反復着床不全が不安な人の体質改善と鍼灸の考え方

不妊鍼灸による妊活サポートを表す奈良・上牧町の鍼灸院ブログ画像

胚移植をして、判定日を迎える。

そして結果が思うようにつながらないことが続くと、

「私の身体に何か問題があるのかな」

「もっと体質改善をしなければ」

と考えてしまうことがあります。

温活。

食事。

サプリメント。

運動。

睡眠。

鍼灸。

「できることは全部やったほうがいいのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

でも、反復着床不全について考えるときに最初にお伝えしたいのは、

何かをたくさん足せば、着床できるようになるという単純なものではない

ということです。

反復着床不全についての医学的な考え方や検査については、10月2日朝の記事「反復着床不全の基礎知識」で詳しくお伝えしました。

今回はその続きとして、

病院で確認することと、日常の身体づくりでできることを分けて考えてみましょう。

目次

まず「反復着床不全=体質が悪い」ではありません

胚移植が続けて妊娠につながらないと、

「自分の身体が悪い」

と思ってしまう方がいます。

でも、着床にはさまざまな要素が関係します。

胚の状態。

年齢。

子宮や子宮内膜の状態。

これまでの治療経過。

移植条件。

そして、その人ごとの妊娠する可能性。

2023年の欧州生殖医学会(ESHRE)の提言では、反復着床不全を「何回失敗したら該当する」と一律に決めるのではなく、患者さんごとの背景や胚移植による累積的な着床可能性を踏まえて考えることが推奨されています。

さらに2026年の米国生殖医学会(ASRM)の委員会意見でも、まずこれまでの病歴、画像検査、体外受精周期などを丁寧に確認し、明確な原因が見つからない場合には、根拠の乏しい検査を際限なく追加する必要はないとしています。

つまり、

着床しなかったことを「自分の体質のせい」と決めつける必要はありません。

「体質改善」という言葉を少しやさしく考えてみましょう

妊活では「体質改善」という言葉をよく耳にします。

でも、

「この体質だから妊娠できない」

「体質を変えれば着床する」

という意味で使ってしまうと、自分を追い込んでしまいます。

当院では、体質改善を、

妊娠できる身体に作り替えること

とは考えていません。

たとえば、

眠れていないなら、睡眠を見直す。

胃腸が弱っているなら、食事の摂り方を考える。

冷えとほてりが混じっているなら、温め方を調整する。

疲れが抜けないなら、休める時間をつくる。

こうして、

今感じている不調を少しずつ整理し、治療を続ける身体を整えていくこと

を大切にしています。

体質改善だけで「着床させよう」としなくて大丈夫です

反復着床不全が不安になると、

「子宮の血流をよくしなければ」

「内膜をふかふかにしなければ」

「身体を温めなければ」

という情報を目にすることがあります。

でも、こうした言葉だけで着床を説明することはできません。

特に、

手足が冷えている=子宮の血流が悪い

とは単純には言えません。

そして、

身体を温めれば着床率が上がる

ということも確立しているわけではありません。

自宅での身体づくりは、

「着床させるため」

と考えるよりも、

今の体調を少しでも安定させ、治療を受けやすい状態をつくるため

と考えてみてください。

それだけでも、身体づくりへのプレッシャーが少し軽くなります。

着床不全が気になるときに見直したい4つのこと

特別な妊活法を増やす前に、まず毎日の体調を確認してみましょう。

1.睡眠は取れていますか?

採卵や胚移植を繰り返していると、

次の診察。

胚の結果。

判定日。

次の治療。

と、頭の中が休まらなくなることがあります。

布団に入ってから検索を続けてしまう方もいます。

毎日完璧に眠る必要はありません。

ただ、

  • 寝つくまで長くかかる
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 朝から疲れている
  • 日中の眠気が強い

という状態が続いているなら、一度見直してみましょう。

2.胃腸は疲れていませんか?

妊活中は、

たんぱく質。

野菜。

サプリメント。

発酵食品。

など、

「身体によいものを摂らなければ」

と食事を頑張りすぎてしまうことがあります。

でも、

食べると胃が重い。

下痢をしやすい。

食欲がない。

お腹が張る。

という状態なら、まず胃腸が無理なく受け止められる食事を考えることも大切です。

3.冷えだけを追いかけていませんか?

手足が冷えると、

「もっと温めなければ」

と思ってしまいます。

でも、

足は冷たいのに顔はほてる。

温めると汗が出る。

長風呂をすると疲れる。

という方もいます。

冷えには、一律の温活ではなく、身体に合わせた方法が必要です。

4.身体がずっと緊張していませんか?

診察。

採血。

採卵。

移植。

判定。

治療が続くと、自分では気づかないうちに身体へ力が入っていることがあります。

肩が上がっている。

呼吸が浅い。

顎を噛みしめている。

夜になっても頭が働き続けている。

こうした状態も、

「もっと頑張らなければ」

ではなく、

少し緩める時間が必要なサイン

として見てみてください。

東洋医学では、着床だけを切り離して考えません

東洋医学では、

「着床しないから、このツボ」

という見方はしません。

同じように胚移植を受けている方でも、身体の状態は違います。

たとえば、

腎虚傾向

疲れやすい。

腰や足がだるい。

冷えが強い。

夜間に目が覚めやすい。

といった状態を、東洋医学では「腎」の働きと関連づけて見ることがあります。

肝鬱気滞傾向

治療への緊張が強い。

イライラしやすい。

ため息が多い。

胸やみぞおちが張る。

生理前に症状が悪化する。

という方では、気の巡りにも目を向けます。

脾虚傾向

胃腸が弱い。

疲れやすい。

食後眠くなる。

下痢や軟便になりやすい。

という方では、食事から身体を支える力をつくる「脾」の状態を見ます。

血虚・瘀血傾向

眠りが浅い。

疲れやすい。

月経量が少ない。

あるいは生理痛が強い、経血に塊が多いなど、血に関する症状を確認することもあります。

もちろん、これらは西洋医学の病名ではありません。

また、

腎虚だから着床しない

瘀血だから妊娠できない

という意味でもありません。

東洋医学では、今ある身体の特徴を整理するための一つの見方として使います。

鍼灸は反復着床不全そのものを「治す治療」ではありません

ここは、当院として大切にしている部分です。

鍼灸で、

染色体の問題を治す。

子宮内の病変を診断する。

慢性子宮内膜炎を治療する。

といったことはできません。

必要な検査や治療は、医療機関で受けることが基本です。

また、生殖補助医療に鍼灸を併用することで妊娠率や出生率が確実に向上するとまでは、現在の研究から結論づけられていません。研究によって結果にばらつきがあり、古いCochraneレビューでは出生率・妊娠率の明確な改善は確認されませんでした。

だから当院でも、

「鍼灸を受ければ着床しやすくなります」

という説明はしていません。

それでも妊活中に鍼灸を取り入れる意味

では、何のために鍼灸を取り入れるのでしょうか。

当院では、

  • 冷えやほてり
  • 睡眠の乱れ
  • 胃腸の不調
  • 首・肩・腰の緊張
  • 生理に伴う不調
  • 疲れやすさ

など、治療期間中に重なっている身体の悩みを一緒に見ていきます。

反復着床不全では、複数回の胚移植を経験することで心理的な負担が大きくなることもあり、ESHREやASRMも治療過程での心理社会的な支援の重要性に触れています。

治療の結果だけではなく、

次の治療までの日々を少しでも穏やかに過ごせる身体をつくる。

そこも、妊活中の身体づくりでは大切だと考えています。

当院ではどのように治療状況と身体の状態を確認しながら施術を行っているのか、詳しくまとめています。

「何かしなければ」ではなく、今必要なことを選ぶ

着床しなかったあとほど、

「次までに何か変えなければ」

と思います。

でも、

サプリメントを増やす。

温活を増やす。

運動を増やす。

検査を増やす。

すべてを一度に始める必要はありません。

2026年のASRMの委員会意見でも、反復着床不全について明らかな修正可能な原因が見つからない場合には、広範囲な検査をむやみに続ける必要はなく、治療を継続することも合理的な選択肢とされています。

身体づくりでも同じです。

まず、

今、自分が一番つらいことは何だろう?

と考えてみてください。

眠れないなら、まず睡眠。

胃腸がつらいなら、まず食事。

身体が疲れているなら、まず休息。

冷えとのぼせがあるなら、温め方の見直し。

一つずつで大丈夫です。

身体づくりは「結果が出なかった理由探し」にしない

胚移植がうまくいかなかったあと、

「あの日に冷たいものを食べた」

「仕事が忙しかった」

「運動しなかった」

「鍼灸へ行けなかった」

と、一つひとつ振り返ってしまうことがあります。

でも、

日常生活の一つの行動を、着床しなかった原因として結びつけないでください。

身体づくりは、結果が出なかった理由を探すために行うものではありません。

次の治療に向かう身体をいたわるため。

今の不調を少し楽にするため。

日々を過ごしやすくするため。

そのくらいの距離感で考えてみてください。

反復着床不全が不安な治療期間に、温かい飲み物を手にゆっくり身体を休める女性
次の治療のために何かを増やすだけでなく、今の身体を休ませる時間も大切にしましょう。

今夜は「身体を変える」より「身体を知る」から

体質改善というと、

今の自分ではダメだから変える。

というイメージを持つことがあります。

でも、本当に大切なのは、

今の身体が何を訴えているのか知ること

かもしれません。

眠れている?

食べられている?

疲れていない?

身体に力が入り続けていない?

まずはそこからです。

何か特別なことを始めなくても、

温かい飲み物を飲んで。

スマートフォンを少し置いて。

今日は早めに休む。

そんな夜があってもいいと思います。


この記事を書いた人

菅原 裕万
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂 院長
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者

妊活・婦人科・マタニティなど、女性のライフステージに伴う身体の変化を中心に、病院での治療と役割を分けながら鍼灸による身体づくりをサポートしています。

次の治療に向かう身体を、一緒に整理してみませんか

反復着床不全が気になっていると、

「何をすればいいの?」

「今のままでいいの?」

と、治療以外のことまで不安になってしまうことがあります。

当院では、反復着床不全そのものを鍼灸で治療するのではなく、病院での検査・治療を大切にしながら、睡眠、胃腸、冷え、疲れ、生理周期など、その方の身体全体を一緒に整理しています。

「次の治療までに何かを頑張らなければ」ではなく、

今の身体に必要なことを一度整理してみたい。

そんなときもご相談ください。


参考・出典

American Society for Reproductive Medicine(ASRM)「Recurrent implantation failure: a committee opinion」(2026)

European Society of Human Reproduction and Embryology(ESHRE)「Good Practice Recommendations on Recurrent Implantation Failure」(2023)

Human Reproduction Open「ESHRE good practice recommendations on recurrent implantation failure」(2023)

日本生殖医学会「生殖医療ガイドライン」

Cochrane Database of Systematic Reviews「Acupuncture and assisted reproductive technology」

Archives of Gynecology and Obstetrics「Effects of acupuncture on pregnancy outcomes in women undergoing in vitro fertilization: an updated systematic review and meta-analysis」(2024)

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