夫婦で妊活の温度差があるとき、どう話す?

男性不妊とご夫婦で取り組む妊活ケアを表すブログ画像

自分ばかりが焦っている気がする。
相手はもっと軽く考えているように見える。
話そうとすると、かえって苦しくなる。

妊活中、そんなふうに夫婦の温度差に傷つくことがあります。
本当は同じ方向を向きたいのに、話すほど気持ちがずれていく。
そのつらさは、妊活の悩みの中でもかなり大きいものだと思います。

まず最初にお伝えしたいことがあります。
夫婦で温度差が出ること自体は、珍しいことではありません。
それは、どちらかの愛情が足りないからでも、真剣さがないからでもなく、不安の出方や受け止め方が違うから起こりやすいことがあります。
だからこそ大切なのは、正しさで押し切ることではなく、同じ問題を別々に抱えている二人が、どう並んで話すかです。

目次

温度差がつらくなるのは、妊活が「二人ごと」なのに負担が片寄りやすいからです

妊活は二人のことです。
でも実際には、検査、通院、排卵日の意識、体調の変化、検索、不安の受け止め役が、女性側に片寄りやすいことがあります。

アメリカの生殖医学会(ASRM)とアメリカ泌尿器科学会の男性不妊ガイドラインでは、不妊は男性因子、女性因子、または両方の組み合わせで起こりうるため、最初から両方を並行して評価することが必要とされています。
また、アメリカの生殖医学会は、男性因子は単独で20〜30%、さらに20〜30%で関与し、全体として約半数の不妊カップルに男性側の要素が関わると案内しています。

つまり、妊活は最初から「女性だけが頑張るもの」ではありません。
それなのに実際の負担が片寄ると、温度差ではなく、孤独感として感じやすくなります。

「温度差」は、気持ちの大きさではなく、表し方の違いでも起こります

妊活のしんどさは、同じように表に出るとは限りません。
話して整理したい人もいれば、考えすぎないように黙る人もいます。
すぐ調べて動きたい人もいれば、少し時間を置いてから考えたい人もいます。

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の心理社会的ケアのガイドラインでは、妊活や不妊治療の場面で両方のパートナーを診断や治療の過程に積極的に関わらせることが勧められています。
また、感情面や関係面でのつらさが強い場合には、追加の心理社会的支援につなぐことも勧められています。

つまり、温度差をなくそうとする前に、
二人とも関わる形を作ること
が大切です。
「同じ気持ちになること」より、「同じ場に立つこと」のほうが、先に必要なことがあります。

話し合いがうまくいかない時は、「内容」より「タイミング」で失敗していることもあります

妊活の話は、心が疲れている時ほどこじれやすくなります。
生理前、生理が来た直後、夜遅い時間、排卵日前後、仕事で疲れきった後。
こういう時は、内容が悪いのではなく、話すタイミングが悪いだけでぶつかりやすくなります。

英国ヒト受精・胚研究機構(HFEA)は、妊活や不妊治療は感情のジェットコースターのようになりやすいと案内していて、家族や友人だけで足りない時は、カウンセラーや同じ経験のある人から追加の支えを得ることも役立つとしています。

だからこそ、夫婦で妊活の話をする時は、
「今ここで全部分かってもらわないと」
ではなく、
話せる時間と話せる量を選ぶ
ことがとても大切です。

まず共有したいのは「気持ち」より「事実」です

温度差がある時ほど、最初に気持ちをぶつけると、相手は責められたように感じやすくなります。
そのため最初は、感情を否定するのではなく、事実から並べるほうが話しやすくなります。

たとえば、

  • いつから妊活しているか
  • 今の周期はどうか
  • 排卵日はいつ頃か
  • 何がまだ確認できていないか
  • 何に自分が負担を感じているか

という順に話すほうが、
「あなたが悪い」
ではなく、
「今こういう状況なんだよね」
にしやすくなります。

アメリカの疾病対策センター(CDC)でも、男性不妊の評価は精液検査、病歴、身体診察を含めて行い、男性側の要因がどう関わっているかを確認すると案内しています。
女性側だけで抱え込まず、まず二人の課題として整理することが大切です。

話す時は、「お願い」を一つに絞るほうが伝わりやすいです

温度差で苦しい時ほど、言いたいことがたくさん出てきます。
でも、一度に全部伝えようとすると、相手には「責められている」ように届きやすくなります。

だから話す時は、お願いを一つに絞るのがおすすめです。

たとえば、

  • 今月は一緒に排卵日の話を5分だけしたい
  • 一度、精液検査について調べてみてほしい
  • 次の受診日は一緒に来てほしい
  • 結果が出た日は、先に話を聞いてほしい

このくらい具体的だと、相手も動きやすくなります。

「もっと真剣になって」
より、
「今はこれを一緒にしてほしい」
のほうが、夫婦の会話は前に進みやすいことがあります。

東洋医学では、夫婦の温度差で苦しい時は「肝」の張りつめが強くなりやすいと考えます

東洋医学や中医学では、強い我慢や怒り、言いたいことを飲み込む状態が続くと、気の巡りが滞りやすくなると考えます。
古典の『黄帝内経』でも、感情と五臓の関わりは重視されていて、春から初夏はとくに「肝」が乱れやすい時期とされます。

夫婦の温度差で苦しい時に出やすいのは、

  • ため息が増える
  • 胸や脇がつかえる
  • 首肩がこる
  • 眠りが浅い
  • 食欲にむらが出る
  • 生理前にイライラが強くなる

といった状態です。
東洋医学では、こうした状態を**肝鬱気滞(かんうつきたい)**とみることがあります。

また、悩みすぎて胃腸が弱り、だるさやお腹の張りまで出てくると、**肝脾不和(かんぴふわ)**のように、巡りと消化の両方が乱れていると考えることもあります。

つまり、夫婦の温度差は、気持ちの問題だけでなく、体のしんどさとしても出やすいのです。

不妊・妊活における鍼灸の役割

ここも、誠実にお伝えしたいところです。
鍼灸は、夫婦の話し合いそのものを代わりにしてくれるものではありません。
また、精液検査や排卵の確認、卵管の通り道の確認など、妊活に必要な検査や治療の代わりにもなりません。
必要な確認は、クリニックや病院など、専門の医療機関で行うことが大切です。

その一方で、妊活中に重なりやすい

  • 冷え
  • 首肩のこわばり
  • 眠りの浅さ
  • 気持ちの張りつめ
  • 月経前後の不調
  • 自律神経の乱れを感じる状態

などを、東洋医学の視点から整える支えにはなれます。

英国ヒト受精・胚研究機構(HFEA)は、鍼灸を含む補完療法について、リラクゼーションやウェルビーイングのために取り入れられることがある一方、妊娠率を高める明確な根拠は十分ではないと案内しています。
当院でも、鍼灸を「結果を約束する方法」としてではなく、夫婦で妊活を続けるための心と体の土台を整える補助的な支えとして位置づけています。

今日からできる3つ

1.妊活の話は「疲れていない時間」に短く話す

夜遅くや、感情が高ぶっている時は避けて、
10分だけ、
一つの話題だけ、
と決めて話してみてください。

長く深く話すことより、続けて話せる形を作ることが大切です。

2.「分かってよ」より「一緒にしてほしいこと」を伝える

温度差がある時ほど、気持ちの一致を求めたくなります。
でも最初は、気持ちより行動を一つそろえるほうが現実的です。

たとえば、

  • 一緒に情報を見る
  • 一緒に受診日を確認する
  • 一緒に検査の話を聞く

このくらいからで十分です。

3.初夏の養生で、体の張りつめをほどく

今の時期は、

  • たけのこ
  • そら豆
  • アスパラガス
  • 初鰹
  • 金目鯛

など、旬のものを無理のない範囲で取り入れながら、冷たいものや甘いものに偏りすぎないことを意識してみてください。
話し合いの前後に白湯や温かい汁物を入れるだけでも、体のこわばりは少し変わることがあります。

自分でやさしく触れやすいツボ

夫婦の温度差で気持ちが張りつめた時に使いやすいツボがあります。

太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前。
ため息が増える時、イライラしやすい時、気の巡りを整えたい時に使いやすいツボです。

神門(しんもん)
手首の小指側、手のひら側のしわのあたり。
胸のざわつきがある時、落ち着かない時、眠りに入りにくい時に使いやすいツボです。

どちらも、強く押し込む必要はありません。
息を吐きながら、少し気持ちいいくらいでやさしく触れてみてください。
妊娠の可能性がある時や体調に不安がある時は、無理をせずご相談ください。

当院の考え方

当院では、妊活中の夫婦の温度差を軽く見ません。
でも、どちらかを悪者にする見方もしません。

温度差の背景には、
不安の出し方の違い、
抱え方の違い、
情報量の差、
検査や通院の負担の片寄り、
眠りの浅さや冷え、
月経前後の不調など、いくつもの要素が重なっていることがあります。

だからこそ当院では、必要な検査や治療はクリニックや病院など、専門の医療機関で大切に進めていただきながら、
その土台として、

  • 冷え
  • 睡眠
  • 自律神経の乱れを感じる状態
  • 気持ちの張りつめ
  • 月経前後の不調
  • 体質や生活習慣

などを、東洋医学の視点から丁寧にみていくことを大切にしています。

夫婦の温度差は、愛情が足りない証拠ではありません。
ただ、今のままではつらいというサインです。

話し合いがうまくいかない時は、
「ちゃんと伝えなきゃ」
より、
「今日は一つだけ一緒に決めよう」
くらいで大丈夫です。

ひとりで抱えず、まずは今の気持ちと体の状態を一緒に整理するところから始めていきましょう。

この記事を書いた人

ロータスリーフ 蓮心はり灸堂
院長 菅原 裕万
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者

奈良・上牧町で、妊活中の方や女性のお身体のお悩みに向き合い、マタニティケア・産後ケアまで、ライフステージに合わせた鍼灸施術を行っています。
病院での検査や治療を大切にしながら、東洋医学の視点も取り入れ、冷え・睡眠・自律神経・体質・生活習慣などを丁寧に確認し、その方に合った身体づくりを一緒に考えることを大切にしています。

院長プロフィールを見る

ご自身に合ったより詳しいセルフケアを知りたい方、身体の土台作りから見直したい方は、当院にご相談ください。

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