妊活を始めると、検索する言葉がどんどん増えていきます。
最初は「排卵日」くらいだったものが、AMH、精液検査、人工授精、採卵、胚盤胞、着床、ERA、子宮内フローラ、サプリメント……と広がっていくこともあります。
そして検索すればするほど、
「こんな検査もあるの?」
「私はこれをしていないけれど大丈夫?」
「この人はこの方法で妊娠したらしい」
と、新しい情報が入ってきます。
10月18日夜の記事「情報に疲れた夜の整理術」では、情報を増やし続けるのではなく、一度検索を閉じて頭を休ませることについてお伝えしました。
今日はその次の段階です。
情報を減らしたあと、
「では、何を残せばいいの?」
を考えてみましょう。
大切なのは、妊活について誰よりも詳しくなることではありません。
今の自分に必要で、信頼できる情報を選べることです。
妊活情報は「多いほど安心」とは限りません
インターネットには、本当にたくさんの妊活情報があります。
医療機関や学会の解説もあれば、商品を販売する企業の記事、個人ブログ、SNSの体験談、動画などもあります。
それぞれに役割がありますが、すべてを同じ重さで受け取る必要はありません。
たとえば、
「ある人がこのサプリを飲んで妊娠した」
という体験談と、
「医学的な研究で一定の効果が検討されている」
という情報は、同じ種類の情報ではありません。
どちらかを否定する必要はありませんが、
何を知るための情報なのかを分けて読む
ことが大切です。
まず「誰が発信しているのか」を確認する
妊活について医学的なことを調べるとき、最初に見てほしいのは内容そのものより、
誰がその情報を出しているのか
です。
たとえば治療・検査・薬などについて調べる場合は、厚生労働省などの公的機関、日本生殖医学会や日本産科婦人科学会などの専門学会、国立の医療機関、実際に診療を行っている医療機関などが一つの基準になります。
一方、
発信者が分からない。
医療資格や専門分野が確認できない。
商品の購入ページへ誘導することが記事の中心になっている。
という場合には、その情報だけで医学的な判断をしないほうがよいでしょう。
ただし、医師が書いているから何でも自分に当てはまる、ということでもありません。
信頼できる発信元であることと、自分に必要な情報であることは別です。
「いつ書かれた情報か」も確認する
妊活・不妊治療では、新しい検査や治療方法が登場したり、ガイドラインが改訂されたりすることがあります。
そのため、何年も前の記事が検索上位に残っている場合があります。
記事を開いたら、
公開日。
更新日。
引用されているガイドラインの年代。
などを確認してみてください。
特に、
薬。
検査。
治療法。
制度や助成。
については、古い情報がそのまま現在も使えるとは限りません。
「検索の一番上に出たから最新」
とは考えないようにしましょう。
「絶対」「必ず」という言葉には少し慎重になる
妊活情報の中には、
「これをすれば必ず妊娠する」
「これを食べれば着床率が上がる」
「冷えを改善すれば妊娠できる」
といった、とても強い表現を見ることがあります。
結果が分からない妊活中では、こうした言葉は魅力的に感じます。
でも妊娠には、年齢、卵子や精子、子宮や卵管、胚、治療方法など多くの要素が関係します。
そのため、一つの食品・サプリメント・セルフケアだけで結果を保証するような情報には慎重になりましょう。
特に、
不安を強くあおったあとで商品や高額なサービスへ誘導する情報
は、一度そこで判断を止めてください。
「研究で分かった」と書いてあったら、その先を見る
「研究で効果が証明されています」
という言葉を見ると、信頼できそうに感じます。
そんなときは、可能であればもう一段だけ確認してみましょう。
人を対象にした研究なのか、動物や細胞の研究なのか。
対象人数はどのくらいなのか。
一つの研究だけなのか、複数の研究をまとめたものなのか。
どのような人を対象にしているのか。
ここまで全部理解する必要はありません。
大切なのは、
「研究」という言葉だけで、自分にも同じ結果が起こると決めないこと
です。
研究結果と、目の前の一人の治療方針は同じではありません。
最終的には主治医と相談して考えることになります。
体験談は「気持ちを知る情報」として読む
妊活中、同じような経験をした人のブログやSNSに救われることがあります。
採卵がうまくいかなかったとき。
移植が陰性だったとき。
治療を休もうか迷ったとき。
「同じことを経験した人がいる」
と知るだけで、孤独感が少し和らぐこともあります。
体験談には、医学情報とは違う大切な役割があります。
ただし、
「この人とAMHが同じだから、自分も同じ結果になる」
「この人が飲んでいたから、自分もこのサプリを飲む」
という使い方には注意してください。
年齢や治療歴、精子の状態、病院の方針など、画面には見えていない条件がたくさんあります。
体験談は共感のため、治療判断は医療情報をもとに。
この線引きを意識してみてください。
「自分の治療段階に関係する情報か」を考える
良質な情報でも、今の自分に必要とは限りません。
まだタイミング法を始めたばかりなのに、反復着床不全の検査を夜中まで調べ続けている。
採卵前なのに、何年も先に検討するかもしれない治療を調べて不安になっている。
そんなこともあります。
情報を見つけたら、
「これは今の私に必要?」
と一度考えてみてください。
今必要なら読む。
次の診察で聞けばよいならメモする。
まだ必要でなければ保留する。
情報を捨てるのではなく、読むタイミングを選ぶという考え方です。
検索結果より、まず自分の検査結果を見る
妊活では、数字が気になります。
AMH。
卵胞数。
精子濃度。
運動率。
内膜の厚さ。
採卵数。
胚の評価。
同じ数字の人を検索したくなることもあります。
でも、その数字一つだけで治療方針や結果が決まるわけではありません。
たとえばAMHは卵巣予備能を考える一つの指標ですが、AMHだけで妊娠できる・できないを判断するものではありません。
ネット上で似た数字の人を探すより、
「私の場合、この結果は今後の治療にどう関係しますか?」
と主治医へ確認するほうが、自分に必要な情報になります。
サプリメント情報は特に「誰向けか」を見る
妊活では、サプリメントについての情報も多くあります。
葉酸のように妊娠前から摂取が推奨されている栄養素もあれば、研究途中のもの、特定の条件で検討されるものもあります。
「妊活によい」と書かれているだけで、
すべての人に必要。
たくさん飲むほどよい。
ということではありません。
現在使っている薬やサプリメントがある場合には、追加する前に医師や薬剤師へ相談してください。
特に複数の商品を使っている場合は、同じ成分が重なっていることもあります。
信頼できる情報でも「自己判断の材料」にしすぎない
公的機関や専門学会の情報なら、
「これで自分の治療も決められる」
と思うかもしれません。
でも、ガイドラインは診療の考え方をまとめたものであり、一人ひとりの治療をインターネット上で決めるものではありません。
年齢、これまでの治療歴、検査結果、妊娠希望、身体の状態によって治療方針は変わります。
ですから、信頼できる情報を見つけたときにも、
「これを自分に当てはめるとどうなりますか?」
と主治医へ聞く材料として使うのがおすすめです。
迷った情報は「診察で聞く箱」へ入れる
判断できない情報を見つけるたびに、その場で正解を探し続けると検索が終わらなくなります。
そんなときは、
「次の診察で聞く」
と決めて、メモへ移しましょう。
たとえば、
「この検査は自分にも必要?」
「この薬の副作用として考えられる?」
「このサプリを追加してもいい?」
という形で十分です。
疑問を自分で解決するのではなく、
専門家へ確認する質問に変える。
これだけで情報の扱い方がずいぶん変わります。
情報を選ぶ5つの視点
ここまでをまとめると、妊活情報を見たときには次の5点を確認します。
- 誰が発信しているか
公的機関、専門学会、医療機関など、発信元を確認します。 - いつの情報か
公開日・更新日・引用しているガイドラインの年代を見ます。 - 強すぎる表現になっていないか
「絶対」「必ず」「これだけで」といった表現には慎重になります。 - 研究と体験談を分ける
医学的な根拠と、一人の経験を同じものとして扱いません。 - 今の自分に必要か
自分の治療段階と直接関係する情報なのかを考えます。
全部を完璧に確認する必要はありません。
迷ったときに、この5つのうち一つでも思い出せれば十分です。
情報を選べるようになると「調べない」という選択もしやすくなる
信頼できる情報を見つける方法を知る目的は、もっとたくさん検索することではありません。
むしろ、
今は必要ない。
これは体験談として読む。
これは次の診察で聞く。
ここまで分かれば今日は十分。
と、検索を終えられるようになることも大切です。
妊活では、自分では答えを出せない時間があります。
すべての不安を情報で埋めようとしなくても大丈夫です。
情報に振り回されず、今の身体へ戻る時間も大切です
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、
「ネットを見るたびにやることが増えてしまいます」
というご相談をいただくことがあります。
そんなときに、さらに新しいセルフケアを加えるとは限りません。
まず現在の治療状況を確認し、睡眠、食事、胃腸、冷え、疲れなど、今のお身体で実際に起きていることへ一度戻ります。
妊活中によくある身体や気持ちのお悩みについて、当院でどのようにお話を伺っているかご紹介しています。
次は「チェックリスト」にして整理します
今日の記事では、情報を選ぶ基本的な考え方をお伝えしました。
でも実際に検索をしていると、
「これは信頼していいのかな?」
と迷うことがありますよね。
10月22日夜の記事
「信頼できる妊活情報を見分けるチェックリスト」
では、記事やSNSを見たときにその場で確認できるよう、今回の内容をさらに簡単なチェック項目へまとめます。
情報が多すぎて分からなくなったときはご相談ください
妊活について調べているうちに、
何をしたらいいのか分からない。
身体によいと言われることが増えすぎた。
病院で聞くことまで整理できなくなった。
そんな状態になることもあります。
当院では医学的な診断や治療方針の決定は行いませんが、病院へ確認すべきことと、日々の身体づくりとして見直せることを分けながら、今のお身体を一緒に整理しています。
情報を増やす前に、自分の身体へ一度戻ってみたい方もご相談ください。
この記事を書いた人
菅原 裕万
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂 院長
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
施術歴17年以上。妊活・婦人科・マタニティなど、女性のライフステージに伴う身体の変化を中心に、治療状況だけでなく睡眠・胃腸・疲れなども確認しながら身体づくりをサポートしています。
参考・出典
日本生殖医学会「生殖医療ガイドライン」
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」
国立成育医療研究センター「プレコンセプションケアセンター」
European Society of Human Reproduction and Embryology(ESHRE)「Routine Psychosocial Care in Infertility and Medically Assisted Reproduction」
World Health Organization(WHO)「Infertility」

