暑い日が続くと、
冷たい水。
アイスコーヒー。
冷えたお茶。
炭酸飲料。
などが欲しくなります。
一方で、
「冷たいものを飲むと、すぐお腹が痛くなる」
「夏になると下痢が増える」
「冷たい飲み物ばかりになると、食欲が落ちる」
という方もいます。
妊活中だと、さらに、
「冷たいものを飲むと子宮まで冷える?」
「着床によくない?」
「常温の水しか飲まない方がいい?」
と心配になることもあるでしょう。
まず、大切なことからお伝えします。
冷たい飲み物を飲んだからといって、それだけで子宮が冷えたり、妊娠しにくくなったりすることを示す十分な医学的根拠はありません。
また、
冷たい飲み物が、すべての人の胃腸を悪くするわけでもありません。
研究では、冷たい飲料は胃の中で比較的速やかに温まり、飲み物の温度が胃から腸へ送られる速度へ与える影響は、小さく一時的である可能性が示されています。
ただし、
胃腸が敏感な方では、冷たいものをきっかけに腹痛や下痢などが起こることがあります。
大切なのは、
「冷たいものは身体に悪い」
と一律に禁止することではなく、
自分の胃腸が、どの温度・量・飲み方なら楽なのかを知ること
です。
冷たい飲み物は、胃の中でずっと冷たいままではありません
「氷水を飲むと、お腹の中までずっと冷えてしまう」
というイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし、人の身体には体温を一定に保つ働きがあります。
2000年に行われた人を対象とした研究では、冷たい飲料は摂取後5分以内に胃の中で30℃を超えるまで温まり、飲料温度による胃排出への影響は小さく、一時的である可能性が示されています。
そのため、
冷たい水を一杯飲んだだけで、胃腸全体が長時間冷え続ける
と考える必要はありません。
それでも「冷たいものを飲むとお腹が痛い」人がいるのはなぜ?
ここが大切なところです。
全員ではありませんが、胃腸が敏感な方では、温度刺激によって症状が出ることがあります。
過敏性腸症候群(IBS)の患者さんを対象にした研究では、4℃の冷水を飲んだあと、特に下痢型IBSの女性で腹痛・腹部不快感、膨満感、下痢などの症状が起こりやすいことが報告されています。
ただし、これは比較的小規模な研究で、
「冷水はすべての人に悪い」という意味ではありません。
胃腸が敏感な方では、冷たさが一つの刺激になる可能性がある、という捉え方が適切です。
冷たさだけでなく「一気飲み」も見直してみる
真夏に帰宅すると、
冷蔵庫から冷たい飲み物を出し、一気に何百mLも飲みたくなることがあります。
このとき胃腸へ入ってくるのは、
「冷たさ」
だけではありません。
短時間に入ってくる大量の水分そのもの
も胃を膨らませます。
そのため、
・胃が重い
・お腹が張る
・すぐ満腹になる
・食欲がなくなる
という方は、
「冷たいから悪い」
と決めつける前に、
一回に飲んでいる量が多すぎないか
も確認してみてください。
夏は「飲み物でお腹いっぱい」になりやすい
暑くなると食欲が落ち、
水分だけで済ませることが増える方もいます。
朝はアイスコーヒー。
昼は冷たいお茶。
午後にスポーツドリンク。
帰宅して炭酸飲料。
夕食時にはあまりお腹が空かない。
このような状態が続けば、
「冷たいもの」の問題だけでなく、
飲料によってお腹が満たされ、食事量が減っている
可能性があります。
妊活中の身体づくりでは、水分だけでなく、
・エネルギー
・たんぱく質
・鉄
・葉酸
・ビタミンやミネラル
などを食事からとることも大切です。
飲み物だけで一日を乗り切る状態が続かないようにしましょう。
スポーツドリンクは毎日の水代わりにしなくても大丈夫
汗をかくと、
「スポーツドリンクを飲んだ方が身体にいい」
と思うことがあります。
大量に汗をかいたときには、水分と電解質を補える飲料が役立つ場面があります。
ただし、一般的なスポーツドリンクには糖分も含まれています。
普段の生活で大量の発汗がない場合、毎日の水分をすべてスポーツドリンクに置き換える必要はありません。
通常の水分補給では、
水や無糖のお茶などを基本
にし、大量に汗をかいた場合などは、その状況に合わせて水分と塩分を補うと考えるとわかりやすいでしょう。
厚生労働省も、暑い時期にはのどが渇く前からこまめに水分をとるよう勧めています。
「冷たい飲み物をやめる」より水分不足に注意
妊活中に冷えを気にするあまり、
「夏でも常温か白湯しか飲まない」
「冷たい水しかなければ飲まない」
という方がいます。
しかし、真夏には発汗によって水分が失われます。
脱水を防ぐことの方が優先です。
WHOも暑い時期には定期的に水をとり、身体を涼しく保つことを勧めています。
冷たい水の方が飲みやすいのであれば、無理に温かい飲み物だけへ変える必要はありません。
特に、
・屋外で過ごした
・大量に汗をかいた
・暑い場所で仕事をした
・運動した
というときは、
「身体を冷やさないこと」より、
適切に水分を補うこと
を優先してください。
アイスコーヒーでお腹を壊す場合、「冷たさ」だけが原因とは限りません
「アイスコーヒーを飲むと下痢になる」
という場合、
冷たいからとは限りません。
コーヒーにはカフェインなどが含まれ、胃腸の動きに影響することがあります。
IBS患者を多く含む2024年の観察研究でも、コーヒーなどの摂取と消化器症状との関連が報告されています。ただし、これは因果関係を証明した研究ではありません。
また、
・ミルク
・人工甘味料
・糖分
など、一緒に含まれているものが症状へ関係していることもあります。
「冷たいものがダメ」と決める前に、
何を飲んだときに症状が出ているか
を一度整理してみましょう。
炭酸飲料でお腹が張る方もいます
夏は炭酸飲料がおいしく感じる季節です。
ただ、胃腸が敏感な方では、
・お腹が張る
・げっぷが増える
・胃が苦しい
と感じることがあります。
これも、
「冷たいから身体が冷えた」
というより、
炭酸による胃の膨らみ
が関係している場合があります。
症状が出る方は、
量を減らす。
ゆっくり飲む。
毎回炭酸にしない。
など、自分が楽な飲み方を探してみましょう。
妊活中はカフェインの量にも目を向けて
夏は、
アイスコーヒー。
アイスティー。
緑茶。
エナジードリンク。
など、カフェインを含む飲料が増えることがあります。
特に夕方以降のカフェインは、人によっては睡眠に影響することがあります。
妊活中の身体づくりでは、
「冷たいか温かいか」
だけではなく、
何が入っている飲み物なのか
まで見ることが大切です。
眠りが浅い方は、午後から夜に飲んでいるカフェイン量も一度確認してみてください。
東洋医学では「冷たい飲食物」をどう考える?
東洋医学では、胃腸の消化吸収に関わる働きを、
脾(ひ)・胃(い)
という考え方で捉えます。
ここでいう「脾」は、西洋医学の脾臓そのものを指しているわけではありません。
食べ物を受け取り、身体を支えるエネルギーや栄養へつなげる働きを含んだ東洋医学独自の概念です。
冷たい飲食物を大量にとり、
・食欲が落ちる
・お腹が冷える感じがする
・軟便や下痢になる
・身体が重い
・疲れやすい
という場合には、
脾虚(ひきょ)=胃腸の働きや、身体を支える力が弱っている状態
として見ることがあります。
冷たいものが特につらい「脾陽虚」
脾虚の中でも、
・温かいものを飲むと楽
・冷たいものですぐ下痢する
・お腹を触ると冷たく感じる
・朝から軟便になりやすい
・疲れやすい
・手足も冷えやすい
といった状態では、
脾陽虚(ひようきょ)=胃腸を温め、働かせる力が不足していると捉える状態
として見ることがあります。
このような方は、真夏でも冷たい飲み物を大量に続けると、胃腸症状が出やすいことがあります。
ただしこれは東洋医学的な体質の捉え方で、
胃の温度が医学的に低下しているという意味ではありません。
夏特有の「湿」も胃腸の重さとして考えます
東洋医学では、夏の湿気や水分代謝の乱れを、
湿(しつ)
という概念で捉えることがあります。
・身体が重い
・むくむ
・胃が重い
・食欲が出ない
・便がすっきりしない
・舌に厚い苔がつきやすい
といった場合です。
冷たい飲み物をたくさん飲むだけで湿になると単純に考えるわけではありません。
暑さ。
湿度。
食事。
胃腸の状態。
疲労。
などを合わせて見ていきます。
「妊活だから冷たいもの禁止」にしなくて大丈夫
東洋医学では冷たい飲食物を控えた方がよい体質もあります。
だからといって、
妊活中の女性全員が冷たいものを禁止する必要はありません。
冷たい水を飲んでも、
お腹が痛くならない。
食欲も落ちない。
便も変わらない。
体調もよい。
という方まで、無理に白湯だけへ変える必要はありません。
身体づくりで大切なのは、
「冷たいものを飲んだかどうか」
ではなく、
飲んだあと自分の身体がどう反応しているか
を見ることです。
妊娠しにくくなるのが心配な方へ
冷たい飲み物を飲んだあと、
「今日、着床によくないことをしてしまった」
「卵巣まで冷えたかもしれない」
と心配する必要はありません。
現時点で、
冷たい飲み物を飲むこと自体が、卵子の質を低下させたり、着床を妨げたりすると示す十分な医学的根拠はありません。
妊活中に胃腸を整える理由は、
「子宮を温めるため」
ではなく、
食事をとる。
水分をとる。
必要な薬を飲む。
眠る。
日常生活を送る。
といった、治療を続ける身体全体の健康を支えるためと考えてみてください。
今日からできる、夏の飲み方3つ
冷たいものをすべてやめる必要はありません。
まずは、次の3つを試してみてください。
1.冷たさより「飲んだあとの身体」を見る
冷たい水を飲んでも平気なら、そのままで構いません。
毎回、
・腹痛
・下痢
・胃の重さ
・食欲低下
が出るなら、少し温度を上げてみましょう。
冷蔵庫から出した直後ではなく、少し置いてから飲むだけでも構いません。
2.一気飲みをやめ、少量ずつ飲む
胃腸が敏感な方は、
「500mLを一気に」
よりも、
少量ずつこまめに
飲む方が楽なことがあります。
夏の水分補給としても、のどが強く渇いてからまとめて飲むのではなく、こまめにとることを意識しましょう。
3.飲み物の「中身」を確認する
冷たい・温かいだけでなく、
・糖分
・カフェイン
・炭酸
・アルコール
・人工甘味料
なども確認します。
胃腸や睡眠に影響しているものが、実は温度以外にあるかもしれません。
胃腸症状が続くときは「体質」だけで済ませないで
冷たいものを控えても、
・下痢が何週間も続く
・腹痛を繰り返す
・便に血が混じる
・黒い便が出る
・発熱がある
・体重が減ってきた
・夜中に腹痛や下痢で目が覚める
・食事が十分とれない
・強い脱水症状がある
場合は、医療機関へ相談してください。
IBSなどの機能性消化管疾患だけでなく、感染症や炎症性腸疾患など、別の病気が隠れていることもあります。
「昔から胃腸が弱いから」
「冷え性だから」
だけで済ませないことも大切です。
自分に合う飲み物は、体質によって違います
同じ夏でも、
冷たい水を飲むとすっきりする人。
常温の方が楽な人。
温かいお茶を少し飲むと胃が落ち着く人。
汗をたくさんかく人。
むくみやすい人。
下痢になりやすい人。
身体の状態はさまざまです。
だから、
「夏でも白湯が正解」
「冷たい水が一番」
と、一つの答えにはできません。
このテーマの続きは、8月18日の
「胃腸が弱い人の夏の飲み物選び 体質別の考え方」
で、脾虚、脾陽虚、湿がたまりやすいタイプ、ほてりやすいタイプなどに分けて、飲み物の選び方をもう少し具体的にお伝えします。
夏の水分補給を我慢するのではなく、
今の身体に合った飲み方を見つけていきましょう。
【参考・出典】
世界保健機関(WHO)「夏の暑さが健康に及ぼす影響と暑熱対策」
世界保健機関(WHO)「猛暑時に身体を涼しく保つ方法」
厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」
Medicine & Science in Sports & Exercise「冷たい飲料の胃排出に関する研究」
Gut「飲料温度が胃・十二指腸運動に及ぼす影響」
World Journal of Gastroenterology「過敏性腸症候群患者における冷水摂取後の内臓知覚過敏」
Alimentary Pharmacology & Therapeutics「飲食物と過敏性腸症候群の消化器症状との時間的関連」
夏になると胃腸の調子が崩れやすい方へ
夏になると、
「冷たいものを飲むとすぐ下痢をする」
「食欲が落ちて、飲み物だけで済ませてしまう」
「冷房では冷えるのに、外では汗をたくさんかく」
など、季節特有の不調が重なることがあります。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、
・胃腸の状態
・便通
・食欲
・冷えやほてり
・汗のかき方
・睡眠
・疲労
・月経の状態
・妊活や不妊治療の段階
などを確認しながら、その方に合った身体づくりを考えています。
冷たい飲み物を一律に禁止するのではなく、
何を飲むと楽で、どんな飲み方をすると不調が出るのかを一緒に整理すること
を大切にしています。
「夏になると胃腸が弱りやすい」
「自分は冷たいものをどこまで控えた方がよいのかわからない」
という方は、LINEからお気軽にご相談ください。

