着床しやすい体ってどういう状態?

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胚移植を控えている方から、

「着床しやすい体にするには、何をしたらいいですか?」

と聞かれることがあります。

妊活について調べていると、

「身体を温める」

「血流をよくする」

「○○を食べる」

「着床にいいツボを押す」

など、さまざまな情報が出てきます。

ここまで治療を頑張ってきたからこそ、

「できることがあるなら、全部やっておきたい」

と思うのは自然なことです。

ただ、最初に知っておいていただきたいことがあります。

着床は、身体を温めたり、何か一つの食品を食べたりすることで決まるものではありません。

着床には、

・胚の状態
・子宮内膜の状態
・子宮内の環境
・ホルモンのタイミング
・胚と子宮内膜の相互作用

など、複数の要素が関係しています。

つまり、

「着床しやすい体」という一つの状態があるというより、胚と子宮側の条件が適切なタイミングで合うことが大切

と考えた方がわかりやすいでしょう。

目次

そもそも「着床」とは?

受精卵は細胞分裂を繰り返しながら成長し、胚盤胞と呼ばれる段階になります。

その後、胚を覆っている透明帯から外へ出て、子宮内膜と接触します。

そこから、

・子宮内膜に接する
・内膜へ付着する
・内膜の中へ入り込んでいく

という過程を経て、妊娠成立へ向かいます。

この一連の過程を「着床」と呼びます。

ただ子宮の中に胚を戻せば、そのままくっつくという単純なものではありません。

胚側と子宮内膜側の両方で、非常に複雑な変化が起こっています。

着床には「胚側」の条件も大きく関わります

着床について考えるとき、

「子宮の状態をもっとよくしなければ」

と、女性の身体だけへ意識が向きやすくなります。

しかし、着床には胚そのものの発育する力も大きく関係しています。

胚の染色体の状態や発育過程などによっては、子宮内膜が良好な状態でも着床に至らないことがあります。

反対に、

「着床しなかった=子宮の状態が悪かった」

と判断することもできません。

胚移植がうまくいかなかったときに、

「身体をもっと温めればよかった」

「血流が悪かったからだ」

と自分を責める必要はありません。

子宮内膜は「胚を迎える場所」

子宮内膜は、月経周期の中でホルモンの影響を受けながら変化しています。

排卵前までは主にエストロゲンの作用によって厚みを増し、排卵後はプロゲステロンの影響を受けて、胚を迎えるための状態へ変化していきます。

凍結融解胚移植では、

・自然排卵を利用する方法
・ホルモン剤で内膜を整える方法

などがあり、その方の治療計画に合わせて移植時期が調整されます。

つまり、着床を考えるうえでは、

単純な内膜の厚さだけでなく、胚を戻す時期と子宮内膜の変化が合っていること

も大切です。

内膜は何mmあれば着床しやすい?

移植周期になると、

「今日の内膜は○mmです」

と説明を受けることがあります。

その数字を聞くたびに、

「薄くないかな」

「もっと厚くならないと移植できない?」

と心配になる方も多いでしょう。

一般的に、非常に薄い子宮内膜では妊娠・出生率が低くなる傾向が報告されています。

ESHREの反復着床不成功に関する推奨でも、内膜が薄い場合には再評価し、ホルモン補充方法などを確認することが勧められています。

ただし、

「○mm以上なら着床する、○mm未満なら着床しない」という明確な境界線があるわけではありません。

内膜が比較的薄くても妊娠に至る方はいます。

厚さは大切な判断材料の一つですが、数字だけで結果が決まるわけではありません。

「ふかふかの内膜」という表現に振り回されなくて大丈夫

妊活の記事では、

「ふかふかの子宮内膜をつくりましょう」

という表現を見かけることがあります。

イメージとしてはわかりやすいのですが、医学的には、

内膜が厚くて柔らかければ着床する

というものではありません。

子宮内膜では、ホルモンの作用によって細胞や血管、免疫系などさまざまな変化が起きています。

そのため、

「内膜をふかふかにする食べ物」

「内膜を厚くするツボ」

だけを探すよりも、医療機関で現在の内膜やホルモンの状態を確認することが大切です。

着床にはホルモンのタイミングも大切です

子宮内膜は、いつでも胚を受け入れられるわけではありません。

プロゲステロンなどのホルモンの影響を受け、胚を受け入れやすい状態へ変化する時期があります。

そのため、凍結融解胚移植では、

「プロゲステロンを開始して何日目に移植するか」

など、胚の発育段階に合わせて移植日が決められます。

ESHREの推奨でも、移植前後のプロゲステロン値が低い場合と治療成績との関連が報告されており、状況に応じた評価を検討できるとされています。

だからこそ、

処方されたホルモン剤を自己判断で減らしたり、使用時間を大きく変更したりしないこと

が大切です。

「着床の窓」って何?

妊活について調べていると、

「着床の窓」

という言葉を見かけることがあります。

これは、子宮内膜が胚を受け入れやすい状態になる一定の時期を表した言葉です。

ここから、

「自分は着床の窓がずれているのでは?」

と心配される方もいます。

近年は、子宮内膜の遺伝子発現などを調べ、移植時期を推定しようとする検査もあります。

しかし、反復着床不成功に対するさまざまな検査や治療には、まだ十分な有効性が確認されていないものもあり、ESHREも多くの検査・治療について一律の実施を勧めていません。

「詳しい検査だから、受けた方が妊娠しやすくなる」

とは限りません。

検査を検討するときは、

・これまで何回移植したか
・移植した胚の状態
・年齢
・子宮内の状態
・これまでの治療経過

などを踏まえて、主治医と相談しましょう。

子宮の中に確認しておきたい問題があることも

子宮内には、

・子宮内膜ポリープ
・粘膜下筋腫
・子宮内癒着
・子宮奇形

など、着床に影響する可能性のある状態がみつかることがあります。

超音波検査のほか、必要に応じて、

・子宮鏡検査
・子宮内腔を詳しく見る検査

などが検討される場合があります。

ただし、全員がすべての検査を受ける必要があるという意味ではありません。

もちろん、一度の移植がうまくいかなかっただけで、

「自分には何か隠れた病気があるに違いない」

と過剰に思い詰める必要はありません。

治療歴や検査結果をもとに、必要性を主治医と相談することが大切です。

「免疫が強すぎるから着床しない」と決めつけないで

着床について検索すると、

「免疫が強すぎる」

「NK細胞が高い」

「身体が胚を異物として攻撃している」

などの説明を見かけることがあります。

着床には免疫系が関わっています。

ただし、その仕組みは非常に複雑で、

「免疫が高い・低い」という一つの数字だけで着床できるかどうかを説明できるものではありません。

反復着床不成功に対して提案されている免疫関連検査や治療の中にも、現時点では十分な根拠がなく、一般的な診療として推奨されていないものがあります。ESHREも、多くの追加検査・治療について高品質な研究が不足しているとしています。

検査や治療を増やすときは、

「調べられるから調べる」

ではなく、

結果によって治療方針が本当に変わるのか

という視点も大切です。

「血流がよければ着床する」は少し単純すぎます

妊活では、

「子宮の血流をよくしましょう」

という言葉をよく目にします。

もちろん、血液は身体の組織へ酸素や栄養を届ける大切な役割を担っています。

適度な運動や、喫煙を避けることなど、全身の健康を整えることは大切です。

ただし、

血流を上げれば、その分だけ着床率が上がる

と単純に考えることはできません。

また、

「足が冷たい=子宮の血流が悪い」

「お腹が冷たい=着床しにくい」

と判断することもできません。

冷えを感じることと、実際の子宮内膜の状態は分けて考える必要があります。

温活を頑張りすぎなくて大丈夫

着床期になると、

「冷やしてはいけない」

という思いから、

・腹巻きを重ねる
・厚手の靴下を履く
・カイロを貼り続ける
・長時間お風呂に入る
・サウナや岩盤浴へ行く
・暑くても冷房を我慢する

という方がいます。

しかし、

身体をたくさん温めれば着床しやすくなるという根拠はありません。

特に8月は、暑さそのものが身体への負担になります。

大量に汗をかき、睡眠まで悪くなっているのであれば、

「冷え対策」のためにさらに身体を暑くする必要はありません。

自分が心地よく過ごせる温度を大切にしてください。

移植後は動かない方が着床しやすい?

これもよくある心配です。

「胚が落ちないように」

と、移植後ずっと横になっていたくなるかもしれません。

しかし、移植後に長時間安静にすることで妊娠率や出生率が高まるという根拠はなく、ASRMは胚移植後のベッド上安静を推奨していません。

体調に問題がなければ、

・歩く
・家の中で普段どおり過ごす
・デスクワークをする

といった日常生活まで避ける必要はありません。

もちろん、激しい運動をあえて始める必要もありません。

「動かなければ着床する」でも、「たくさん動けば血流がよくなる」でもなく、無理のない普段の生活

を基本に考えましょう。

着床のために食べるべき食品はある?

「パイナップル」

「アボカド」

「ザクロ」

「黒い食べ物」

など、着床によいと紹介される食品はいろいろあります。

でも、特定の食品を食べることで、着床が確実になると証明されたものはありません。

妊活中の食事では、

・極端な食事制限をしない
・主食、主菜、副菜を組み合わせる
・たんぱく質をとる
・野菜や果物も取り入れる
・喫煙を避ける
・飲酒を控える

など、全身の健康を支える基本を大切にしましょう。

WHOが2025年に公表した初の世界的な不妊ガイドラインでも、妊娠を希望する男女に対して、健康的な食事、身体活動、禁煙など基本的な生活習慣を整えることが勧められています。

これは、

「その生活をすれば必ず着床する」

という意味ではありません。

妊活中の身体全体の健康を支えるための考え方です。

「着床しなかった=何かが足りなかった」ではありません

移植がうまくいかなかったとき、

「内膜がもう少し厚ければ」

「もっと運動していれば」

「もっと温めていれば」

「ストレスを減らしていれば」

と、足りなかったものを探したくなることがあります。

でも、着床は、

一つの行動の点数を足して成立するものではありません。

胚側にも子宮側にも、私たちが自分でコントロールできない要素があります。

そのため、

「着床しなかったから、身体づくりに失敗した」

と考えないでください。

鍼灸は「着床させる施術」ではありません

当院でも、

「移植前に鍼灸をすると着床しやすくなりますか?」

と聞かれることがあります。

ここは誤解のないようにお伝えしたいところです。

鍼灸によって胚を着床させられると断定することはできません。

ASRMの胚移植ガイドラインでも、胚移植前後の鍼灸によって出生率が改善するという十分な根拠は示されていません。

当院で大切にしているのは、

・眠りが浅い
・身体の緊張が続いている
・疲れが抜けない
・胃腸の状態が安定しない
・冷えやほてりが気になる
・治療への不安で生活が乱れている

といった、治療を受けている方自身の心身の状態を整えていくことです。

病院で行われる胚移植やホルモン管理を中心に置きながら、その前後の身体づくりを補助する。

それが、当院で考える妊活中の鍼灸の役割です。

東洋医学では「着床しやすい体質」をどう考える?

東洋医学でも、

「この体質なら必ず着床する」

という考え方はしません。

月経、睡眠、胃腸、冷え、疲労、ストレスなどを含め、身体全体の状態を見ていきます。

たとえば、

腎虚(じんきょ)

身体を支える基礎的な力が不足していると考える状態

・疲れやすい
・腰や足がだるい
・冷えやすい
・年齢とともに体力低下を感じる

などがみられることがあります。

肝鬱気滞(かんうつきたい)

緊張などによって気の巡りが滞っていると考える状態

・ため息が多い
・胸や喉が詰まる
・イライラする
・身体に力が入りやすい

などがみられることがあります。

脾虚(ひきょ)

胃腸の働きや身体を支える力が弱っていると考える状態

・食欲が安定しない
・軟便になりやすい
・食後に眠くなる
・身体が重い

などがみられることがあります。

血虚(けっきょ)

東洋医学的に身体を養う「血」が不足していると考える状態

・疲れやすい
・立ちくらみがある
・皮膚が乾燥しやすい
・眠りが浅い

などがみられることがあります。

瘀血(おけつ)

血の巡りが滞っていると考える状態

・月経痛が強い
・経血に塊が多い
・同じ場所に痛みが出やすい

などがみられることがあります。

これらは東洋医学独自の身体の捉え方であり、子宮内膜の厚さや着床能を直接診断するものではありません。

妊娠の判定や着床の評価は、生殖医療で行われる検査を優先します。

着床期に今日からできる3つのこと

「着床によいことを全部しよう」

とすると、かえって生活そのものが苦しくなります。

この時期は、まず3つくらいで十分です。

1.薬を指示どおり続ける

ホルモン補充をしている場合は、自己判断で量や時間を変えないこと。

これは、生活習慣より優先して確認したいことです。

2.普段の生活を大きく崩さない

寝不足になるほど検索する。

食事を極端に変える。

普段していない運動を始める。

急に大量のサプリメントを増やす。

そうした大きな変化を無理に行う必要はありません。

3.「何かしなければ」を一つ減らす

着床期は、

「温めなければ」

「歩かなければ」

「これを食べなければ」

と、やることが増えがちです。

一つ減らしてみることも、身体を整える方法です。

「着床しやすい体」を目指すより大切にしたいこと

着床については、まだわかっていないこともたくさんあります。

胚がよい。

内膜が十分。

ホルモンのタイミングも合っている。

それでも、必ず着床するわけではありません。

だからこそ、

自分の身体を完璧な「着床できる体」に変えようとしすぎないこと

も大切です。

治療で確認するべきことは、主治医と確認する。

薬は指示どおり使う。

食べる。

眠る。

無理をしすぎない。

喫煙を避ける。

体調が悪ければ休む。

そのような基本を整えながら、治療を続けられる身体を支えていく。

私は、それくらいの捉え方でよいと思っています。

着床を意識するほど、身体に力が入ってしまう方へ

胚移植後は、

「動かない方がいいかな」

「お腹に力を入れない方がいい?」

「冷やしてはいけない」

と、身体の一つひとつの動作が気になることがあります。

気づけば肩にもお腹にも力が入り、一日中緊張していることもあります。

医学的に必要な注意と、不安から自分へ課している制限は、必ずしも同じではありません。

このテーマの続きは、8月14日の
「着床期に力が入りすぎる人へ 夜のゆるめ方」
で、着床を願うほど身体も心も張りつめてしまう夜の過ごし方についてお伝えします。

「頑張らなければ」を少し手放し、身体を休ませる方法を一緒に考えていきましょう。

【参考・出典】

世界保健機関(WHO)「不妊の予防・診断・治療に関するガイドライン」

世界保健機関(WHO)「不妊症」

欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)「反復着床不成功に関する適正診療推奨」

米国生殖医学会(ASRM)「胚移植の実施に関するガイドライン」

Human Reproduction Open「反復着床不成功に関するESHRE適正診療推奨」

胚移植に向けて、今の身体を整えたい方へ

「着床のために、もっと何かした方がいいのでは」

と考え始めると、食事や運動、温活、サプリメントなど、やることがどんどん増えてしまうことがあります。

ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、着床を保証する施術ではなく、病院での治療方針を大切にしながら、

・睡眠
・冷えやほてり
・疲労
・胃腸の状態
・月経の状態
・身体の緊張
・治療に伴う不安
・日々の生活リズム

などを確認し、その方の治療段階に合わせた身体づくりを考えています。

何かを追加し続けるのではなく、今の身体に負担になっているものを整理すること。

それも、胚移植に向けた準備の一つです。

「移植を控えて、何をしたらよいのかわからなくなっている」

「自分の場合はどんな身体づくりを考えればよいか相談したい」

という方は、LINEからお気軽にご相談ください。

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