今日は仕事で疲れたから、帰りにケーキを買った。
食べている間はおいしかったのに、食べ終わった途端、気持ちが沈んでしまう。
「妊活中なのに、また食べてしまった」
「砂糖を控えた方がよかったかな」
「こんなことをしているから、妊娠できないのかな」
甘いものを楽しんだはずなのに、夜になって自分を責めていませんか?
9月25日朝の「妊活中の甘いものとの付き合い方」では、甘いものを完全に禁止する必要はなく、普段の食生活全体から考えることについてお話ししました。
今夜は、その続きです。
食事について正しい知識を持っていても、食べたあとに罪悪感が消えないことがありますよね。
そんな夜は、食べたものを取り消そうとするのではなく、今の身体と気持ちを少し楽にすることから始めてみましょう。
甘いものを食べたことが、妊活の失敗ではありません
妊活を始めてから、それまで何も考えずに楽しんでいた食べものが気になるようになった方もいると思います。
「砂糖は控えた方がいい」
「血糖値を上げない方がいい」
「栄養バランスのよい食事をしなければ」
という情報を目にするうちに、ケーキ一つ食べることにも迷いが生まれます。
もちろん、毎日の食生活を整えることは大切です。
しかし、米国生殖医学会(ASRM)は、特定の食事や栄養素によって自然妊娠率が向上するという十分な根拠は、現時点では不足しているとしています。
健康のために食事を見直すことと、一度お菓子を食べたことを妊娠結果へ結びつけることは、別の話です。
今日食べたケーキを、もし今回の治療がうまくいかなかったとしても、自分を責める理由にしないでください。
食べたあとに後悔するのは、真剣に妊活しているからかもしれません
妊活を続けていると、自分でできることは全部やっておきたいという気持ちが強くなることがあります。
通院の予定を守り、薬を使い、サプリメントを確認し、睡眠時間にも気をつける。そのうえで、食事まで完璧にしようとしている方もいるでしょう。
すると、普段なら何でもないお菓子が、自分の努力を評価する材料になってしまいます。
一日頑張って過ごしたことよりも、夜にチョコレートを食べたことだけが気になる。
そんなときは、食べたものではなく、食べものに対して自分が作っているルールを少し見直してみてもよいかもしれません。
妊活のために健康的な生活を心がけることは大切ですが、自分を責め続けることまで、妊活の一部にする必要はありません。
対処法① 「食べた事実」と「自分への評価」を分ける
今夜、甘いものを食べて後悔しているなら、まずは頭の中の言葉を少し整理してみましょう。
例えば、
「夕食後にケーキを食べた」
というのは、今日実際に起こったことです。
一方で、
「私は我慢ができない」
「身体づくりを台無しにした」
「こんなことでは妊娠できない」
というのは、食べたあとに自分へ向けている評価や、まだ分からない未来についての考えです。
この二つは同じではありません。
世界保健機関(WHO)のストレス対処ガイドでも、自分の考えや感情に気づき、それらに名前をつける方法が紹介されています。
今夜は、「ケーキを食べた。そして今、少し罪悪感を感じている」と言葉にしてみてください。
食べた事実を変える必要も、罪悪感をすぐに消す必要もありません。
自分を責める言葉を、それ以上増やさない。
まずは、それだけで十分です。
「明日は食べない」で帳消しにしなくていい
甘いものを食べすぎたと感じた翌日、朝食を抜いたり、昼食を極端に減らしたりしたくなることがあります。
でも、食べたことへの罰として、翌日の食事を制限する必要はありません。
普段から食事を抜いていると、必要な栄養やエネルギーを十分に取れなくなることがあります。空腹が強くなり、あとから食べすぎてしまう場合もあるでしょう。
今夜お菓子を食べたなら、明日は普段の食事へ戻れば構いません。
朝食を食べられるなら、いつもの朝食を取る。胃が重い場合には、自分の体調に合わせて食べやすいものを選ぶ。
特別な調整をするのではなく、いつもの生活へ戻していきましょう。
運動も「食べた罰」にしない
「ケーキを食べたから、明日はいつもより長く歩こう」
そんなふうに考えることはありませんか?
身体を動かすこと自体は、健康づくりの大切な要素です。気分転換や体力の維持にも役立ちます。
ただ、食べたことを後悔して、疲れているのに無理に運動する必要はありません。
今日は身体が疲れているなら、ゆっくり休む。明日散歩を楽しみたいなら、気持ちよく歩く。
運動は、食べたものを帳消しにするためではなく、身体を健やかに保つために行いましょう。
対処法② 甘いものが欲しくなった背景を振り返る
甘いものを食べたあと、食べた量やカロリーばかり気にしてしまうことがあります。
でも、今夜は少し違う方向から振り返ってみませんか?
今日は、どんな一日でしたか?
仕事が忙しく、昼食を十分に取れなかった。通院のあとに疲れ切っていた。判定日が近くて、朝からずっと緊張していた。
そんな日だったかもしれません。
食事が不足していたなら、まず普段の食事を整えることが大切です。また、疲れや緊張が続いているなら、甘いものを減らすことだけではなく、身体を休ませる時間も必要でしょう。
「どうして食べてしまったんだろう」と責めるのではなく、「今日は何が足りなかったのかな」と身体へ目を向けてみてください。
食事、睡眠、休息など、今の自分に必要なことが見えてくるかもしれません。
甘いもの以外の楽しみも残しておく
疲れたときの楽しみが、ケーキやチョコレートという方もいると思います。
それ自体を悪いことと考える必要はありません。
ただ、妊活が長くなるほど、生活の中から楽しみが減ってしまうこともあります。
以前は映画を見たり、友人と出かけたりしていたのに、通院や治療予定が中心になり、気づけば家と職場と病院を往復するだけになっている。
そんなときは、食事の管理をさらに厳しくする前に、ほかにも気持ちが休まる時間をつくれないか考えてみましょう。
好きな音楽を聴く、ゆっくりお風呂へ入る、気になる本を読む。どれも特別なことでなくて構いません。
甘いものを禁止するのではなく、楽しみの選択肢を少し増やしていく。
そんな考え方もあります。
対処法③ 今夜は身体を休ませて、明日へ持ち越さない
食べたあとの罪悪感が強い夜は、何とか挽回しようとするより、まず身体を休ませてみましょう。
お腹がいっぱいなら、無理に何かを追加して食べる必要はありません。胃腸に不快感がある場合には、楽な姿勢で過ごし、身体が落ち着くのを待ちます。
首肩に力が入っているなら、ゆっくり肩を上げ、息を吐きながら下ろしてみてください。
寝る前まで栄養やカロリーについて検索するのではなく、今夜はスマートフォンを少し早く置くのもよいでしょう。
そして明日は、普段の生活へ戻ります。
今日の食事を一晩中反省する必要はありません。
東洋医学では、食べたものだけで体質を判断しません
東洋医学では、胃腸の働きや食欲、疲労、気持ちの状態などを合わせて身体を見ていきます。
例えば、次のような状態を考えることがあります。
脾虚(ひきょ)|胃腸の弱りと疲労が重なる状態
食欲低下、胃もたれ、軟便、食後のだるさなどを確認します。
肝鬱気滞(かんうつきたい)|緊張が身体に残りやすい状態
ため息、首肩の張り、胸やお腹の張り、月経前のイライラなどを合わせて見ます。
血虚(けっきょ)|疲れや眠りの浅さが目立つ状態
疲れやすさ、立ちくらみ、睡眠の状態などを確認します。
ただし、「甘いものを食べたくなるから脾虚」「ストレスで食べたから肝鬱気滞」といった決めつけはしません。
食べたものや一つの行動だけで判断せず、月経、睡眠、胃腸、疲労、冷え・のぼせなどを含めて身体全体を見ることが大切です。
食事のことばかり考えて疲れているなら、鍼灸を取り入れる方法もあります
妊活中は、食事以外にも気をつけたいことがたくさんあります。
薬やサプリメントを忘れないようにしながら、通院予定を調整し、仕事や家事を続ける。そんな毎日の中で、首肩のこりや眠りの浅さ、胃腸の不調などが重なっている方もいます。
鍼灸を受ければ、甘いものが欲しくなくなるというわけではありません。
でも、食事のことだけに意識が向いているときこそ、身体全体へ目を向ける時間があってもよいと思います。
2022年に発表された、体外受精を受ける女性を対象としたシステマティックレビューでは、鍼灸を取り入れた群で治療に関連する不安が小さいながら軽減したと報告されています。
当院では、妊活中の身体の緊張や睡眠、胃腸、月経などを確認し、その日の状態に合わせて施術を組み立てています。
食事をさらに制限することだけが、身体づくりではありません。
身体の疲れや緊張にも目を向けながら、無理なく妊活を続けていきましょう。
蓮心はり灸堂では、食事を採点するためのカウンセリングはしません
「甘いものをやめられなくて」
「ついお菓子を食べてしまいます」
と相談すると、食べてはいけないものをたくさん指摘されるのではないかと心配になる方もいるかもしれません。
当院では、食事だけを切り取って評価するのではなく、現在の妊活・不妊治療の状況、睡眠、胃腸、月経、疲労、冷え・のぼせ、首肩の緊張などを合わせて確認します。
食事についても、禁止する食品を増やすより、今の生活で無理なく続けられる方法を一緒に考えていきます。
特に、治療と仕事の両立で疲れている方なら、食事を完璧にするより、まず身体を休ませる時間を取り戻すことが必要かもしれません。
鍼灸では、今実際に困っている身体の状態を確認し、継続的な身体づくりを支えていきます。
食べることへの罪悪感が強すぎる場合は、一人で抱えないで
食べたあとに毎回強く後悔し、翌日の食事を抜く。食べた分を消費しようとして、疲れていても過度に運動する。
あるいは、食べたあとに自分で吐いたり、下剤を使ったりする。
こうしたことが繰り返されている場合には、食事の管理をさらに厳しくするのではなく、医療機関へ相談してください。
摂食障害など、専門的な支援が必要な場合もあります。
妊活中であれば、生殖医療の主治医へ相談し、必要に応じて専門の医療機関や管理栄養士などにつないでもらう方法もあります。
なお、糖尿病などで医師から個別の食事指導を受けている方は、その指示を優先してください。
今夜、自分を責めそうになったらこの3つ
1.「今日は甘いものを食べた」と事実だけを確認する
「だから私はダメ」と、自分への評価まで加える必要はありません。
2.食事や運動で帳消しにしようとしない
明日は普段の食事へ戻ります。疲れているなら、運動を増やすより身体を休ませましょう。
3.今の身体が必要としていることを一つ選ぶ
胃腸が重いなら楽な姿勢で過ごす。首肩が張っているなら、やさしく動かす。疲れているなら、スマートフォンを置いて早めに休みます。
今夜、三つ全部できなくても構いません。
一つできれば、今日はそれで終わりにしましょう。
甘いものを楽しめる日があってもいい
妊活中には、「妊娠するまで我慢しなければ」と考えてしまうことがあります。
好きだったお菓子をやめる。友人とのカフェを断る。外食でも食べられるものばかり探す。
健康のために食生活を見直すことは大切ですが、毎日の食事が我慢と後悔だけになってしまうと、つらいですよね。
普段の食生活を大切にしながら、好きなものを楽しむ時間があっても構いません。
ケーキを食べたことが気になる夜は、今まで食事や生活に気をつけてきたことも思い出してみてください。
今日のお菓子一つで、これまで積み重ねてきた身体づくりが消えるわけではありません。
食事を頑張りすぎて、身体まで疲れている方へ
妊活中の食事に気をつけるほど、「食べていいもの」「避けた方がいいもの」が増えていくことがあります。
気づけば、毎日の食事が楽しみではなく、失敗しないための確認作業になっているかもしれません。
そんなときは、食事のことから少し離れて、今の身体にも目を向けてみませんか?
蓮心はり灸堂では、妊活・不妊治療の状況や使用している薬・サプリメントを確認しながら、睡眠、胃腸、月経、疲労、冷え・のぼせ、首肩の緊張などを含めて施術を組み立てています。
「食生活には気をつけているのに、身体がずっと疲れている」
「妊活のことを考えると、夜も身体から力が抜けない」
そんなお悩みもご相談ください。
妊活中の身体づくりは、食べものを我慢することだけではありません。今の身体を楽にすることも、一緒に大切にしていきましょう。
参考・出典
米国生殖医学会(ASRM)「自然妊娠の可能性を最適化するための委員会見解」(2022年)
世界保健機関(WHO)「ストレスを感じたときに大切なこと:イラスト付きガイド」(2020年)
欧州生殖医学会(ESHRE)「不妊・生殖補助医療における日常的な心理社会的ケア」
Reproductive BioMedicine Online「体外受精に関連する不安に対する鍼灸の効果:システマティックレビュー・メタ解析」(2022年)
米国摂食障害協会(NEDA)「摂食障害の警告サインと症状」

