胚移植を終えて判定日を待っていると、
「もう妊娠検査薬を使ったら反応するかな」
と思うことがあります。
朝起きて、
今日で移植後何日目だろう。
ネットではこの日から陽性が出た人もいる。
症状もよくわからない。
だったら、検査してしまった方が楽なのでは。
そんな気持ちになることもあるでしょう。
判定日まで何日も待つより、少しでも早く結果を知りたい。
これは決して珍しいことではありません。
ただ、判定日前の「フライング検査」には、
早く調べたからこそ、かえって結果がわかりにくくなる
という問題があります。
今回は、
・なぜ早すぎると陰性になるのか
・hCG注射を使っていると何が起こるのか
・薄い陽性線をどう考えるのか
・陰性だったら薬をやめてもいいのか
・結局、いつの結果を信じればよいのか
を整理していきます。
そもそも妊娠検査薬は何を調べているの?
一般的な妊娠検査薬は、
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)
というホルモンを尿から検出します。
hCGは、胚が子宮内膜へ着床したあと、妊娠の成立に伴ってつくられるようになります。
そのため、
胚移植をした。
↓
すぐ妊娠検査薬が陽性になる。
というわけではありません。
胚が着床し、その後hCGが増え、さらに尿中のhCGが検査薬で検出できる濃度まで達する必要があります。
この過程には時間がかかります。
「移植後○日目なら必ず出る」とは言えません
SNSを見ると、
「BT5で陽性でした」
「BT6では真っ白だったけれどBT7で出ました」
といった投稿を見かけることがあります。
※BTとは「Blastocyst Transfer」の略で、一般的に胚盤胞(数日間培養して成長した受精卵)を移植してからの日数を表します。
しかし、
同じ移植後日数だから、同じ日に妊娠検査薬が陽性になるとは限りません。
hCGが検出できる時期には個人差があります。
また、
・移植した胚の発育段階
・着床するタイミング
・使用した検査薬の感度
・尿の濃さ
・検査した時間帯
などによっても結果は変わります。
誰かの「BT5で陽性」を、自分の判定基準にしないことが大切です。
フライング検査で一番注意したい「偽陰性」
妊娠しているのに、検査結果が陰性になることを、
偽陰性
といいます。
判定日前のフライング検査では、これが起こる可能性があります。
理由は単純で、
まだhCGの量が検査薬で検出できるところまで増えていない
ことがあるからです。
FDAも、妊娠検査を早い時期に行うと、hCGがまだ十分に増えておらず、妊娠していても陰性になる可能性があると説明しています。
つまり、
早期の陰性=今回の移植は陰性
とは限りません。
水分をたくさん飲んだあとも結果に影響することがあります
尿中のhCGを調べる検査では、
大量に水分をとったあとなど、尿が薄くなっているとhCG濃度も低くなることがあります。
そのため、非常に早い時期では、
朝は薄い陽性だったのに、昼は陰性。
昨日より線が薄く見える。
ということも起こり得ます。
FDAも、尿が薄いことは妊娠検査の偽陰性につながる要因の一つとしています。
このため、
家庭用妊娠検査薬の線の濃さだけを毎日比較して、hCGの増え方を判断することはおすすめできません。
「昨日より線が薄い」は流産という意味?
フライング検査を始めると、今度は、
「線が濃くなっているか」
が気になり始めることがあります。
同じ角度で写真を撮る。
昨日の検査薬と並べる。
SNSでほかの人の線と比べる。
そして、
「昨日より薄い気がする」
と不安になる。
でも、家庭用妊娠検査薬は、
hCGを正確に数値化して経過を追うための検査ではありません。
尿の濃さ。
検査した時間。
検査薬。
判定時間。
などでも見え方は変わります。
hCGの推移を医学的に確認する必要がある場合は、医療機関で血液中のβ-hCGを測定して判断します。
線の濃淡だけで、妊娠の経過を自己判断しないようにしましょう。
反対に「偽陽性」が起こることもあります
フライング検査では、
妊娠していないのに陽性反応が出る、
偽陽性
にも注意が必要です。
不妊治療で特に関係するのが、
hCG製剤
です。
hCG注射を使った周期では要注意
排卵誘発や採卵周期などでは、卵子の最終成熟を促す目的でhCG製剤を使用することがあります。
妊娠検査薬が調べているのも「hCG」です。
そのため、薬として投与されたhCGが身体に残っている間に検査をすると、
妊娠によってつくられたhCGではなく、薬のhCGに反応して陽性になる
可能性があります。
たとえば、遺伝子組換えhCG製剤「オビドレル」の現在の添付文書には、
投与後最長10日間は、血液・尿のhCG測定で妊娠検査が偽陽性となる可能性がある
と記載されています。
ただし、使用した薬剤や投与時期は治療によって異なります。
「注射から○日経てば全員大丈夫」
と自分で決めず、
自分の周期でhCG製剤を使ったかどうかわからない場合は、通院先へ確認してください。
凍結胚移植ならhCG注射は関係ない?
必ずしもそうとは限りません。
凍結融解胚移植には、
・自然周期
・修正自然周期
・ホルモン補充周期
などがあります。
排卵のタイミングを調整するためにhCG製剤を使用する周期もあれば、使用しない周期もあります。
そのため、
「凍結胚移植だから薬の影響はない」
と一律には言えません。
自分が何の注射をしたかわからない場合は、治療スケジュールや薬の名前を確認してみましょう。
黄体ホルモンの薬で妊娠検査薬は陽性になる?
移植後に使用することの多い、
・プロゲステロン腟剤
・プロゲステロン注射
・黄体ホルモンの内服薬
・エストロゲン製剤
などは、それ自体がhCGではありません。
そのため、
これらの薬を使っていること自体が、通常のhCG妊娠検査薬を陽性にするわけではありません。
一方で、黄体ホルモンの影響によって、
・胸の張り
・眠気
・下腹部の違和感
・だるさ
など、妊娠初期と似た症状が出ることがあります。
つまり、
症状からも、検査薬を使う前から妊娠の有無を判断することは難しい
ということです。
フライングで陽性だったら「妊娠確定」?
早い時期に陽性が出るとうれしい反面、
「これでもう大丈夫?」
と思うかもしれません。
しかし、
家庭用妊娠検査薬の陽性だけでは、正常に妊娠が継続していることまで確認することはできません。
医療機関では、まず血液や尿のhCGを確認し、その後、妊娠週数が進んだところで超音波検査を行います。
不妊治療後に陽性となった場合も、一定期間後に超音波で胎嚢などを確認していきます。
そのため、
陽性=すべての確認が終了した、
ではありません。
一度陽性になったあと陰性になった場合
フライング検査で一度陽性が出たあと、数日後に陰性になることがあります。
検査条件による違いの場合もありますが、
一時的にhCGが検出されたあと、超音波で胎嚢を確認する段階まで妊娠が継続しない、
生化学的妊娠
の場合もあります。
日本産婦人科医会では、生化学的妊娠を、尿または血液でhCGが一時的に検出されたものの、超音波で胎嚢を確認する臨床的妊娠には至らずhCGが陰性化する状態と説明しています。
ただし、
自宅の検査薬だけで生化学的妊娠を診断することはできません。
心配な変化がある場合は、通院先へ相談してください。
フライング検査が陰性だったら薬をやめていい?
自己判断でやめないでください。
これは、とても大切です。
凍結胚移植などでは、
・プロゲステロン
・エストロゲン
などの薬によって妊娠初期を支えている場合があります。
判定日前の家庭用検査で陰性だったとしても、
早すぎるためにhCGを検出できていない可能性があります。
その結果だけを見て、
「今回はダメだった」
と薬を中止しないでください。
処方された薬は、通院先から指示された期間・方法で続けることが原則です。
妊娠判定後に薬を続けるか、中止するかも、医療機関の指示に従いましょう。
判定日は、なぜわざわざ決められているの?
「検査薬でわかるなら、病院まで待つ必要はないのでは?」
と思うかもしれません。
でも判定日は、
単に、
「陽性か陰性か」
だけを見る日ではありません。
治療内容によっては、
・血液中のβ-hCG
・これまでの治療経過
・出血や痛みの有無
・今後の薬の使用
・次の受診時期
などを確認します。
陽性の場合も、その後のhCG測定や超音波検査へつないでいきます。
陰性の場合も、薬をどうするか、次の治療をどう考えるかという判断があります。
だからこそ、
通院先から指定された判定日は、その後の治療へつなげるための大切な日
と考えてください。
「血液検査なら早くても正確?」
血液によるβ-hCG検査は、尿検査より低いhCG濃度を測定できるため、不妊治療の妊娠判定でよく使用されます。
ただし、
血液検査なら移植直後から結果がわかる、
という意味ではありません。
着床してhCGがつくられ始めなければ、血液中にも現れません。
また、一回のhCG値だけでは、その後の妊娠経過を判断できない場合があります。
必要に応じて時間をあけて再検査し、hCGの変化を確認することがあります。
「hCGが低い」と言われても、その数字だけで結論を出さないで
判定日の血液検査で、
「hCGが少し低めです」
と言われることもあります。
その瞬間、
「もうダメということですか?」
と思うかもしれません。
しかし、評価では、
・移植から何日目か
・胚の発育段階
・最初のhCG値
・その後どのように変化するか
などを合わせて考えます。
一回の数字だけでは判断できず、再採血を行う場合もあります。
ネットで、
「BT○ならhCGは最低○○必要」
と誰かの値と比較するより、自分の検査値を主治医がどう評価しているかを確認してください。
フライング検査をするといけないの?
ここまで読むと、
「絶対に検査してはいけないということ?」
と思われるかもしれません。
そうではありません。
自宅で検査するかどうかは、ご本人の選択です。
ただし、検査するなら、
その結果がまだ確定的ではない可能性を理解したうえで使う
ことが大切です。
フライング検査には、
「早く分かるかもしれない」
という面があります。
一方で、
・陰性を見て強く落ち込む
・薄い線を何時間も調べる
・毎朝検査しないと落ち着かなくなる
・昨日との濃さを比較し続ける
・薬をやめたくなる
・SNSで同じ日数の人を探し続ける
という負担につながることもあります。
検査をするかどうかを、
医学的な問題だけではなく、自分の心への負担も含めて考えてみてください。
検査する前に、自分へ一つ聞いてみる
検査薬を手に取る前に、
一度だけ、
「今日の結果が陰性だったら、私はどう過ごすだろう?」
と考えてみてください。
「早い時期だから、まだわからないと受け止められそう」
なら、検査するという選択もあるでしょう。
一方、
「陰性を見たら、判定日まで何もできなくなりそう」
「きっと薬までやめたくなる」
という場合は、
今日は検査を見送ることも、自分を守る選択です。
反対に「陽性だったらどうする?」も考えてみる
陽性が出れば安心できると思っていたのに、
いざ線が出ると、
「薄すぎない?」
「明日は濃くなる?」
「このまま継続する?」
と別の不安が始まることがあります。
フライング検査は、
答えを早く得る方法というより、判定日前に新しい情報が一つ増える方法
と考えた方が近いかもしれません。
その情報を受け取ったあと、自分がどう感じそうか。
そこまで考えてから決めても遅くありません。
フライング検査をしたあとにやってほしいこと
もし検査をしたとしても、
結果が陽性でも陰性でも、
1.薬は自己判断で変更しない
処方どおり続けます。
2.判定日の受診を自己判断でキャンセルしない
指定された日に確認を受けます。
3.線の濃さだけで経過を判断しない
必要な評価は通院先で行います。
4.強い症状があれば検査結果に関係なく相談する
妊娠検査が陰性でも、症状によっては医療機関への相談が必要です。
陽性でも注意したい症状
妊娠検査薬が陽性になったあと、
・強い腹痛
・特に片側に強い痛み
・大量の出血
・強いめまい、ふらつき
・肩へ響くような痛み
・意識が遠くなる
などがある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
妊娠検査薬が陽性になっただけでは、妊娠している場所まではわかりません。
不妊治療後も、子宮外妊娠などを含めて経過を確認する必要があります。
陰性でも強い痛みがある場合は相談してください
家庭用検査薬が陰性だったとしても、
強い腹痛や大量出血、体調の急激な悪化などがある場合は、
「陰性だから大丈夫」
と考えず、医療機関へ相談してください。
非常に早い妊娠では尿検査が陰性になる可能性もあり、尿検査だけですべてを除外できるわけではありません。
フライングしたくなる気持ちは「我慢が足りない」からではありません
判定日まで待てない自分を、
「意志が弱い」
と思わないでください。
ここまで、
採卵。
受精。
胚培養。
胚移植。
薬。
通院。
と、自分では結果を決められないことを何度も待ってきたと思います。
だから、
「せめて今の状況だけでも知りたい」
と思うことがあります。
検査薬を使いたくなる気持ちそのものを、なくす必要はありません。
大切なのは、
検査するかどうかを、不安に押されて決めるのではなく、自分で選べる状態に戻すこと
です。
今日フライング検査をするか迷ったら
まずは、この3つを確認してみてください。
1.hCG製剤を使っていないか
使っている場合は、薬の影響による陽性の可能性があります。
薬剤名や投与日がわからなければ、治療スケジュールを確認しましょう。
2.陰性でも「まだ早い」と受け止められるか
早期検査では偽陰性があります。
陰性=治療結果ではありません。
3.結果に関係なく薬を続けられるか
自宅検査を理由に自己判断で薬を変更しないことが大切です。
今日は検査しない、と決めても朝になればまた迷うことがあります
夜は、
「判定日まで待とう」
と思えた。
でも翌朝、
検査薬を見ると、
「今日ならもう出るかもしれない」
と思う。
そんなふうに気持ちは揺れます。
一度「検査しない」と決めたら、二度と迷ってはいけないわけではありません。
このテーマの続きは、8月19日の
「フライング検査を我慢したい夜に読む話」
で、
・検査薬を見える場所に置かない工夫
・検索したくなったときの対処
・判定日までを一日ずつ区切る方法
・陽性・陰性のシミュレーションから少し離れる方法
など、心の側から具体的にお伝えします。
医学的に「待った方がよい」と理解することと、
実際に待てることは別です。
その間のつらさまで含めて、自分を責めずに過ごしていきましょう。
【参考・出典】
米国食品医薬品局(FDA)「家庭用妊娠検査」
米国食品医薬品局(FDA)「一般用hCG妊娠検査薬に関するガイダンス」
医薬品医療機器総合機構(PMDA)「遺伝子組換えヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤 オビドレル添付文書」
日本産婦人科医会「生化学的妊娠の扱い方」
Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust「体外受精における妊娠判定後の流れ」
Newcastle Hospitals NHS Foundation Trust「体外受精・顕微授精後の妊娠検査」
判定日までの過ごし方に迷っている方へ
胚移植を終えると、
「何をしても結果に影響しそう」
「この症状は大丈夫?」
「検査してしまった方が楽なのかな」
と、判定日までの毎日が長く感じることがあります。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、病院での治療や服薬を最優先にしながら、
・睡眠
・身体の緊張
・冷えやほてり
・胃腸の状態
・疲労
・治療に伴う不安
・日々の過ごし方
などを確認し、その方の治療段階に合わせた身体づくりを考えています。
妊娠の判定を鍼灸で変えることはできません。
だからこそ、
結果を待つ時間に、心と身体を消耗させすぎないこと
も大切にしています。
「判定日まで何をして過ごせばよいかわからない」
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という方は、LINEからお気軽にご相談ください。

