妊活中の冷たい手足と血の巡り

東洋医学の視点から体質改善を伝える奈良・上牧町の鍼灸院ブログ画像

秋から冬へ向かうころ、

「足先が冷たい」

「手がなかなか温まらない」

と感じる方が増えてきます。

妊活中だと、そこからさらに、

「こんなに手足が冷たいなら、子宮も冷えているのかな」

「血流が悪いと着床しにくい?」

と心配になることがあります。

インターネットでも「妊活=温活」という情報を目にするため、冷たい手足を見るたびに、

もっと温めなければ。

靴下を増やしたほうがいい?

お腹にもカイロを貼ったほうがいい?

と、セルフケアが増えてしまうこともあります。

でも、まず知っておいてほしいのは、

手足が冷たいことと、妊娠できる・できないをそのまま結びつけることはできない

ということです。

今日は、手足の冷えを必要以上に怖がらず、今の身体に合った整え方を考えてみましょう。

目次

寒い日に手足が冷たくなるのは、身体の自然な反応でもあります

気温が下がると、身体は体温を保つために皮膚や手足など末端の血管を収縮させます。

そのため、身体の中心部はそれほど寒くなくても、指先や足先が冷たく感じることがあります。

特に、

朝の冷え込みが強い日。

長時間座っていた日。

外から帰ってきた直後。

などに手足が冷えること自体は、必ずしも異常ではありません。

まず、

「冷たい=身体に悪いことが起きている」

と考えすぎないようにしてください。

「手足が冷たい=子宮が冷たい」ではありません

妊活中に特に気になるのが、この部分だと思います。

手足は身体の末端なので、外気温や身体の体温調節の影響を受けやすい場所です。

一方、子宮などの内臓は、身体の内部で血流を保ちながら働いています。

そのため、

手足の皮膚温が低いことだけで、「子宮が冷えている」と判断することはできません。

同じように、手足を温めれば子宮の血流が必ず増え、妊娠率が上がると断定することもできません。

冷えがつらいなら整えていく。

でも、冷えを妊娠できない原因として背負い込まない。

この二つを分けて考えてみてください。

「血流が悪いから妊娠できない」と決めない

妊活では「血流」という言葉をよく目にします。

もちろん、血液は酸素や栄養などを身体へ運ぶ大切な役割を持っています。

ただし、

手足が冷たい。

肩がこる。

座り仕事が多い。

というだけで、

「子宮への血流が悪いから妊娠できない」

とは判断できません。

妊娠には年齢、卵子や精子、子宮・卵管、胚、排卵、治療方法など多くの要素が関係します。

「冷えを治さなければ妊娠できない」という宿題を自分に課さなくて大丈夫です。

東洋医学では、冷え方をもう少し細かく見ます

東洋医学では、

「冷えていますか?」

だけで終わらず、

どこが冷えるのか、どんな時間帯に冷えるのか、温めるとどう感じるのかなどを確認します。

たとえば、手足全体が冷える方もいれば、足先だけ冷える方もいます。

また、足は冷たいのに顔はほてる方、疲れた日に冷えが強くなる方、生理中に特に冷える方など、同じ「冷え」でも身体の感じ方はさまざまです。

東洋医学では「陽虚」「血虚」「気血の巡り」などの言葉で整理することがありますが、これは西洋医学の診断名ではありません。

自分の身体を一つの体質名へ押し込めるためではなく、冷え以外の変化も一緒に見るための考え方です。

「血の巡り」と医学的な血流は同じ意味ではありません

ここも混同されやすいところです。

東洋医学でいう「血(けつ)」は、西洋医学の血液そのものと完全に同じ概念ではありません。

そのため、

「瘀血がある=医学的に血液循環が悪い」

とそのまま置き換えることはできません。

東洋医学では、生理の状態、痛み、冷え、肌の状態、睡眠、疲れなどを組み合わせて身体を見ます。

血液検査や超音波検査などが必要な場合は、医療機関で確認することが大切です。

まず見直したいのは「動く時間」

デスクワークや長時間の移動が続くと、一日の大部分を座ったまま過ごすことがあります。

秋から冬は外へ出る機会も減りやすく、

気づけば、

朝から仕事。

帰宅。

夕食。

そのまま座って過ごす。

という一日になっていることもあります。

冷えが気になるからと温活グッズを増やす前に、

日中に身体を動かす時間が減っていないか

を振り返ってみてください。

昼休みに少し歩く、階段を使う、1時間に一度立ち上がるなど、特別な運動でなくても構いません。

冷たい手を何度も確認しない

妊活中は、自分の身体の変化に敏感になります。

その結果、

「今日も手が冷たい」

「まだ足が冷たい」

と何度も触って確認してしまうことがあります。

そして確認するたびに、

「やっぱり私は冷えている」

と不安が大きくなることもあります。

手足の温度は、一日の中でも変化します。

外気温、運動、食事、入浴などでも変わります。

冷えているかを何度も確認するより、

冷えていて実際につらいかどうか

を基準にしてみてください。

温めるなら「快適になるところまで」

足が冷えて眠りにくいなら、

靴下。

レッグウォーマー。

膝掛け。

湯たんぽ。

などを使って構いません。

ただ、温かくなったあとも、

「妊活のためだから」

と温め続ける必要はありません。

汗をかく、顔がほてる、寝苦しい、喉が渇くようなら、少し温めすぎかもしれません。

寒ければ足す、暑ければ減らす。

身体の感覚に合わせて調整してください。

お風呂も「血流のため」と長く入らなくて大丈夫

お風呂から出ると、手足が温かく感じる方も多いと思います。

入浴が心地よければ、夜のリラックスタイムとして取り入れてください。

ただし、

「血流を良くするために20分以上入らなければ」

「汗をたくさんかくまで出ない」

という決まりはありません。

長く入ったあとに疲れる、のぼせる、動悸がするのであれば、今の身体には負担になっています。

気持ちよく温まったところで終えて構いません。

食事も「温める食材」だけに偏らせない

冷えが気になると、

生姜。

ねぎ。

唐辛子。

温かいスープ。

など、「温める」と言われる食材が気になります。

もちろん、温かい汁物が心地よい季節ですから、楽しんで取り入れて構いません。

でも、特定の食材を毎日大量に食べれば冷えが解消するわけではありません。

妊活中ならなおさら、特定の食品に偏るより、主食、たんぱく質源、野菜などを無理なく食べることを大切にしてください。

温かいものを食べることと、栄養のある食事をすることは別の話です。

冷えと一緒に「疲れ」が強い場合

手足の冷えだけでなく、

朝から強くだるい。

階段で息切れする。

動悸がする。

顔色が気になる。

生理の出血量が多い。

といった変化がある場合には、冷え性だけで説明しないことが大切です。

貧血などが関係していることもあります。

また、寒さに非常に弱くなった、体重が変化した、便秘や強い疲労、生理周期の変化などが重なる場合には、甲状腺の状態を確認することもあります。

「体質だから」と決めつけず、気になる症状が続くときは医療機関へ相談してください。

指の色が白や青紫へ変わる場合

寒いときや緊張したときに、

指先が真っ白になる。

青紫色になる。

そのあと赤くなって痛む。

といった変化が起こる方もいます。

こうした状態では「レイノー現象」など、医学的に確認したほうがよい場合があります。

また、片側の手足だけ急に冷たくなった、強い痛みやしびれがある、傷が治りにくいといった場合には、一般的な冷え性としてセルフケアだけで様子を見ないでください。

妊活中の冷えは「整える対象」ではあっても「責任」ではありません

妊活中、

身体を冷やさないようにしてください。

と言われると、

冷たいものを飲んだから。

薄着をしたから。

裸足だったから。

と、自分の行動を振り返りたくなります。

でも、その一つの行動だけで妊娠の結果が決まるわけではありません。

冷えてつらいなら、少し快適にする。

動いていないなら、少し歩く。

疲れているなら休む。

そのくらいで構いません。

妊娠するために冷えをゼロにする必要はありません。

鍼灸でも「冷え=温めるだけ」ではありません

ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、手足の冷えをご相談いただいた場合にも、単純に身体を強く温める施術を行うわけではありません。

冷える場所や時間帯に加え、生理周期、睡眠、胃腸、ほてり、疲れ、現在受けている不妊治療なども確認します。

足先は冷たいのに顔はほてる方と、全身が冷えて疲れやすい方では、身体の見方も異なります。

妊活を東洋医学の視点からどのように捉えているのか詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

夜は「セルフお灸」という選択肢もあります

手足が冷える方の中には、

「自宅でお灸を使ってみたい」

という方もいると思います。

10月27日夜の記事
「手足が冷える人の夜のセルフお灸」
では、お灸を使うときの基本的な注意点と、夜に無理なく取り入れる方法をご紹介します。

「冷えているからたくさんお灸をする」のではなく、安全に使うことを中心にお伝えします。

手足の温度より、身体全体を見ていきましょう

手足が冷たい日があっても、それだけで身体全体の状態を判断することはできません。

最近よく歩けているか。

眠れているか。

食べられているか。

生理に変化はないか。

疲れが強くなっていないか。

そうしたことも一緒に見てみてください。

冷えだけを何とかしようとしてセルフケアを増やすより、生活全体を少し整えるほうが身体が楽になる場合もあります。

「冷えだけではなく、今の身体を一度まとめて見てほしい」という方もご相談ください。


この記事を書いた人

菅原 裕万
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂 院長
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者

施術歴17年以上。妊活・婦人科・マタニティなど女性のライフステージに伴う身体の変化を中心に、冷え・ほてり・睡眠・胃腸・生理周期なども確認しながら身体づくりをサポートしています。


参考・出典

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」

日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」

米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)「Acupuncture: Effectiveness and Safety」

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