母の日が終わったのに、まだ少し苦しい。
夜になると、昼間より気持ちが沈んでしまう。
そんな自分を見て、さらに責めたくなってしまう。
妊活中は、母の日のようなイベントが終わったあとほど、心が静かに傷んでいることがあります。
昼間は何とかやり過ごせても、夜になってひとりになると、急に苦しくなる。
それは、あなただけではありません。
まず最初に、いちばん大切なことをお伝えします。
母の日がつらかった夜、自分を責めなくて大丈夫です。
つらくなったのは、心が狭いからでも、誰かを妬んでいるからでもありません。
それだけ大切に願ってきたものがあるからこそ、心に触れてしまったのだと思います。
母の日のあとに苦しくなるのは、自然な反応です
妊活中は、母の日その日だけでなく、終わったあとの夜にしんどさが出ることがあります。
広告、SNS、家族の会話、何気ない言葉。
その場では受け流したつもりでも、夜になると胸の中に残っていたものが重たく感じられることがあります。
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の心理社会的ケアのガイドラインでは、不妊やその治療の過程で多くの方が感情的な苦痛を経験すること、そして心のケアは、つらい人だけの特別なものではなく、妊活に向き合うすべての方に大切な支えだと示されています。
また、英国ヒト受精・胚研究機構(HFEA)も、不妊治療は感情のジェットコースターのような体験になることがあるとして、サポートを受ける大切さを案内しています。
つまり、母の日のあとに気持ちが沈むのは、特別おかしなことではありません。
妊活という大きな負担の中にいる時、心が揺れるのはとても自然なことです。
「こんなことで傷つくなんて」と思わなくて大丈夫です
母の日がつらかった時、さらに苦しくなるのが、
「こんなことで落ち込むなんてだめだ」
「素直に祝えない自分はよくない」
という、自分への厳しさです。
でも、ここで大切なのは、感情に善悪をつけすぎないことです。
悲しい。
苦しい。
見たくなかった。
そう感じたこと自体を、まず否定しなくて大丈夫です。
米国疾病対策センター(CDC)は、不妊やその治療が心理的ストレス、不安、抑うつにつながることがあるとしています。
つまり、妊活中に感情が揺れやすいのは、気持ちの持ちようが足りないからではなく、心に負担がかかりやすい状況だからです。
夜は、心がいちばん責めやすくなる時間です
昼間は動いているぶん、気持ちがまぎれることがあります。
でも夜は、情報も感情も整理しきれないまま、自分と向き合う時間が増えやすくなります。
すると、
「あの場面を見なければよかった」
「もっと強くならなければ」
「私は何をしているんだろう」
と、考えが内側に向きやすくなります。
CDCは、良い睡眠は健康だけでなく、感情面のウェルビーイングにも大切だとしています。
また、睡眠不足は不安や抑うつのリスク上昇と関連するとされています。
つまり、母の日のあとに眠れない、考えすぎてしまう、気持ちが落ちるという流れは、心だけの問題ではなく、体のリズムともつながっています。
落ち込んだこと自体で、妊活の結果が決まるわけではありません
ここは、必要以上に不安を大きくしないために大切なところです。
妊活中は、涙が出たり、気持ちが乱れたりすると、
「こんなにストレスをためたらだめなのでは」
と怖くなることがあります。
でもHFEAは、妊活や不妊治療がストレスフルなのは確かでも、ストレスそのものが治療結果を直接決めるという決定的な証拠はないと案内しています。
つらかった夜があったからといって、それだけで何かが決まってしまうわけではありません。
だからこそ、今夜必要なのは、
「落ち込まないようにしなきゃ」
ではなく、
「落ち込んだ自分をこれ以上傷つけないこと」
です。
東洋医学では、こういう夜を「肝」の張りつめとしてみることがあります
東洋医学や中医学では、感情を無理に押し込めたり、我慢が続いたりすると、気の巡りが滞りやすくなると考えます。
古典の『黄帝内経』でも、感情と五臓の関わりは大切にされていて、とくに春から初夏にかけては「肝」の働きが乱れやすい時期とされます。
この時期に心を張りつめ続けると、
・ため息が増える
・胸や脇がつかえる感じがする
・首肩がこる
・目が疲れる
・眠りに入りにくい
・生理前にイライラしやすい
といった変化が出やすくなります。
東洋医学では、こうした状態を**肝鬱気滞(かんうつきたい)**とみることがあります。
少し難しい言葉ですが、簡単にいうと、
悲しみや我慢で気持ちの流れが止まり、心も体も詰まりやすくなっている状態
です。
さらに、つらさが続いて食欲の乱れやだるさまで重なってくると、胃腸を支える「脾」も疲れやすくなり、**肝脾不和(かんぴふわ)**のような状態としてみることもあります。
気持ちの問題だけでなく、体の巡りや回復力にも影響が出ている、と考えると少し分かりやすいかもしれません。
不妊・妊活における鍼灸の役割
ここも、誠実にお伝えしたいところです。
鍼灸は、悲しみやつらさを一度で消してしまうものではありません。
また、病院や医療機関で受ける検査や治療の代わりになるものでもありません。
妊活で必要な確認や治療は、専門の医療機関で進めることが大切です。
その一方で、妊活中に重なりやすい
・冷え
・首肩のこわばり
・眠りの浅さ
・気持ちの張りつめ
・月経前後の不調
・自律神経の乱れを感じる状態
などを、東洋医学の視点から整える支えにはなれます。
HFEAは、鍼灸について妊娠率を高める明確な根拠は十分ではない一方で、ストレス軽減やウェルビーイング向上のために用いられることがあると案内しています。
当院でも、鍼灸を「結果を約束する方法」としてではなく、妊活中の心と体の土台を整える補助的な支えとして位置づけています。
今日からできる3つのこと
1.今夜は「見ない」を選んで大丈夫です
母の日関連の投稿、広告、動画、写真。
つらい時に、それを無理して見続ける必要はありません。
SNSを閉じる。
通知を切る。
今日は見ない。
それは逃げではなく、心を守る行動です。
つらい夜ほど、「入れない情報」を決めることが大切です。
2.温かいものをひとつ入れて、体を落ち着かせる
初夏に向かうこの時期は、気温差や気持ちの揺れで、思っている以上に巡りが乱れやすくなります。
五行学説では、春の「木」から初夏の「火」へ移る頃で、心と体が浮つきやすい時期でもあります。
こんな夜は、
白湯
温かいお茶
やさしい汁物
消化にやさしい食事
をひとつだけでも取り入れてみてください。
旬のものなら、
たけのこ
そら豆
アスパラガス
初鰹
金目鯛
なども、この時期の養生に取り入れやすい食材です。
完璧な食事ではなく、胃腸を疲れさせすぎないことを大切にしてください。
3.「今日は傷ついた日だった」と認めてあげる
無理に前向きにならなくて大丈夫です。
今夜は、
「母の日がつらかった」
「少し傷ついた」
それを、そのまま認めてあげてください。
感情をきれいに片づけなくて大丈夫です。
言葉にできるだけでも、心は少し呼吸しやすくなります。
もし、眠れない、食べられない、日中の生活に支障が出るほどつらい状態が続く時は、妊活のこととして抱え込まず、医療機関や相談先につながってください。
自分でやさしく触れやすいツボ
今夜のように、気持ちが張りつめて眠りに入りにくい時に使いやすいツボがあります。
神門(しんもん)
手首の小指側、手のひら側のしわのあたり。
気持ちがそわそわする時、胸のざわつきがある時、眠りに入りにくい時に使いやすいツボです。
太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前。
ため息が増える時、イライラしやすい時、気の巡りを整えたい時に使いやすいツボです。
どちらも、強く押し込む必要はありません。
息を吐きながら、少し気持ちいいくらいでやさしく触れてみてください。
妊娠の可能性がある時や体調に不安がある時は、無理をせずご相談ください。
当院の考え方
当院では、妊活中の「イベントのあとがつらい」という気持ちを軽く見ません。
でも、ただ「気にしないで」とも言いません。
母の日がつらかった夜には、
悲しみだけでなく、
焦り、孤独感、比較、自責、疲れ、睡眠不足、冷えなど、いくつもの要素が重なっていることがあります。
だからこそ当院では、必要な検査や治療は病院やクリニックなどの医療機関で大切に進めていただきながら、
その土台として、
冷え
睡眠
自律神経の乱れを感じる状態
気持ちの張りつめ
月経前後の不調
などを、東洋医学の視点から丁寧にみていくことを大切にしています。
何でも鍼灸で解決する、とは言いません。
その代わり、見えにくいしんどさを、見えないままにしないことを大切にしています。
母の日がつらかった夜に、自分を責めなくて大丈夫です。
それは、あなたが弱いからではありません。
それだけ大切に願ってきた証です。
だから今夜は、
「もっと強くならなきゃ」
ではなく、
「今日は少し傷ついた日だった」
と認めてあげてください。
その認め方ひとつで、心は少し呼吸しやすくなることがあります。
ひとりで抱えず、まずは今の気持ちと体の状態を一緒に整理するところから始めていきましょう。
この記事を書いた人
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂
院長 菅原 裕万
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
奈良・上牧町で、妊活中の方や女性のお身体のお悩みに向き合い、マタニティケア・産後ケアまで、ライフステージに合わせた鍼灸施術を行っています。
病院での検査や治療を大切にしながら、東洋医学の視点も取り入れ、冷え・睡眠・自律神経・体質・生活習慣などを丁寧に確認し、その方に合った身体づくりを一緒に考えることを大切にしています。

