子宮内膜症の痛みと冷えを東洋医学でどう見るか

東洋医学の視点から体質改善を伝える奈良・上牧町の鍼灸院ブログ画像

「生理がくるたびに下腹部が痛い」

「身体を触るとお腹や足が冷たい」

「冷えがあるから子宮内膜症が悪くなっているのかな」

子宮内膜症のある方から、このようなご相談をいただくことがあります。

前回の記事
「子宮内膜症と不妊の関係をわかりやすく」
では、子宮内膜症とはどのような病気なのか、そして妊活との関係についてお話ししました。

今回はその続きとして、

「子宮内膜症の痛みと冷えを、東洋医学ではどのように考えるのか」

を取り上げます。

最初に、とても大切なことがあります。

「身体が冷えているから子宮内膜症になった」という医学的根拠があるわけではありません。

反対に、

「身体を温めれば子宮内膜症が治る」というものでもありません。

ここを混同せず、西洋医学による治療と、日常の身体づくりを分けて考えていきましょう。

目次

そもそも、なぜ子宮内膜症は痛むのでしょうか

子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮の外側に存在し、炎症などを引き起こす病気です。

代表的な症状には、

  • 強い月経痛
  • 慢性的な骨盤痛
  • 性交時の痛み
  • 排便時の痛み
  • 月経に伴う腰痛
  • 月経に関連する胃腸・排尿症状

などがあります。

痛みには、病変周囲の炎症だけでなく、癒着、神経への影響、骨盤底筋の緊張など、さまざまな要素が関係すると考えられています。

痛みが長期間続くことで、痛みに対して神経系が敏感になることもあります。

そのため、

「病変が大きい=必ず痛みが強い」

とは限りません。

画像検査ではそれほど大きな病変が見つからなくても強く痛む方もいれば、比較的大きな病変があっても症状が少ない方もいます。

痛みは、その人が実際に感じている症状そのものを大切にする必要があります。

「冷えると痛む」と感じることはあります

ここで疑問になるのが、

「でも実際に冷えると痛みが強くなる気がする」

という感覚です。

これは無視する必要はありません。

ただし、

冷えが子宮内膜症そのものを発生させたり、病変を直接進行させたりすることが証明されているわけではありません。

寒さを感じると身体に力が入りやすくなったり、筋肉がこわばったりすることがあります。

もともと骨盤周囲に痛みや緊張がある方では、その変化によって「いつもより痛い」と感じることも考えられます。

また、

  • 足先が冷たい
  • 下腹部が冷たく感じる
  • 冷房で身体がつらくなる
  • 月経前になると冷えが強くなる
  • 冷えとのぼせが同時にある

など、「冷え」といっても感じ方は人によって異なります。

東洋医学では、この違いを身体をみる一つの手がかりにします。

東洋医学では「痛みだけ」を見ません

東洋医学では、

「子宮内膜症だから、このツボ」

というように病名だけで身体を判断するわけではありません。

同じ子宮内膜症でも、

  • 月経血の状態
  • 痛む場所
  • 痛み方
  • 冷え
  • のぼせ
  • 胃腸の状態
  • 睡眠
  • 疲れ
  • ストレス
  • 月経周期

などを合わせて見ます。

そのうえで、その方の身体にどのような偏りがあるのかを考えていきます。

子宮内膜症による痛みのある方では、東洋医学的には次のような状態が重なっていることがあります。

瘀血(おけつ)|血の巡りが滞っているタイプ

東洋医学で月経痛を考えるときによく登場するのが「瘀血」です。

瘀血とは、東洋医学でいう「血(けつ)」の巡りが滞った状態を指します。

たとえば、

  • 月経痛が強い
  • 刺すような痛みがある
  • 痛む場所が比較的はっきりしている
  • 月経血に塊が混じる
  • 下腹部に重さを感じる

などが一つの目安になります。

ただし、

経血に塊がある=必ず瘀血

ということではありません。

実際の身体の状態を合わせて判断します。

寒凝血瘀(かんぎょうけつお)|冷えと痛みが重なるタイプ

東洋医学には、

身体が冷えることで巡りが悪くなり、痛みにつながる

という考え方があります。

これを「寒凝血瘀」と表現することがあります。

特徴として、

  • 下腹部が冷える
  • 温めると少し楽に感じる
  • 冷房や寒い日に痛みや不調を感じやすい
  • 手足が冷たい
  • 冷たいものを摂るとお腹がつらい

などがみられることがあります。

このタイプでは温めることを取り入れる場合がありますが、

子宮内膜症そのものを温めて治療するという意味ではありません。

あくまで、その方が抱えている冷えや筋緊張などを含めて、身体を楽にするためのケアとして考えます。

肝鬱気滞(かんうつきたい)|緊張が強く巡りにくいタイプ

妊活や月経痛が長く続いていると、

「また痛くなるかもしれない」

「今回も生理が来るかもしれない」

と、身体だけではなく気持ちも緊張しやすくなります。

東洋医学では、このように気の巡りが滞っている状態を「肝鬱気滞」と考えることがあります。

  • 月経前にイライラする
  • 胸や脇が張る
  • お腹が張りやすい
  • ため息が増える
  • 肩や首がこる
  • ストレスによって症状が変化する

といった特徴があります。

こうした方の場合、

とにかく温めるだけでは十分ではない

ことがあります。

身体の緊張をゆるめ、呼吸を整えながら巡りをつくることも大切になります。

腎虚(じんきょ)|身体を支える力が不足しているタイプ

子宮内膜症だけではなく、妊活が長期間続いて疲れている方では「腎虚」の状態が重なることがあります。

東洋医学でいう「腎」は、身体の成長・生殖・老化などと深く関係すると考えます。

  • 疲れが抜けない
  • 腰や膝がだるい
  • 冷えやすい
  • 夜になるとぐったりする
  • 睡眠をとっても回復した感じが少ない

といった症状が一つの目安になります。

この場合は刺激を増やすよりも、

まず身体を休ませ、回復しやすい状態をつくる

ことを優先する場合があります。

「冷えているなら、とにかく温める」は少し注意

妊活では、

「子宮を温めましょう」

「冷えは妊活の大敵」

という言葉を目にすることがあります。

そのため、

  • 腹巻きを何枚も重ねる
  • 夏でもカイロを貼る
  • 長時間半身浴をする
  • 熱いよもぎ蒸しを頻繁に行う

など、温めることを頑張りすぎている方もいらっしゃいます。

しかし、東洋医学でもすべての人を同じように温めればよいとは考えません。

たとえば、

  • 顔がほてりやすい
  • 寝汗が多い
  • 夜になると身体が熱くなる
  • 口が乾く
  • 月経前にのぼせる

という方を強く温めれば、かえって不快感が増すことがあります。

大切なのは、

「冷えているか」だけではなく、「なぜ冷えているように感じるのか」を見ることです。

今夜からできる3つのセルフケア

子宮内膜症があるからといって、特別なことをたくさん始める必要はありません。

痛みや冷えが気になる夜は、次の3つから試してみてください。

1.心地よい程度にお腹や腰を温める

温めて楽に感じる方であれば、入浴や湯たんぽなどを利用するのも一つです。

ポイントは、

「熱いほど効く」と考えないこと。

眠る前に身体がほっとする程度で十分です。

熱源を直接肌に長時間当てると低温やけどの原因になるため、就寝中のカイロや湯たんぽの使用には注意してください。

また、温めて違和感があったり、かえって痛みが強くなったりする場合は、無理に続ける必要はありません。

2.下腹部の力を抜く呼吸をする

痛みがあると、無意識にお腹に力が入ることがあります。

寝る前に、

鼻からゆっくり息を吸い、

口から少し長めに吐いてみましょう。

「深く吸わなければ」と頑張らなくても構いません。

吐く息と一緒にお腹の力を少し抜く。

それだけ意識してみてください。

3.痛みを記録する

子宮内膜症では、痛みや症状の記録が医療機関で相談するときにも役立ちます。

たとえば、

  • 月経周期の何日目か
  • 痛む場所
  • 痛みの強さ
  • 鎮痛薬を使用したか
  • 排便時や性交時の痛み
  • 日常生活への影響

を簡単に残しておきます。

毎日細かく書く必要はありません。

「今日は仕事を休むほど痛かった」

という記録だけでも大切な情報です。

鍼灸は子宮内膜症にどう考えればいい?

子宮内膜症に対する鍼灸については、近年研究が増えています。

2025年に公表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、子宮内膜症に関連する痛みに対して、鍼灸を受けた群で痛みの軽減がみられたと報告されています。

また、複数の非薬物療法を比較した近年の研究でも、鍼灸や理学療法などが痛みや生活の質を改善する可能性が示されています。

ただし、研究によって鍼灸方法や対象者が異なり、研究の質にもばらつきがあります。

そのため現時点では、

「鍼灸を受ければ子宮内膜症が治る」

あるいは、

「鍼灸によって妊娠率が上がる」

と断定することはできません。

子宮内膜症そのものについては婦人科で適切に診断・治療を受けながら、鍼灸は、

  • 痛みへのケア
  • 筋緊張へのケア
  • 睡眠
  • 冷えや疲労感
  • 月経周期に伴う体調変化

などを含めた補助的な身体づくりの選択肢として考えるのがよいでしょう。

痛みを我慢し続けないでください

「生理だから痛くて当然」

「子宮内膜症だから仕方ない」

と思って、強い痛みを我慢していませんか?

現在の子宮内膜症診療では、病変の大きさだけではなく、

その痛みが日常生活にどの程度影響しているか

も重要視されています。

特に、

  • 鎮痛薬を使っても痛みが強い
  • 痛みで仕事や学校を休む
  • 生理以外の日にも骨盤痛がある
  • 排便・排尿時に強く痛む
  • 性交時の痛みが続いている
  • 痛みが以前より強くなっている

場合には、我慢せず婦人科へ相談してください。

子宮内膜症では、超音波検査で異常が見つからなかったとしても、それだけで完全に否定できない場合があります。

症状が続いているときは、「検査では問題なかったから」と一人で抱え込まないことも大切です。

「冷えをなくさなければ」と頑張りすぎなくて大丈夫

子宮内膜症がある方ほど、

「この冷えをどうにかしなければ」

と考えてしまうことがあります。

でも、身体を整えることは、

冷えている場所をひたすら温めることではありません。

よく眠れるようにすること。

胃腸を疲れさせないこと。

身体の緊張をゆるめること。

疲れた日はきちんと休むこと。

痛みを我慢しすぎないこと。

そして必要な医学的治療を受けること。

こうしたものを一つずつ組み合わせることが、身体を整えていくことだと考えています。

子宮内膜症があるからといって、毎日身体のことばかり考える必要はありません。

今夜はまず、

「今日は身体を少し楽にして眠ろう」

くらいからで十分です。

子宮内膜症の痛みや冷えに悩んでいる方へ

蓮心はり灸堂では、子宮内膜症という病名だけを見るのではなく、

月経痛、冷え、睡眠、胃腸の状態、疲労、月経周期、妊活の状況などを確認しながら、その方の身体に合わせた施術を考えています。

子宮内膜症そのものの診断や治療は婦人科が中心です。

そのうえで、

「治療を続けながら身体も整えておきたい」

「毎月の痛みや冷えがつらい」

「妊活中なので、自分の体調も一緒に見てほしい」

という方は、鍼灸を補助的なケアの一つとして取り入れる方法もあります。

無理に温めるのではなく、今の身体に何が必要なのかを一緒に整理していきましょう。

参考・出典

欧州生殖医学会(ESHRE)「子宮内膜症診療ガイドライン」

英国国立医療技術評価機構(NICE)「子宮内膜症:診断と管理」

Archives of Gynecology and Obstetrics「症候性子宮内膜症に対する鍼灸関連療法の有効性と安全性に関するシステマティックレビュー・ネットワークメタ解析」

Medicine「子宮内膜症関連痛に対する鍼灸単独療法のシステマティックレビュー・メタ解析」

Journal of Pain Research「子宮内膜症女性の疼痛と生活の質に対する非薬物療法の比較有効性に関するシステマティックレビュー・ネットワークメタ解析」

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