朝は寒かったのに、昼間は暖かい。
夕方になるとまた冷えてきて、帰宅すると足先がひんやりする。
霜降を迎えるころは、一日の中でも温度差を感じやすくなります。
今朝の記事「【霜降】霜降のころに増えやすい瘀血サイン」では、東洋医学の「瘀血」という考え方を通して、生理痛や経血の変化、冷えなどを振り返りました。
夜は、その続きです。
今日は難しい体質診断ではなく、一日の終わりに自宅でやさしく触れやすい3つのツボをご紹介します。
ただし、ツボを押せば瘀血がなくなる、妊娠しやすくなるというものではありません。
身体を治そうと強く刺激するのではなく、
「今日も一日お疲れさま」と身体へ触れる時間
くらいの気持ちで取り入れてみてください。
ツボは「痛いほど押す」必要はありません
ツボ押しというと、
「効かせるには強く押したほうがいい」
と思う方もいます。
でも、自宅でのセルフケアなら、痛みを我慢する必要はありません。
親指や人差し指の腹を使い、皮膚を傷めない程度にやさしく触れます。
目安としては、5~10秒ほどゆっくり押して離す動作を2~3回程度で十分です。
押したあとに痛みが残る、青あざになるほど強く押す、何分も同じ場所を刺激し続ける、といった方法は避けましょう。
「少し気持ちいい」くらいで終えることがポイントです。
1.神門|一日の緊張が抜けにくい夜に
最初は「神門(しんもん)」です。
神門は手首にあるため、布団やソファでも触れやすいツボです。
神門の場所
手のひらを上に向けます。
手首にできる横じわを、小指側へたどってみてください。
小指側の骨と腱の間にある小さなくぼみ付近が神門です。
細かな位置をミリ単位で探す必要はありません。
指でゆっくり触れながら、
「このあたりが少し心地いいな」
という場所を探してみてください。
こんな夜に
仕事のことが頭から離れない、考えごとが続いている、眠る前までスマートフォンを見てしまった、という夜に取り入れやすいツボです。
東洋医学では心を落ち着かせる目的で用いられることがありますが、ツボ押しだけで不眠症を治療できるわけではありません。
眠れない状態が続いている場合には、生活リズムだけでなく医療機関への相談も考えてください。
2.内関|胸まわりの緊張や気持ちの高ぶりが気になる夜に
次は「内関(ないかん)」です。
内関も手首近くにあるため、初めての方でも比較的触れやすい場所です。
内関の場所
手のひらを上に向けます。
手首の横じわから、ひじ方向へ指3本分ほど進んだところを探します。
中央付近に2本の腱が触れる方は、その間あたりが目安です。
強く押し込む必要はありません。
片側5~10秒ほど触れたら離し、反対側も同じように行います。
こんな夜に
一日中緊張していた、帰宅しても身体に力が入っている、気持ちが落ち着かず呼吸が浅く感じる、という日に使いやすいツボです。
ツボを押すことだけに集中するより、
押しながらゆっくり息を吐く
ことも意識してみてください。
息を大きく吸おうと頑張らなくて構いません。
いつもより少し長く吐くだけでも十分です。
3.足三里|冷えや一日の疲れが気になる夜に
3つ目は「足三里(あしさんり)」です。
東洋医学では、胃腸や全身の状態を見る際によく使われる代表的なツボの一つです。
足三里の場所
膝のお皿の下端から、指4本分ほど下へ進みます。
そこから、すねの太い骨の少し外側を探します。
押したときに軽く響くような感じがする場所が目安です。
左右とも、やさしく5~10秒ほど触れてみてください。
こんな夜に
夕方になると脚が重い、冷えてから身体全体が疲れた感じがする、食欲や胃腸の調子も少し落ちている、というときに取り入れやすいツボです。
ただし、
「冷えを改善するために強く押す」
必要はありません。
足が冷たい日は、押したあとに靴下を一枚足す、膝掛けを使うなど、普段の生活で心地よく保温する程度で十分です。
3つ全部やらなくても大丈夫です
セルフケアの記事を読むと、
「全部やったほうがいいのかな」
と思うかもしれません。
でも今夜は、3つの中から一つで構いません。
考えごとが多ければ神門。
緊張が抜けなければ内関。
脚の疲れや冷えが気になれば足三里。
そのくらいの選び方で十分です。
ツボを増やすことより、自分の身体へ少し意識を戻すことを大切にしてください。
ツボの位置が正確か心配しすぎなくても大丈夫
セルフケアをしていると、
「1cmずれていたら意味がない?」
と不安になる方がいます。
でも、自宅でやさしく触れる程度であれば、完璧な位置を探すことが目的ではありません。
鍼灸施術では身体を確認しながらツボを選び、位置や刺激量も調整します。
一方、自宅でのセルフケアは、
手首をゆっくり触る。
脚を軽く押す。
その間だけスマートフォンから離れる。
という程度でも構いません。
ツボ探しを新しい宿題にしないでください。
ツボを押しながらスマートフォンを見ない
少しもったいないのが、
片手でツボを押しながら、もう片方の手でスマートフォンを見ることです。
できれば数分だけ画面を置いてみてください。
照明を少し落とし、椅子や布団の上で身体を楽にします。
そして、ツボへ触れながら呼吸を整える。
これだけです。
ツボそのものだけではなく、一日を終えるための時間をつくることも夜のセルフケアになります。
冷えているからと、お灸を何か所も増やさない
ツボについて調べると、
「この場所にお灸をするとよい」
という情報も見つかります。
自宅でお灸を使用している方もいると思いますが、たくさん行えばよいわけではありません。
火を使うタイプではやけどや火災に注意が必要ですし、温熱刺激でも同じ場所へ繰り返し使用すれば皮膚トラブルにつながることがあります。
特に感覚が鈍い場所、皮膚に炎症がある場所、傷があるところには使用しないでください。
妊娠中や妊娠の可能性がある時期、病院で治療中の方は、自己判断で強い刺激を増やすより、施術者や医療機関へ相談してください。
妊活中だから「このツボを押せばいい」とは考えない
妊活向けのツボを検索すると、
「子宮の血流を良くする」
「着床を助ける」
「卵子の質を上げる」
といった表現を目にすることがあります。
ただ、一つのツボを押すことで妊娠結果が決まるわけではありません。
また、ツボ押しだけで不妊の原因を治療できるものでもありません。
妊娠には、年齢、卵子や精子、子宮や卵管、胚、治療方法など多くの要素が関係します。
自宅のツボ押しは、
妊娠させるための方法ではなく、日々のセルフケアの一つ
として使ってください。
生理痛が強い日は、ツボだけで我慢しない
朝の記事では、瘀血の見方として生理痛や経血の変化についても触れました。
もし生理痛が強く、仕事や家事ができないほどつらい場合には、
「今日はツボを押して様子を見よう」
だけで済ませないことも大切です。
子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫など、婦人科での確認が必要な場合があります。
以前より痛みが強くなった、出血量が増えた、生理以外にも痛む、といった変化があれば婦人科へ相談してください。
強い痛みや腫れがある場所は押さないでください
ツボ押しは万能ではありません。
赤く腫れている場所、けがをしているところ、皮膚炎がある場所、触れただけでも強く痛む場所には刺激を行わないでください。
また、脚が片側だけ急に腫れた、強く痛む、熱を持っているといった場合には、セルフマッサージやツボ押しを行わず医療機関へ相談することが大切です。
「巡りが悪いだけ」
と自己判断しないようにしてください。
朝の記事で確認した身体の変化とつなげてみる
夜のセルフケアでは、
「瘀血だからこのツボ」
と決める必要はありません。
今日は脚が冷えている。
仕事で緊張していた。
考えごとが多かった。
そんな今夜の自分に合わせて一つ選ぶくらいで構いません。
季節の養生は、毎日同じことをするものではありません。
鍼灸では「ツボの場所」だけを見ているわけではありません
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、施術前に現在の治療状況や生理周期を確認しながら、冷え・ほてり、睡眠、胃腸、疲れなども伺います。
同じツボでも、すべての方へ同じ刺激を行うわけではありません。
その日の身体を確認し、使用する場所や刺激量を調整します。
妊活中の身体にどのように鍼灸を取り入れているのか詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
今夜は一つのツボで十分です
霜降を迎え、朝晩の冷えが少しずつ深まってきました。
だからといって、
身体を強く温める。
たくさんツボを押す。
セルフケアを増やす。
必要はありません。
今夜は神門、内関、足三里の中から一つだけ選び、数十秒ゆっくり触れてみてください。
そして終わったら、そのまま身体を休ませます。
身体を整えるための時間が、身体を追い込む時間にならないこと。
それが秋の夜のセルフケアで大切にしてほしいことです。
身体に合うセルフケアや鍼灸について一度相談してみたい方も、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
菅原 裕万
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂 院長
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
施術歴17年以上。妊活・婦人科・マタニティなど女性のライフステージに伴う身体の変化を中心に、病院での治療状況も確認しながら、その日の身体に合わせた施術を行っています。
参考・出典
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)「Acupuncture: Effectiveness and Safety」
World Health Organization(WHO)「WHO benchmarks for the practice of acupuncture」
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」

