母の日がつらかったあなたへ

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母の日の広告を見るのがつらかった。
お祝いの投稿に、胸がぎゅっと苦しくなった。
終わったあとも、何となく気持ちが沈んだまま戻らない。

そんな方は、少なくないと思います。

妊活中は、普段なら流せる言葉や風景が、思っている以上に深く心に触れることがあります。
特に母の日のように、「母であること」が前面に出る日は、気持ちが揺れやすくなる方も少なくありません。

まず最初に、いちばんお伝えしたいことがあります。
母の日がつらかったとしても、あなたが冷たい人だからではありません。
それだけ大切に願ってきたことがあるからこそ、痛みとして響いたのだと思います。
そのつらさを、まず責めないであげてください。

目次

母の日がつらくなるのは、自然な反応です

妊活中は、ただ知識を集めているだけではありません。
期待して、落ち込んで、立て直して、また頑張って。
その繰り返しの中にいます。

だからこそ、母の日のようなイベントは、
「みんな普通に前へ進んでいるのに、自分だけ取り残されている気がする」
「喜ばしいはずなのに、素直に見られない自分が嫌になる」
そんな気持ちを呼び起こしやすくなります。

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の心理社会的ケアのガイドラインでは、不妊やその治療の過程で多くの方が感情的な苦痛を経験すること、そして治療の負担感のために途中でやめてしまう方もいることが示されています。
つまり、妊活で心がしんどくなるのは、特別に弱いからではなく、それだけ大きな負担を抱えやすい状況だからです。

「こんなことで傷つくなんて」と思わなくて大丈夫です

母の日がつらかったあとに、さらに苦しくなるのが、
「こんなことで傷つく自分はだめだ」
「人のお祝いを素直に見られないなんて最低だ」
と、自分を責めてしまうことです。

でも、つらいのは、誰かの幸せを願えないからではありません。
自分の中にある願いが、それだけ切実だからです。

心は、いつも理想どおりには動けません。
頭では「比べても仕方ない」と分かっていても、気持ちはそう簡単には追いつかないことがあります。
それは、あなたの未熟さではなく、人としてとても自然な反応です。

ストレスを感じたからといって、それだけで結果が決まるわけではありません

妊活中は、落ち込んだり泣いたりすると、
「こんなにストレスをためたら妊娠しにくくなるのでは」
と不安になる方もいらっしゃいます。

ここも、とても大切なところです。
英国ヒト受精・胚研究機構(HFEA)は、妊活や不妊治療の過程がストレスフルであることは確かでも、ストレスが治療結果を直接左右するという決定的な根拠はないと案内しています。
つまり、母の日につらくなったこと、気持ちが乱れたこと、それ自体で結果が決まってしまうわけではありません。

だからこそ、
「落ち込んだ私はだめだ」
ではなく、
「今は心が少し傷ついているんだな」
と見てあげることのほうが大切です。

妊活中のつらさは、心だけの問題ではありません

気持ちが沈むと、つい精神面だけの問題のように感じてしまうことがあります。
けれど実際には、妊活中のつらさは、心と体の両方にあらわれやすいものです。

たとえば、

・眠りが浅くなる
・食欲が乱れる
・甘いものに偏りやすい
・冷えが強くなる
・首肩がこわばる
・ため息が増える
・月経前の不調が強く感じられる

このような変化が出ることがあります。

米国疾病対策センター(CDC)は、不妊やその治療が心理的ストレス、不安、抑うつにつながることがあるとしています。
また、妊活中の苦しさは、人に見えにくいぶん、ひとりで抱え込みやすいという難しさもあります。

東洋医学では、こうしたつらさを「気の巡り」の乱れとしてみることがあります

東洋医学や中医学では、強い感情の揺れや我慢が続くと、気の巡りが滞りやすくなると考えます。
古典でも、感情と気血の巡りの関係は大切に扱われてきました。

特に春から初夏にかけては、「肝」の働きが乱れやすい時期です。
肝は、気の巡り、感情、目、筋肉とも関わると考えられているため、この時期に心を張りつめ続けると、

・ため息が増える
・胸や脇が張る
・イライラしやすい
・目が疲れやすい
・首肩がこる
・眠りが浅い
・生理前の不調が強くなる

といった形であらわれやすくなります。

このような状態を、東洋医学では
肝鬱気滞(かんうつきたい)
とみることがあります。

また、気持ちの落ち込みが長引いて、食欲の乱れやだるさまで重なってくると、胃腸を支える「脾」も疲れやすくなり、
肝脾不和(かんぴふわ)
のような見方をすることもあります。

つまり、母の日がつらかったあとに、
何となく食べられない
眠れない
冷える
だるい
となるのは、気持ちの問題だけではなく、体の巡りや回復力まで少し落ちているサインかもしれません。

不妊・妊活における鍼灸の役割

鍼灸は、妊活中の悲しみや焦りを一度で消してしまうものではありません。
また、必要な検査や治療の代わりになるものでもありません。
卵管の状態や排卵の有無、精液所見など、妊活で確認すべきことは医療機関で確認することが大切です。

その一方で、妊活中に重なりやすい

・冷え
・首肩のこわばり
・眠りの浅さ
・気持ちの張りつめ
・月経前後の不調
・自律神経の乱れを感じる状態

などを、東洋医学の視点から整える支えにはなれます。

HFEA(英国ヒト受精・胚研究機構)は、鍼灸について妊娠率を高める明確な根拠は十分ではないとしつつ、ストレス軽減やウェルビーイング向上のために用いられることがあると案内しています。
当院でも、鍼灸を「結果を約束する方法」としてではなく、妊活中の心と体の土台を整える補助的な支えとして位置づけています。

今日からできる3つのこと

1.母の日関連の情報から、少し距離をとる

つらい時に無理して見続ける必要はありません。
SNS、広告、メッセージアプリ、動画。
今の自分に強く刺さるものから、少し離れることは逃げではありません。

心を守るための距離の取り方は、妊活中にとても大切です。
見ないこと、触れないこと、今日はやめること。
それも立派なセルフケアです。

2.初夏の養生で、胃腸と巡りをいたわる

つらい気持ちが続くと、食欲が乱れたり、甘いものに偏ったりしやすくなります。
そんな時は、完璧な食事を目指すより、胃腸を疲れさせすぎないことを大切にしてください。

この時期は、
・たけのこ
・そら豆
・アスパラガス
・初鰹
・金目鯛
など、旬のものを無理のない範囲で取り入れながら、温かい汁物や消化にやさしいものを意識してみてください。

冷たいものや甘いものばかりになると、気持ちまで重たく感じやすくなることがあります。
「体にやさしいものを少し入れる」くらいで十分です。

3.つらさを“ひとり言”にしない

母の日がつらかったことを、
「こんなこと言ってはいけない」
と閉じ込めてしまう方は多いと思います。

でも、つらさは言葉にした時、少しだけ形が見えやすくなります。
パートナーでも、信頼できる人でも、医療機関でも、施術の場でも構いません。
「母の日がきつかった」
その一言を、出していいのです。

もし、眠れない、食べられない、日常生活に支障が出るほどつらい時は、妊活の悩みとして抱え込まず、医療機関や相談先につながってください。
ひとりで耐え続けることが正解ではありません。

自分でやさしく触れやすいツボ

気持ちが張りつめやすい時、やさしく使いやすいツボがあります。

太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前。
ため息が多い時、イライラしやすい時、気の巡りを整えたい時に使いやすいツボです。

神門(しんもん)
手首の小指側、手のひら側のしわのあたり。
気持ちがそわそわする時、眠りに入りにくい時、緊張が抜けにくい時に使いやすいツボです。

どちらも、強く押し込む必要はありません。
息を吐きながら、少し気持ちいいくらいでやさしく触れてみてください。
妊娠の可能性がある時や体調に不安がある時は、無理をせずご相談ください。

当院の考え方

当院では、妊活中の「イベントがつらい」という気持ちを軽く見ません。
でも、ただ「気にしないで」とも言いません。

母の日がつらかった。
その一言の中には、
期待、失望、焦り、悲しみ、周りとの比較、言葉にできない孤独感が含まれていることがあります。

だからこそ当院では、必要な検査や治療は医療機関で大切に進めていただきながら、
その土台として、
冷え
睡眠
自律神経の乱れを感じる状態
気持ちの張りつめ
月経前後の不調
などを、東洋医学の視点から丁寧にみていくことを大切にしています。

何でも鍼灸で解決する、とは言いません。
その代わり、見えにくいしんどさを、見えないままにしないことを大切にしています。

母の日がつらかったとしても、それはあなたの優しさがなくなったからではありません。
それだけ大切に願ってきた証でもあります。

だから、まずは自分を責めないでください。
そして、ひとりで抱え込まないでください。
つらい気持ちを少しでも言葉にできた時、心は少し呼吸しやすくなることがあります。

「こんなことで傷つく自分が嫌だ」と思う日ほど、
本当は、いちばんやさしくしてあげてほしい日なのかもしれません。
今日が、その最初の一歩になればうれしいです。

この記事を書いた人

ロータスリーフ 蓮心はり灸堂
院長 菅原 裕万
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者

奈良・上牧町で、妊活中の方や女性のお身体のお悩みに向き合い、マタニティケア・産後ケアまで、ライフステージに合わせた鍼灸施術を行っています。
病院での検査や治療を大切にしながら、東洋医学の視点も取り入れ、冷え・睡眠・自律神経・体質・生活習慣などを丁寧に確認し、その方に合った身体づくりを一緒に考えることを大切にしています。

院長プロフィールを見る

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