周りは次々に前へ進んでいるように見えるのに、
自分だけ置いていかれるような気がする。
そんな朝が、妊活中にはあります。
SNSを開いただけで苦しくなる。
誰かの何気ない報告に、胸がぎゅっと縮む。
本当は比べたくないのに、比べてしまう自分にも傷つく。
まず最初に、いちばん大切なことをお伝えします。
妊活中に比較で苦しくなるのは、あなたが弱いからではありません。
それだけ大切に願ってきたものがあるからこそ、周りの出来事が深く心に触れてしまうのです。
だから今日は、無理に前向きになるより先に、心の置き場を整えることを大切にしてほしいと思います。
今日は新月です。でも、新月を「結果が変わる日」と思い詰めなくて大丈夫です
国立天文台では、2026年5月17日の朔(新月)は5時01分とされています。
新月は、空の上では月が見えにくくなる節目であり、区切りや切り替えの象徴として受け止める方も多いと思います。
ただし、ここはとても大切なところです。
新月そのものが妊娠率を上げる、あるいは新月だから妊活が進みやすい、とまでは医学的には言えません。
体外受精を受けた方を対象にした研究では、月の満ち欠けと妊娠率に明確な関係はみられなかったと報告されています。
だからこそ新月は、「結果を変える日」というより、自分を責める流れをいったん止める日として使うほうが、今の心にはやさしいことがあります。
妊活中に比較で苦しくなるのは、珍しいことではありません
妊活は、身体のことだけではありません。
待つこと、落ち込むこと、期待し直すこと、また傷つくこと。
そうしたことが何度も重なるため、心の負担もとても大きくなりやすいものです。
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)のガイドラインでは、不妊やその治療の過程で多くの方が感情的な苦痛を経験すること、さらに女性は社会的な比較や対人関係の中でのストレスを感じやすいことが示されています。
また、「妊婦さんや赤ちゃんのいる場を避けたくなる」といった対処が、つらさをさらに強めることもあるとされています。
つまり、比較で苦しくなるのは、珍しい反応でも、心が狭い証拠でもありません。
比較でつらい日に、まず知っておいてほしいこと
妊活中の比較は、頭でやめようとしても、なかなか止まりません。
「比べても意味がない」
「人は人、自分は自分」
それが正しいと分かっていても、心はもっと複雑です。
だからこそ大切なのは、比較しないことを目標にするより、
比較して苦しくなった自分を、それ以上傷つけないことです。
英国ヒト受精・胚研究機構(HFEA)は、不妊治療の過程は感情のジェットコースターのように感じられることがあると案内しています。
また、ストレスそのものが治療結果を直接決めるという決定的な証拠はないとも説明しています。
つまり、今日比較で苦しくなったこと、それ自体で未来が決まってしまうわけではありません。
東洋医学では、比較で苦しくなる時は「肝」が張りつめやすいと考えます
東洋医学や中医学では、感情のゆらぎや我慢が続くと、気の巡りが滞りやすくなると考えます。
古典の『黄帝内経』でも、感情と五臓の関わりは大切にされていて、とくに春から初夏にかけては、気の巡りに関わる「肝」が乱れやすい時期とされます。
この時期に比較や焦りが重なると、
- ため息が増える
- 胸や脇がつかえる感じがする
- 首肩がこる
- 目が疲れやすい
- 眠りが浅くなる
- 生理前にイライラしやすい
といった形で出やすくなります。
東洋医学では、こうした状態を**肝鬱気滞(かんうつきたい)**とみることがあります。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、簡単にいうと、
気持ちを飲み込みすぎて、心も体も流れにくくなっている状態
です。
また、比較で疲れた気持ちが長引いて、食欲の乱れやだるさまで重なってくると、胃腸を支える「脾」まで弱り、**肝脾不和(かんぴふわ)**のように、心と体の両方が整いにくくなることもあります。
立夏を過ぎた今の時期は、「火」の気が強まりやすい頃です
2026年は5月5日に立夏を迎えており、今は春から初夏へ移る時期です。
五行学説では、初夏は「火」の気が少しずつ強まりやすい頃と考えます。
気持ちが上ずりやすい一方で、疲れが表に出やすく、心がざわつきやすい時期でもあります。
こんな時は、
「気持ちを何とかしなきゃ」
と頭だけで頑張るより、
- 温かいものをとる
- 目と首肩を休ませる
- 胃腸を疲れさせすぎない
- 情報を入れすぎない
といった、体から整えるほうがラクになることがあります。
食養生としては、
たけのこ、そら豆、アスパラガス、初鰹、金目鯛など、今の時期の旬のものを、無理のない範囲で取り入れるのもおすすめです。
派手な食事管理より、疲れた心と胃腸にやさしいものを少し入れることのほうが、この時期は大切です。
不妊・妊活における鍼灸の役割
鍼灸は、比較によるつらさや不安を一度で消してしまうものではありません。
また、排卵の有無、卵管の通り道、精液所見、体外受精など、妊活に必要な検査や治療の代わりになるものでもありません。
必要な確認や治療は、クリニックや病院など、専門の医療機関で行うことが大切です。
その一方で、妊活中に重なりやすい
- 冷え
- 首肩のこわばり
- 眠りの浅さ
- 気持ちの張りつめ
- 月経前後の不調
- 自律神経の乱れを感じる状態
などを、東洋医学の視点から整える支えにはなれます。
HFEAでは、鍼灸を含む補完療法はリラクゼーションやウェルビーイングのために取り入れられることがある一方、妊娠率を高める明確な根拠は十分ではないと案内しています。
当院でも、鍼灸を「結果を約束する方法」としてではなく、妊活中の心と体の土台を整える補助的な支えとして位置づけています。
今日からできる3つ
1.今日は「比べる情報」から少し離れる
比較で苦しくなっている時に、さらにSNSや検索を見続けると、心は休まりにくくなります。
今日は、
- SNSを閉じる
- 広告を見ない
- 妊活アカウントを追いすぎない
という選び方をして大丈夫です。
見ないことは逃げではなく、心を守る行動です。
2.気持ちより先に、体を落ち着かせる
比較で苦しくなる時は、心だけでなく体も張りつめています。
そんな時は、
- 白湯を飲む
- 温かい汁物をとる
- 首肩をゆるめる
- お腹と足首を冷やさない
といったことを、ひとつだけでいいのでやってみてください。
気持ちを説得するより、体を少し落ち着かせるほうが、心が静かになりやすいことがあります。
3.「比較してしまった」と認めるだけで十分です
今朝は、無理に前向きにならなくて大丈夫です。
「また比べてしまった」
「苦しかった」
それを、そのまま認めてあげてください。
大切なのは、比較しない完璧な自分になることではありません。
比較して苦しかった自分を、それ以上責めないことです。
自分でやさしく触れやすいツボ
比較で心がざわつく時、新月の朝に使いやすいツボがあります。
太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前。
ため息が増える時、イライラしやすい時、気の巡りを整えたい時に使いやすいツボです。
神門(しんもん)
手首の小指側、手のひら側のしわのあたり。
胸のざわつきがある時、気持ちが落ち着かない時、眠りに入りにくい時に使いやすいツボです。
どちらも、強く押し込む必要はありません。
息を吐きながら、少し気持ちいいくらいでやさしく触れてみてください。
妊娠の可能性がある時や体調に不安がある時は、無理をせずご相談ください。
当院の考え方
当院では、妊活中の「比較で苦しい」という気持ちを軽く見ません。
でも、ただ「気にしないでください」とも言いません。
比較で苦しくなる時には、
不安、焦り、孤独感、眠りの浅さ、冷え、首肩のこわばり、月経前後の不調など、いくつもの要素が重なっていることがあります。
だからこそ当院では、必要な検査や治療はクリニックや病院など、専門の医療機関で大切に進めていただきながら、
その土台として、
- 冷え
- 睡眠
- 自律神経の乱れを感じる状態
- 気持ちの張りつめ
- 月経前後の不調
- 体質や生活習慣
などを、東洋医学の視点から丁寧にみていくことを大切にしています。
比較で苦しくなるのは、あなたの心が弱いからではありません。
それだけ真剣に向き合ってきた証でもあります。
新月の今日は、
何かを足す日ではなく、
自分を責める流れをいったん止める日にしてみてください。
「また比べてしまった」
そのあとに、
「でも、それだけ頑張ってきたんだよね」
とひとつ言葉を添えられたら、それだけでも十分です。
ひとりで抱えず、まずは今の気持ちと体の状態を一緒に整理するところから始めていきましょう。
この記事を書いた人
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂
院長 菅原 裕万
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
奈良・上牧町で、妊活中の方や女性のお身体のお悩みに向き合い、マタニティケア・産後ケアまで、ライフステージに合わせた鍼灸施術を行っています。
病院での検査や治療を大切にしながら、東洋医学の視点も取り入れ、冷え・睡眠・自律神経・体質・生活習慣などを丁寧に確認し、その方に合った身体づくりを一緒に考えることを大切にしています。
ご自身に合ったより詳しいセルフケアを知りたい方、身体の土台作りから見直したい方は、当院にご相談ください。

