秋分を過ぎ、少しずつ夜が長くなってきました。
昼間はまだ暑いのに、夜になると涼しさを感じる日もあります。
そんな季節の変わり目に、
「涼しくなったのに、なぜか寝つけない」
「夜中に目が覚めると、妊活のことを考えてしまう」
「布団へ入っても、肩や背中に力が入っている」
ということはありませんか?
9月22日朝の記事「秋分前に整えたい自律神経」では、朝の光や生活リズム、気温差への対応など、秋を迎える身体の整え方についてお話ししました。
今夜はその続きとして、秋分後の眠りと呼吸を整えるために、寝る前の時間をどう過ごせばよいのかを考えてみましょう。
眠るために、さらに頑張る必要はありません。
一日の終わりに少しずつ身体の力を抜いていく。そんな夜の過ごし方を紹介します。
秋分後、夜が長くなれば自然によく眠れる?
秋分を過ぎると、日の入りが早くなり、夜の時間は少しずつ長くなります。
ただし、夜が長くなったからといって、必ず睡眠時間が増えたり、眠りの質がよくなったりするわけではありません。
仕事が終わる時間は変わらず、帰宅後には家事や食事があります。妊活中なら、翌日の診察予定を確認したり、検査結果について調べたりする時間もあるでしょう。
外が暗くなっても、照明やスマートフォンによって、私たちの生活は夜遅くまで明るいままです。
だからこそ、秋分後は夜の長さに合わせて無理に就寝時刻を変えるのではなく、今の生活の中で、休息へ向かう時間をつくれているかを確認してみましょう。
寝る前の光が眠りに関係する理由
私たちの身体には、およそ24時間の周期で睡眠と覚醒を調節する体内時計があります。
その調節に重要な役割を果たしているのが、光です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、朝から日中に光を浴びることが体内時計の調節につながる一方、就寝前の強い光は入眠を妨げることがあると説明されています。
特に妊活中は、布団へ入ってからスマートフォンを使う時間が長くなる方もいます。
基礎体温のグラフを確認する。胚移植後の症状を検索する。同年代の治療体験を読む。
一つ調べると、また別の疑問が出てくることもありますよね。
今夜はそうした寝る直前の検索を少し早く終え、部屋の照明を落としてみましょう。
スマートフォンを完全に禁止するのではなく、まずは寝る前の10~20分を、身体を休ませる時間へ変えてみることから始めてください。
呼吸を整えると眠りやすくなる?
「眠れないときは深呼吸しましょう」
という言葉を聞いたことがあると思います。
呼吸は、身体の緊張に気づき、休息へ向かうきっかけとして使うことができます。
2026年に医学誌『Sleep Medicine Reviews』へ掲載されたシステマティックレビューでは、寝る前のゆっくりした呼吸を調べた9研究、計457人のデータが検討されました。
その結果、呼吸法を行った人が自分で評価した睡眠時間や睡眠の質に改善がみられました。一方、睡眠を機器で測定した結果については、まだ一定した結論には至っていません。
つまり、寝る前の呼吸法は、眠りに悩む方が試せる方法の一つです。
ただし、決められた回数をこなせば必ず眠れるというものではありません。
呼吸を整えることまで、妊活の新しい宿題にしなくて大丈夫です。
今夜試したい、やさしい呼吸法
首肩の力が抜けない夜は、大きく息を吸おうとすると、かえって肩に力が入ることがあります。
最初は、椅子に座っても、布団へ横になっても構いません。身体が楽な姿勢を選びましょう。
- まず肩を少し下ろし、顎やお腹に力が入りすぎていないか確認します。
- 鼻から無理なく息を吸います。4秒程度が目安ですが、苦しくない長さで構いません。
- 吸うときより少し長めに、5~6秒ほどかけてゆっくり息を吐きます。
- これを3~5回繰り返し、気持ちよくできるところで終えます。
秒数を正確に数える必要はありません。呼吸が苦しい、めまいがする、不安が強くなるといった場合は中止し、自然な呼吸へ戻してください。
目指したいのは、長く息を止めることでも、できるだけ深く吸うことでもありません。
息を吐きながら、肩の力を少しずつ下ろしていくこと。
それだけを意識してみてください。
呼吸をしても考え事が止まらないときは?
ゆっくり呼吸しているのに、頭の中では次の採卵や胚移植について考えてしまう。
そんな夜もあります。
呼吸法は、考え事を完全に消すためのものではありません。
「また考えているな」
と気づいたら、無理にその考えを追い払わず、呼吸や布団に触れている身体の感覚へ意識を戻してみましょう。
どうしても気になることがある場合には、明日確認する内容を紙へ一つ書き出しておく方法もあります。
今夜答えを出す必要がないことなら、明日へ預けても構いません。
眠りを妨げる首肩のこわばりにも目を向ける
呼吸だけではなく、身体のこわばりが眠りを妨げていることもあります。
例えば、長時間のデスクワークや運転のあと、首肩が重く、布団へ入っても楽な姿勢が見つからないことがあります。
そんな夜は、呼吸法の前に肩をゆるめてみましょう。
両肩をゆっくり持ち上げ、息を吐きながら力を抜きます。数回行うだけでも構いません。
首を強く回したり、痛みを我慢して伸ばしたりする必要はありません。
首肩のつらさが続いている場合には、セルフケアだけで何とかしようとせず、鍼灸へ相談する方法もあります。
お風呂は「汗をかくため」ではなく眠る準備に
妊活中は、身体を温めた方がよいと聞き、長時間の入浴を頑張っている方もいるかもしれません。
でも、熱いお風呂へ長く入り、のぼせるほど温める必要はありません。
厚生労働省の睡眠ガイドでは、就寝の約1~2時間前に入浴し、身体を温めてから布団へ入ることが、入眠を助ける方法として紹介されています。
大切なのは、心地よく入浴し、入浴後に身体が休息へ向かえるようにすることです。
その日の体調に合わせて、無理なく取り入れてください。
寝室は暑さも寒さも我慢しない
秋分を過ぎても、昼間に暑さが残る日があります。反対に、明け方は肌寒く感じることもあるでしょう。
寝る前は暑かったのに、夜中に寒くて目が覚める。そんなときは、寝具や空調を見直してみてください。
「妊活中だから冷房を使わない」
「冷え対策のために、厚着をしたまま眠る」
と我慢する必要はありません。
寝室の温度や寝具をその日の気候に合わせ、暑すぎず寒すぎない状態を目指しましょう。
身体が楽に休める環境をつくることが、夜の養生です。
妊活中の夜に、呼吸が浅く感じることがあります
判定日が近づくと、胸のあたりが落ち着かず、呼吸が浅く感じることがあります。
仕事を終えて帰宅しても、翌日の診察が気になって気持ちが切り替わらないこともあるでしょう。
ただし、息苦しさや動悸をすべてストレスのせいにすることはできません。強い息苦しさ、胸痛、失神しそうな感覚などがある場合には、速やかに医療機関へ相談してください。
一方、医療機関で必要な確認を受けたうえで、緊張が続くときには、呼吸や生活リズムを整えるセルフケアを取り入れることができます。
身体の緊張が強い場合には、鍼灸で首肩や背中なども含めて施術を受ける方法があります。
東洋医学では、夜の不調をどう考える?
東洋医学では、「秋だから全員このツボ」という考え方はしません。
同じ眠りの浅さでも、身体の状態は一人ひとり違うからです。
肝鬱気滞(かんうつきたい)|緊張が抜けにくい状態
妊活や仕事のことを考え続け、首肩の張り、ため息、胸やお腹の張りなどが重なる場合に考えます。
血虚(けっきょ)|疲れと眠りの浅さが重なる状態
疲れやすさ、眠りの浅さ、立ちくらみなどを合わせて見ます。
脾虚(ひきょ)|胃腸の弱りや疲労が目立つ状態
食欲低下、胃もたれ、軟便、身体のだるさなどを確認します。
これらは医学的な不眠症や自律神経の病気を診断するものではありません。
東洋医学では、眠りだけを切り離さず、月経、胃腸、疲労、冷え・のぼせ、身体の緊張などを合わせて施術を考えます。
睡眠に悩んでいる方に、鍼灸という選択肢があります
セルフケアを続けていても、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝から疲れているという方もいます。
そんなときは、セルフケアだけを頑張り続けなくても構いません。
2025年に公表された慢性不眠症に対するシステマティックレビュー・メタ解析では、10試験・757人を対象に鍼灸の効果が検討されました。
その結果、鍼灸を受けた群では、比較群よりも主観的な睡眠の質や不眠症状の改善が報告されています。
こうした研究は、眠りに悩む方が鍼灸を取り入れる一つの根拠になります。
当院でも、単に「睡眠に効くツボ」を使うのではなく、寝つきや中途覚醒の状態、首肩の緊張、胃腸、疲労、現在の不妊治療の状況などを確認しながら施術を組み立てています。
蓮心はり灸堂では、眠りの背景まで確認します
「最近、眠りが浅くなりました」
というご相談をいただいたとき、当院では睡眠時間だけを確認するわけではありません。
次のようなこともお聞きします。
- 寝つくまでに時間がかかるのか、夜中に目が覚めるのか
- 朝起きたとき、疲れが残っているか
- 首肩や背中のこわばりが強くないか
- 胃腸の不調や冷え・のぼせがないか
- 月経前や治療周期によって体調が変化するか
- 現在使用している薬やサプリメント
- 次の採卵・胚移植などの治療予定
例えば、採卵前の緊張で眠れない方と、移植後の判定待ちで夜中に目が覚める方では、不安の内容も身体の状態も違います。
その違いを確認しながら、その方に合う鍼やお灸を組み合わせていきます。
眠りだけではなく、眠れない夜を過ごしている身体全体を見る。
それが当院の考える身体づくりです。
長く続く不眠は、医療機関にも相談を
眠れない状態が長期間続く場合や、日中の生活に大きな支障が出ている場合には、医療機関へ相談してください。
慢性的な不眠症には、不眠症の認知行動療法(CBT-I)など、医学的に推奨されている治療法があります。
また、大きないびきや睡眠中の呼吸停止を指摘された場合、日中の強い眠気が続く場合などには、睡眠時無呼吸症候群などの確認も大切です。
必要な医療を受けながら、身体の緊張や日々の不調を整えるために鍼灸を組み合わせることもできます。
今夜から始める3つの小さな習慣
1.寝る前の光を少し落とす
布団へ入る前に妊活検索を終え、部屋の照明を落としてみましょう。可能ならスマートフォンを寝床から離します。
2.息を吐く時間を少しだけ長くする
楽な姿勢で、吸うより少し長めに息を吐きます。苦しくない範囲で3~5回程度から始めてみてください。
3.身体に残った力を一か所だけ抜く
肩をゆっくり持ち上げて下ろす、気持ちよく入浴するなど、自分が楽だと感じるものを一つ選びます。
全部を毎日続ける必要はありません。
今日は照明だけ。明日は呼吸だけ。
そのくらいから始めてみてください。
眠れなかった夜を、妊活の失敗にしない
妊活中には、睡眠まで採点してしまうことがあります。
昨日は早く眠れたからよかった。今日は夜中に目が覚めたからダメだった。
でも、一晩眠れなかったことで、その周期の妊娠結果が決まるわけではありません。
今夜は眠れないかもしれない。そんなときまで、自分を責める必要はありません。
眠りにくさが続いているなら、生活リズムを見直す。身体のこわばりが強いなら、鍼灸を利用する。必要な場合には医療機関へ相談する。
一人で頑張ることだけが、身体づくりではありません。
秋の夜、身体から力が抜けない方へ
秋分を過ぎ、少しずつ夜が長くなっていきます。
眠る前まで妊活のことを考え、身体も頭も休まらない。そんな日が続いているなら、鍼灸で身体を整える時間をつくってみませんか。
蓮心はり灸堂では、現在の治療段階や薬を確認しながら、睡眠、胃腸、月経、疲労、冷え・のぼせ、首肩や背中の緊張を含めて施術を組み立てています。
「最近、眠りが浅い」
「布団へ入っても身体に力が入っている」
そんな段階からでも構いません。
妊活を続ける毎日だからこそ、安心して身体を休ませる時間も大切にしていきましょう。
参考・出典
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
Sleep Medicine Reviews「就寝前のゆっくりした呼吸法が睡眠に与える影響:システマティックレビュー」(2026年)
Frontiers in Neurology「慢性不眠症に対する鍼灸:システマティックレビュー・メタ解析」(2025年)
米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)「睡眠障害と補完的健康アプローチ」

