「生理前になると、妊活のことを考えるだけで涙が出てくる」
「普段なら気にならないパートナーの言葉にイライラしてしまう」
「今回も生理が来るかもしれないと思うと、何もしたくなくなる」
そんな経験はありませんか?
妊活中は、月経が近づく時期そのものが特別な意味を持ちます。
胸の張りがある。
下腹部が重い。
気分が落ち込む。
いつものPMSかもしれない。
でも、
「もしかしたら妊娠初期症状かもしれない」
という期待もある。
その間を行ったり来たりしながら、月経が来ることへの怖さまで重なります。
だからこの時期は、PMSによる身体と気持ちの揺れに、妊活特有の心理的な負担が重なりやすい時期でもあります。
大切なのは、
「私が弱いからこんなに落ち込む」と考えないこと。
そして、
「ストレスがあるから妊娠できない」と自分を責めないこと。
今回は、生理前のつらさと妊活の不安が重なったときに、自分の身体をどう見ればよいのかを整理します。
PMSとは?
PMSは、
月経前症候群(Premenstrual Syndrome)
のことです。
一般的には月経前の数日から2週間ほどの間に、
身体の症状
- 胸の張り・痛み
- お腹の張り
- むくみ
- 頭痛
- だるさ
- 眠気
- 不眠
- 食欲の変化
- 甘いものが欲しくなる
心の症状
- イライラ
- 不安
- 気分の落ち込み
- 涙もろくなる
- 集中しにくい
- 感情が揺れやすい
などが現れ、月経が始まると軽くなっていくことが特徴です。
原因は完全には解明されていませんが、単純に「女性ホルモンが多い・少ない」という問題ではなく、月経周期に伴うホルモン変化への身体や脳の反応が関係していると考えられています。
妊活中は「いつものPMS」が特につらく感じることがあります
PMS自体は妊活をしていない女性にも起こります。
では、なぜ妊活中は特につらく感じるのでしょうか。
理由の一つは、
月経が来ることに大きな意味があるからです。
妊活をしていなければ、
「そろそろ生理かな」
で終わる身体の変化が、
妊活中には、
「この腹痛は生理?」
「胸が張っているから妊娠?」
「イライラするということは、今回も生理が来る?」
というように、すべてが妊娠判定と結びつきやすくなります。
さらに、
「また今周期もだめだったら」
「次は人工授精に進んだ方がいい?」
「年齢を考えると時間がない」
「次の採卵はどうしよう」
など、治療についての不安も重なります。
つまり、
PMSそのものに加えて、妊活だからこそ抱える意味や不安が上乗せされている
ことがあります。
PMSがあるから妊娠しにくい、とは限りません
生理前の症状が強いと、
「ホルモンバランスが悪いから妊娠しないのでは?」
と不安になる方がいます。
しかし、
PMSがあることだけで、不妊の原因と判断することはできません。
また、
「PMSをなくせば妊娠できる」
というものでもありません。
妊娠には、
- 排卵
- 卵管
- 精子
- 受精
- 胚の発育
- 子宮内環境
- 年齢
など、さまざまな要素が関係します。
PMSと妊娠しやすさを単純に結びつけないことが大切です。
ただし、月経不順や強い月経痛、不正出血など別の症状もある場合には、婦人科で確認しておいた方がよいことがあります。
「ストレスがあるから妊娠しない」とも考えないでください
妊活中によく聞く言葉に、
「ストレスを減らした方がいいよ」
があります。
言われた側は、
「こんなに不安になっているから妊娠できないのかな」
と、さらに自分を責めてしまうことがあります。
でも妊娠は、
「リラックスできたら成立する」という単純なものではありません。
妊活そのものがストレスになることもあります。
排卵日に合わせなければいけない。
病院へ行かなければいけない。
仕事を調整する。
結果を待つ。
周囲の妊娠報告を聞く。
こうした負担がある中で、
「ストレスを感じないようにする」
ことまで自分に課す必要はありません。
むしろ、
ストレスがあることを悪いものとして消そうとするより、身体に負担が残りすぎない方法を考える
ことの方が現実的です。
PMSなのか、妊娠初期症状なのか分からない
妊活中の生理前に最も迷いやすいのがここです。
- 胸が張る
- 眠い
- 下腹部が重い
- だるい
- 食欲が変わる
- イライラする
- 頭痛がする
これらはPMSでもみられますし、妊娠初期にもみられることがあります。
さらに不妊治療中の場合には、黄体ホルモン製剤などの影響で似た症状が出る場合もあります。
そのため、
症状だけで妊娠しているかどうかを判断することは難しい
と考えてください。
毎日身体をチェックして、
「昨日より胸の張りが減った」
「今日は腹痛がある」
と答え合わせを続けるほど、不安が大きくなることがあります。
妊娠の確認については、適切な時期の妊娠検査や医療機関での判定を待つことが基本です。
まず「2周期」記録してみる
PMSの状態を確認するときに、とても役立つのが症状記録です。
PMSの診断では、症状が月経周期とどのように関係しているかを確認することが重要で、少なくとも2周期続けて記録することが勧められています。
難しい記録は必要ありません。
たとえば、
| 項目 | 0〜3で記録 |
|---|---|
| イライラ | 0・1・2・3 |
| 落ち込み | 0・1・2・3 |
| 不安 | 0・1・2・3 |
| 胸の張り | 0・1・2・3 |
| むくみ | 0・1・2・3 |
| 頭痛 | 0・1・2・3 |
| 睡眠 | 良い・普通・悪い |
| 月経開始日 | ○月○日 |
くらいで十分です。
これを続けると、
「私は月経5日前から眠れなくなる」
「月経2日前が一番イライラする」
「生理が始まると急に気持ちが楽になる」
など、自分のパターンが見えてきます。
妊活の記録とPMSの記録は少し分けてみる
妊活中の方には、もう一つおすすめがあります。
それは、
「治療の記録」と「身体の記録」を分けること。
たとえば治療記録には、
- 排卵日
- 人工授精日
- 採卵日
- 胚移植日
- 薬
- 判定日
を書きます。
身体の記録には、
- 睡眠
- 胃腸
- 生理痛
- イライラ
- 落ち込み
- 頭痛
- むくみ
を書きます。
すべてを「妊娠した・しなかった」の材料として見ないことがポイントです。
身体の状態を、
結果を予測するためではなく、自分を楽にするために見る
ように変えていきます。
PMSが強いときに、まず見直したい3つ
1.睡眠を削らない
生理前は眠気が強くなる方もいれば、反対に眠りが浅くなる方もいます。
そんな時期に、
「妊活についてもう少し調べよう」
と夜更かしすると、翌日の疲れやイライラがさらに強くなることがあります。
まずは就寝時間より、
起床時間を大きく乱さないこと
から始めてみましょう。
2.食事を我慢しすぎない
PMSでは食欲や食べものの好みが変化することがあります。
特に、
「甘いものが食べたい」
という変化を感じる方もいます。
※生理前や疲れた夜に「甘いものが止まらなくなるときの考え方」は、こちらの記事でもご紹介しています。
妊活中だからといって、
「砂糖を食べたらだめ」
「お菓子を食べたら身体が悪くなる」
と極端に制限すると、それ自体がストレスになることがあります。
食べてしまった自分を責めるのではなく、
食事を抜いていなかったか。
睡眠不足ではなかったか。
疲れがたまっていなかったか。
を一緒に確認してみてください。
3.予定を詰め込みすぎない
自分のPMSが強くなる時期が分かってきたら、その数日だけでも、
- 夜の予定を減らす
- 家事を簡単にする
- 早めに休む
- 大切な話し合いを別日にする
など、負担を少し減らしてみましょう。
PMSを我慢することより、
「この時期は少し余白をつくる」
と考える方が身体にも気持ちにも優しい方法です。
東洋医学ではPMSをどう見る?
東洋医学では、
「PMSだから全員同じ体質」
とは考えません。
同じ生理前の不調でも、現れ方によって身体の状態を分けて考えます。
肝鬱気滞(かんうつきたい)
生理前になると、
- イライラする
- 胸やお腹が張る
- ため息が増える
- 首肩がこる
- 気持ちが不安定になる
という方にみられることがあります。
東洋医学では、「気」の巡りが滞っている状態として考えます。
脾虚(ひきょ)
生理前に、
- 疲れる
- 胃が重い
- 軟便になる
- 甘いものが欲しくなる
- むくむ
という方では、胃腸の働きが弱っている状態を考えることがあります。
血虚(けっきょ)
生理前から、
- 疲れやすい
- 立ちくらみ
- 眠りが浅い
- 肌が乾燥する
- 不安になりやすい
といった状態がある場合、「血」が不足している状態として見ることがあります。
瘀血(おけつ)
生理前から、
- 下腹部痛
- 強い生理痛
- 経血の塊
- 腰の重さ
などがある場合、東洋医学では「血」の巡りの滞りを考えることがあります。
実際には、
肝鬱気滞+脾虚
のように複数が重なっていることも珍しくありません。
だからこそ、
「PMSにはこのツボ」
と一つだけで決めないことが大切です。
鍼灸をPMSに取り入れるメリット
PMSに対する鍼灸については、症状の軽減を示した研究があります。
一方で、研究参加者が少ないことや研究方法の違いなどがあり、現時点ではエビデンスの質は十分高いとはいえません。
そのため、
「鍼灸でPMSが治る」
と断定するものではありません。
それでも、PMSと妊活の負担が重なっている女性にとって、鍼灸を取り入れるメリットがあります。
たとえば、
- 月経前になると首肩が強くこる
- 眠りが浅くなる
- 胃腸の調子が落ちる
- 下腹部や腰が重い
- 冷えとのぼせが混在する
- 身体に力が入り続ける
といった症状を、一つずつではなく身体全体として確認できることです。
PMSに対して食事だけを頑張る。
妊活に対して温活を頑張る。
ストレスに対して自分でリラックスしようと頑張る。
それぞれを別々に頑張って疲れている方もいます。
鍼灸では、
「今はどこに一番負担がかかっているのか」
を整理しながら施術を行うことができます。
これが、セルフケアだけで身体を整えにくくなったときに鍼灸を取り入れる意味の一つです。
蓮心はり灸堂では「PMS」と「妊活」を分けて考えません
妊活中のPMSで大切なのは、
月経前だけを見るのではなく、
今、どのような妊活・不妊治療を行っているのか
まで確認することです。
たとえば、
タイミング法をしている方。
人工授精をしている方。
採卵周期の方。
胚移植を控えている方。
治療を一周期休んでいる方。
同じ「イライラする」「眠れない」という症状でも、身体にかかっている負担は違います。
蓮心はり灸堂では、
- 現在の治療段階
- 月経周期
- 使用している薬
- 睡眠
- 胃腸
- 便通
- 冷えやのぼせ
- 生理痛
- 首肩の緊張
- 疲労
- PMSが出るタイミング
などを確認しながら、その時期に合った施術を考えます。
「PMSだけ診る」
「妊活だけ診る」
のではなく、
妊活を続けている女性の身体全体を見る。
そこを当院では大切にしています。
不妊治療中は、薬を自己判断で変更しないでください
人工授精や体外受精などでホルモン剤を使用している場合、
胸の張り、眠気、むくみ、気分の変化など、PMSと似た症状を感じることがあります。
「薬のせいかもしれない」
と思っても、
自己判断で減量・中止しないでください。
気になる症状がある場合には、
- いつから出たか
- どの程度つらいか
- 生活にどの程度影響しているか
を記録し、通院先へ相談しましょう。
鍼灸院では薬の変更を行うのではなく、治療内容を確認しながら、身体に出ている不調へのサポートを考えていきます。
PMSで婦人科へ相談した方がいい目安
PMSは、
「生理前だから我慢するしかない」
ものではありません。
特に、
- 仕事や家事ができない
- 人間関係に大きな影響が出る
- 毎月強く落ち込む
- 強い不安が続く
- 自分で対処することが難しい
- 月経が始まっても症状が続く
という場合には、一度婦人科などへ相談してください。
PMSには、
- 生活習慣への対応
- 認知行動療法
- SSRIなどの薬
- ホルモン療法
など複数の治療選択肢があります。
なお、妊娠を希望している場合には治療方法の選択が変わることがあります。
「妊活中です」と必ず医師へ伝えたうえで相談しましょう。
また、自分を傷つけたい、消えてしまいたいという気持ちが出るほどつらい場合には、PMSのセルフケアだけで抱えず、早めに医療機関へ相談してください。
今朝からできることは「自分の周期を知ること」
PMSがつらいと、
「どうすれば症状をなくせる?」
と考えてしまいます。
でも最初にすることは、
何かを飲むことでも、
サプリメントを増やすことでも、
温活を始めることでもありません。
まず、
「私はいつからつらくなるのだろう」
と自分の周期を知ることです。
そして、
「この時期は睡眠を優先しよう」
「この日は予定を詰めすぎないようにしよう」
「生理前に落ち込みやすいのは自分のパターンかもしれない」
と分かってくると、
症状に振り回される感覚が少し変わることがあります。
このテーマの続きは、**9月12日21:00公開予定「PMSが強い人の夜のセルフケア」**で、
月経前のイライラ、緊張、眠りにくさが強い夜に、自宅でできることを具体的にご紹介します。
PMSと妊活の両方を抱えている方へ
妊活中は、
「妊娠するための身体づくり」
ばかりに目が向きがちです。
でも、
毎月PMSがつらい。
眠れない。
胃腸が崩れる。
首肩がいつもこわばる。
生理前になると気持ちが大きく揺れる。
そうした身体を我慢したまま治療を続ける必要はありません。
蓮心はり灸堂では、妊活や不妊治療の予定を確認しながら、PMS、月経、睡眠、胃腸、冷え、疲労なども一緒に見ています。
妊娠するためだけではなく、妊活を続けている今の身体を少しでも過ごしやすくする。
それも大切な身体づくりです。
セルフケアを増やしても整わないと感じている方は、一度ご相談ください。
参考・出典
アメリカ産科婦人科学会(ACOG)「月経前障害の管理に関する臨床診療ガイドライン」
英国王立産婦人科医会(RCOG)「月経前症候群(PMS)の管理」
アメリカ生殖医学会(ASRM)「自然妊娠を最適化するための委員会意見」
Cochrane Database of Systematic Reviews「月経前症候群に対する鍼灸・指圧」

