8月4日の
「妊活中の汗と体力消耗を軽くみないで」
では、夏の暑さと発汗によって身体が消耗することや、水分補給、睡眠の大切さをお伝えしました。
ただ、
「汗をかくと疲れる」
といっても、その疲れ方は人によって違います。
少し動いただけで汗が止まらず、ぐったりする人。
汗をかいたあと、口や喉がカラカラになる人。
暑いのに冷たいものを飲むと、胃腸が弱る人。
水分をたくさんとると、今度は身体が重くむくむ人。
夕方になると、ほてりと疲れが一緒に出る人。
東洋医学では、同じ「夏の疲れ」でも、その人に現れている症状を見ながら身体の状態を分けて考えます。
今夜は、
「汗の量」だけではなく、「汗をかいたあと身体がどうなるか」
を手がかりに、自分に合った夏のセルフケアを考えてみましょう。
まず知っておきたい「汗をかく=デトックス」ではありません
汗は、暑くなった身体から熱を逃がし、体温を調節するための大切な働きです。
一方で、汗をかくと水分や電解質も失われます。
大量の発汗が続き、失った水分を十分に補えなければ、脱水につながることがあります。
夏の厳しい暑さの中では、汗によって水分が失われることと、体温が上がることの両方が身体への負担となり、強い疲労につながります。
そのため、
「汗を出せば出すほど身体にいい」
「汗をたくさん出して血流をよくしよう」
と考える必要はありません。
特に8月は、日常生活を送っているだけでも身体は暑さに対応しています。
妊活中だからと、
サウナ。
岩盤浴。
長時間の半身浴。
炎天下でのウォーキング。
などを追加し、さらに汗を出す必要はありません。
汗をかいたあとの「ぐったり」は、水分だけの問題ではないことも
汗をたくさんかいたあと、
「急に身体に力が入らなくなった」
「帰宅したら何もしたくない」
ということがあります。
暑さそのものに身体が対応し続けることに加え、発汗によって水分が失われれば、循環にも負担がかかります。
健康な若い女性を対象とした研究でも、軽度の脱水状態で、疲労感や頭痛、集中のしにくさなどが強くなったことが報告されています。
このように身体に大きな負担がかかっているのですから、
汗のあとに強く疲れるのは「根性が足りない」からではありません。
身体からの休息のサインとして受け止めることも大切です。
東洋医学では、汗と疲労をどう考える?
東洋医学では、汗は単なる水分ではなく、
気(き)
津液(しんえき)
などと関係していると考えます。
「気」は、身体を動かしたり、さまざまな機能を支えたりする力を表す東洋医学の概念です。
「津液」は、身体を潤す水分全般を表します。
汗を大量にかくと、津液だけでなく、身体を支える「気」も消耗しやすいと考えます。
そのため、
汗をかいたあとに、どんな症状が出るか
によってセルフケアも変えていきます。
タイプ1 気虚(ききょ)|汗をかくと、一気に疲れてしまうタイプ
こんなことはありませんか。
・少し動いただけでも汗をかく
・汗をかいたあと、ぐったりする
・朝から疲れている
・息切れしやすい
・声に力が入りにくい
・風邪をひきやすい
・疲れると横になりたくなる
東洋医学では、
気虚=身体を動かし、支える力が不足している状態
と考えます。
このタイプは、
「体力をつけなければ」
と思って運動を増やすより、
消耗を減らしながら回復すること
を優先したいタイプです。
気虚タイプのセルフケア
1.汗をかく運動より、疲れを残さない運動
ウォーキングをするなら、
「30分歩かなければ」
ではなく、
10~15分程度からでも構いません。
歩き終わったあと、
「気持ちいい」
くらいで終えるのが目安です。
翌日まで疲れが残る運動は、今の身体には少し強すぎるかもしれません。
2.朝食を抜かない
暑さで食欲が落ちても、
飲み物だけ。
コーヒーだけ。
にならないようにしましょう。
少量でも、
・ごはん
・卵
・豆腐
・納豆
・みそ汁
など、エネルギーやたんぱく質を補えるものを取り入れてみてください。
3.疲れた日は早く休む
夕方にぐったりしているのに、
「運動して血流をよくしよう」
と頑張らなくても大丈夫です。
疲労が強い日は、休むことも身体づくりです。
気虚タイプのツボ「足三里(あしさんり)」
膝のお皿の外側から、指4本ほど下がったところにあります。
胃腸や疲労などに対して、東洋医学でよく使われるツボです。
親指で、
「気持ちいい」
と感じる程度にゆっくり押します。
痛いほど強く押す必要はありません。
タイプ2 気陰両虚(きいんりょうきょ)|汗で疲れ、乾燥やほてりも出るタイプ
こんな特徴があります。
・汗をたくさんかく
・汗をかいたあと強く疲れる
・口や喉が渇く
・夕方にほてりやすい
・寝汗をかく
・肌や口が乾燥しやすい
・眠りが浅い
・動くと動悸を感じることがある
東洋医学では、
気陰両虚=身体を支える「気」と、身体を潤し熱を鎮める「陰」の両方が不足している状態
と考えます。
汗をかき続け、疲労と乾燥の両方が出ているイメージです。
気陰両虚タイプのセルフケア
1.さらに汗を出そうとしない
サウナ。
岩盤浴。
熱い長風呂。
激しい運動。
などを、
「身体を整えるため」
に追加する必要はありません。
すでに汗をたくさんかいているのであれば、休息を優先しましょう。
2.水分は少しずつ補う
一度に大量に飲むより、
一日の中でこまめに補います。
WHOも、暑い時期には身体を涼しく保ち、水分を定期的にとることを勧めています。
冷たい水でも身体に合っていれば構いません。
「妊活だから白湯だけ」
と我慢する必要はありません。
3.水分の多い食材も上手に
食事がとれる方は、
・トマト
・きゅうり
・冬瓜
・梨
・すいか
など、夏に食べやすい食材を適量取り入れてもよいでしょう。
ただし、胃腸が冷たいものに弱い方は、量や温度を調整してください。
気陰両虚タイプのツボ「三陰交(さんいんこう)」
内くるぶしの一番高いところから、指4本ほど上にあります。
婦人科系の不調や体調管理でよく用いられるツボです。
強く刺激せず、ゆっくり押します。
妊娠の可能性がある時期や妊娠中は、ご自身で強い刺激を続けず、施術者へご相談ください。
タイプ3 脾虚(ひきょ)|汗をかくと食欲や胃腸まで弱るタイプ
こんなことはありませんか。
・夏になると食欲が落ちる
・汗をかいた日は下痢をしやすい
・冷たい飲み物で胃が重くなる
・食後に眠くなる
・身体がだるい
・朝から軟便になりやすい
・疲れると甘いものが欲しくなる
東洋医学では、
脾虚=胃腸の働きや、身体を支える力が弱っている状態
として考えます。
暑さと発汗で疲れているところへ、
冷たい飲み物。
アイス。
そうめんだけ。
などが続き、さらに食事量が落ちてしまうことがあります。
脾虚タイプのセルフケア
1.「何を食べるか」より、まず食べられる形にする
暑い日に、
肉も魚も野菜も全部食べなければ、
と考える必要はありません。
たとえば、
・卵入りのおかゆ
・うどん+卵
・冷たい麺+豆腐や鶏肉
・ごはん+みそ汁
・スープ+パン
など、一品に少し栄養を追加する方法でも構いません。
2.冷たい飲み物を禁止しない
冷たい飲み物を飲んでも症状が出ない方は、無理にやめる必要はありません。
一方、
飲むたびに、
腹痛。
下痢。
胃の重さ。
食欲低下。
が出る方は、少し温度を上げてみましょう。
3.飲み物だけで食事を終わらせない
夏は水分でお腹いっぱいになりやすいものです。
一日を通して、
「ちゃんと食べられているか」
も確認してみてください。
脾虚タイプのツボ「中脘(ちゅうかん)」
みぞおちとおへその中間あたりにあるツボです。
胃腸の不調に用いられます。
食後すぐに強く押さず、リラックスした状態で手のひらをそっと置くだけでも構いません。
タイプ4 湿(しつ)がたまりやすい|身体が重く、むくみやすいタイプ
夏は、
「熱中症が怖いから水を飲まなければ」
と意識するあまり、一度に大量の水分をとっている方もいます。
その結果、
・お腹がちゃぷちゃぷする
・身体が重い
・むくみやすい
・頭が重い
・食欲がない
・便がすっきりしない
・雨の日や湿度の高い日にだるい
という方もいます。
東洋医学では、
湿(しつ)=身体の中で水分がうまく巡らず、重だるさなどとして現れている状態
として考えることがあります。
ただし、
「むくむから水を飲まない」ことはおすすめできません。
夏は発汗によって身体から水分が失われます。
湿タイプのセルフケア
1.一気飲みをやめる
大量にまとめて飲むのではなく、
少量ずつこまめに。
身体が受け取りやすい形で補いましょう。
2.軽く身体を動かす
体調がよければ、
室内でストレッチ。
短時間の散歩。
ふくらはぎを動かす。
などでも構いません。
「汗を大量に出す運動」が目的ではありません。
3.甘い飲料ばかりにしない
水分補給が、
ジュース。
甘いカフェラテ。
スポーツドリンク。
ばかりになっていないか確認してみましょう。
大量発汗など特別な状況を除けば、普段の水分補給は水や無糖のお茶などを中心に考えて構いません。
湿タイプのツボ「陰陵泉(いんりょうせん)」
膝の内側、すねの骨を下からたどっていったときに指が止まるくぼみ付近です。
東洋医学では、水分代謝に関係する不調でよく用います。
痛気持ちいい程度に、ゆっくり刺激します。
タイプ5 陰虚(いんきょ)|夜になっても熱が残り、眠りにくいタイプ
日中の汗より、
夕方から夜に、
・身体がほてる
・手のひらや足の裏が熱い
・寝汗をかく
・口や喉が乾く
・眠りが浅い
・夜中に目が覚める
という方もいます。
東洋医学では、
陰虚=身体を潤し、熱を鎮める働きが不足している状態
として考えることがあります。
陰虚タイプのセルフケア
1.「冷やさないように」と暑さを我慢しない
妊活中だからと、
冷房を切る。
腹巻きを重ねる。
厚手の靴下を履く。
必要はありません。
WHOも暑い夜には身体を涼しく保ち、室内の熱負荷を減らすよう勧めています。
眠れないほど暑い状態を我慢するより、休める環境を整えましょう。
2.夜の入浴を熱くしすぎない
身体を温めるための長風呂で、
入浴後も汗が止まらない。
寝るまでほてっている。
という場合は、温度や時間を調整してみてください。
3.睡眠の準備を早める
照明を少し暗くする。
スマートフォンを早めに置く。
冷房を調整する。
身体を休息へ切り替える時間を作りましょう。
陰虚タイプのツボ「太渓(たいけい)」
内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみにあります。
東洋医学では、身体の基礎的な状態を整える際によく用いられるツボです。
ゆっくり優しく刺激してください。
どのタイプかわからないときは?
読んでいると、
「気虚も当てはまるし、脾虚も当てはまる」
という方もいると思います。
それで構いません。
東洋医学の体質は、
一人につき一つだけに決まるものではありません。
たとえば、
もともと胃腸が弱い「脾虚」の方が、
夏に汗を大量にかいて「気虚」も強くなる。
ということもあります。
季節。
治療段階。
睡眠。
月経。
仕事の忙しさ。
などによっても変化します。
自己診断で一つのタイプに決めつけず、
今、一番つらい症状は何か
を見ることから始めてみてください。
汗をかいたら塩分をたくさんとった方がいい?
暑い時期には、
「塩分をとらなければ」
と思う方もいます。
大量の発汗時には、水分だけでなく電解質も失われるため、状況に応じて水分と塩分の補給が必要です。
厚生労働省も熱中症予防として、暑熱環境での定期的な水分・塩分補給を案内しています。
ただし、
普段の室内生活で汗が少ない人まで、塩あめや経口補水液を常に大量にとる必要はありません。
特に、
・高血圧
・心臓病
・腎臓病
・塩分制限を指示されている
方は、自己判断で塩分摂取量を増やさず、主治医の指示を優先してください。
経口補水液は普段の水代わり?
経口補水液は、脱水時に水分と電解質を効率よく補うためにつくられた飲料です。
だからといって、
「身体にいいから毎日たくさん飲む」
ための飲み物ではありません。
通常の生活で脱水がない場合は、水や無糖のお茶などで水分をとることが基本です。
発汗量や体調に合わせて使い分けましょう。
「汗をかくと疲れる」を東洋医学だけで判断しない
ここはとても大切です。
汗をかいたあと、
・強いめまい
・頭痛
・吐き気
・筋肉のけいれん
・異常なだるさ
・大量の発汗
・意識がぼんやりする
などがある場合は、
「気虚かな」
とセルフケアだけで済ませないでください。
CDCでは、熱疲労の症状として、頭痛、吐き気、めまい、脱力、強い発汗などを挙げています。
さらに、
意識の混乱、ろれつが回らない、けいれん、意識消失
などは、熱射病を疑う緊急性の高いサインです。
そのような場合は、涼しい場所へ移動し身体を冷やし、必要に応じて救急要請をしてください。
「妊活中だから汗をかいた方がいい」と思わなくて大丈夫
妊活では、
「運動して血流を上げる」
「汗をかいて代謝を上げる」
という言葉をよく目にします。
でも、
汗をかく量が多いほど、妊娠しやすい身体になるわけではありません。
夏は、日常生活だけでも十分に暑熱負荷があります。
採卵。
胚移植。
通院。
服薬。
仕事。
睡眠不足。
そこへ、
「運動もしなければ」
「サウナも行かなければ」
と足していけば、身体が回復する時間が減ってしまいます。
身体づくりは、
何かをたくさんすることだけではなく、余分な消耗を減らすこと
でもあります。
今夜からできる3つのこと
体質がよくわからなくても、まず次の3つを意識してみてください。
1.汗をかいたあとの状態を見る
「何分運動したか」
ではなく、
・元気が残っている
・ぐったりする
・口が渇く
・下痢になる
・むくむ
・ほてる
などを確認します。
これが、自分に合うセルフケアを考えるヒントになります。
2.水分補給と休息をセットにする
汗をかいたら、
「水を飲めば終わり」
ではなく、
涼しい場所で少し休む。
衣服を調整する。
身体を落ち着かせる。
ところまでを一つのセットにしてみましょう。
3.疲れている日は「整えること」を減らす
疲れている日に、
運動。
長風呂。
ストレッチ。
食事づくり。
妊活の情報収集。
すべてを頑張る必要はありません。
今日は一つやめる。
それも立派なセルフケアです。
夏の体調管理に「一つの正解」はありません
汗をかきやすい人。
ほとんど汗をかかない人。
冷たいものが平気な人。
胃腸が弱る人。
むくみやすい人。
ほてりやすい人。
同じ夏でも、身体の反応は違います。
東洋医学で大切にしているのは、
「夏はこれを食べる」
「このツボを押せばいい」
と全員を同じ方法へ当てはめることではありません。
今の身体が、暑さに対してどんな反応をしているのかを見ること。
そこから、その人に合う養生を考えていきます。
汗をたくさんかいた日は、
もっと頑張る日ではなく、
今日使った分を身体へ返してあげる日
と考えてみてください。
【参考・出典】
世界保健機関(WHO)「夏の暑さが健康に及ぼす影響と身体を涼しく保つ方法」
世界保健機関(WHO)「暑熱環境における水分補給」
米国疾病予防管理センター(CDC)「熱関連疾患とその症状」
厚生労働省「熱中症予防・水分と塩分の補給」
厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン2026」
Journal of Nutrition「軽度の脱水が健康な若年女性の気分・疲労・認知に及ぼす影響」
Physiological Reviews「暑熱環境下の運動・体温調節・水分補給」
夏の汗や疲れ方に合わせて、身体を整えたい方へ
「少し動いただけで汗が止まらない」
「汗をかいた日は、夕方には何もできないほど疲れる」
「冷たいものをとると胃腸まで弱る」
など、夏の不調は一人ひとり違います。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、
・汗のかき方
・疲れ方
・冷えやほてり
・胃腸の状態
・むくみ
・睡眠
・月経の状態
・妊活や不妊治療の段階
・日々の生活リズム
などを確認しながら、東洋医学の視点も取り入れてその方に合った身体づくりを考えています。
「もっと汗をかく」ことではなく、夏に消耗しすぎない身体の使い方を見つけること。
それも妊活中の大切な体調管理です。
「自分がどのタイプなのかわからない」
「毎年夏になると体調を崩しやすい」
という方は、LINEからお気軽にご相談ください。

