・体調が悪いのに無理をしている
という場合は、治療とは関係なく身体への負担が大きくなります。
「着床させるために休む」というより、
今の身体に無理をさせすぎない
という視点で予定を調整してみてください。
食事は「着床するもの」を探さなくて大丈夫
判定日まで、
「パイナップルがいい」
「アボカドを食べた方がいい」
「温かいものだけにした方がいい」
など、いろいろな情報を目にすることがあります。
でも、特定の食品を食べれば着床が起こると保証できる方法はありません。
この時期は、
・食事を極端に減らさない
・主食、主菜、副菜をできる範囲で組み合わせる
・水分を適度にとる
・胃腸の調子に合わせる
・アルコールは控える
・新しい健康食品を自己判断で大量に始めない
といった基本を大切にしましょう。
「着床のために完璧な食事をしなければ」
と考える必要はありません。
判定日までに、すぐ相談した方がよい症状
ほとんどの場合、判定日までは普段に近い生活を送りながら待つことになります。
ただし、
・強い腹痛が続く
・片側だけに強い腹痛がある
・出血量が多い
・発熱や強い体調不良がある
・息苦しい
・急激にお腹が張る
・めまいが強い、意識が遠のく感じがする
・肩に強い痛みを感じる
など、普段と違う強い症状がある場合は、判定日を待たずに通院先へ相談してください。
特に陽性判定後の強い腹痛や出血、ふらつきなどは、子宮外妊娠などを含めた確認が必要になることがあります。
「判定日までは何があっても待つ」
ということではありません。
判定日までに「できること」は意外とシンプルです
移植が終わると、
「何かしなければ」
という気持ちが強くなることがあります。
でも、この時期に大切なのは、特別なことを増やすことではありません。
まずは、
1.処方された薬を指示通り続ける
症状の有無や出血だけで自己判断せず、指示された方法を守りましょう。
2.いつも通りの生活を基本にする
必要以上の安静は不要です。
ただし、疲れているときは無理をせず休みましょう。
3.症状だけで結果を決めない
「ある・ない」を何度も確認していると、心が疲れてしまいます。
判定日までは、身体から答えを探し続けなくても大丈夫です。
鍼灸は「着床したかどうか」を判断するものではありません
判定日前になると、
「脈をみれば妊娠しているかわかりますか?」
「鍼灸で着床しているか判断できますか?」
と聞かれることがあります。
鍼灸によって、妊娠の成立や着床の有無を判定することはできません。
妊娠判定は、適切な時期に行うhCG検査などによって確認します。
当院がこの時期に大切にしているのは、
・眠れなくなっている
・検索が止まらない
・身体に力が入り続けている
・胃腸の調子が落ちている
・冷えや疲労感が強い
・判定日のことを考えると気持ちが落ち着かない
といった、判定日を待つ間の心身の状態です。
治療そのものは主治医に任せながら、その間を少しでも穏やかに過ごせるよう身体を整えていく。
それが、この時期に鍼灸でお手伝いできることの一つです。
判定日までが長いのは、それだけ結果を大切に思っているから
朝起きて、
「あと○日」
夜になると、
「今日も一日終わった」
と数えてしまう。
判定日までの時間は、普段の数日とはまったく違って感じられることがあります。
気にしないようにしようと思っても、気になる。
検索しないようにしようと思っても、スマートフォンを開いてしまう。
そんな自分を、
「神経質になりすぎている」
と思わなくて大丈夫です。
それだけ今回の移植に気持ちを込めてきたからこそ、結果がわからない時間がつらく感じられるのだと思います。
ただ、
判定日まで毎日、身体から答えを探し続けなくても大丈夫です。
症状があっても、なくても。
体温が上がっても、下がっても。
昨日と今日で身体の感覚が違っても。
今の段階では、それだけで結果はわかりません。
今日できることは、
薬を忘れず、食べて、眠って、無理をしすぎず、一日を過ごす。
まずはそれで十分です。
検索するほど不安が大きくなってしまう夜に
判定日が近づくほど、
「移植後○日目 症状」
「胚移植 症状なし」
「着床 サイン」
と、検索する回数が増えてしまうことがあります。
調べることで安心したかったはずなのに、いつの間にか別の人の症状と自分を比べて、さらに不安になってしまう。
そんな夜もあると思います。
このテーマの続きは、8月8日の
「判定日まで検索が止まらない夜の過ごし方」
で、もう少し心の面からお伝えします。
「検索してはいけない」と我慢するのではなく、不安な夜に情報とどう距離を取ればよいのかを一緒に考えていきましょう。
【参考・出典】
英国国民保健サービス(NHS)「体外受精(IVF)」
英国国民保健サービス(NHS)「妊娠検査の方法と適切な時期」
Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust「IVF治療:妊娠検査の結果について」
Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust「IVF治療:胚を子宮へ移植するまで」
Cambridge University Hospitals NHS Foundation Trust「胚移植後の患者さんへのご案内」
電子医薬品集(emc)「プロゲステロン製剤 患者向け医薬品情報」
判定日までの不安を、ひとりで抱え込みすぎないために
胚移植が終わってから判定日までは、
「今は待つしかない」
とわかっていても、心も身体も落ち着かない時期です。
「身体が冷えている気がする」
「眠りが浅くなった」
「胃腸の調子が落ちてきた」
「毎日検索してしまって疲れている」
そんな変化が出てくることもあります。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、病院での治療や服薬を大切にしながら、
・睡眠
・冷え
・疲労
・胃腸の状態
・身体の緊張
・治療中の不安
・生活リズム
などを確認し、治療段階に合わせた身体づくりをサポートしています。
「着床させるために何かをしなければ」
と頑張り続けるのではなく、
判定日までの時間を、少しでも無理なく過ごせる身体と心の状態を整えること。
それも、この時期にできる大切な身体づくりの一つだと考えています。
「判定日までどう過ごせばよいのかわからない」
「不安で眠れない日が続いている」
という方は、LINEからお気軽にご相談ください。

