検査結果を聞いたあと、
「大丈夫?」
と声をかけたいのに、何と言えばいいのか分からない。
本当は相手を責めたくないのに、
「もっと早く検査してくれたらよかったのに」
という言葉が出そうになる。
あるいは、
「私ばかり病院へ行っている」
という気持ちが積み重なっていることもあると思います。
10月16日朝の記事「夫婦で検査結果を受け止めるとき」では、検査結果を「誰のせいか」を決める材料にせず、今後を考えるための情報として受け止めることについてお伝えしました。
今回はその続きです。
結果そのものだけではなく、その結果を二人でどう話すかについて考えてみましょう。
話し合いの目的を「原因探し」にしない
検査で気になる結果が出ると、
「どうしてこうなったんだろう」
と原因を探したくなります。
生活習慣だったのか、年齢なのか、もっと早く検査すべきだったのかと考えているうちに、いつの間にか会話が、
「誰が何をしなかったか」
を確認する時間になってしまうことがあります。
でも、夫婦で話す目的は過去の責任を決めることではありません。
まず確認したいのは、
「この結果を受けて、次に何をする必要があるのか」
ということです。
再検査が必要なのか、追加の説明を聞くのか、治療方針を相談するのか。
次の一歩に焦点を移すと、会話が少し整理しやすくなります。
「あなたは」より「私は」で気持ちを伝える
たとえば、
「あなたがもっと早く検査してくれなかったから」
と言われると、相手は責められていると感じやすくなります。
同じ気持ちでも、
「私は、もっと早く二人で検査を受けていたらよかったのかなって考えてしまって、今ちょっと苦しい」
と伝えると、自分がどう感じているのかを話す形になります。
これは相手に遠慮して本音を隠すという意味ではありません。
怒っていることも、不安なことも話して構いません。
ただ、相手を評価する言葉と、自分の気持ちを伝える言葉を分けるだけでも、受け取られ方は変わります。
「私ばかり頑張っている」と感じるとき
不妊治療では、どうしても女性側の通院や身体的な負担が多くなる場面があります。
採血や内診、薬、注射、採卵、胚移植などが続くと、
「どうして私ばかり」
と思うことがあっても不思議ではありません。
その気持ちを我慢し続ける必要はありません。
ただ、
「あなたは何もしていない」
と伝えるより、
「最近、通院が続いていて一人で背負っている感じがしている。少し一緒に考えてほしい」
と伝えたほうが、具体的に何をしてほしいのかへ会話を進めやすくなります。
してほしいことも、
次の診察へ一緒に来てほしい、治療について一度調べてほしい、今日はただ話を聞いてほしい、というように具体的にすると伝わりやすくなります。
相手が黙っている=関心がない、とは限りません
検査結果を聞いたあと、
何も言わない。
普段どおりにしている。
すぐ別の話をする。
そんなパートナーを見ると、
「どうして平気なの?」
と思うことがあります。
でも、ショックを受けたときの反応は人によって違います。
すぐに話したい方もいれば、一人で考えてから話したい方もいます。
特に男性不妊に関する結果では、本人が想像以上にショックを受けながら、それを言葉にできていない場合もあります。
沈黙だけを見て、
「妊活に真剣ではない」
と決めつけないようにしてみてください。
「今は話したくない? それとも少し考える時間がほしい?」
と聞くだけでも構いません。
すぐ励まさなくても大丈夫です
相手が落ち込んでいると、
「まだ大丈夫だよ」
「気にしなくていいよ」
と言いたくなります。
もちろん、その言葉で安心できる方もいます。
でも、本人がまだ結果を受け止めきれていないときには、
「気にしなくていい」
と言われることで、
「自分はこんなにショックなのに」
と感じることもあります。
そんなときは、無理に前向きな答えを出さず、
「それはショックだったよね」
「今日は無理に結論を出さなくてもいいんじゃない?」
と、今の気持ちをそのまま受け止めるだけでも十分です。
励ますことより、まず聞くことが必要な夜もあります。
話し合う時間を先に決めておく
夫婦の会話が険悪になりやすいのは、話す内容だけが原因とは限りません。
仕事で疲れて帰ってきた直後、寝る直前、どちらかが急いでいるときなどに重要な話を始めると、余裕がなくなりやすくなります。
可能であれば、
「今日の夕食後に20分だけ話そう」
というように、時間を決めてみてください。
そして、その時間が終わったらいったん終了します。
治療の話を始めると、費用、仕事、病院、将来のことまで広がり、何時間でも話せてしまいます。
夫婦の時間すべてを妊活の話にしないことも、長く治療と付き合っていくためには大切です。
一度の話し合いですべて決めなくていい
検査結果を聞くと、
今の方法(タイミング法など)を続けるのか、人工授精へ進むのか、体外受精を考えるのかまで、一度に決めなければならないように感じることがあります。
でも、今日決めなければならないことと、まだ決めなくてよいことを分けて構いません。
まずは次の3つだけ整理してみてください。
- 今回分かったこと
医師から説明された結果を、夫婦で同じように理解できているか確認します。 - まだ分からないこと
再検査の必要性や結果の意味など、次回の診察で確認したいことを整理します。 - 次にすること
次回診察、再検査、夫婦で考える期間など、直近の一歩だけを決めます。
半年後、一年後のことまで、その日のうちに決める必要はありません。
治療への考え方が違うときは「なぜ?」を聞く
たとえば一人は、
「早く体外受精へ進みたい」
と思っている。
もう一人は、
「もう少し今の方法を続けたい」
と思っている。
意見だけを見ると、対立しているように見えます。
でも、
「どうしてそう思っている?」
と聞いてみると、年齢への焦り、治療への怖さ、費用への不安、仕事との両立など、それぞれ別の理由が見えてくることがあります。
「進みたい」「進みたくない」という結論だけをぶつけ合うより、
その考えの下にある不安を共有する
ほうが、二人が一緒に考えられる部分を見つけやすくなります。
「正しいほう」を決めようとしすぎない
妊活の選択には、
もっと早く治療を進めるべき。
自然に待ったほうがいい。
この病院のほうがいい。
この検査を受けるべき。
と、一つの正解があるように感じることがあります。
もちろん医学的に確認すべきことはあります。
ただ、それとは別に、
どこまで治療を受けたいか、身体的・経済的な負担をどう考えるか、仕事とのバランスをどうするかといった部分には、夫婦それぞれの価値観も関係します。
相手を説得するための会話だけにならないよう、
「自分はこう思うけれど、あなたはどう感じている?」
と確認する時間もつくってみてください。
過去の言葉を持ち出し続けない
気持ちが高ぶると、
「前もそうだった」
「去年も検査を嫌がったよね」
と、過去の出来事まで出てくることがあります。
もちろん積み重なっている不満を話す必要がある場合もあります。
でも、今回の検査結果について整理したい場面で、過去の不満まで一度に扱うと、何について話しているのか分からなくなりがちです。
今日は検査結果のこと。
夫婦関係の別の問題は、また別の日。
というように、一回の話し合いで扱うテーマを一つにすることも大切です。
相手の検査結果を許可なく人に話さない
不安になると、
自分の母親。
友人。
きょうだい。
に相談したくなることがあります。
相談相手を持つこと自体は悪いことではありません。
ただ、精液検査をはじめとした検査結果は、パートナー本人の個人的な医療情報でもあります。
第三者へ話す前に、
「このことを○○さんに相談してもいい?」
と確認しておくと安心です。
相手の医療情報をどこまで人に話してよいかは、夫婦であっても同じ考えとは限りません。
会話がうまくいかない日は、いったん終えてもいい
気をつけて話していても、
声が大きくなる。
同じ話を繰り返す。
どちらかが泣いてしまう。
ということはあります。
そんなとき、
「今日中に解決しないと」
と話し続ける必要はありません。
「今日はこれ以上話すと、お互いにつらくなりそうだからここまでにしよう」
と一度終えることもできます。
ただし、そのまま話さずに終わらせるのではなく、
「明日の夜にもう一度10分だけ話そう」
と次の機会を決めておくと、問題を放置されたという感覚も減らしやすくなります。
二人だけでは整理できないこともあります
治療方針について医学的な理解が違っているなら、次回の診察で二人一緒に説明を聞く方法があります。
また、妊活をきっかけに夫婦の会話そのものが苦しくなっている場合には、治療施設の相談窓口や心理職、不妊カウンセリングなどの支援を利用することも選択肢です。
第三者へ相談することは、
「夫婦関係が悪い」
という意味ではありません。
二人だけでは感情と医学的な情報が混ざってしまうときに、間に人が入ることで整理しやすくなることがあります。
鍼灸院は夫婦カウンセリングの代わりではありません
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂でも、
「夫と治療について意見が合わない」
「検査結果をどう受け止めればいいか分からない」
といったお話を伺うことがあります。
当院が夫婦療法や心理療法を行うわけではありませんが、現在の治療状況や身体の負担を確認しながら、今何に困っているのかを一緒に整理することはできます。
妊活中によくいただく身体や気持ちのお悩みについて、以下にてご案内しています。
二人とも同じ気持ちでなくても、同じ方向を探していくことはできます
夫婦だからといって、同じ結果を聞いて同じように落ち込み、同じ速さで立ち直り、同じ治療を希望するとは限りません。
気持ちの強さや受け止める速さが違っていても構いません。
大切なのは、
「どちらが正しい?」
ではなく、
「二人にとって次に何を確認するのがよさそう?」
と話せることです。
結果にショックを受けた日には、結論が出なくても大丈夫です。
責めないことを完璧にできなくても構いません。
言いすぎたと思ったら、あとから、
「さっきは不安で強く言ってしまった」
と伝えることもできます。
妊活は一回の会話で完成するものではありません。
その都度、二人で話し直していけば大丈夫です。
この記事を書いた人
菅原 裕万
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂 院長
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
施術歴17年以上。妊活・婦人科・マタニティなど、女性のライフステージに伴う身体の変化を中心に、ご夫婦で妊活を続ける中で生じる身体の負担についてもお話を伺っています。
検査結果を受けて、身体も一度整理したい方へ
検査結果を聞いたあとは、気持ちだけでなく、眠れない、食欲が落ちる、胃腸が不安定になる、身体に力が入るといった変化が重なることもあります。
当院では病院での検査や治療を大切にしながら、睡眠、胃腸、冷え、疲れなど、今のお身体も一緒に確認しています。
これからの治療と身体づくりを一度整理してみたい方はご相談ください。
参考・出典
European Society of Human Reproduction and Embryology(ESHRE)「Routine Psychosocial Care in Infertility and Medically Assisted Reproduction」
日本生殖心理学会「ESHRE サイコソーシャルケアガイドライン 日本語版」
World Health Organization(WHO)「Infertility」
日本生殖医学会「生殖医療ガイドライン」
日本泌尿器科学会「男性不妊症診療ガイドライン」

