8月8日の
「着床しやすい体ってどういう状態?」
では、
「ふかふかの内膜」
「身体を温めれば着床しやすくなる」
といった一つの条件だけで着床が決まるわけではないことをお伝えしました。
頭では、
「できることには限界がある」
とわかっていても、
胚移植を終えると、急に自分の身体を慎重に扱いたくなることがあります。
立ち上がるときも、そっと。
階段も、そっと。
お腹に力を入れないように。
重いものを持たないように。
冷やさないように。
早く寝なければ。
ストレスをためないように。
そして夜になると、
「今日、動きすぎたかもしれない」
「イライラしてしまった」
「こんなに緊張していたら着床によくないのかな」
と、その日の行動を振り返ってしまう。
そんな方もいらっしゃると思います。
でも、
着床のために、一日中身体へ力を入れて守り続ける必要はありません。
今夜は、
「もっと着床のために頑張る方法」
ではなく、
もう少し普通に過ごしてよい部分を増やす方法
を考えてみましょう。
「リラックスしなければ着床しない」と思わなくて大丈夫
妊活中には、
「ストレスは妊娠によくない」
「リラックスした方が着床する」
という言葉を見かけます。
すると、
不安になっているだけで、
「こんな気持ちだからダメなのかな」
と思ってしまうことがあります。
でも、
不安になった。
泣いた。
イライラした。
仕事で緊張した。
眠れない夜があった。
そのような一日だけで、胚移植の結果が決まると考える必要はありません。
不妊治療の過程では、胚移植や判定を待つ時期に不安が高まりやすいことが知られています。
つまり、
着床期に不安になること自体が、珍しいことではありません。
「リラックスできているか」を、新しい妊活の採点項目にしなくて大丈夫です。
胚移植後は、ずっと横になっていた方がいい?
胚移植後、
「できるだけ動かない方が、胚が着床しやすいのでは」
と思う方もいます。
しかし、現在の医学的な考え方では、
妊娠率を上げる目的で、胚移植後に長時間安静にする必要はありません。
米国生殖医学会(ASRM)の胚移植に関するガイドラインでも、移植後はすぐに歩行してよいことが示されています。
胚移植後に立ち上がったからといって、
胚が落ちる。
歩いたことで流れてしまう。
というものではありません。
通院先から特別な指示を受けていないのであれば、
トイレへ行く。
歩いて帰る。
食事をする。
家の中を動く。
といった通常の日常生活まで怖がらなくて大丈夫です。
「お腹に力を入れたら胚が落ちる?」と心配な方へ
くしゃみをした。
咳をした。
トイレで少し力んだ。
階段を上った。
ベッドから勢いよく起き上がった。
その瞬間、
「今の大丈夫だった?」
と思うことがあります。
しかし、子宮は胚を置いたあとに蓋をして閉じ込めるような器官でもなければ、少し身体を動かしただけで中身が落ちてくるような空間でもありません。
日常生活で生じる程度の腹圧を、
一つ一つ恐れる必要はありません。
もちろん、
移植後の治療内容や卵巣の状態によって運動制限などを指示されることはあります。
その場合は、通院先の指示を優先してください。
夜になって「今日やりすぎた」と反省しない
判定日までの期間は、
朝から一日の行動を監視するようになりやすい時期です。
「今日は8,000歩も歩いた」
「仕事でずっと立っていた」
「買い物袋を持ってしまった」
「掃除機をかけた」
「電車で座れなかった」
と振り返り、
夜になると、
「何か悪いことをしたかもしれない」
と不安になる。
でも、
通常の日常生活を送ったことを、夜になって採点する必要はありません。
主治医から禁止されていない日常動作については、
「今日も普通に生活した」
くらいに考えてみてください。
「血流をよくしなければ」と頑張りすぎなくていい
着床について調べていると、
「子宮への血流」
という言葉をよく目にします。
すると、
ウォーキング。
ストレッチ。
入浴。
足湯。
ツボ押し。
温活。
を毎日全部しなければならない気がしてきます。
でも、
疲れているのに歩く。
暑いのに長風呂する。
眠いのにストレッチを続ける。
必要はありません。
身体づくりは、
一晩で子宮の血流を変えて着床させるための作業ではありません。
日々の健康を支える範囲で、
心地よく続けられるものを取り入れる。
それくらいで十分です。
着床期は「冷やしてはいけない」?
胚移植後、
冷たい飲み物を飲んだ。
冷房に当たった。
足が冷たかった。
というだけで、
「子宮まで冷えてしまった」
と心配される方がいます。
しかし、
冷たい飲み物や冷房を使ったことだけで、着床が妨げられるという十分な医学的根拠はありません。
特に8月は、暑さを我慢する方が身体へ負担になります。
汗をかき続けているのに、
妊活だから冷房を弱くする。
寝苦しいのに腹巻きを重ねる。
必要はありません。
眠りやすい室温にする。
暑ければ薄着になる。
水分をとる。
身体が快適に休めることを優先してください。
入浴はしてもいい?
通院先から特別な指示がなければ、通常の入浴まで必要以上に怖がる必要はありません。
ただし、
「着床のために身体を温めなければ」
と考えて、
熱いお湯に長時間入る。
汗が大量に出るまで半身浴する。
入浴後ぐったりする。
という使い方はおすすめしません。
8月は入浴そのものが暑熱負荷になることもあります。
今夜は、
身体を温めるためではなく、気持ちよく一日を終えるためのお風呂
くらいに考えてみてください。
サウナや岩盤浴は「着床のため」に行かなくていい
汗を出すと、
「血流がよくなった気がする」
「デトックスできた気がする」
と感じることがあります。
ただ、胚移植後に妊娠の可能性がある時期は、
着床率を高める目的でサウナや岩盤浴へ行く必要はありません。
特に夏は、発汗や脱水によって身体が消耗しやすい季節です。
いつも行っている方でも、移植後の利用について心配な場合は通院先へ確認してください。
「早く寝なければ」と焦って眠れない夜もあります
妊活では、睡眠を整えることが大切と言われます。
すると、
「22時には寝なければ」
「7時間は寝なければ」
と、睡眠にも目標が増えていくことがあります。
21時30分。
「あと30分で寝ないと」
22時。
「まだ眠くない」
23時。
「明日の身体に悪い」
と考えるほど、目が冴えてしまう。
睡眠は、
努力して眠ろうとするほど、かえって難しくなることがあります。
今日は理想の時間に眠れなかった。
そんな夜が一日あっても、それだけで治療結果が決まるわけではありません。
夜は「眠ること」より「休める状態」を目指す
今夜すぐ眠れるかどうかは、自分では完全にコントロールできません。
そこで、
「22時に必ず眠る」
ではなく、
「22時から身体を休ませる」
くらいに変えてみます。
照明を少し暗くする。
スマートフォンを置く。
横になる。
好きな音楽を聴く。
静かな番組を見る。
何もしない。
眠れなくても、
身体を休ませる時間にはできます。
呼吸法も「着床のため」ではなく、身体の力を抜くために
緊張している夜は、
「深呼吸しなければ」
と思わなくても構いません。
無理に大きく吸うより、
吐く息を少し長くする
ことを意識してみましょう。
たとえば、
鼻から楽に吸う。
↓
口または鼻から、少しゆっくり吐く。
それだけです。
秒数を正確に数える必要もありません。
5回程度やったら終わります。
目的は、
「自律神経を整えて着床率を上げる」
ことではありません。
肩やお腹に入っている力に気づき、少しゆるめること
です。
今、身体のどこに力が入っていますか?
布団に入ったら、
身体を一度確認してみてください。
眉間。
あご。
肩。
手。
お腹。
お尻。
足。
意外なところに力が入っていることがあります。
気づいたら、
「抜かなければ」
と頑張らず、
その場所を一度ふっと緩めてみます。
また力が入っても構いません。
気づいたときに、もう一度緩めます。
力が戻ることまで失敗にしないこと
がポイントです。
お腹は触らない方がいい?
胚移植後、
「お腹を触ったら刺激になる?」
と心配する方もいます。
通常、手のひらをお腹へ軽く置く程度まで恐れる必要はありません。
ただし、
強く揉む。
痛いほど押す。
腹部へ強い刺激を加える。
といったセルフケアを、着床のために行う必要はありません。
今夜は、
手を置いて呼吸を感じるくらいで十分です。
着床期におすすめしたい「3か所ゆるめ」
身体全体をストレッチしなくても構いません。
今夜は3か所だけ確認してみましょう。
1.あご
無意識に歯を食いしばっていないでしょうか。
上下の歯を少し離します。
舌も力を抜きます。
2.肩
一度だけ肩を耳へ近づけるように上げます。
そのあと、
ストン。
と落とします。
3.手
手のひらを強く握っている方もいます。
一度軽く握り、
ゆっくり開きます。
これだけでも構いません。
ストレッチは「伸ばさなければ」と頑張らない
寝る前のストレッチも、
身体が気持ちよければ取り入れて構いません。
ただ、
開脚。
強いひねり。
痛いところまで伸ばす。
長時間続ける。
必要はありません。
首をゆっくり動かす。
肩を回す。
ふくらはぎを伸ばす。
など、
「気持ちいい」で止める
くらいにしてください。
治療の段階や身体の状態によって運動制限がある場合は、通院先の指示を優先します。
東洋医学では「力が抜けない状態」をどう見る?
東洋医学では、
検査や治療への緊張。
結果を待つ不安。
仕事。
人間関係。
などが重なり、
・肩や首が張る
・胸がつかえる
・ため息が増える
・イライラする
・眠りにくい
・お腹が張る
といった状態を、
肝鬱気滞(かんうつきたい)|緊張などで気の巡りが滞っていると捉える状態
として見ることがあります。
このような方は、
「もっと身体を動かして巡らせよう」
と頑張るより、
緊張し続けている時間を少し減らす
ことも養生になります。
心脾両虚(しんぴりょうきょ)|考え続けて、心身ともに疲れていると捉える状態
・考え始めると止まらない
・眠りが浅い
・夢が多い
・食欲が落ちる
・疲れやすい
・動悸を感じる
という状態では、
東洋医学で、
心脾両虚(しんぴりょうきょ)
という見方をすることもあります。
「心」と「脾」が十分に身体を支えにくくなっていると捉える状態です。
このタイプでは、
夜に何か新しいセルフケアを追加するより、
食べる。
入浴する。
早めに横になる。
という基本的な生活を優先します。
夜に使いやすいツボ「内関(ないかん)」
手首の内側にあるツボです。
手首のしわから指3本ほど肘側へ進み、2本の腱の間あたりにあります。
東洋医学では、
緊張。
胃の不快感。
胸のつかえ。
などがあるときに用いることがあります。
反対側の親指で、
痛くない程度に10~20秒ほど
ゆっくり押します。
左右1~2回程度で十分です。
「着床させるツボ」として押すものではありません。
あくまで、
身体を休ませる時間の一つ
として使ってください。
三陰交を強く押さなければいけない?
妊活では「三陰交」が有名なため、
毎日強く押している方もいます。
でも、
「妊活のツボだから」
と痛いほど刺激する必要はありません。
特に胚移植後や妊娠の可能性がある時期は、
自己流で強い刺激を続けるより、
施術者へ相談してください。
ツボ押しは、
強いほど効果が高いものではありません。
今夜は「妊活の情報を入れない時間」を30分だけつくる
判定日が近づくほど、
SNS。
検索。
動画。
ブログ。
掲示板。
を何度も見てしまうことがあります。
今夜は、
寝る前の30分だけでも、
新しい妊活情報を入れない時間
をつくってみてください。
検索を禁止するのではありません。
「今日はここまで」
という終わりを作ります。
スマートフォンを完全に触らないのが難しければ、
妊活とは関係のない動画。
音楽。
漫画。
ゲーム。
でも構いません。
「胚のことを考えないようにする」は難しい
「気にしない方がいい」
と言われても、
移植したばかりなら気になります。
今頃どうしているかな。
着床したかな。
大丈夫かな。
考えてしまいます。
そのたびに、
「また考えてしまった」
と責めなくて大丈夫です。
気づいたら、
「今は結果を待っている途中だった」
とだけ確認します。
そして、
今やっていたことへ戻ります。
忘れようと頑張る必要はありません。
パートナーにお願いしてもいいこと
夜になると不安が強くなる方は、
パートナーへ具体的にお願いする方法もあります。
「不安になったら大丈夫って言って」
だけではなく、
たとえば、
「寝る前は治療の検索を一緒にしないでほしい」
「判定日までは妊娠症状の話をこちらから出したときだけ聞いてほしい」
「今日は10分だけ話を聞いて、そのあとは別の話をしたい」
などです。
不安を解決してもらうのではなく、過ごしやすい環境づくりを手伝ってもらう
と考えてみましょう。
判定日まで続けたいのは「完璧な生活」ではありません
胚移植後は、
食事。
睡眠。
運動。
温度。
感情。
すべてを整えたくなります。
でも、
毎日完璧に過ごすことはできません。
外食した。
夜更かしした。
怒った。
泣いた。
忙しく働いた。
冷たいものを飲んだ。
そんな一日があっても、
その一つだけを今回の結果と結びつけないでください。
治療中の生活で目指したいのは、
完璧さではなく、無理を重ねすぎないこと
です。
今夜やることは3つだけ
何かした方が安心する方は、次の3つだけにしてみてください。
1.処方された薬を確認する
まず最優先は、通院先から指示されている薬です。
時間や使用方法を確認します。
自己判断で追加・中止しません。
2.身体の力を3か所だけ抜く
あご。
肩。
手。
一度だけ確認します。
完璧に脱力できなくても構いません。
3.寝る前30分は「判定」をしない
症状を採点しない。
検査薬を眺めない。
今日の行動を反省しない。
今日は結果を出す日ではありません。
「何もしていない気がする夜」があってもいい
胚移植後は、
何かをしていないと、
「妊娠のために努力していない」
ように感じることがあります。
でも、
薬を使った。
食事をした。
水分をとった。
一日を過ごした。
そして休む。
それだけの日があって構いません。
胚移植後にできることには限界があります。
だから、
できることが少ないのは、努力不足ではありません。
結果を自分だけでコントロールできない治療だからこそ、待つ時間は苦しくなります。
不安で日常生活が難しくなっているときは相談を
判定日まで緊張することは珍しくありません。
ただ、
・ほとんど眠れない状態が続く
・食事がとれない
・仕事や家事が手につかない
・一日中検索してしまう
・動悸や強い不安が続く
・何をしていても治療のことしか考えられない
という状態が続いている場合は、一人で我慢し続けなくても大丈夫です。
WHOでも、不妊には不安、抑うつ、孤立感などの心理的負担が伴うことがあり、心理社会的な支援を継続して利用できることが重要とされています。
主治医。
通院先の相談窓口。
心理職。
などへ相談する方法もあります。
今夜は「着床させる夜」ではなく「身体を休ませる夜」に
胚移植をしたあと、
私たちは結果を直接動かすことはできません。
だからこそ、
何かをしたくなる。
じっとしていたくなる。
身体を温めたくなる。
検索したくなる。
それは自然な反応だと思います。
でも今夜、
一つだけ考え方を変えるなら、
「着床させるために何をする?」
から、
「今日使った身体を、どう休ませよう?」
へ変えてみてください。
寝つけなくてもいい。
完全にリラックスできなくてもいい。
不安が残っていてもいい。
身体の力を少し抜いて、
今日はここまで。
と終える。
着床期の夜に必要なのは、
「正しいリラックス」ができることではなく、
もう頑張らなくてよい時間を、自分に少し許すこと
なのだと思います。
【参考・出典】
世界保健機関(WHO)「不妊の予防・診断・治療に関するガイドライン」
世界保健機関(WHO)「不妊症」
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)「不妊・生殖補助医療における日常的な心理社会的ケア」
米国生殖医学会(ASRM)「胚移植の実施に関するガイドライン」
Human Reproduction「不妊・生殖補助医療における日常的な心理社会的ケアのガイドライン」
胚移植後、身体にも心にも力が入り続けている方へ
胚移植を終えると、
「何か悪いことをしてはいけない」
という気持ちから、
普段なら気にならない身体の変化まで気になることがあります。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、
・不妊治療の段階
・睡眠
・身体の緊張
・冷えやほてり
・胃腸の状態
・疲労
・月経の状態
・治療に伴う心身の負担
などを確認しながら、その方に合った身体づくりを考えています。
鍼灸によって着床を保証したり、胚移植の結果をコントロールしたりすることはできません。
だからこそ、
治療を続ける間に、身体と気持ちを消耗させすぎないこと
を大切にしています。
「胚移植後、ずっと身体に力が入っている」
「判定日までどう過ごせばよいのかわからない」
という方は、LINEからお気軽にご相談ください。

