受精卵が育たないときに知っておきたいこと

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採卵を終え、無事に受精したと聞いたとき、

「ここから順調に育ってくれたら」

と願っていた方も多いと思います。

それだけに、

「途中で成長が止まりました」
「今回は胚盤胞まで育ちませんでした」

と伝えられたときのショックは、とても大きなものです。

そして結果を聞いたあと、

「私の卵子が悪かったのかな」

「採卵前にもっと身体を整えておけばよかった?」

「仕事で無理をしたから?」

「食べたものが悪かったのかもしれない」

と、自分の行動に原因を探してしまう方も少なくありません。

けれど、最初に知っておいていただきたいことがあります。

受精した胚が途中で育たなくなる背景は、一つではありません。

現在の研究では、染色体の分配、細胞分裂、遺伝子の働き、細胞内の仕組みなど、さまざまな要因が関係していることがわかってきています。

そのため、

「あの日○○をしたから育たなかった」

と、日常生活の一つの出来事だけで説明できるものではありません。

まずは、受精したあと胚の中で何が起こっているのかから見ていきましょう。

目次

受精してから胚盤胞になるまで

卵子と精子が受精すると、そこから細胞分裂を繰り返しながら胚として発育していきます。

大まかな流れは、

受精

2~3日目ごろ:分割期胚

4日目ごろ:桑実胚

5~6日目ごろ:胚盤胞

です。

発育の速度には個体差があり、7日目に胚盤胞へ到達することもあります。

胚盤胞になる頃には、

・将来、赤ちゃんになる部分につながる「内部細胞塊」
・将来、胎盤などになる部分につながる「栄養外胚葉」
・内部の液体で満たされた空間

などが形成されてきます。

ほんの数日の間ですが、胚の中では非常に大きな変化が起きています。

「受精成功=そのまま育つ」ではありません

「受精できたのなら、そのまま胚盤胞まで育つのでは?」

と思うかもしれません。

ところが、

受精することと、その後も細胞分裂を続けて発育していくことは、別の段階です。

受精後の胚では、細胞がただ増えているだけではありません。

細胞分裂のたびに染色体を分配し、胚自身の遺伝情報を使い始め、細胞同士が役割を分けながら、胚盤胞という複雑な構造を作っていきます。

このどこかで発育がうまく進まなくなれば、受精が成立していても途中で成長が止まることがあります。

胚の発育が止まる背景には何がある?

胚の発育停止は、現在も研究が続けられている分野です。

一つひとつの胚について、

「これが原因です」

とすべて説明できるわけではありません。

ただ、少しずつその仕組みがわかってきています。

1.細胞分裂や染色体の分配

胚は細胞分裂を繰り返しながら成長します。

その際、染色体を新しくできる細胞へ適切に分けていく必要があります。

この仕組みがうまくいかないと、その後の発育に影響することがあります。

近年の研究では、着床前胚の早い段階で起こる発育停止に、細胞分裂時の染色体分配の乱れなどが関係する可能性も示されています。

ただし、

「胚発育停止=すべて染色体異常」

というわけではありません。

2.発育の段階によって異なる仕組みが関わる可能性も

胚発育の比較的早い段階で止まる場合と、その後の段階で止まる場合では、背景となる仕組みが異なる可能性も研究されています。

発育の段階によっては、染色体だけでなく、細胞内のストレス反応や、胚盤胞を形成するために必要な細胞同士の働きなどが関係している可能性があります。

そのため、

「何日目ごろまで発育していたのか」

という情報も、今回の治療経過を振り返る一つの材料になります。

「卵子の質が悪かったから」と決めつけなくて大丈夫です

胚が育たなかったとき、

「卵子の質がよくなかったのでしょうか?」

と心配される方は多くいらっしゃいます。

確かに、受精直後から初期の胚発育には、卵子が持っている細胞内の仕組みが大切な役割を果たしています。

また、女性の年齢も、生殖医療では重要な要素の一つです。

ただし、

胚の発育は、卵子だけで決まるものではありません。

受精後は、卵子と精子から受け継いだ遺伝情報をもとに発育していきます。

早期胚発育停止については、

・卵子側の要因
・精子側の要因
・受精後の胚そのものに起こる変化
・遺伝子が働き始める仕組み
・細胞内の代謝や構造

など、さまざまな要素が研究されています。

ですから、

「育たなかった=女性側だけに原因がある」

と考える必要はありません。

培養環境も胚発育を支える大切な要素です

体外受精や顕微授精では、受精後の胚は培養室の中で育てられます。

胚はとても繊細なため、

・温度
・pH
・酸素濃度
・培養液
・培養中の環境変化

などを適切に管理することが大切です。

現在の生殖医療では、こうした環境をできるだけ安定させながら胚を培養するための管理が行われています。

つまり胚発育とは、

「卵子がよいか悪いか」

だけで説明できるものではなく、いくつもの要素が関わる複雑な過程なのです。

胚の「グレード」は何を見ているの?

採卵後、

「4AAでした」
「3BBでした」

などと説明を受けることがあります。

胚盤胞のグレードでは、主に、

・胚盤胞がどの程度広がっているか
・内部細胞塊の状態
・栄養外胚葉の状態

などを観察して評価します。

こうした形態評価は、移植する胚を検討するときの大切な判断材料の一つです。

ただし、

グレードは胚を評価する情報の一つであって、胚のすべてを表すものではありません。

そのため、

「グレードがよいから必ず妊娠する」

「グレードが低いから妊娠できない」

と単純に考えることはできません。

また、評価方法や表記には医療機関による違いもあります。

数字やアルファベットだけを見て、必要以上に落ち込まないことも大切です。

わからないことがあれば、主治医や培養士さんに確認してみましょう。

一度育たなかったら、次も同じ?

「今回は胚盤胞まで育たなかった」

となると、

「次の採卵でも同じだったらどうしよう」

という不安が出てくると思います。

けれど、一度の結果だけで、次回も同じ経過になると決まるわけではありません。

採卵周期によって、

・採れた卵子の数
・成熟卵の数
・正常受精した数
・細胞分裂の進み方
・胚盤胞まで育った数

などが変わることがあります。

一方で、同じような胚発育停止が繰り返される場合には、これまでの採卵結果をまとめて振り返ることも大切です。

大切なのは、

「育たなかった」という結果だけを見るのではなく、どの段階まで進んでいたのかを整理することです。

次の診察で確認しておきたいこと

結果を聞いたときはショックが大きく、その場では何を質問したらよいかわからないこともあります。

落ち着いてからでも構いません。

次の診察や説明の機会があれば、

・採卵できた卵子はいくつだったか
・そのうち成熟卵はいくつだったか
・正常受精した胚はいくつだったか
・何日目まで発育したのか
・どの段階で発育がゆっくりになった、または止まったのか
・胚盤胞になった胚はあったか
・精液所見について確認しておくことはあるか
・今回の結果を踏まえ、次の採卵で治療方針を変更する可能性があるか

などを聞いてみるとよいでしょう。

たとえば、

「卵子が採れなかった」

「成熟卵が少なかった」

「受精しにくかった」

「受精はしたけれど途中で止まった」

では、それぞれ意味が異なります。

治療を細かい段階に分けて振り返ることで、次に何を相談すればよいのかが見えやすくなります。

発育停止が繰り返されるときは

一度胚盤胞まで育たなかったからといって、すぐに特別な検査が必要になるわけではありません。

一方、

・複数回の採卵で同じような発育停止が続いている
・受精はするけれど毎回似た段階で止まる
・採卵できても胚盤胞が得られない状態が続く

といった場合には、それまでの治療経過を主治医と詳しく振り返ってみることが大切です。

早期胚発育停止については遺伝学的な要因なども研究されていますが、すべての方に同じ検査が必要ということではありません。

「何か検査を増やさなければ」

と焦るより、

これまでの採卵・成熟・受精・胚発育の経過を整理するところから始めてみましょう。

「次は何を食べればいい?」と考えたくなったとき

受精卵が育たなかったあと、

「卵子の質をよくする食べ物は?」

「何かサプリメントを増やした方がいい?」

と調べ始める方も多いと思います。

SNSでは、

「これを食べたら胚盤胞になった」

「このサプリを飲んだ周期は結果がよかった」

といった体験談も見つかります。

その方にとっては、大切な経験です。

ただし、誰かに合った方法が、そのまま自分にも必要とは限りません。

また、特定の食品やサプリメントだけで、

次の胚が必ず胚盤胞まで育つと保証できる方法はありません。

何かを次々に足していく前に、

・食事を極端に制限していないか
・睡眠時間が大きく崩れていないか
・疲れを抱えたまま無理をしていないか
・喫煙習慣がないか
・飲酒量が多くなっていないか
・サプリメントを必要以上に重ねていないか

など、身体全体を見直してみることも大切です。

治療中の薬やサプリメントについて変更したい場合は、自己判断で中止・変更せず、主治医や薬剤師などに確認してください。

鍼灸で受精卵を直接育てられるわけではありません

「鍼灸を受ければ、次は胚盤胞まで育ちますか?」

と質問をいただくことがあります。

ここは誤解のないようにお伝えしたいところです。

鍼灸によって、受精した胚を直接胚盤胞まで育てられると断定することはできません。

当院が妊活中の方への鍼灸で大切にしているのは、

・疲労が抜けにくい
・睡眠が乱れている
・身体の冷えが気になる
・胃腸の調子が安定しない
・採卵周期になると心身ともに余裕がなくなる
・何を改善したらよいのかわからなくなっている

といった身体全体の状態を確認しながら、治療を続けていくためのコンディションを整えることです。

病院で行われる検査や不妊治療を大切にしながら、その間の体調や生活を支えていく。

それが、不妊治療と鍼灸を組み合わせるときの一つの考え方です。

「育たなかった」を、自分への評価にしないでください

不妊治療では、

「採卵○個」

「成熟卵○個」

「受精○個」

「胚盤胞○個」

と、結果が数字で伝えられます。

その数字が思っていたより少なかったとき、

「私の身体はダメなのかな」

と感じてしまうことがあります。

でも、

胚が育ったかどうかと、あなたが頑張ったかどうかは別の話です。

受精後の胚では、私たちが普段意識することのできない、とても複雑な変化が起こっています。

だから、

「あの日仕事を休まなかったから」

「もっと早く寝なかったから」

「何か間違ったものを食べたから」

と、一つひとつ過去の自分を責める必要はありません。

今回の結果は、

あなた自身の評価ではなく、今回の治療から得られた一つの情報です。

その情報を、次の治療を考える材料として少しずつ整理していきましょう。

頭では分かっていても、自分を責めてしまうときに

「原因は一つではない」

「自分のせいだけではない」

そう理解できても、気持ちがすぐに追いつくとは限りません。

結果を聞いた夜になると、

「それでも、私に何かできたのでは」

と考えてしまうこともあると思います。

このテーマの続きは、8月4日の
「受精卵が育たないと言われた夜に、自分を責めないために」
で、もう少し心の面からお伝えします。

医学的な原因を探すこととは少し離れて、結果を自分の責任のように感じてしまうとき、どう気持ちと向き合っていけばよいのかを一緒に考えていきます。

【参考・出典】

米国生殖医学会(ASRM)「不妊・生殖医療に関する国際用語集 2025」

米国生殖医学会(ASRM)「胚のグレーディングと評価」

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)「卵子・胚の形態評価に関するイスタンブール・コンセンサス改訂版」

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)「IVF培養室における適正実施のための改訂ガイドライン 2026」

Fertility and Sterility「体外培養下で発育停止する着床前胚:表現型・原因・治療可能性」

Cell「ヒト着床前胚発育の低い効率に関与する2つの異なる要因」

Journal of Assisted Reproduction and Genetics「早期胚発育停止の遺伝的要因と分子メカニズム」

次の採卵に向けて、できることを整理したい方へ

受精卵が育たなかったという結果を受けて、

「次の採卵までに身体を整えたい」

と思う一方で、

「何から始めればいいのかわからない」

「食事もサプリも運動も、調べるほど情報が増えてしまう」

という方もいらっしゃいます。

そんなとき、すべてを一度に変える必要はありません。

ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、病院での検査や不妊治療を大切にしながら、これまでの治療経過と現在のお身体を確認し、

・睡眠
・冷え
・疲労
・胃腸の状態
・食事
・ストレス
・日々の生活リズム

などを一緒に整理しています。

「何か特別なことを増やす」前に、

今の身体に負担になっていることはないか。
今の自分に無理なく整えられることは何か。

そこから考えていくことも、次の採卵に向けた身体づくりの一つです。

当院では、不妊治療と並行しながら、その方の体調や治療段階に合わせた身体づくりをサポートしています。

「次の採卵に向けて、今できることを一度整理したい」

「今の自分には、どんな身体づくりが合うのか相談してみたい」

と感じたときは、LINEからお気軽にご相談ください。

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