11月に入ると、街の雰囲気が少しずつ年末へ向かい始めます。
そんな時期に、
「今年中に妊娠できたらと思っていた」
「もう11月なのか……」
「来年も治療を続けているのかな」
と、急に気持ちが重くなることがあります。
年末そのものが妊活に悪いわけではありません。
けれど、一年の区切りが見えてくることで、治療期間や年齢、周囲との違い、これからの予定を一度に意識しやすくなります。
ただでさえ通院や治療を続けているところへ、「今年も終わる」という感覚まで重なれば、心が疲れてしまうのも不思議ではありません。
そんなときは、さらに頑張る方法を探す前に、今の自分を苦しくしているものを一つずつ分けてみることが大切です。
「今年中に」という見えない期限ができてしまう
妊活に、「12月31日まで」という医学的な期限があるわけではありません。
それでも年末が近づくと、
「今年こそ妊娠したかった」
「あと何周期あるだろう」
「もう一回移植できるかな」
と、自分の中に知らないうちに期限を作ってしまうことがあります。
特に人工授精、採卵、胚移植など、月経周期に合わせて治療を進めていると、一か月、一周期の重みを強く感じやすくなります。
生理が来れば、
「また一か月進んでしまった」
次の診察日を確認すれば、
「これが終わったらもう12月」
そんなふうに、目の前の一日より先のカレンダーばかりが気になってしまうこともあります。
けれど、
一年の終わりと、妊活の区切りは同じではありません。
12月31日までに結果が出なかったからといって、それまで受けてきた検査や治療、身体を整えてきた時間が無駄になるわけではありません。
年末という日付を、妊活の「締め切り」にしなくてもいいのです。
年齢まで急に進んだように感じてしまう
妊活では、どうしても年齢を意識する場面があります。
そのため年が変わるだけでも、
「来年は○歳になる」
という数字が頭に浮かび、不安になる方がいます。
実際の生殖医療では、年齢は治療方針を考えるうえで大切な情報の一つです。
治療を急いだ方がよい場合もありますので、必要な検査や今後の方針については主治医と相談していくことが大切です。
一方で、
医学的に年齢を考えることと、一日中その数字に追い立てられることは別です。
年齢について必要な判断は医療機関と相談する。
そして、それ以外の時間まで、
「もう○歳だから」
「時間がないから」
と自分を追い立て続けなくてもかまいません。
年が変わった瞬間に、身体が急に別の状態へ変わるわけではないからです。
周囲の「家族」が目に入りやすい季節
年末年始は、家族に関する話題が増えます。
年賀状。
帰省。
親戚との集まり。
友人との忘年会。
SNSにも家族写真や子どもの成長を振り返る投稿が増えてくるかもしれません。
普段なら流せることなのに、この時期だけ胸に刺さる。
そんなこともあります。
「人の妊娠報告を素直に喜べない」
「赤ちゃんの写真を見るのがつらい」
「そんな自分が嫌になる」
そう感じる方も少なくありません。
でも、
誰かを祝福する気持ちと、
自分の状況がつらい気持ちは、
同時にあってもおかしくありません。
「おめでとう」と思いながら、自分の胸が痛む。
それは相手を嫌っているからではなく、自分にも大切な願いがあるからこそ起こる感情です。
無理に明るく受け止めようとしなくてもいいと思います。
年末は「治療以外の予定」も増えていく
11月から12月は、仕事が忙しくなる方も多い時期です。
そこへ、
・診察
・採血
・卵胞チェック
・採卵
・胚移植
・薬の受け取り
などが重なると、予定を組むだけでも疲れてしまいます。
「仕事をまた休まないといけない」
「この日に採卵になったらどうしよう」
「年末年始の休診日に重ならないかな」
治療そのものだけでなく、仕事や家族との調整まで考え続けなければならない。
妊活の負担は、注射や薬、処置だけではありません。
こうした生活の調整をずっと続けること自体が疲れにつながることがあります。
頭の中が予定でいっぱいになったときは、一度すべてを考えるのではなく、
・次の受診日
・薬の残量
・仕事で外せない日
・病院へ確認したいこと
だけを書き出してみてください。
頭の中で何度も確認するより、「ここに書いてあるから、今は考えなくていい」と置いておける場所を作る方が楽になることがあります。
焦ったときほど「何かを増やしたくなる」
年末が近づいて焦りが出てくると、
「食生活をもっと変えた方がいい?」
「運動を始めようかな」
「サプリを増やした方がいい?」
「もっと温めた方がいい?」
と、できることを探したくなるかもしれません。
もちろん、生活習慣を見直すことが必要な場合もあります。
ただ、仕事をしながら通院し、薬を使い、日々の生活もこなしている方は、すでに十分たくさんのことをしています。
そこへさらに、
「これもやらなければ」
を重ねてしまうと、身体を整えるはずの妊活が、毎日の負担に変わってしまいます。
年末に向かう時期だからこそ、
増やすケアではなく、減らすケア
を考えてみてもいいと思います。
たとえば、
・寝る前の妊活検索を今日はやめる
・予定を一つ減らす
・疲れた日は料理を簡単にする
・すべての誘いに参加しない
・睡眠を削って家事を終わらせない
という選択です。
妊活中だからといって、毎日100点の生活を続ける必要はありません。
70点の日も、50点の日もありながら、無理なく続けられることの方が大切です。
心の疲れは、身体にも表れることがあります
気持ちが張りつめている時期は、
眠りが浅い。
朝から疲れている。
肩や首がこわばる。
食欲が安定しない。
胃腸の調子が崩れる。
手足の冷えが気になる。
など、身体の変化を感じる方もいます。
もちろん、こうした症状にはさまざまな原因があります。
「全部ストレスのせい」と決めつける必要はありません。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、妊活中の方からご相談を受ける際、検査数値や治療の段階だけではなく、
睡眠はとれているか。
冷えやほてりはないか。
胃腸の調子はどうか。
疲れが残っていないか。
肩や背中に力が入り続けていないか。
といった日々の身体の状態も確認しています。
鍼灸が医療機関で行う不妊治療の代わりになるわけではありません。
採卵や移植など必要な治療は医療機関で進めながら、治療期間を少しでも過ごしやすくするために身体を整えていくことも、妊活を支える一つの方法だと考えています。
何かをさらに頑張ってもらうためではなく、頑張り続けている身体が少し力を抜ける時間をつくる。
それも当院が妊活サポートで大切にしていることです。
年末は「一年の答え合わせ」をする日ではありません
年末が近づくと、一年を振り返る機会が増えていきます。
そのとき妊活まで、
「妊娠できたか」
「妊娠できなかったか」
だけで振り返ってしまうことがあります。
でも、この一年にはそれだけでは測れない時間があったはずです。
初めて病院へ行った日。
結果を聞くのが怖かった検査の日。
注射を続けた日。
採卵を終えた日。
胚移植を迎えた日。
判定を聞きに行った日。
何も考えたくないのに、翌朝また仕事へ向かった日もあったかもしれません。
結果がまだ見えていない時間も、何もしていなかった時間ではありません。
年末が近づいて心が苦しくなったら、
「今年中に何とかしないと」
ではなく、
「今の自分が、年末まで少し楽に過ごすには何を減らせるだろう」
と考えてみてください。
今夜は検索をやめる。
早めに布団へ入る。
行きたくない予定を一つ断る。
身体を温めて、何もしない時間をつくる。
妊活のために何かを足さない日があってもいいのです。
予定を見るだけで苦しくなる夜もあります
11月、12月のカレンダーを開いた瞬間、
通院予定。
仕事。
帰省。
クリスマス。
年末年始。
いろいろな予定が目に入って、
「ここまでに結果が出ていなかったらどうしよう」
と苦しくなる夜もあると思います。
そんな夜は、来月まで全部考えなくてもかまいません。
まず今日を終える。
それだけでいい日もあります。
この続きは、11月3日夜時公開の
「年末の予定を見るだけで苦しくなる夜へ」
で、予定やカレンダーを見ると焦ってしまうときの心の整理について、もう少し静かにお話しします。
一人で整理しきれないときは、そのままお話しください
妊活について相談するとき、
「ちゃんと説明できるようにしてから」
と考えなくても大丈夫です。
「何がつらいのか自分でも分からない」
「治療は進めたいけれど、少し疲れている」
そんな状態のままでもかまいません。
当院では、現在の治療段階や身体の状態を伺いながら、その時期に合わせて身体を整えていきます。
まとまっていなくてもかまいません。
「少し話してみたい」と思ったところからご相談ください。
参考・出典
・World Health Organization「Guideline for the prevention, diagnosis and treatment of infertility」
・European Society of Human Reproduction and Embryology「Routine psychosocial care in infertility and medically assisted reproduction」
・日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」

