10月も後半になると、朝晩の空気がぐっと冷たくなってきます。
二十四節気の「霜降」は、秋が深まり、冬の気配を感じ始めるころです。
朝起きたときに足先が冷たい、夕方になると腰まわりが冷える、生理のときにお腹が重く感じるなど、夏には気にならなかった身体の変化に気づく方もいるかもしれません。
東洋医学では、こうした時季に「瘀血(おけつ)」という考え方から身体の巡りを確認することがあります。
ただし、
「霜降になったから瘀血になる」という意味ではありません。
季節が変わることで生活や身体の感じ方も変わるため、今の自分を見直すきっかけとして考えてみましょう。
東洋医学でいう「瘀血」とは?
「瘀血」という言葉を聞くと、
「血液がドロドロになっている状態?」
と思う方もいるかもしれません。
でも、東洋医学の瘀血は、血液検査で測定できる数値や、西洋医学の病名を指す言葉ではありません。
東洋医学では、血の巡りが滞っているような身体の状態を整理する考え方として「瘀血」を使います。
たとえば、痛む場所が比較的はっきりしている、刺すような痛みを感じる、生理の経血に塊が目立つなど、いくつかの身体の変化を組み合わせて見ていきます。
一つの症状だけで、
「私は瘀血体質」
と決めるものではありません。

霜降のころは「冷え方」が変わってきます
9月や10月前半は、昼間はまだ暖かくても、霜降を迎えるころになると朝晩との気温差が大きくなります。
薄着のまま夕方まで過ごしてしまったり、足元だけ冷えていたりすることも増えてきます。
東洋医学では、強い冷えによって身体の巡りが滞る状態を「寒凝血瘀(かんぎょうけつお)」などと表現することがあります。
これは、
寒くなれば必ず血流が悪くなるという医学的な法則ではありません。
あくまで、冷えと痛みなどが一緒に現れている身体を東洋医学的に整理するときの見方です。
ですから、
「手足が冷たいから、もっともっと温めよう」
とすぐに温活を増やすのではなく、まず現在の身体を観察してみてください。
瘀血の見方①|痛む場所が比較的はっきりしている
東洋医学では、瘀血の特徴の一つとして、場所が比較的はっきりした痛みを見ることがあります。
たとえば生理のときに、
「お腹全体が何となく重い」
というより、
「このあたりがズキッと痛む」
という感じです。
ただし、強い下腹部痛を「瘀血だから」と自己判断しないことは大切です。
子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫など、婦人科で確認が必要な原因が隠れている場合もあります。
痛みが強い、以前より悪化している、日常生活へ影響している場合は婦人科へ相談してください。
瘀血の見方②|経血の塊が気になる
生理のときに、経血の中に塊が混じることがあります。
東洋医学では、経血の塊が目立つことも瘀血の状態を考える一つの材料にします。
ただし、小さな塊が一度あっただけで問題というわけではありません。
むしろ確認したいのは、
以前より塊が増えた、毎回大きな塊が出る、出血量自体が増えた、生理痛も強くなっている、といったこれまでとの変化です。
出血の変化が続く場合には、
「巡りが悪いのかな」
だけで終わらせず、婦人科でも相談しましょう。
瘀血の見方③|生理の痛みと経血の変化が重なっている
東洋医学では、一つの症状だけで体質を決めません。
たとえば、
- 生理痛が以前より強くなった。
- 経血の色や量が変わった。
- 塊が増えている。
- 腰や下腹部の痛みが毎回同じ場所に出る。
こうした変化が重なっているかを見ます。
だからこそ、
「塊がある=瘀血」
「生理痛=瘀血」
と単純に考えないことが大切です。
身体全体を見るためのヒントとして使ってください。
冷えがある人も、温めすぎには注意してください
瘀血という言葉を調べると、
「とにかく身体を温める」
という情報に出会うことがあります。
でも、すべての方に強い温活が合うわけではありません。
足は冷たいけれど顔はほてる方、長風呂をするとぐったりする方、厚着をすると汗が増えて眠りにくくなる方もいます。
そのような場合には、全身を強く温め続けるのではなく、服装や入浴を調整してみましょう。
温めたあとに身体が楽になっているか。
ここを基準にしてください。
秋から冬は「動かなさすぎ」にも気をつける
気温が下がると、夏より外へ出る時間が減る方もいます。
仕事で一日中座ったまま過ごし、帰宅後も寒くてほとんど動かないという日が続くと、肩や腰のこわばりを感じやすくなります。
だからといって、激しい運動を始める必要はありません。
昼休みに少し歩く、階段を使う、家の中で身体を伸ばすなど、日常の中で動く時間を少し残してみましょう。
冷えている身体を無理やり温めるのではなく、
身体が自然に動く機会を減らしすぎないこと
も秋冬の養生です。
生理前だからと、毎回同じ温活をしなくていい
生理前になると、
「そろそろ温めておこう」
と毎回同じセルフケアをしている方もいると思います。
でも、その月によって身体は違います。
今月は足が冷たい。
次の月はむしろ顔がほてる。
仕事が忙しくて疲れている月もあれば、胃腸が弱っている月もあります。
セルフケアも、その日の身体に合わせて調整してください。
体質は一度決めたらずっと同じ、というものではありません。
食事も「血を巡らせる食材探し」だけにしない
瘀血について調べると、
「この食材が血を巡らせる」
という情報もたくさん出てきます。
食養生を楽しむことはよいのですが、特定の食材だけを積極的に食べれば瘀血がなくなる、というものではありません。
霜降のころは、夏より温かい汁物や煮物が食べやすくなる季節です。
身体が冷えてつらい日は温かいものを選び、胃腸が疲れているなら無理なく食べられる料理にする。
まずはその程度で十分です。
妊活中だからと、食事へ新しいルールを増やしすぎないようにしてください。
生理痛を「体質だから」と我慢しないでください
東洋医学では、生理痛を身体の状態を知るサインとして見ることがあります。
でも、
「私は瘀血体質だから痛い」
と考えて、強い痛みを毎月我慢する必要はありません。
鎮痛薬を使用しなければ仕事や学校へ行けない、寝込むほど痛む、以前より痛みが強くなった、生理以外にも下腹部痛がある場合などは、一度婦人科で相談してください。
東洋医学的な身体の見方と、婦人科で必要な検査は役割が違います。
どちらか一方だけにしないことが大切です。
不正出血は「瘀血のサイン」と決めつけない
生理以外の時期に出血があると、
「これも血の巡りが悪いから?」
と考える方がいるかもしれません。
しかし、不正出血にはさまざまな原因があります。
ホルモンの変化だけでなく、子宮や子宮頸部などの病気が関係することもあります。
出血が続く、繰り返す、量が増えている場合には、
瘀血という言葉だけで説明せず、婦人科で確認してください。
妊活中は「瘀血があるから着床しない」と考えない
妊活について東洋医学を調べると、
「瘀血があると着床しにくい」
といった説明を見かけることがあります。
ただ、
瘀血という東洋医学の概念だけで、妊娠できる・できないを判断することはできません。
妊娠には、年齢、卵子や精子、子宮や卵管、胚、治療方法などさまざまな要素が関係します。
ですから、
「経血に塊があるから着床できない」
と自分を不安にさせないでください。
鍼灸でも、瘀血だけを取り除けば妊娠できるという考え方はしません。
秋の身体を振り返るなら「3つ」だけ
霜降をきっかけに身体を見直すなら、複雑な体質診断をする必要はありません。
まずは次の3つを確認してみてください。
- 最近、どこが冷えていますか?
手足、お腹、腰など、自分が実際に感じている場所を確認します。 - 生理の変化はありますか?
痛み、出血量、経血の塊など、以前との違いを見てみます。 - 身体を動かす時間が減っていませんか?
涼しくなってから歩く時間が減っていないか振り返ります。
何か一つ気づければ十分です。
東洋医学では「瘀血だけ」を見て施術するわけではありません
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、
「自分は瘀血だと思います」
というご相談をいただくこともあります。
その場合にも、瘀血という言葉だけで施術を決めることはありません。
生理周期や痛みの状態に加えて、冷え・ほてり、睡眠、胃腸、疲れなども確認しながら身体全体を見ていきます。
冷えや生理に伴う不調など、女性の身体を東洋医学の視点からどのように整えていくのか詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
今夜は、自宅で使いやすいツボをご紹介します
今回は、霜降のころに身体を振り返る一つの視点として「瘀血」についてお伝えしました。
夜の記事では、
として、冷えや一日の疲れが気になる夜に、自宅でやさしく触れやすいツボをご紹介します。
強く押したり、痛みを我慢したりする方法ではありません。
季節が変わるたびに身体の調子が変わる方へ
秋から冬になると、生理痛が気になる、冷えが強くなる、身体がこわばるなど、季節によって体調の変化を感じる方もいます。
「冷えているから」と温活を増やすだけではなく、生理周期や睡眠、胃腸なども含めて今の身体を一度整理してみる方法があります。
自分の場合は何から見直せばよいのか分からない方もご相談ください。
この記事を書いた人
菅原 裕万
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂 院長
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
施術歴17年以上。妊活・婦人科・マタニティなど女性のライフステージに伴う身体の変化を中心に、生理周期・冷え・ほてり・睡眠・胃腸なども確認しながら身体づくりをサポートしています。
参考・出典
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」
厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」
米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)「Traditional Chinese Medicine: What You Need To Know」
米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)「Acupuncture: Effectiveness and Safety」

