8月5日の
「お盆の帰省がつらい人へ」
では、帰省する・しないだけの二択にせず、滞在時間や参加する集まりを調整すること、パートナーと役割を決めておくことなどをお伝えしました。
それでも、実際に帰省の日が近づいてくると、
「子どもはまだ?」
「そろそろ考えているんでしょう?」
「病院には行っているの?」
と聞かれたとき、何と答えればよいのか悩むことがあります。
相手に悪気がないことはわかっている。
心配してくれているのかもしれない。
でも、聞かれるたびに苦しくなる。
そんなこともあります。
妊活や不妊治療は、とても個人的なことです。
聞かれたからといって、すべて説明する必要はありません。
今夜は、帰省中に心を削られすぎないための「ひと言」を、場面別にまとめてみます。
答えたくないことには、答えなくても大丈夫
まず一番大切なことです。
妊活や不妊治療について、
・どこまで話すか
・誰に話すか
・いつ話すか
・まったく話さないか
を決めるのは、自分たちです。
家族だから。
親だから。
親戚だから。
仲がよいから。
という理由だけで、治療内容まで説明しなければならないわけではありません。
WHOも、不妊には社会的な偏見や心理的ストレス、不安などが伴うことがあり、本人や夫婦の心の健康へ影響する問題として捉えています。
だからこそ、
自分の心を守るために話さないことも、一つの選択です。
「子どもはまだ?」と聞かれたとき
お盆やお正月の集まりで、特に多い質問かもしれません。
突然聞かれると、頭が真っ白になり、
「まだです」
と答えたあとに、さらに質問が続いてしまうことがあります。
詳しく話したくないときは、短く終わらせる言葉を準備しておきましょう。
やわらかく流したいとき
「そのあたりは、二人でゆっくり考えています」
「また何かあったら、こちらから話しますね」
「今はまだ、特にお話しできることはないんです」
それ以上聞かれたくないとき
「ごめんなさい。この話は今あまりしたくなくて」
「気にかけてくれてありがとう。でも、この話はそっとしておいてもらえるとうれしいです」
「今は二人のこととして考えているので、見守ってもらえると助かります」
長く説明する必要はありません。
短く答えて、そこで会話を終えてよいのです。
「病院には行っているの?」と聞かれたとき
妊活をしていることを家族が知っている場合、
「病院は?」
「治療は進んでいるの?」
「何をしているの?」
と詳しく聞かれることがあります。
でも、採卵や胚移植、検査結果まで説明したくないこともあります。
治療内容を詳しく話したくないとき
「必要なことは病院と相談しながら進めています」
「今は先生と相談しながら進めているので大丈夫です」
「治療のことは、今はあまり詳しく話さないようにしているんです」
心配してくれていることには応えたいとき
「気にかけてくれてありがとう。必要なときはこちらから話すね」
この、
「ありがとう」+「こちらから話す」
という組み合わせは、相手を強く拒絶せずに会話へ境界線をつくりやすい言い方です。
「もっと早く病院に行けばよかったのに」と言われたら
妊活について話すと、
「もっと早く始めればよかったのに」
「仕事ばかりしていたからじゃない?」
「若いうちに産んでおけばよかったのに」
などと言われることがあります。
悪気がなくても、治療中の方には非常につらい言葉です。
その場で医学的な説明をして、相手を納得させる必要はありません。
会話を止めたいとき
「今は過去のことより、これからのことを考えるようにしています」
「その話をすると少しつらくなるので、今日は別の話をしたいです」
「いろいろ考えて進めているので、大丈夫です」
過去を説明したり、弁解したりしなくて構いません。
自分の人生を証明するための会話にしなくてよいのです。
「身体を冷やしているからじゃない?」と言われたとき
妊活中は、
「冷たいものを飲んでいるから」
「薄着だから」
「運動不足だから」
「仕事をしすぎているから」
など、生活習慣について助言されることがあります。
心配から言ってくれていても、
「私の生活が悪いから妊娠しないと言われている」
ように感じてしまうこともあります。
やわらかく終えたいとき
「体調管理も含めて、今は専門の先生と相談しています」
「ありがとう。自分に合う範囲で気をつけています」
「いろいろな原因があるみたいなので、病院と相談しながら進めています」
不妊には男性側、女性側、双方に関係する要因や、検査をしても明確な原因を特定できない場合があります。
誰かの経験や一つの生活習慣だけで説明できるものではありません。
その場で反論しなくても、
「私は私の方法で進めている」
と心の中に境界線を引いておきましょう。
「○○さんはこれで妊娠したよ」と言われたら
「知り合いは漢方を飲んで妊娠した」
「このサプリがいいらしいよ」
「一度治療を休んだら自然妊娠した人がいる」
こうした話を聞くこともあります。
善意から情報を教えてくれているのだと思います。
でも、治療中にはその情報が重荷になることがあります。
おすすめを増やしたくないとき
「教えてくれてありがとう。今は主治医と決めた治療を優先してみます」
「今いろいろ増やしすぎないようにしているので、必要になったら調べてみますね」
「ありがとう。今は治療を整理しているところなんです」
紹介されたものを、
その場で試す約束をする必要はありません。
「考えすぎじゃない?」と言われたとき
妊活のつらさを話したとき、
「考えすぎだよ」
「気にしない方ができるよ」
「ストレスが一番よくないんじゃない?」
と言われることがあります。
励まそうとしている言葉でも、
「不安になっている自分が悪い」
と感じることがあります。
気持ちを否定されたくないとき
「考えないようにするのが難しい時期なんです」
「今は答えより、少し話を聞いてもらえるとうれしいです」
「心配になる日もあるけれど、自分なりに過ごしています」
不安にならないよう努力する必要はありません。
不妊治療には、検査、通院、費用、結果を待つ時間など、さまざまな心理的負担があります。
不安になることそのものを、さらに責めないでください。
妊娠報告を聞いて、すぐに笑えないとき
帰省すると、
親戚の妊娠報告。
赤ちゃんのお披露目。
子どもの話。
が重なることがあります。
「おめでとう」
と言いたい気持ちはある。
でも、胸が苦しくなる。
そんなこともあります。
二つの気持ちは同時にあって構いません。
誰かの妊娠を祝いたい気持ちと、自分がつらい気持ちは両立します。
その場にいることが苦しいときは、
「ちょっと飲み物取ってくるね」
「少し外の空気を吸ってきます」
「ちょっと疲れたので、少し休んできます」
と、その場を離れて構いません。
感情が落ち着くまで、数分一人になるだけでも違います。
子どもと遊ぶのがつらいときもあります
親戚から、
「子ども好きでしょう?」
「一緒に遊んであげて」
と言われることもあるかもしれません。
普段なら平気でも、採卵後や判定日前、治療がうまくいかなかった直後などはつらく感じることがあります。
そんなときも、
「今日はちょっと疲れているから、ここで見ているね」
「少し休ませてもらいます」
で十分です。
子どもを避けたいわけではなくても、
今は自分の心を守るために距離が必要な日
があります。
「いつまで治療するの?」と聞かれたとき
治療期間について聞かれると、
自分自身もわからないことを答えなければならないように感じます。
「あと何回?」
「いつまで続けるの?」
「そこまでして大丈夫?」
という質問に、答えが決まっていなくても構いません。
決めていないことを聞かれたとき
「その都度、先生と相談しながら考えています」
「先のことは、まだ決めていません」
「今できることを一つずつ進めています」
人生の大きな判断を、親戚の集まりの席で決める必要はありません。
「夫婦のどちらに原因があるの?」と聞かれたとき
これは、特に答えなくてよい質問です。
不妊の原因を、
「夫側」
「妻側」
と家族へ説明する義務はありません。
また、不妊には男女双方の要因が関係する場合や、明確な原因がわからない場合もあります。
境界線をはっきりさせたいとき
「検査結果は二人のプライベートなことなので、詳しくは話していません」
「原因探しより、二人で治療していくことを大切にしています」
「その部分は二人の間だけにしておこうと思っています」
誰のせいなのかを決める会話に、参加しなくても大丈夫です。
パートナーにお願いしておきたい「助け舟」
帰省前に、パートナーと一つだけ決めておくと安心なのが、
「この話題になったら助けてほしい」
という合図です。
たとえば、
「子どもの話になったら、別の話題に変えてほしい」
「治療のことを聞かれたら、あなたから『二人で考えているから大丈夫』と言ってほしい」
「私が席を外したら、追いかけず少し一人にしてほしい」
などです。
「守ってほしい」
だけでは、パートナーもどう動けばよいかわからないことがあります。
してほしい行動まで具体的に伝えてみましょう。
パートナーから言ってもらえると助かるひと言
自分の家族には、自分から言う方が伝わりやすいことがあります。
パートナー側の実家へ帰省する場合は、その家族との間にパートナーが入ることも大切です。
たとえば、
「この話は二人で考えているから、そっとしておいてほしい」
「治療のことは、話せるときにこちらから話すよ」
「今日は治療の話はなしにしよう」
「いろいろ考えてやっているから、見守ってもらえると助かるよ」
という短い言葉でも構いません。
治療を受けている本人が、毎回一人で説明役をしなくてもよいのです。
断ったあとに罪悪感を持たなくて大丈夫
「その話はしたくない」
と言ったあと、
「冷たかったかな」
「せっかく心配してくれているのに」
と後悔することがあります。
でも、
相手への配慮と、自分の境界線を守ることは両立します。
強く言いたくないのであれば、
「気にかけてくれてありがとう」
を先につけても構いません。
それでも質問が続く場合は、
「ごめんなさい、この話はここまでにさせてください」
と伝えてよいのです。
同じ質問に何度も答え続ける必要はありません。
「うまく言えなかった」と帰宅後に反省しない
実際の場面では、準備していた言葉が出てこないことがあります。
笑ってごまかしてしまった。
思わず全部話してしまった。
少し強い口調になってしまった。
そのあと、
「もっと上手に対応すればよかった」
と思うかもしれません。
でも、突然触れられたくないことを聞かれれば、思ったとおりに返せなくて当然です。
このテンプレートは、
正しく返答するための台本ではなく、自分を守るための選択肢
です。
一つも使えなかった日があっても構いません。
東洋医学では、気を使い続けて疲れる状態をどう見る?
東洋医学では、帰省のように人へ気を使い続ける状況も、心と身体の両方から見ていきます。
言いたいことを飲み込み、
・胸や喉が詰まる
・ため息が増える
・肩や首へ力が入る
・イライラする
・眠りにくい
という状態では、
肝鬱気滞(かんうつきたい)=緊張や我慢などで、気の巡りが滞っている状態
という見方をすることがあります。
また、気を使い続けたあとに、
・どっと疲れる
・食欲が落ちる
・胃が重い
・軟便になる
・何もしたくなくなる
という場合には、
脾虚(ひきょ)=胃腸の働きや身体を支える力が弱っている状態
として捉えることがあります。
だからといって、
「帰省すると肝鬱になる」
という意味ではありません。
人との関わりで緊張したあと、身体にどんな変化が出ているのかを見るための東洋医学的な視点です。
帰省中に心を守る3つのルールを決めておく
たくさん準備しなくて大丈夫です。
帰省前に、次の3つだけ決めてみてください。
1.話さないことを一つ決める
たとえば、
「胚移植の日程は話さない」
「検査結果までは話さない」
と決めておきます。
すべての質問へ、その場で判断しなくて済みます。
2.逃げる言葉を一つ決める
「ちょっと飲み物取ってくるね」
でも、
「少し休んできます」
でも構いません。
その場を離れる理由を一つ用意しておきます。
3.パートナーへの合図を決める
目を合わせる。
LINEを送る。
特定の言葉を使う。
何でも構いません。
「今、助けてほしい」
が伝わる方法を決めておきましょう。
一番使いやすいひと言を一つ選ぶなら
いろいろな場面に使いやすいのは、
「気にかけてくれてありがとう。何かあったら、こちらから話すね」
です。
詳しいことを話さず、
相手の気持ちは受け取り、
会話を終えることができます。
それでも質問が続くなら、
「今はこの話をあまりしたくないんです」
と、もう一段はっきり伝えて構いません。
やさしく伝えることと、曖昧にし続けることは同じではありません。
帰省は「上手に乗り切る試験」ではありません
親戚に何を言われても笑顔で答えられた。
妊娠報告も笑って聞けた。
子どもとも楽しく遊べた。
そんな一日でなければいけないわけではありません。
途中で席を外した。
早めに帰った。
返事をしなかった。
帰宅してから泣いた。
それでも構いません。
妊活や不妊治療を続けながら、人との関係まで完璧に保とうとすると、心が疲れてしまいます。
帰省中に一番守りたいのは、「感じのよい自分」ではなく、今治療を続けている自分自身です。
話したくないことは話さない。
疲れたら休む。
つらければ離れる。
パートナーへ助けを求める。
今年のお盆は、その選択肢を持って帰省してみてください。
【参考・出典】
世界保健機関(WHO)「不妊症」
世界保健機関(WHO)「不妊とともに生きる」
世界保健機関(WHO)「不妊の予防・診断・治療に関するガイドライン」
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)「不妊・生殖補助医療における日常的な心理社会的ケア」
Human Reproduction「不妊・生殖補助医療における日常的な心理社会的ケアのガイドライン」
帰省や妊活で張りつめた心と身体を休ませたい方へ
家族や親戚の前では笑っていても、
帰宅するとどっと疲れる。
夜になって言われた言葉を思い出す。
眠ろうとしても頭から離れない。
そんなことがあります。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、
・睡眠
・胃腸の状態
・身体の緊張
・冷えやほてり
・疲労
・月経の状態
・妊活や治療に伴う心身の負担
・日々の生活リズム
などを確認しながら、その方に合った身体づくりを考えています。
「気にしないようにしましょう」と気持ちだけを変えようとするのではなく、
緊張が続いたあとに、身体も少し休ませられる状態をつくること
を大切にしています。
「帰省や家族との会話で疲れてしまった」
「治療中の不安も含めて、今の身体の状態を相談したい」
という方は、LINEからお気軽にご相談ください。

