「妊活中なのにケーキを食べてしまった」
「チョコレートがやめられない」
「砂糖って着床に悪いの?」
甘いものを食べたあと、こんなふうに心配していませんか?
妊活について調べると、
「砂糖はやめるべき」
「血糖値を上げない食生活を」
「甘いものは妊娠の敵」
といった情報を目にすることがあります。
すると、楽しみに食べたはずのお菓子が、
食べた瞬間から「妊活で失敗したこと」に変わってしまう。
そんな方もいます。
でも、まず知っておいてください。
ケーキやチョコレートを一度食べたことが、その周期の妊娠や着床の結果を決めるわけではありません。
一方で、甘い飲みものやお菓子ばかりで食事が偏る状態が続くなら、妊活に限らず身体全体の健康という意味で見直す価値があります。
今日は「食べていい・悪い」の二択ではなく、妊活中の甘いものとどう付き合えばよいのかを整理します。
まず「糖質」と「砂糖」を同じものにしない
「糖質を全部減らした方がいいですか?」
というご相談があります。
でも、お米、パン、麺、いも類などにも炭水化物が含まれており、身体を動かすためのエネルギー源になります。
WHOが摂取を控えるよう勧めているのは主に遊離糖類です。
遊離糖類には、食品や飲料へ加えられる砂糖などのほか、蜂蜜、シロップ、果汁や濃縮果汁に含まれる糖も含まれます。
WHOは、遊離糖類を総エネルギー摂取量の10%未満に抑えることを推奨し、5%未満へのさらなる低減には追加の健康上の利点が期待できるとしています。
ただし、これは主に体重増加やむし歯など健康全体を考えた基準です。
「妊活中だから糖質を抜く」という意味ではありません。
甘いものを食べると妊娠しにくくなるの?
ここは研究結果を丁寧に見る必要があります。
妊娠前の食事と女性の妊孕性を調べた研究をまとめたシステマティック・スコーピングレビューでは、砂糖入り飲料やファストフードなどを多く取る食生活と、妊孕性や一部の生殖補助医療(ART)の成績との関連を示した観察研究がありました。
ただし研究全体にはばらつきがあり、研究者も、
特定の食事法を行えば妊娠率が上がると断定できるほどの根拠はまだない
としています。
米国生殖医学会(ASRM)も、特定の食事や栄養素を変えることで自然妊娠率が向上するという強い根拠は不足しているとしています。
つまり、
「毎日どれだけ食べても関係ない」
とも、
「甘いものを一口食べただけで妊娠しにくくなる」
とも言えません。
大切なのは一回のお菓子ではなく、普段の食生活全体を見ることです。
最新研究では「甘い飲みもの=治療失敗」とも言えません
2025年には、不妊治療を受けた女性612人・1,572治療周期を追跡した研究も報告されています。
砂糖入り飲料と人工甘味料入り飲料の摂取量を調べ、人工授精(IUI)や体外受精(IVF)の結果と比較したところ、摂取量と出生率との明確な関連は確認されませんでした。
これは、
「砂糖入り飲料を好きなだけ飲んでよい」
という研究ではありません。
一方で、
甘い飲みものを飲んだことだけを、不妊治療がうまくいかなかった原因にする根拠もない
ことを示す結果です。
食事研究は結果が一致していないものも多いため、一つの食品を「妊娠の敵」にしないことが大切です。
「昨日ケーキを食べたから着床しなかった」は考えなくていい
胚移植後に、
「昨日アイスを食べました」
「判定日前なのにケーキを食べてしまいました」
と後悔する方がいます。
でも、不妊治療の結果は一つの食べものだけで決まるものではありません。
胚の状態。
年齢。
子宮の状態。
治療方法。
さまざまな要因が関係します。
その中で、
「あのお菓子を食べた私が悪かった」
と自分を責める必要はありません。
妊活中の食事は、
失敗の原因を探すために振り返るものではなく、
これからの身体を無理なく支えるために考えていきましょう。
では、甘いものは毎日食べても大丈夫?
ここでも「毎日だから悪い」と単純には決められません。
量や種類、食事全体とのバランスによって違います。
たとえば、食事はほとんど取らず、甘い菓子パンや清涼飲料水だけで一日を済ませる状態が続くなら、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが不足しやすくなります。
一方で、食事が取れていて、その中でおやつとしてチョコレートを少し楽しむことまで禁止する必要はありません。
「甘いものを食べたか」ではなく、「一日の食事全体はどうだったか」
を見る方が現実的です。
特に見直しやすいのは「飲みもの」です
甘いものを減らしたいけれど、何から始めればいいか分からない方は、飲みものを一度確認してみてください。
砂糖入りの清涼飲料水。
加糖のカフェ飲料。
甘いミルクティー。
ジュース。
スポーツドリンク。
こうしたものは、食事とは別に遊離糖類を取る機会になりやすい食品です。
WHOも、砂糖入り飲料の摂取量が多いことは過剰なエネルギー摂取や体重増加につながる可能性があるとしています。
毎日何杯も飲んでいるなら、
一杯を水やお茶へ変える。
無糖の商品を選ぶ日をつくる。
量を少し小さくする。
この程度からでも構いません。
いきなり全部禁止するより、普段の習慣を一つ変える方が続けやすいものです。
「果物も糖だから食べない」はしなくて大丈夫
砂糖を気にし始めると、
「果物にも糖があるから食べない方がいい?」
と思うことがあります。
WHOが定義する遊離糖類には果汁の糖も該当しますが、生の果物の中にもともと含まれている糖は同じ扱いではありません。
果物には、ビタミン、ミネラル、食物繊維なども含まれています。
もちろん、一つの食品を大量に食べ続ける必要はありませんが、
「甘い=すべて悪い」
と考えて果物まで一律に避ける必要はありません。
甘いものが欲しくなるとき、食事が足りている?
夕方になると必ず甘いものが欲しくなる。
そんな方は、
「意思が弱い」
と考える前に、一日の食事を振り返ってみてください。
朝食を抜いている。
昼食がとても少ない。
忙しくて夕方までほとんど食べていない。
こうした状態なら、夕方にエネルギーのある食べものが欲しくなるのも不思議ではありません。
甘いものを我慢することだけを考えるのではなく、
まず食事を取れているか
を確認してみましょう。
睡眠不足の夜ほど甘いものが気になることもあります
甘いものとの付き合い方は、食事だけで考えなくても構いません。
寝不足が続いている。
仕事で疲れている。
判定日が近く緊張している。
夫婦で治療について話して疲れた。
そんな日に、
「何か甘いものが食べたい」
と思うことがあります。
そのときに、
「また我慢できなかった」
と自分を責めるより、
今日は何に疲れていたんだろう
と考えてみてください。
甘いものを完全にやめるより、甘いものが欲しくなる背景を知る方が、自分の身体を理解する手がかりになることがあります。
甘いものを食べるなら「ちゃんと食べる」
妊活中だからと、
「食べてはいけない」
と思いながらこっそり食べる。
すると、食べたあとに後悔だけが残ります。
食べると決めたなら、
お皿へ出す。
座って食べる。
味わう。
食べ終わったら終わりにする。
そんな食べ方で構いません。
袋から何となく食べ続けるより、
「今日はこれを楽しむ」と決めて食べる
方が、自分の中で区切りをつけやすくなります。
「食べたから運動しなきゃ」にしなくていい
お菓子を食べたあと、
「カロリーを消費しないと」
と急に運動量を増やす方もいます。
でも、食べたことへの罰として運動を使う必要はありません。
運動は、
身体を動かすと気持ちがいい。
眠りやすくなる。
体力を保つ。
健康を維持する。
そんな目的で行えば十分です。
甘いものを食べた分を帳消しにするために身体を動かす、という考え方からは少し離れてみましょう。
妊活中の体重管理が必要な方は、別の話として考える
体重や血糖について医師から具体的な指導を受けている方もいます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で代謝面の管理が必要な方、糖尿病や耐糖能異常がある方などでは、食事について個別の指導が必要になることがあります。
その場合は、
「甘いものは絶対禁止」
と自己流で制限するのではなく、医師や管理栄養士などの指導に沿ってください。
医学的に必要な食事管理と、妊活情報を見て自分で作った禁止ルールは分けて考えることが大切です。
東洋医学では「甘いものを食べる=脾虚」と決めません
東洋医学では、胃腸の働きを「脾」と関連づけて考えます。
そのため、
「甘いものが好きだから脾虚」
と思う方がいますが、そんな単純な判断はしません。
脾虚(ひきょ)|胃腸の弱りや疲れが目立つ状態
食欲低下、胃もたれ、軟便、食後のだるさなどを合わせて見ます。
肝鬱気滞(かんうつきたい)|緊張やストレスが身体に残っている状態
ため息、首肩の張り、胸やお腹の張り、イライラなどが重なることがあります。
血虚(けっきょ)|疲労や眠りの浅さが重なる状態
疲れやすさ、眠りの浅さ、立ちくらみなどを確認します。
甘いものが欲しくなるという一つの行動だけで体質を決めず、
睡眠、胃腸、月経、疲労、ストレスなどを含めて身体全体を見る
ことを大切にします。
「甘いものをやめられない」とき、鍼灸で見るのはお菓子だけではありません
鍼灸を受ければ、
甘いものが欲しくなくなる。
砂糖の影響を帳消しにできる。
というものではありません。
でも、
夕方になると疲れ切っている。
胃腸が不安定。
夜眠れていない。
首肩がずっと緊張している。
不妊治療への不安が強い。
そんな状態が続き、その中で甘いものを食べる機会が増えている方もいます。
その場合、
甘いものだけを我慢するのではなく、身体が疲れている背景から整えていく
という考え方ができます。
妊活の食事に疲れたときこそ、身体全体を見直す
妊活を始めると、
葉酸。
鉄。
ビタミンD。
たんぱく質。
糖質。
カフェイン。
次々に気になるものが増えていきます。
その結果、
「これは食べていい?」
「これはダメ?」
と、食事のたびに採点するようになることがあります。
でも、食事は毎日のことです。
一つ一つの食品を怖がり続ける生活は長く続きません。
蓮心はり灸堂では、食事だけを切り取るのではなく、月経、睡眠、胃腸、便通、冷え・のぼせ、疲労、首肩の緊張、現在の妊活・不妊治療の状況まで確認します。
何を禁止するかより、今の身体をどう整えるか。
鍼灸を取り入れることで、食事管理だけに偏らない身体づくりをしていくことができます。
「食べないように頑張る」より、まずこの3つ
1.甘い飲みものを習慣的に取っていないか確認する
毎日何杯も飲んでいる場合は、一杯を水やお茶へ替えるところから始めます。
2.食事を抜いた反動で甘いものを食べていないか確認する
お菓子を減らす前に、朝食や昼食が極端に少なくなっていないかを見直します。
3.食べると決めたら、罪悪感ではなく味わって食べる
一回のお菓子を妊娠結果へ結びつけず、食べたらそこで終わりにします。
これだけで十分です。
甘いものを完全にやめることを妊活の目標にしない
もし甘いものをほとんど食べなくても平気なら、無理に食べる必要はありません。
反対に、
ケーキが好き。
チョコレートを楽しみにしている。
友人とカフェへ行きたい。
なら、その時間まで全部なくす必要もありません。
妊活は数日で終わるとは限りません。
長く続く可能性があるからこそ、
妊娠するまで我慢し続ける生活ではなく、続けられる身体づくり
を考えていきましょう。
このテーマの続きは9月28日の夜に
今日は、妊活中の甘いものについて、
「食べる・食べない」
だけではなく、普段の食事全体から考えることをお話ししました。
それでも実際には、
ケーキを食べたあと。
アイスを食べたあと。
「またやってしまった」
と落ち込んでしまう夜があります。
このテーマの続きは9月28日夜公開の
「甘いものを食べたあと自分を責めない夜へ」
で、妊活中の食事に罪悪感を持ちすぎないための考え方を、もう少し心の側からお話しします。
甘いものを食べたくなる自分まで嫌いにならないで
妊活を頑張っているほど、
「身体にいいことだけをしなければ」
と思ってしまいます。
でも身体づくりは、
一度のケーキ。
一枚のチョコレート。
一杯の甘い飲みもの。
だけで決まるものではありません。
大切なのは普段の食生活です。
そして、
眠れているか。
食べられているか。
胃腸はつらくないか。
疲れ切っていないか。
身体に力が入り続けていないか。
まで含めて見ていくことです。
「甘いものをやめられないから、妊活がうまくいかない」
と一人で結論を出さないでください。
蓮心はり灸堂では、現在の治療段階や食生活とともに、睡眠、胃腸、月経、疲労、冷え・のぼせ、首肩の緊張まで確認しながら、その方に合う身体づくりを考えています。
食事をもっと厳しくする前に、
一度、今の身体を見直してみませんか。
妊活の食事は、自分を責めるためではなく、自分の身体を支えるためにあります。
参考・出典
世界保健機関(WHO)「健康的な食事」
世界保健機関(WHO)「成人・小児の糖類摂取に関するガイドライン」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
米国生殖医学会(ASRM)「自然妊娠の可能性を最適化するための委員会見解」
Human Reproduction Update「妊娠前の食事が女性の妊孕性に与える影響:観察研究のシステマティック・スコーピングレビュー」
BJOG「砂糖入り・人工甘味料入り飲料の摂取と生殖補助医療成績:前向きコホート研究」

