立ち上がったときに、ふらっとする。
階段を上ると、以前より息が切れる。
夕方になると、身体がぐったりする。
妊活中にこうした症状があると、
「もしかして貧血?」
と気になることがあります。
特に、
・月経量が多い
・月経期間が長い
・食事量が少ない
・肉や魚をあまり食べない
・以前から貧血を指摘されたことがある
という方は、鉄不足が隠れていることもあります。
ただし、最初に大切なことがあります。
立ちくらみ=貧血とは限りません。
そして、
貧血=すべて鉄不足でもありません。
妊活中だからこそ、症状だけで自己判断せず、必要な場合には血液検査で状態を確認しておくことが大切です。
そもそも「貧血」とは?
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが十分でなく、身体の組織へ酸素を運ぶ力が低下している状態です。
ヘモグロビンは、赤血球の中にあるたんぱく質で、酸素を全身へ運ぶ役割を持っています。
貧血になると、
・疲れやすい
・身体がだるい
・息切れする
・動悸がする
・頭痛がする
・立ちくらみやめまいを感じる
・顔色が悪い
などが現れることがあります。
ただし、軽い貧血ではほとんど症状がない場合もあります。
妊活中の女性に多いのが「鉄欠乏性貧血」
貧血にはいくつか種類があります。
その中でも、月経のある女性で特に多いのが、
鉄欠乏性貧血
です。
鉄はヘモグロビンをつくるために必要な栄養素です。
身体の中にある鉄が不足すると、
まず鉄の蓄えが減っていき、
さらに不足が進むとヘモグロビンを十分につくれなくなり、鉄欠乏性貧血につながります。
妊活世代では、
・月経による出血
・過多月経
・食事からの鉄摂取不足
・妊娠による鉄需要の増加
などが関係します。
月経量が多い方は、特に鉄不足に注意
毎月の月経では血液とともに鉄も失われます。
そのため、
月経量が多い状態が長く続いている方では、鉄不足が起こりやすくなります。
たとえば、
・夜用ナプキンでも1~2時間で交換が必要
・昼間でも夜用ナプキンを使う
・大きな血の塊が頻繁に出る
・月経が7日以上続く
・夜中に何度も交換する
・月経のたびに強い疲労を感じる
という場合は、
「昔から多いから普通」
と済ませず、一度婦人科へ相談してみてください。
子宮筋腫。
子宮腺筋症。
婦人科疾患。
などが背景にある場合もあります。
「ヘモグロビンが正常なら鉄不足ではない」は本当?
ここは妊活中の方にも知っておいていただきたいところです。
血液検査では、
ヘモグロビン(Hb)
を見ることが多いと思います。
ヘモグロビンが低くなると「貧血」と診断されます。
しかし、鉄不足は、
いきなりヘモグロビンが下がるわけではありません。
身体には鉄を蓄えておく仕組みがあります。
その蓄えが減っていても、しばらくはヘモグロビンが正常範囲に保たれることがあります。
つまり、「隠れ貧血」と呼ばれるような、
貧血になる前の鉄不足
が存在することがあります。
「フェリチン」は鉄の貯金を見る目安
鉄の蓄えを評価するときに使われる代表的な検査が、
フェリチン
です。
イメージとしては、
ヘモグロビン
→ 今、血液中で働いている状態
フェリチン
→ 身体に蓄えている鉄の状態
と考えるとわかりやすいでしょう。
ヘモグロビンがまだ正常でも、フェリチンが低下している場合があります。
WHOも、鉄の状態を評価する指標としてフェリチンを用いることを推奨しています。
ただし、フェリチンには注意点もあります。
感染症や炎症などがあると、鉄が十分でなくても数値が高めに出ることがあります。
そのため、
フェリチンの数字だけを自己判断するのではなく、血液検査全体と身体の状態を合わせて評価すること
が大切です。
フェリチンはいくつあれば妊活にいい?
インターネットでは、
「妊活ならフェリチン○○以上必要」
「○○以下では着床しない」
といった情報を見かけることがあります。
しかし、
妊娠するためにフェリチンを必ず何μg/L以上にしなければならない、という確立した数値はありません。
鉄欠乏を診断する基準と、
妊娠しやすさを保証する数値は、
同じものではありません。
フェリチンは鉄の状態を確認するためには有用ですが、
数字を高くすれば高くするほど妊娠しやすくなるわけでもありません。
鉄不足と妊娠しやすさには関係がある?
鉄は、
・酸素運搬
・細胞の働き
・エネルギー代謝
などに必要な栄養素です。
そのため、妊娠前から十分な鉄状態を保っておくことは、女性の健康という意味で大切です。
2025年には、鉄欠乏のある不妊女性を対象とした研究で、鉄を補充して鉄の蓄えが改善したあと、妊娠や出生成績との良好な関連が報告されました。
ただし、この研究は観察研究です。
そのため、
「鉄を補充すれば妊娠率が上がる」
と因果関係を証明したものではありません。
現時点では、
「妊娠率を高めるために鉄をたくさん飲む」
のではなく、
鉄欠乏がある場合には、健康上の問題として適切に見つけて治療する
という考え方が大切です。
妊娠すると鉄の必要量は増えます
妊娠すると、
母体の血液量が増える。
胎盤をつくる。
胎児へ鉄を届ける。
などのため、鉄の必要量が増えていきます。
そのため、妊娠前から鉄の蓄えが少ない方は、妊娠後に鉄不足や鉄欠乏性貧血が明らかになることがあります。
WHOも、妊娠中の鉄欠乏や貧血予防を重要な母子保健上の課題として扱っています。
だからこそ、
妊娠してから慌てて鉄を増やすだけではなく、
妊活中から自分の月経量や血液検査を把握しておく
ことには意味があります。
立ちくらみがある=鉄不足とは限りません
立ちくらみがあると、
「鉄を飲めばいい」
と思ってしまうことがあります。
でも、立ちくらみにはほかの原因もあります。
たとえば、
・急に立ち上がったときの血圧低下
・脱水
・暑さ
・睡眠不足
・食事量不足
・低血圧
・薬の影響
・不整脈
・甲状腺の病気
などです。
8月は暑さや発汗によって水分が失われやすいため、
夏の立ちくらみをすべて貧血のせいにしないこと
も大切です。
こんな症状があるなら、一度血液検査を相談してみて
次のような状態が続く場合は、医療機関で相談してみましょう。
・疲れやすさが続く
・階段で息切れする
・動悸がする
・立ちくらみが多い
・頭痛が増えた
・以前より顔色が悪いと言われる
・月経量が多い
・過去に貧血を指摘された
・鉄剤を飲んでいたことがある
・妊娠を希望しているが食事量が少ない
一般的には、
・血算
・ヘモグロビン
・赤血球の大きさを示すMCV
・フェリチン
などが、状態を確認する手がかりになります。
状況によっては、
鉄だけでなく、
ビタミンB12。
葉酸。
炎症。
甲状腺。
などについて確認する場合もあります。
「貧血じゃなかった」から終わりではないことも
血液検査で、
「ヘモグロビンは正常です」
と言われたとしても、
症状が強く続いている場合は、
「では、この立ちくらみは何だろう?」
という視点も必要です。
たとえば、
・血圧
・水分摂取
・食事
・睡眠
・自律神経
・服薬
など、別の原因を確認する必要があるかもしれません。
数字だけでなく、
自分が実際に困っている症状も伝えること
が大切です。
鉄をとるなら、まず毎日の食事から
鉄を含む食品には、
・赤身の肉
・魚
・貝類
・卵
・大豆製品
・豆類
・緑黄色野菜
などがあります。
食品に含まれる鉄には、
ヘム鉄
と
非ヘム鉄
があります。
肉や魚などに含まれるヘム鉄は、比較的吸収されやすい鉄です。
一方、植物性食品などに含まれる非ヘム鉄は吸収率が低めですが、
ビタミンCを含む食品と組み合わせることで吸収を助けることができます。
「鉄といえばレバー」は毎日食べた方がいい?
レバーは鉄を多く含む食品です。
しかし、
「鉄が多いから毎日たくさん食べる」
必要はありません。
特に妊娠の可能性がある方は、レバーに多く含まれるビタミンAの一種であるレチノールを過剰にとらないよう注意が必要です。
鉄をとる方法を、
レバーだけに頼らず、
肉。
魚。
貝類。
豆類。
野菜。
など、さまざまな食品へ分散させましょう。
鉄を含む食事とお茶・コーヒーのタイミング
お茶やコーヒーに含まれる成分は、非ヘム鉄の吸収を抑えることがあります。
だからといって、
妊活中はコーヒー禁止。
お茶禁止。
という意味ではありません。
鉄不足を指摘されている方は、
鉄を含む食事や鉄剤と、
濃いお茶・コーヒーを同時にとるのを避ける。
少し時間をずらす。
という方法を考えてみてもよいでしょう。
鉄サプリを自己判断でたくさん飲めばいい?
おすすめしません。
鉄は不足すると問題になりますが、
必要以上に補えばよい栄養素ではありません。
鉄サプリメントや鉄剤では、
・吐き気
・胃の不快感
・腹痛
・便秘
・下痢
などが起こることがあります。
また、鉄の過剰摂取にも注意が必要です。
妊活用サプリ。
マルチビタミン。
鉄サプリ。
などを複数使っている場合、
知らないうちに鉄が重複することもあります。
まず、
今使っているサプリメントに何mgの鉄が入っているか
を確認してみてください。
貧血があるなら「食事だけで頑張る」と決めつけない
食事はとても大切です。
ただし、すでに鉄欠乏性貧血になっている場合、
食事改善だけでは十分な速度で鉄を補えないことがあります。
その場合には、医師から鉄剤が処方されることがあります。
鉄剤を飲むと、
便が黒くなる。
便秘する。
胃が気持ち悪い。
ということもあります。
副作用がつらいときも、
自己判断で中止するのではなく、
飲み方や薬の種類について処方した医療機関へ相談してください。
生理が重い方は「鉄を補う」だけでなく原因も確認
毎月大量に鉄を失っている場合、
鉄剤を飲み続けるだけでは、
また不足してしまうことがあります。
特に、
・月経量が多い
・月経痛が強い
・年々月経が重くなっている
・大きな血の塊が増えた
場合は、
子宮筋腫。
子宮腺筋症。
子宮内膜症。
など、婦人科疾患の有無も確認しておきたいところです。
減っている鉄を補うことと、なぜ減っているのかを確認すること。
両方が大切です。
東洋医学では、疲れや立ちくらみをどう見る?
東洋医学では、
「貧血」という検査値だけで身体を判断するのではありません。
疲れ方。
月経量。
経血の色。
睡眠。
食欲。
胃腸。
冷え。
などを合わせて見ていきます。
血虚(けっきょ)|身体を養う「血」が不足していると捉える状態
東洋医学では、
・立ちくらみを感じやすい
・顔色が青白い
・疲れやすい
・爪がもろい
・肌や髪が乾燥する
・眠りが浅い
・月経量が少ない
などがある場合に、
血虚(けっきょ)
として考えることがあります。
ここでいう「血」は、西洋医学の血液そのものだけを意味しているわけではありません。
脾虚(ひきょ)|食べても身体を支える力につながりにくいと捉える状態
・食欲がない
・食後に疲れる
・軟便になりやすい
・身体がだるい
・食事量が少ない
という方では、
脾虚(ひきょ)
という見方をすることがあります。
東洋医学では、食べ物から身体を養う働きと「脾」を関連づけて考えます。
瘀血(おけつ)|月経痛や経血の塊が目立つ状態
一方、
・月経痛が強い
・経血に大きな塊がある
・月経量が多い
・刺すような痛みがある
といった場合は、
瘀血(おけつ)=血の巡りが滞っていると捉える状態
として見ることがあります。
月経量が多い方では、
瘀血のような症状と、
失血による血虚のような症状が、
同時にみられることもあります。
東洋医学の「血虚」と医学的な貧血は同じ?
同じではありません。
ここは混同しないことが大切です。
医学的な貧血は、
血液検査によってヘモグロビンなどを測定し評価します。
一方、
血虚は東洋医学の体質・症状の捉え方です。
そのため、
血虚だから鉄剤が必要。
血虚ではないから貧血ではない。
とは判断できません。
貧血や鉄欠乏が疑われる場合は、まず血液検査で確認することを優先してください。
今日からできる3つのこと
1.月経量と症状を一度メモする
次の月経で、
・何日続くか
・ナプキンの交換回数
・血の塊があるか
・立ちくらみ
・息切れ
・疲れ方
を簡単に記録してみましょう。
診察で相談するときにも役立ちます。
2.一日一回「鉄+たんぱく質」を意識する
毎食完璧にしなくても構いません。
たとえば、
・牛赤身肉
・かつお
・あさり
・卵
・納豆
・豆腐
などを、一日のどこかで取り入れます。
鉄だけを単独で考えるより、
食事全体を整える
ことを意識してみてください。
3.使っているサプリの鉄量を確認する
妊活サプリ。
マルチビタミン。
鉄サプリ。
それぞれのラベルを見て、
鉄が重複していないか確認します。
「妊活にいいから」
と何種類も重ねる前に、現在の血液検査や食事内容を整理しましょう。
すぐ受診した方がよい症状もあります
立ちくらみがあっても、多くは緊急ではありません。
ただし、
・意識を失った
・胸が痛い
・息苦しさが強い
・安静にしていても動悸が強い
・大量の出血が続いている
・立っていられないほどふらつく
・黒い便や血便がある
などの場合は、
「鉄不足かな」
とセルフケアだけで様子を見ず、早めに医療機関へ相談してください。
妊活中だからこそ「足りないものを足せばいい」だけにしない
妊活では、
葉酸。
ビタミンD。
鉄。
亜鉛。
CoQ10。
など、
「何を足すか」
へ意識が向きやすくなります。
でも、鉄についても、
まず不足しているのかを確認すること
が大切です。
さらに、
なぜ不足したのか。
月経量が多いのか。
食事量が少ないのか。
吸収の問題があるのか。
別の病気があるのか。
まで考えます。
妊活のために数字を高くするのではなく、
これから妊娠を目指す自分自身の健康を整えるために、必要なものを必要なだけ補う。
その考え方を大切にしてみてください。
食事を整えたいのに、疲れて作れない方へ
鉄不足が気になると、
「レバーを食べなきゃ」
「毎日ちゃんと料理しなきゃ」
と思うかもしれません。
でも、疲れている方ほど、
料理そのものが負担になることがあります。
完璧な献立でなくても大丈夫です。
このテーマの続きは、8月20日の
「血虚タイプの妊活食養生 疲れやすい人の整え方」
で、
・疲れている日でも取り入れやすい食事
・東洋医学で考える血虚の養生
・胃腸が弱い方の食べ方
・「鉄をとらなければ」と頑張りすぎない工夫
について、もう少し具体的にお伝えします。
【参考・出典】
世界保健機関(WHO)「貧血を定義するヘモグロビン基準に関するガイドライン」
世界保健機関(WHO)「フェリチン濃度を用いた鉄の状態の評価」
世界保健機関(WHO)「貧血」
世界保健機関(WHO)「妊娠中の鉄・葉酸補給」
米国産科婦人科学会(ACOG)「妊娠中の貧血」
英国国民保健サービス(NHS)「鉄欠乏性貧血」
Acta Obstetricia et Gynecologica Scandinavica「鉄欠乏と妊孕性との関連」
JAMA「成人の鉄欠乏に関するレビュー」
妊活中の疲れや立ちくらみを「体質だから」で済ませたくない方へ
「昔から立ちくらみがある」
「月経のたびにぐったりする」
「妊活中だから、もっと栄養をとらなければと思っている」
そんな方もいらっしゃると思います。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、
・月経量や月経痛
・疲れ方
・食事
・胃腸の状態
・睡眠
・冷えやほてり
・妊活や不妊治療の段階
・血液検査で指摘されていること
などを確認しながら、その方に合った身体づくりを考えています。
貧血や鉄欠乏そのものは、必要に応じて医療機関で検査・治療することが大切です。
そのうえで、
食べること、眠ること、疲労をためすぎないことなど、治療を続ける身体全体を整えていくこと
を鍼灸や養生の役割として考えています。
「月経量が多く、いつも疲れやすい」
「妊活中の食事や体調について一度整理したい」
という方は、LINEからお気軽にご相談ください。

