朝晩は少し涼しくなったのに、昼間はまだ暑い。
寝るときは冷房が必要なのに、明け方になると少し寒い。
そんな季節になりました。
この時期、
「なんとなくだるい」
「眠いのに寝つけない」
「朝すっきり起きられない」
「胃腸が不安定」
「首肩にずっと力が入っている」
という方もいます。
すると、
「季節の変わり目で自律神経が乱れているのかな?」
と思いますよね。
ただ、「秋になると必ず自律神経が乱れる」という単純なものではありません。
秋分が近づくころは、日の出や日の入りの時間が変わり、気温も揺れやすくなります。そこに仕事、通院、不妊治療、睡眠不足などが重なると、身体のリズムを整えにくくなることがあります。
今日は、秋分前に一度見直しておきたい身体の整え方についてお話しします。
そもそも自律神経とは?
自律神経は、自分の意思とは関係なく身体のさまざまな働きを調整している神経です。
大きく、
交感神経と副交感神経
に分けられます。
一般的には、活動している時間には交感神経の働きが高まりやすく、休息時には副交感神経が関わります。
ただし、
「交感神経=悪い」
「副交感神経=良い」
というものではありません。
日中には活動できる。
食事をすると消化する。
夜になると休息へ向かう。
必要な場面に応じて身体が調整できることが大切です。
「自律神経が乱れている」は病名ではありません
よく使われる言葉ですが、
「自律神経が乱れている」
だけで一つの病気を表しているわけではありません。
疲れやすい。
動悸がする。
眠れない。
頭痛がする。
胃腸が不安定。
めまいがする。
こうした症状には、睡眠不足やストレスだけではなく、貧血、甲状腺疾患、感染症、心臓の病気、耳の病気など、さまざまな原因があります。
そのため、症状が強い場合や長く続く場合には、
「自律神経だから」
と決めつけず、医療機関へ相談してください。
一方、検査では大きな異常がなくても、睡眠不足や緊張が続き、身体が休まらないと感じることもあります。
そんなときに生活リズムを見直したり、身体をゆるめたりすることには意味があります。
秋分前に意識したいのは「光」と「体内時計」
秋分へ近づくと、夏に比べて日の出は遅くなり、日の入りは早くなっていきます。
人間の身体には、およそ24時間周期で睡眠・覚醒、体温、血圧、心拍、ホルモン分泌などを調節する概日リズムがあります。
そのリズムを整えるうえで重要なのが光です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、日中にできるだけ光を浴びることが体内時計の調節につながり、夜の入眠を助けるとされています。
特に朝の光は、毎日の体内時計を調整する大切な刺激になります。
つまり秋分前の身体づくりでは、
夜に何をするかだけでなく、朝をどう始めるか
も大切なのです。
朝起きたら、まずカーテンを開ける
「睡眠を整えよう」と思うと、
早く寝なければ。
スマートフォンをやめなければ。
と夜ばかりを頑張りがちです。
でも、朝の過ごし方も重要です。
起きたらカーテンを開ける。
窓辺へ行く。
朝食や身支度をしながら明るい場所で過ごす。
可能なら日中に少し屋外へ出る。
特別な健康法ではありません。
でも、こうした毎日の光環境が睡眠・覚醒リズムの調整につながります。
夜を変える前に、まず朝を整える。
秋分前には、ここから始めてみてください。
「朝が暗くなって起きにくい」こともあります
夏は早朝から明るいため自然に目が覚めていたのに、秋になると、
「同じ時間なのに起きづらい」
と感じることがあります。
だからといって、
「身体がおかしくなった」
と考える必要はありません。
朝の光環境が変われば、目覚め方が変わることもあります。
起床時刻を大きくずらすのではなく、まずは起きたら部屋を明るくして、できるだけ一定のリズムで一日を始めてみましょう。
気温差がある日は「我慢する」より調節する
昼間は暑いのに、朝晩は涼しい。
秋分前にはこうした日があります。
すると、
昼間の服装のまま夜まで過ごして身体が冷える。
反対に、厚着をして昼間に汗をかく。
ということも起こります。
ここで大切なのは、
「冷やしてはいけない」と我慢することではなく、暑ければ脱ぐ、寒ければ一枚足すこと。
です。
薄手の羽織ものを使う。
冷房を我慢しすぎない。
汗をかいたまま過ごさない。
寝具もその日の気温に合わせる。
こうした小さな調節で構いません。
冷えることそのものが不妊の原因になるわけではありませんが、不快な寒さや暑さを我慢し続ける必要もありません。
夜のスマートフォンは「妊活検索」にも注意
夜になると、
「今日の体温はどうだった?」
「この症状は妊娠超初期?」
「次の採卵で何個取れる?」
と検索したくなることがあります。
でも夜のスマートフォンは、内容だけでなく光も睡眠に影響します。
厚生労働省の睡眠ガイドでは、夜間の強い光、とくにスマートフォンなどの光が睡眠を促すメラトニンの分泌や睡眠・覚醒リズムへ影響する可能性が示されています。
「夜はスマートフォン禁止」
まで厳しくする必要はありません。
まずは、
寝る前の10~20分だけ妊活検索を終える
ところからでも構いません。
身体だけでなく、頭にも「今日はここまで」と伝えてあげましょう。
秋分前こそ、入浴を「温活」ではなく睡眠のために使う
妊活中は、
「身体を温めないと」
と思って長時間お風呂へ入る方もいます。
でも、たくさん汗をかく必要はありません。
厚生労働省の睡眠ガイドでは、寝室を暑すぎず寒すぎない環境にし、就寝の1~2時間ほど前に入浴して身体を温めておくことが、入眠を助ける方法として紹介されています。
目的は、
「身体を熱くすること」
ではなく、
眠りへ向かいやすい流れをつくること。
ぬるめのお湯で気持ちよく入浴し、のぼせるほど長く入らないようにしましょう。
呼吸は「自律神経を切り替えるスイッチ」と考えすぎなくていい
「副交感神経を優位にする呼吸法」
という表現を見ることがあります。
呼吸と自律神経には関係がありますが、
「4秒吸って8秒吐けば必ず副交感神経になる」
というように、身体をスイッチのように操作できるわけではありません。
大切なのは、
呼吸を利用して、今入っている力に気づくこと。
です。
肩を一度下ろし、鼻から楽に息を吸います。
そのあと、吸うより少し長めに、苦しくない範囲でゆっくり吐きます。
数回で構いません。
呼吸法そのものを宿題にしないでください。
「整えよう」と頑張りすぎると、それ自体が負担になることも
自律神経を整えるために、
毎朝散歩。
毎日湯船。
22時就寝。
ストレッチ。
瞑想。
白湯。
全部やらなければ。
となっていませんか?
それでは、また妊活の宿題が増えてしまいます。
秋分前に整えるなら、
朝の光。
睡眠。
食事時間。
入浴。
軽い運動。
全部を一度に変える必要はありません。
今の生活で一番崩れているところを一つだけ見つけます。
身体を整えることまで、頑張り競争にしない。
ここはとても大切です。
妊活中は、身体が休む前に頭が休めなくなることがあります
採卵日。
胚移植日。
判定日。
排卵日。
次の受診日。
妊活中は、カレンダーに意味のある日が増えます。
身体は布団へ入っていても、
「次はどうしよう」
と頭の中だけ治療が続いていることがあります。
睡眠と自律神経の働きは密接に関わっており、睡眠中にも自律神経やホルモンなどさまざまな生体機能が調整されています。
だから妊活中の身体づくりでも、
眠ることは「何もしていない時間」ではありません。
今夜の検索を一つ減らす。
布団へ入る時間を少し早くする。
それだけでも身体づくりの一つです。
胃腸に出る人もいます
緊張が続くと、
食欲が落ちる。
胃が重い。
お腹が張る。
便がゆるくなる。
という方もいます。
胃腸と脳・神経の働きは互いに関係しており、ストレスや心理状態によって消化器症状が変化することがあります。
秋分前に食欲や便通が乱れている場合には、
「季節だから仕方ない」
で終わらせず、
食事時間がずれていないか。
睡眠不足が続いていないか。
治療への緊張が強くなっていないか。
も一緒に振り返ってみましょう。
東洋医学では、秋分前を「切り替わりの時期」として見ます
東洋医学では、秋は夏の活動的な時期から、少しずつ内側へ落ち着いていく季節として考えます。
ただし、
「秋だからこの体質になる」
というわけではありません。
今の身体にどのような状態が重なっているかを見ます。
肝鬱気滞(かんうつきたい)|緊張が抜けず、身体が張る状態
ため息、首肩の張り、胸やお腹の張り、イライラなどが重なることがあります。
脾虚(ひきょ)|胃腸が弱り、疲れやすい状態
食欲低下、胃もたれ、軟便、身体のだるさなどを合わせて考えます。
血虚(けっきょ)|疲れや眠りの浅さが目立つ状態
疲れやすさ、眠りの浅さ、立ちくらみなどを合わせて見ます。
腎虚(じんきょ)|疲労や冷えなどが長く続く状態
疲れが抜けにくい、腰がだるい、冷えを感じやすいなどを確認します。
東洋医学では一つの症状だけで体質を決めず、
睡眠、胃腸、月経、疲労、気持ちの状態まで含めて身体全体を見る
ことを大切にします。
鍼灸で「自律神経を正常化する」と単純には言えません
「鍼灸で自律神経は整いますか?」
と聞かれることがあります。
鍼灸と自律神経の関係については研究が進んでいます。
2025年に公表された10件のランダム化比較試験・744人をまとめたメタ解析では、鍼灸後に心拍変動(HRV)の一部指標が改善し、自律神経機能へ影響する可能性が報告されました。
ただし、自律神経は一つの数値だけで表せるものではありません。
ですから当院でも、
「このツボを使えば副交感神経が上がる」
というような単純な説明はしません。
その代わり、
眠れない。
胃腸が落ち着かない。
首肩の力が抜けない。
疲れが取れない。
治療のことを考えると身体が緊張する。
といった、今実際に困っている身体の状態を整えるために鍼灸を使います。
妊活中の不安や緊張に鍼灸を取り入れるという方法もあります
不妊治療では、身体だけでなく気持ちも緊張します。
2025年に公表された、体外受精(IVF)を受ける女性7,400人を含むシステマティックレビュー・メタ解析では、鍼灸を取り入れた群で不安の軽減が報告されています。
これは、
「鍼灸を受ければ不安がなくなる」
という意味ではありません。
でも、
採卵や胚移植の予定が続き、ずっと身体に力が入っている。
眠りが浅くなっている。
休もうとしても頭が妊活から離れない。
そんなときに、
身体から一度、緊張をほどいていく時間として鍼灸を取り入れる
という選択肢があります。
蓮心はり灸堂では「自律神経」という言葉だけで施術を決めません
「自律神経を整えたいです」
とご相談いただくことがあります。
その場合も、
「自律神経ですね。ではこのツボです」
とは考えません。
当院では、
- 眠りにつくまでの時間
- 夜中に目が覚めるか
- 朝の目覚め
- 胃腸や便通
- 月経周期や月経前の変化
- 冷え・のぼせ
- 首肩や背中の緊張
- 疲労
- 現在の妊活・不妊治療の段階
- 使用している薬やサプリメント
などを確認します。
同じ「自律神経が気になる」というご相談でも、身体の状態は一人ひとり違います。
言葉ではなく、その人の身体を見て施術を組み立てる。
それが当院の考える体質改善です。
秋分前に整えるなら、まずこの3つ
1.朝起きたら光を入れる
カーテンを開け、できる範囲で朝から明るい環境で過ごします。
2.夜の妊活検索を少し早く終える
寝る直前まで答えを探し続けず、10~20分でも「今日はここまで」という時間をつくります。
3.今、一番つらい身体の症状を一つ確認する
睡眠、胃腸、首肩の緊張、疲れなど、全部を同時に改善しようとせず、一番気になるところから整えます。
セルフケアだけで抜けにくい場合には、鍼灸を取り入れる方法もあります。
自律神経を「完璧に整える」必要はありません
朝起きられなかった。
夜更かしした。
食事時間がずれた。
そんな日もあります。
一日リズムが崩れたからといって、
「自律神経がまた乱れた」
と怖がらなくて大丈夫です。
大切なのは、
崩れない生活をつくることではなく、
崩れても戻りやすい生活をつくること。
です。
朝の光。
食事。
少し身体を動かす。
入浴。
睡眠。
基本へ戻れる場所をいくつか持っておきましょう。
このテーマの続きは9月26日の夜に
秋分を過ぎると、夜の時間は少しずつ長くなっていきます。
その一方で、
「涼しくなったのに、なぜか眠れない」
「夜になると妊活のことを考えてしまう」
という方もいます。
このテーマの続きは9月26日夜公開の
「秋分後に整えたい眠りと呼吸」
で、夜の光、呼吸、身体の緊張などをもう少し具体的に整理します。
秋分前、少し身体がついてこないと感じている方へ
季節が変わるときに、
疲れる。
眠れない。
胃腸が不安定になる。
身体がこわばる。
そんな変化を感じることがあります。
でも、
「自律神経が弱いから」
と自分の身体を悪者にしなくて大丈夫です。
夏から秋へ生活環境が変わるなかで、身体も毎日調整しています。
そこに不妊治療や仕事の緊張が重なれば、休みにくくなる日もあります。
蓮心はり灸堂では、今の治療予定だけではなく、睡眠、胃腸、月経、冷え・のぼせ、疲労、首肩の緊張まで確認しながら施術を組み立てています。
セルフケアを頑張っても、
「身体から力が抜けない」
と感じているなら、それも鍼灸へ相談してよいサインです。
季節に身体を合わせようと頑張るのではなく、今の身体が少し楽に過ごせるように整えていく。
秋分前の身体づくりを、一緒に始めていきましょう。
参考・出典
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
厚生労働省 e-ヘルスネット「眠りのメカニズム」
厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
厚生労働省 e-ヘルスネット「概日リズム睡眠・覚醒障害」
「自律神経機能の調節に対する鍼灸の臨床的有効性と安全性:ランダム化比較試験のメタ解析」
International Journal of Nursing Studies「体外受精を受ける女性に対する鍼灸:最新システマティックレビュー・メタ解析」

