お盆が近づくと、
「今年はいつ帰ってくるの?」
「みんな集まるから顔を見せてね」
と、家族や親戚から連絡が届くことがあります。
普段なら楽しみにできる帰省も、妊活や不妊治療中は、考えただけで気持ちが重くなることがあります。
「子どもはまだ?と聞かれたらどうしよう」
「治療のことをどこまで話せばいい?」
「親戚の赤ちゃんを見て、笑顔でいられる自信がない」
「帰省と通院が重なっている」
「暑い中を移動するだけでも身体がつらい」
そんな気持ちを抱えている方もいらっしゃると思います。
まずお伝えしたいのは、
帰省がつらいと感じることは、家族を大切にしていないという意味ではない
ということです。
会いたくないのではなく、今の自分には受け止めきれない話題や負担がある。
それだけかもしれません。
今回は、帰省するかどうかの考え方から、質問への備え、パートナーとの役割分担、治療中の準備まで、妊活中の心と身体を守るために整理しておきたいことをお伝えします。
お盆の帰省がつらくなる理由
帰省がつらい理由は、人によって異なります。
ただ、妊活中の方からは、次のようなお悩みをよく伺います。
・子どもについて聞かれる
・妊娠や出産の報告を聞くのがつらい
・同年代の親戚と比べられる
・治療状況を詳しく聞かれる
・「考えすぎ」「気楽にすれば」と言われる
・治療のための通院や服薬がある
・移動や長時間の滞在で疲れる
・食事や飲酒を断る理由を聞かれる
・自分だけ話題に入れないと感じる
一つだけなら受け流せても、いくつも重なると心が消耗します。
特に妊活や不妊治療については、結果が自分の努力だけでは決まらないにもかかわらず、
「何かしているの?」
「病院へ行った方がいいんじゃない?」
「早くしないと」
と、簡単に助言されてしまうことがあります。
相手に悪気がないと分かっているからこそ、強く言い返せず、笑って受け流したあとに一人で傷ついてしまうこともあります。
不妊治療のことを話す義務はありません
家族だから、親戚だからといって、
治療内容や検査結果をすべて説明する義務はありません。
どこまで話すかは、ご本人とパートナーが決めてよいことです。
たとえば、
・妊活していること自体を話さない
・病院へ通っていることだけ伝える
・詳しい治療内容は伝えない
・特定の家族にだけ話す
・結果が出るまでは誰にも話さない
どれを選んでも構いません。
治療について話すことで理解や協力を得られる場合もあります。
一方で、話したことで、
「採卵はどうだった?」
「移植はいつ?」
「今度こそ大丈夫?」
と、治療のたびに結果を確認されるようになり、かえって負担が増えることもあります。
伝える前に、
話したあと、自分が少し楽になれそうか
という視点で考えてみてください。
帰省するかどうかを「行く・行かない」だけで考えない
帰省を考えるとき、
「行くか、断るか」
の二択になってしまうことがあります。
でも、その間にはいくつもの選択肢があります。
・日帰りにする
・宿泊日数を減らす
・食事の時間だけ参加する
・親戚が集まる日を避ける
・実家には行くが、大人数の集まりには参加しない
・近くのホテルに泊まる
・自分だけ先に帰る
・パートナーだけ帰省する
・今年は帰省を見送る
「帰省しないと角が立つ」
と思う場合もあるでしょう。
それでも、治療日程や体調、心の状態によっては、いつもと同じ帰省が難しい年もあります。
今年だけ形を変えることは、家族との関係を否定することではありません。
帰省を見送っても「逃げ」ではありません
帰省しないと決めたあと、
「自分だけ避けている」
「大人なのだから我慢すべきだった」
と罪悪感が出てくることがあります。
けれど、無理をして参加し、帰宅後に何日も眠れなくなったり、食欲が落ちたり、治療への気力までなくなったりするのであれば、負担は小さくありません。
今の自分にとって負担が大きい場所から距離を取ることは、
自分を守るための調整
です。
参加しない理由を細かく説明する必要もありません。
「今年は予定が合わなくて」
「体調を考えて、今回は自宅で過ごします」
「今回は短時間だけ顔を出します」
という伝え方でも十分です。
帰省前に「何を聞かれるとつらいか」を考えておく
当日になって突然質問されると、気持ちが大きく揺れやすくなります。
帰省前に、自分がつらいと感じそうな話題を整理してみましょう。
たとえば、
・子どもの予定
・治療状況
・年齢について
・仕事と妊活の両立
・親戚の妊娠や出産
・夫婦どちらに原因があるか
・治療費
・病院や治療方法への意見
などです。
「聞かれたくないこと」を事前にパートナーと共有しておくと、当日の対応を相談しやすくなります。
自分でも気づいていなかった話題に傷つくことはあります。
それでも、
予想できる負担だけでも先に減らしておく
ことはできます。
パートナーと役割分担を決めておく
パートナー側の実家へ帰省する場合、質問への対応をすべて自分が引き受ける必要はありません。
事前に、
「子どものことを聞かれたら、あなたから話題を変えてほしい」
「治療については、詳しく話さないと伝えてほしい」
「つらくなったら早めに帰りたい」
「私が席を外したら、少し一人にしてほしい」
など、具体的に伝えておきましょう。
「助けてほしい」
だけでは、パートナーも何をすればよいか分からないことがあります。
たとえば、
・質問されたらパートナーが先に答える
・治療の詳細は二人とも話さない
・帰る時間をあらかじめ決める
・合図を決めておく
・途中で散歩や買い物に出る
・疲れたら予定を変更する
という形まで決めておくと安心です。
「味方になってほしい」ことを具体的に伝える
パートナーから、
「気にしなければいいよ」
「悪気はないんだから」
と言われて、余計につらくなることがあります。
パートナーは励ましているつもりかもしれません。
でも、今必要なのは正しさの説明ではなく、
「それはつらいよね」
と分かってもらうことかもしれません。
そんなときは、
「親戚を悪く言ってほしいわけではない」
「子どものことを質問されたら、私より先に『今はまだ考えてないよ』と答えてほしい」
「あとで二人になったときに、よく頑張ったねと言ってほしい」
など、してほしいことを具体的に伝えてみましょう。
妊娠報告や赤ちゃんに会うのがつらいとき
親戚の妊娠や出産を喜びたい気持ちはある。
でも、今の自分にはつらい。
その二つの気持ちが同時にあることもあります。
祝福できない人になったわけではありません。
自分が強く望んでいることだからこそ、目の前にすると胸が痛むことがあります。
その場で気持ちが苦しくなったときは、
・飲み物を取りに行く
・お手洗いへ行く
・外の空気を吸う
・別の部屋で少し休む
・予定より早く帰る
という選択をしても構いません。
最後まで笑顔で座り続けることだけが、相手を大切にする方法ではありません。
子どもと遊ぶ役を無理に引き受けなくてもいい
帰省すると、
「子どもが好きでしょう」
「遊んであげて」
と、自然に子どもの相手を任されることがあります。
普段なら楽しく過ごせても、治療結果を聞いた直後や判定日前などは、気持ちが追いつかないこともあります。
そんなときは、
「今日は少し疲れているから、ゆっくりさせてね」
と断っても大丈夫です。
子どもを嫌っているわけではありません。
今の自分に必要な距離を取っているだけです。
治療日程と帰省が重なっている場合
お盆の時期と、
・採卵周期
・胚移植前後
・判定日
・ホルモン補充
・注射や腟剤の使用
・診察予定
などが重なることがあります。
帰省の予定を優先するあまり、処方薬の使用時間や診察日を自己判断で変えないようにしてください。
まずは通院先へ、
・帰省しても治療上問題がないか
・診察日の変更が可能か
・薬を使用する時間に幅があるか
・薬の保管方法
・移動中の持ち運び方
・体調変化があった場合の連絡先
を確認しておくと安心です。
薬によって、常温保存できるもの、冷所保存が必要なもの、光や高温を避ける必要があるものなどが異なります。
自己判断で冷凍したり、保冷バッグの中で保冷剤に直接触れさせたりせず、必ず薬ごとの指示を確認してください。
真夏の車内は高温になりやすいため、薬を車内へ長時間置いたままにしないことも大切です。
移動による身体の負担も考えておきましょう
帰省は家族との会話だけでなく、移動そのものでも疲れます。
・渋滞した車内で長時間座る
・混雑した電車で立ち続ける
・暑い中で荷物を持って歩く
・睡眠時間が短くなる
・食事の時間が乱れる
・普段と違う寝具で眠れない
といった負担が重なることがあります。
妊活中だから移動してはいけない、ということではありません。
ただ、
いつもより疲れる可能性を見込んで予定を組む
ことは大切です。
朝早く出て夜遅く帰る予定を詰め込みすぎず、途中で休憩できる時間を取っておきましょう。
飲酒や食事を断る理由を詳しく話さなくてもいい
治療中は、飲酒を控えている方や、薬の関係で食事の時間を調整している方もいます。
帰省先で、
「少しくらい飲めるでしょう」
「妊娠したの?」
と聞かれることが心配な方もいるでしょう。
説明したくない場合は、
「今日は体調を考えてやめておきます」
「最近あまり飲まないようにしています」
「薬を使っているので控えています」
など、短く答えるだけでも構いません。
相手を納得させるまで説明する必要はありません。
逃げられる場所と帰る時間を決めておく
帰省前に、心がつらくなったときの「退避場所」を決めておくのもおすすめです。
・自分の部屋
・近所のコンビニ
・散歩できる道
・車の中
・宿泊先
・静かに座れるカフェ
どこでも構いません。
また、
「夕食が終わったら帰る」
「2時間だけ滞在する」
など、終了時間を決めておくと、先が見えない負担を減らせます。
調子がよければ延長することはできます。
最初から長時間いる約束をして、つらくなっても帰れなくなるより、短めに設定しておく方が安心です。
帰省の前後に予定を詰めすぎない
帰省そのものに気を取られますが、実際には帰宅後に疲れが強く出る方もいます。
家族の前では気を張って過ごし、帰宅した途端に、
・頭痛がする
・食欲が落ちる
・何もしたくなくなる
・涙が出る
・眠れなくなる
・胃腸の調子が乱れる
ということもあります。
可能であれば、帰省の翌日は予定を少なくしておきましょう。
洗濯や片づけも、すべてその日のうちに終わらせなくて構いません。
帰省から戻ったあとに休む時間まで含めて、帰省の予定
と考えてみてください。
東洋医学では、気疲れが身体に表れる状態をどう考える?
東洋医学では、緊張や我慢が続き、身体まで張りつめている状態を、
肝鬱気滞(かんうつきたい)=気の巡りが滞り、緊張や詰まり感が出やすい状態
として捉えることがあります。
肝鬱気滞では、
・ため息が増える
・胸や喉がつかえる
・肩や首に力が入る
・お腹が張る
・月経前の不調が強くなる
・イライラと落ち込みを繰り返す
などがみられることがあります。
また、気を遣い続けて食欲が落ちたり、帰宅後にぐったりしたりする状態は、
脾虚(ひきょ)=胃腸の働きや身体を支える力が弱っている状態
という視点で見ることもあります。
これは、
「考え方を変えれば治る」
という意味ではありません。
東洋医学では、心の負担が睡眠、胃腸、肩の緊張など、身体にどう表れているかも含めて状態を見ていきます。
帰省当日にできる3つのセルフケア
帰省先で特別な健康法を行う必要はありません。
心と身体の負担を少し減らすために、次の3つを意識してみましょう。
1.一人になれる時間をつくる
お手洗いへ行く。
少し散歩する。
買い物へ出る。
数分でも一人になる時間があると、張りつめていた呼吸を戻しやすくなります。
2.息を長めに吐く
緊張していると、呼吸が浅くなりやすくなります。
無理に大きく吸おうとせず、今ある息をゆっくり吐いてみましょう。
奥歯を噛みしめていたら少し緩め、肩を下ろします。
3.全部の会話に答えようとしない
質問されたら、正直に詳しく答えなければならないわけではありません。
短く答える。
話題を変える。
その場を離れる。
パートナーに任せる。
答えないことも選択肢です。
帰省後に気持ちが落ち込んでも、自分を責めないで
帰省中は何とか過ごせたのに、帰宅したあとで涙が出ることがあります。
「あの言葉に傷ついた」
「もっと上手に答えればよかった」
「笑顔でいられなかった」
と振り返ってしまうかもしれません。
でも、その場で言い返せなかったからといって弱いわけではありません。
家族との関係を壊したくない。
空気を悪くしたくない。
いろいろなことを考えながら、その時間を過ごしていたのだと思います。
帰宅後は、反省会を始める前に、まず身体を休めてください。
食べられるものを食べる。
着替える。
入浴が負担なら、短いシャワーで済ませる。
スマートフォンを置く。
眠れなくても横になる。
それくらいで十分です。
心のつらさが続いている場合は、相談しても大丈夫です
不妊や不妊治療は、治療そのものに加えて、家族関係や周囲からの期待、社会的な孤立感など、心理的・社会的な負担を伴うことがあります。
「帰省が嫌だった」だけと小さく考えず、
・何日も眠れない
・食事がとれない
・涙が止まらない
・日常生活や仕事に大きく影響している
・強い不安や落ち込みが続いている
という場合は、主治医や医療機関の相談窓口、心理職などへ相談することも選択肢です。
心の負担も、治療を続けていくうえで大切に扱ってよいものです。
帰省することより、自分を守ることを優先してもいい
お盆は家族が集まる大切な機会です。
だからこそ、
「行かなければ」
「笑顔でいなければ」
「心配をかけないようにしなければ」
と頑張りすぎてしまうことがあります。
でも、
今年の自分に合った参加の仕方を選んでも大丈夫です。
短時間だけ参加する。
親戚が集まる時間を避ける。
パートナーに質問への対応を任せる。
今年は帰省しない。
どの選択も、家族への愛情の大きさを決めるものではありません。
妊活や不妊治療について、誰に、どこまで話すのかも自分たちで決めてよいことです。
帰省するかどうかを考えるときは、
「周りがどう思うか」
だけでなく、
「帰省したあと、自分の心と身体にどのくらい負担が残りそうか」
という視点も大切にしてください。
聞かれたときの言葉を、あらかじめ用意しておきたい方へ
子どものことや治療について聞かれたとき、突然では言葉が出てこないことがあります。
はっきり断りたいとき。
やわらかく話題を変えたいとき。
パートナーから伝えてほしいとき。
状況によって、使いやすい言葉は異なります。
このテーマの続きは、8月9日の
「帰省前に心を守るひと言テンプレ」
で、質問への返し方を具体的な言葉にしてご紹介します。
すべてをそのまま使う必要はありません。
自分と家族の関係に合う言葉を見つけるための参考にしてください。
【参考・出典】
世界保健機関(WHO)「不妊症」
世界保健機関(WHO)「不妊とともに生きる」
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)「不妊・生殖補助医療における日常的な心理社会的ケア」
Human Reproduction「不妊・生殖補助医療における日常的な心理社会的ケアのガイドライン」
帰省や治療で張りつめた心と身体を整えたい方へ
帰省のことを考えるだけで眠れない。
家族の前では平気なふりをしてしまう。
帰宅すると、どっと疲れが出る。
そんな状態が続くと、睡眠や胃腸の調子、身体の緊張にも影響することがあります。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、妊活や不妊治療の経過を伺いながら、
・睡眠
・疲労
・食欲や胃腸の状態
・冷えやほてり
・肩や首の緊張
・月経の状態
・日々の生活リズム
・治療に伴う心身の負担
などを一緒に整理しています。
帰省を楽しめない自分を変えるためではありません。
頑張り続けている身体を少し休ませ、今の自分に合った整え方を見つけるためのサポートです。
「帰省や家族との会話も含めて、最近ずっと気が休まらない」
「うまく説明できないけれど、今の状態を一度整理したい」
という方は、LINEからお気軽にご相談ください。

