身体は疲れているはずなのに、布団へ入ると頭が冴えてくる。
今日あったことを思い返したり、明日のことを考えたりしているうちに、時計を見るともう深夜。
さらに、
「早く眠らないと」
と思うほど、余計に目が覚めてしまうことがあります。
眠れない理由は一つではありません。
生活リズム、寝室環境、カフェインやお酒、身体の病気、睡眠障害など、さまざまな原因が考えられます。
そのうえで東洋医学では、イライラや熱感、頭が冴える感じなどが重なっている状態を、「肝火上炎(かんかじょうえん)」という見方で捉えることがあります。
今日は「肝火上炎だから眠れない」と決めつけるのではなく、眠れない夜の身体を整理するヒントとして、この考え方をご紹介します。
肝火上炎とは、どんな状態?
東洋医学でいう「肝」は、西洋医学の肝臓そのものだけを指しているわけではありません。
気持ちや身体の巡りを調整する働きなどを含めた、東洋医学独自の概念です。
その「肝」の働きが乱れ、熱が上へ強く昇っているような状態を「肝火上炎」と表現することがあります。
たとえば、眠れないことに加えて、
- イライラしやすい
- 頭や顔が熱く感じる
- 目が充血しやすい
- 頭痛を感じる
- 口の中が苦く感じる
- 気持ちが高ぶって落ち着かない
といった変化を一緒に見ることがあります。
ただし、これらがあるから「肝火上炎」と自己診断する必要はありません。
東洋医学で身体を整理するときの一つのパターンとして考えてください。
「頭が冴えて眠れない」という夜があります
疲れ切っているのに眠れない。
そんな日は、身体より頭のほうがまだ活動しているのかもしれません。
仕事のことを考えている、妊活について検索している、明日の予定を組み立てているなど、布団へ入る直前まで頭を使い続けていると、身体は横になっても気持ちはまだ一日を終えていません。
東洋医学的には、こうした「上へ気持ちや熱が集まっているような状態」を肝火上炎などの見方で整理することがあります。
まずは眠るための方法を増やすより、夜まで続いている活動を一つ減らすことから考えてみましょう。
イライラした夜ほど、無理に眠ろうとしない
眠れないと、
「明日つらくなる」
「あと6時間しか寝られない」
と時計が気になります。
でも、眠ろうと努力するほど緊張してしまうことがあります。
布団へ入ってもなかなか眠気がこないときは、暗めの照明の中で静かに過ごし、眠気が出てから布団へ戻る方法もあります。
もちろん毎回厳密に行う必要はありません。
大切なのは、布団の中で何時間も「眠らなければ」と頑張り続けないことです。
寝る直前の検索を、一度だけ早く終える
妊活中は、夜に検索が増えやすいものです。
「この症状は大丈夫?」
「次の移植はうまくいく?」
「この検査も必要?」
一つ調べると、また次が気になります。
でも、その多くは今夜すぐ答えを出さなくても困らないことです。
気になることは、
「明日確認する」
「次回の診察で聞く」
とメモして、検索を終えてみてください。
スマートフォンを見ないことを完璧なルールにするのではなく、いつもより10分だけ早く閉じるくらいからでも十分です。
カフェインの時間も確認してみる
コーヒーや緑茶、紅茶などに含まれるカフェインの影響には個人差があります。
夕方に飲んでも問題なく眠れる方もいれば、午後の一杯でも寝つきに影響する方もいます。
「頭が冴えて眠れない日が増えた」と感じる場合は、夕方以降のカフェインを少し早めに終えてみてもよいでしょう。
完全にやめる必要はありません。
自分が眠りやすい時間帯を探すという感覚で調整してください。
熱いお風呂で「疲れさせれば眠れる」と考えない
身体を温めると眠りやすいと聞き、熱い湯船へ長時間入っている方もいます。
でも、入浴後に顔がほてる、汗が止まらない、動悸がする、身体がぐったりするのであれば、今の身体には少し強すぎるかもしれません。
特に「肝火上炎」のように上半身へ熱感を感じる方では、熱いお風呂がかえってつらく感じることがあります。
入浴は汗をたくさん出すためではなく、身体がゆるんで一日を終えやすくなる温度を目安にしてください。
お酒で眠ろうとしない
お酒を飲むと、眠気が出て寝つきやすく感じることがあります。
ただ、途中で目が覚めやすくなったり、睡眠の質が低下したりすることがあります。
最近、
「お酒がないと眠れない」
という状態になっているなら、一度見直してみてください。
眠るための方法として飲酒量が増えている場合は、医療機関へ相談することも大切です。
「肝火上炎」と「陰虚」は同じではありません
東洋医学では、夜に熱っぽくて眠れない場合でも、すべて肝火上炎と考えるわけではありません。
イライラや気持ちの高ぶりが強く、熱感が目立つ場合には肝火上炎として捉えることがあります。
一方、夕方以降にほてる、口や喉が乾く、寝汗があるといった状態では、「陰虚」という見方をすることもあります。
同じ「眠れない」「熱い」という症状でも、身体全体の状態は違います。
だからこそ、
ネットで見つけた体質名に自分を当てはめすぎないこと
が大切です。
生理前になると眠れない場合もあります
生理前になると、いつもより気持ちが高ぶる、イライラする、眠りが浅くなるという方もいます。
このような場合、睡眠だけを切り離すのではなく、生理周期との関係も見てみましょう。
毎月同じ時期に起こっているなら、月経周期と一緒に記録しておくと身体のパターンが分かりやすくなります。
症状が強く日常生活に影響している場合には、PMSやPMDDなども含めて婦人科へ相談してください。
妊活中こそ「眠れなかった一晩」を怖がりすぎない
妊活中に眠れない夜があると、
「今日眠れなかったから卵子によくない?」
「着床に影響しないかな」
と不安になることがあります。
でも、一晩眠れなかったというだけで妊娠の結果が決まるわけではありません。
睡眠は健康のために大切ですが、
「絶対に○時間眠らなければ妊活に悪い」
と自分を追い込まないようにしてください。
眠れない夜があったら、翌日に少し生活を整え直す。
そのくらいの柔軟さで構いません。
朝は「寝不足だから」と昼まで眠り続けない
眠れなかった翌日は、できるだけ長く寝て取り返したくなります。
もちろん体調が悪ければ休むことは大切です。
ただ、毎回大きく起床時間をずらすと、その日の夜にまた眠りにくくなることがあります。
可能であれば、普段の起床時間から大きく離れすぎない範囲で起き、朝の光を浴びてみましょう。
生活リズムを一日で完璧に戻す必要はありません。
今夜は「眠るための努力」を一つ減らす
眠れないと、何かしなければと考えます。
ストレッチをする、お風呂へ入る、音楽を流す、呼吸法をするなど、セルフケアが増えていくことがあります。
でも、それが全部「眠るための宿題」になれば、かえって気持ちが休まりません。
今夜試すなら、
スマートフォンを10分早く閉じる。
照明を少し落とす。
お風呂を熱くしすぎない。
その中から一つで十分です。
眠るために頑張るより、一日を終わらせる準備をする。
そんな夜にしてみてください。
不眠が続くときは、東洋医学だけで考えない
眠れない状態が続いているときには、生活習慣だけが原因とは限りません。
不眠症のほか、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、うつや不安、身体の病気、薬の影響などが関係していることもあります。
特に、生活を見直しても不眠が続く、日中の眠気や疲労が強い、仕事や日常生活に影響している場合には、一度医療機関へ相談してください。
「私は肝火上炎だから」と東洋医学の体質だけで説明し続けないことも大切です。
鍼灸では「眠れない」という一言だけで施術を決めません
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、眠れないというご相談をいただいた場合にも、睡眠時間だけを見ているわけではありません。
寝つきが悪いのか、途中で目が覚めるのか、朝早く目覚めるのかに加えて、生理周期、冷え・ほてり、胃腸、疲れ、最近の生活などを確認します。
また、強い不眠が続いている場合には、必要な医療機関への相談を優先していただきます。
睡眠や冷え、胃腸などを含めて女性の身体全体をどのように見ているのか、こちらで詳しくご案内しています。
次は「眠れない夜に実際に何をする?」を整理します
今回の記事では、肝火上炎という東洋医学の見方を通して、頭が冴えて眠れない夜について整理しました。
次はもう少し実践的に、
「布団に入っても落ち着かないとき、何をしたらいい?」
を考えます。
10月25日夜の記事
「眠れない夜に使いたい呼吸とツボ」
では、眠れない夜に取り入れやすい呼吸法と、自宅でやさしく触れられるツボをご紹介します。
眠れない夜が続き、身体までつらくなっている方へ
眠れない日が続くと、翌日の疲れだけでなく、胃腸の不調や肩・首の緊張、気分の落ち込みなどが重なることがあります。
当院では必要な医療を大切にしながら、睡眠だけではなく、今の身体に重なっている不調を一緒に整理しています。
「夜になると頭が冴えてしまう」「何から見直せばよいか分からない」という方もご相談ください。
この記事を書いた人
菅原 裕万
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂 院長
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
施術歴17年以上。妊活・婦人科・マタニティなど、女性のライフステージに伴う身体の変化を中心に、睡眠・冷え・ほてり・胃腸・生理周期なども確認しながら身体づくりをサポートしています。
参考・出典
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
厚生労働省「睡眠対策」
厚生労働省「Good Sleepガイド(ぐっすりガイド)成人版」
米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)「Sleep Disorders and Complementary Health Approaches: Usefulness and Safety」
米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)「Mind and Body Practices for Sleep Disorders」

