生理が毎月きっちり来ない。
排卵日が読みにくい。
頑張っているのに、妊活が前に進まない感じがする。
そんな時に、クリニックや病院など、専門の医療機関で「PCOSかもしれません」と言われることがあります。
でも、急に専門的な言葉が出てくると、何が起きているのか分からず、不安になる方も多いと思います。
まず最初にお伝えしたいことがあります。
PCOSがあるから、妊娠できないと決まるわけではありません。
ただし、排卵しにくさや月経不順が妊活を難しくしやすいため、自己流で抱え込まず、状態に合った進め方を知ることがとても大切です。
PCOSとは何でしょうか
PCOSは、多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)のことです。
アメリカの疾病対策センターでは、PCOSは不妊に関わる代表的な状態のひとつで、月経不順を起こしやすく、排卵しにくくなることがあると説明しています。
またNHSでは、卵巣の中に小さな卵胞がたくさん見られ、その多くがうまく育ち切らず、排卵につながりにくいことがあると案内しています。
ここで大切なのは、
PCOSは「卵巣に嚢胞がある病気」と単純に考えないことです。
実際には、月経や排卵のリズム、男性ホルモンの影響、代謝の特徴などが関わる、もう少し広い状態として考えられています。
どんな症状が出やすいのでしょうか
PCOSでよくみられるのは、
- 生理が不規則
- 生理がなかなか来ない
- 排卵しにくい
- 妊娠しづらい
- にきびが出やすい
- 体毛が気になる
- 体重が増えやすい
- 髪が薄くなる感じがする
といった変化です。
NHSでは、生理不順または無月経、妊娠しにくさ、多毛、体重増加、にきび、薄毛などを代表的な症状として案内しています。
またCDCでは、PCOSは将来的に2型糖尿病、妊娠糖尿病、高血圧、脂質異常、睡眠時無呼吸、心血管リスク、抑うつや不安などとも関わりうるとしています。
診断はどう考えるのでしょうか
PCOSの診断は、思いつきで決めるものではありません。
2023年の国際エビデンスに基づくガイドラインでは、成人では次の3つのうち2つを満たし、ほかの原因を除外する考え方が示されています。
- 男性ホルモンが高いことを示す症状や検査所見
- 排卵障害、または月経不順
- 超音波での多嚢胞性卵巣、または抗ミュラー管ホルモン(AMH)の高値
さらに、月経不順と男性ホルモンの症状や所見がそろっている場合は、超音波やAMHがなくても診断を考えられるとされています。
つまり、
「超音波で卵巣がそう見えたから即PCOS」
でもなければ、
「AMHが高いから即PCOS」
でもありません。
症状、月経、排卵、検査を組み合わせて考えるものです。
妊活でつまずきやすいポイントは何でしょうか
PCOSがあると妊活でつまずきやすい理由のひとつは、排卵のタイミングが読みづらいことです。
アメリカの疾病対策センターは、PCOSは排卵しない、または不規則に排卵することで妊娠しにくさにつながるとしています。
そのため、排卵検査薬の使い始めが分かりにくい、基礎体温が読みにくい、タイミングを合わせても毎周期同じようにいかない、ということが起こりやすくなります。
もうひとつ大きいのは、
「生理が来ているから大丈夫」と思いやすいことです。
ガイドラインでは、規則的に見える周期でも排卵障害が隠れていることがあり、必要に応じてプロゲステロン(黄体ホルモン)などで排卵確認を行うことが示されています。
自己判断だけで進めると、時間が過ぎやすいのがPCOSの難しさです。
治療はどんなふうに進むのでしょうか
治療は、その方の目的によって変わります。
妊娠を目指している方と、まず月経を整えたい方とでは、考え方が違います。
2023年の国際ガイドラインでは、ほかに不妊要因がない無排卵のPCOSでは、レトロゾールが排卵誘発の第一選択の薬とされています。
また、メトホルミンは単独で使うこともあるが、より有効な排卵誘発薬があることを説明したうえで使うとされています。
メトホルミンでは、軽い胃腸症状が起こりうることも案内されています。
NHSでも、妊娠を目指す場合はクロミフェン、メトホルミン、レトロゾール、必要に応じてゴナドトロピン注射や体外受精(IVF)が選択肢になりうると案内しています。
一方で、ゴナドトロピン注射では卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠のリスクが高まることがあるため、慎重な管理が必要です。
月経が来ない状態を放っておかないことも大切です
PCOSでは、生理が何か月も来ないことがあります。
NHSでは、無月経やまれな月経が続く場合、子宮内膜が長く厚いまま保たれ、子宮内膜がんのリスクが上がることがあるため、月経を起こす治療やホルモン治療を検討することがあると説明しています。
妊活中は「妊娠しやすくなるかどうか」に意識が向きやすいですが、
月経が来ない状態を長く放置しないことも、体を守るうえで大切です。
東洋医学では、PCOSをどうみるのでしょうか
東洋医学や中医学では、PCOSという病名そのものは使いません。
ただ、現れている状態から、気・血・水の巡りと、肝・脾・腎の働きのバランスをみていきます。
たとえば、
- 生理不順が長く続く
- むくみやすい
- 冷えやすい
- 体が重い
- 食欲にむらがある
- 甘いものに偏りやすい
- イライラや落ち込みが強い
という方では、
痰湿(たんしつ)
肝鬱気滞(かんうつきたい)
腎虚(じんきょ)
などの見立てをすることがあります。
分かりやすく言うと、
流れにくさ、ため込みやすさ、支える力の弱り
が重なっている状態です。
春から初夏にかけては「肝」が乱れやすく、気持ちの張りつめや巡りの悪さが出やすい時期でもあるため、PCOSの方では余計に体調の波を感じやすいことがあります。
不妊・妊活における鍼灸の役割
ここも、誠実にお伝えしたいところです。
鍼灸は、PCOSそのものを一度で治すものではありません。
また、排卵の有無、ホルモン値、精液所見、卵管の通り道、体外受精(IVF)など、妊活に必要な検査や治療の代わりになるものでもありません。
必要な確認は、クリニックや病院など、専門の医療機関で行うことが大切です。
その一方で、PCOSの方に重なりやすい
- 冷え
- むくみ
- 眠りの浅さ
- 首肩のこわばり
- 気持ちの張りつめ
- 月経前後の不調
- 自律神経の乱れを感じる状態
などを、東洋医学の視点から整える支えにはなれます。
英国ヒト受精・胚研究機構(HFEA)は、鍼灸を含む補完療法について、リラクゼーションやウェルビーイングのために取り入れられることがある一方、妊娠率を高める明確な根拠は十分ではないと案内しています。
当院でも、鍼灸を「結果を約束する方法」としてではなく、PCOSを含めた妊活中の心と体の土台を整える補助的な支えとして位置づけています。
今日からできる3つ
1.「生理不順だから仕方ない」で止めない
PCOSがあると、生理不順が当たり前のように続いている方もいます。
でも、長く放置せず、まず今の周期や出血の状況を整理して、必要なら相談してください。
自己流で何か月も抱え込まないことが大切です。
2.体重だけで自分を責めない
PCOSのケアでは生活習慣の見直しが大切ですが、2023年のガイドラインは体重の数字だけに偏りすぎず、体を動かすこと、食事の質、睡眠、心理面、体重への偏見やスティグマを減らすことも大切だとしています。
「痩せない私が悪い」と責める方向では、続きにくくなります。
3.小さな記録をつける
生理開始日、出血量、基礎体温、排卵検査薬、眠り、むくみ、気分。
全部でなくて大丈夫です。
少し記録があるだけで、クリニックや病院など、専門の医療機関で相談する時に整理しやすくなります。
自分でやさしく触れやすいツボ
PCOSの方で、冷えや巡りの悪さ、気持ちの張りつめが気になる時に使いやすいツボがあります。
三陰交(さんいんこう)
内くるぶしのいちばん高いところから、指4本分ほど上。
冷えや婦人科系のお悩み、下半身の巡りを整えたい時によく使われます。
太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前。
ため息が増える時、イライラしやすい時、気の巡りを整えたい時に使いやすいツボです。
どちらも、強く押し込む必要はありません。
息を吐きながら、少し気持ちいいくらいでやさしく触れてみてください。
妊娠の可能性がある時や体調に不安がある時は、無理をせずご相談ください。
当院の考え方
当院では、PCOSを「名前のついた状態」としてだけでは見ません。
その方が日々どんな困りごとを抱えているかを、とても大切にしています。
排卵しにくい。
生理が読めない。
気持ちが焦る。
体が重い。
周りと比べて苦しくなる。
そうした一つひとつが、妊活をつらくしていきます。
だからこそ当院では、必要な検査や治療はクリニックや病院など、専門の医療機関で大切に進めていただきながら、
その土台として、
- 冷え
- 睡眠
- 自律神経の乱れを感じる状態
- 気持ちの張りつめ
- 胃腸の疲れ
- 月経前後の不調
- 体質や生活習慣
などを、東洋医学の視点から丁寧にみていくことを大切にしています。
PCOSがあるからといって、希望がないわけではありません。
ただ、自己流で頑張りすぎるほど、苦しくなりやすい状態でもあります。
「なかなか前に進まない」
そう感じる時ほど、ひとりで抱えず、まずは今の体の状態を一緒に整理するところから始めていきましょう。
この記事を書いた人
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂
院長 菅原 裕万
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
奈良・上牧町で、妊活中の方や女性のお身体のお悩みに向き合い、マタニティケア・産後ケアまで、ライフステージに合わせた鍼灸施術を行っています。
病院での検査や治療を大切にしながら、東洋医学の視点も取り入れ、冷え・睡眠・自律神経・体質・生活習慣などを丁寧に確認し、その方に合った身体づくりを一緒に考えることを大切にしています。
ご自身に合ったより詳しいセルフケアを知りたい方、身体の土台作りから見直したい方は、当院にご相談ください。

