「妊活にはビタミンDが大切らしい」
そう聞いて、
「サプリを飲んだ方がいい?」
「血液検査をした方がいい?」
「数値が低いと着床しにくいの?」
と気になっていませんか?
不妊治療をしていると、葉酸、鉄、亜鉛、ビタミンDなど、意識する栄養素がどんどん増えていきます。
そして気づけば、
「足りないものがあるから妊娠できないのでは?」
と不安になることがあります。
ビタミンDは、骨やカルシウム代謝などに関わる大切な栄養素です。
生殖医療との関連についても多くの研究が行われています。
ただし現在のところ、
ビタミンDを多く取れば取るほど妊娠しやすくなる、というものではありません。
今日は、妊活中にビタミンDをどこまで気にすればよいのかを整理してみましょう。
そもそもビタミンDは何をしているの?
ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つです。
カルシウムやリンの吸収を助け、骨の健康を維持する重要な役割があります。
また、ビタミンD受容体は身体のさまざまな組織に存在しており、生殖領域についても研究が続けられています。
ビタミンDの特徴の一つは、食事から摂取するだけではなく、皮膚に紫外線が当たることで体内でも作られることです。
そのためビタミンDの状態は、食事だけでなく、日照、季節、屋外活動、皮膚を覆う衣服などの影響も受けます。
血液検査では何を測っているの?
身体のビタミンDの状態を確認するときには、主に
25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]
を血液で測定します。
これは、体内にどの程度ビタミンDが保たれているかを評価するために使われる指標です。
日本では、日本骨代謝学会・日本内分泌学会の判定指針として、
- 20ng/mL未満:ビタミンD欠乏
- 20ng/mL以上30ng/mL未満:ビタミンD不足
- 30ng/mL以上:ビタミンD充足
という基準が示されています。
ただし、この基準は主に骨・ミネラル代謝を踏まえて設定された判定基準です。
ここが大切です。
「30ng/mL未満だから妊娠しにくい」と判断するための妊活専用の基準ではありません。
「ビタミンDが低いと妊娠しにくい」は本当?
このテーマについては、多くの研究があります。
2025年に公表された、生殖補助医療(ART)を受けた女性を対象とする23件の観察研究のシステマティックレビュー・メタ解析では、ビタミンDが十分な女性の方が、ビタミンDが低い女性と比べて臨床妊娠率や出生率が高い傾向が報告されました。
一方で、この研究の中心は観察研究です。
つまり、
「ビタミンDが高かった人の方が結果が良かった」
という関連は見られても、
「ビタミンDを補えば、その人の妊娠率や出生率が上がる」とまで証明したものではありません。
ビタミンDの値には、食生活、屋外活動、体格、生活習慣、健康状態など、さまざまな要因が関係します。
関連があることと、
原因であること。
ここは分けて考える必要があります。
凍結融解胚移植でも研究されています
凍結融解胚移植(FET)についても、ビタミンDとの関連が研究されています。
2026年に公表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、4件・2,061周期の観察研究をまとめた結果、ビタミンDが低い女性では臨床妊娠率が低い可能性が示されました。
一方、出生率については統計学的に明確な差とはなりませんでした。
また、この解析も観察研究が中心です。
そのため、
「移植前にビタミンDを○以上にすれば着床率が上がる」
とまでは言えません。
研究は進んでいますが、妊活では一つの栄養素だけで結果を予測しないことが大切です。
不妊治療中なら全員、ビタミンDを測った方がいい?
「そんなに大切なら、全員測った方がいいのでは?」
と思いますよね。
でも、現在はそこまで単純ではありません。
欧州生殖医学会(ESHRE)の原因不明不妊に関するガイドラインでは、原因不明不妊を診断するための検査として、ビタミンD欠乏の検査を routinely 行うことは推奨されていません。
これは、
「ビタミンDなんて気にしなくていい」
という意味ではありません。
原因不明不妊の原因を探す目的で、
「ビタミンDを測れば答えが分かる」
ほどの根拠はない、という意味です。
実際には、既往歴、骨の健康状態、日光に当たる機会、食生活などによって、主治医が検査を勧めることがあります。
気になる方は、
「私の場合はビタミンDを測る意味がありますか?」
と主治医へ確認してみてください。
サプリを飲めば妊娠率は上がる?
ここも、とても気になるところだと思います。
2023年に公表された12研究・2,352人を対象としたシステマティックレビュー・メタ解析では、ビタミンDを補充した群で臨床妊娠率が高かったという結果が報告されています。
ただし、着床率、流産率などでは明確な差が確認されなかった項目もあり、研究によってビタミンDの量、使用期間、対象となった女性のビタミンDの状態も異なっています。
研究者自身も、
より大規模で質の高いランダム化比較試験が必要
としています。
そのため現時点では、
「妊活をしているなら全員この量を飲めばいい」
とは言えません。
特に、検査で十分な値がある方がさらに大量に補充することで、妊娠しやすくなると証明されているわけではありません。
「不足しているなら整える」と考える
妊活中のビタミンDについて、私はこの考え方が一番分かりやすいと思います。
不足しているなら、必要に応じて整える。
足りているものを、妊娠のために過剰に増やさない。
です。
ビタミンDは妊活専用の栄養素ではありません。
身体に必要な栄養素だからこそ、不足している場合には、食事や生活、必要に応じた補充について医師と考える意味があります。
でも、
「もっと増やせば、もっと妊娠しやすい」
とは考えないようにしましょう。
日本人は一日にどのくらい取ればいい?
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18歳以上の女性のビタミンDの目安量は、
1日9.0μg
とされています。
妊婦についても目安量は9.0μgです。
これは、
「妊活中だから9μgを超えて取ってはいけない」
という意味ではありません。
あくまで、健康な人の栄養摂取を考えるための基準です。
一方、成人女性の耐容上限量は1日100μgとされています。
サプリメントでは「IU」という単位が使われることがあり、ビタミンDは1μg=40IUです。
複数のサプリメントを使っていると、知らないうちにビタミンDが重複することもあります。
妊活用、マルチビタミン、ビタミンD単体を一緒に使っている方は、一度含有量を確認してみてください。
ビタミンDは何から取れる?
食品では、ビタミンDは比較的限られた食材に含まれています。
たとえば、
- 鮭、サバ、イワシなどの魚類
- きのこ類
- 卵など
があります。
一つの食品だけを毎日大量に食べる必要はありません。
魚を食べる日をつくる。
きのこを食事へ加える。
普段の食事の中で取り入れる。
そのくらいで構いません。
「妊活のためにビタミンDを取らなければ」と考えるより、
普段の食事の中で不足しにくい形をつくる
ことを意識してみましょう。
日光にも当たった方がいい?
ビタミンDは、紫外線が皮膚に当たることでも作られます。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、可能な範囲で適度な日光に当たることと、日照時間を考慮しながらビタミンD摂取を考える必要性が示されています。
ただし、
「ビタミンDのために長時間日焼けする」
必要はありません。
紫外線には皮膚への影響もあります。
天候、季節、時間帯、肌質、服装、生活環境によって必要な条件は大きく変わるため、
日常生活の中で無理なく屋外へ出る時間を持つ
くらいから考えてください。
ビタミンDのために、日焼けを我慢する必要はありません。
室内で過ごすことが多い方は、一度食生活も確認する
仕事でほぼ一日室内にいる。
外出は車が中心。
魚をほとんど食べない。
食事制限をしている。
こうした方では、ビタミンDの摂取や日照が少なくなることがあります。
反対に、
「外へ出ていないから私は絶対欠乏している」
と決めつける必要もありません。
気になる場合には、食事を振り返り、必要に応じて主治医と検査について相談してみましょう。
サプリメントを選ぶ前に確認したい3つ
1.すでに何に入っているか
葉酸サプリ、妊活用サプリ、マルチビタミンなどに、すでにビタミンDが含まれていることがあります。
まず現在使っているものを確認します。
2.血液検査をしているなら、その値を見る
25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]を測っている場合には、自己判断で量を増やす前に結果を主治医と確認します。
3.大量に取ればよいと考えない
ビタミンDは脂溶性ビタミンです。
過剰摂取が続けば、高カルシウム血症など健康への影響につながる可能性があります。
「妊活に良いらしいから」と自己判断で高用量を続けないようにしましょう。
「20だった」「25だった」と数字だけで落ち込まない
検査結果を受け取ると、
「私は21しかない」
「30ないからダメなのかな」
と思うことがあります。
ただ、日本の20ng/mL、30ng/mLという判定値は、骨・ミネラル代謝などを背景とした基準です。
妊娠できる・できないを分ける数字ではありません。
また、生殖医療研究で使われている「不足」「充足」の区切りも、研究によって異なることがあります。
だから、
「あと5上げれば着床する」
というように考えないでください。
検査値は、
不足しているかもしれない栄養状態を整えるための情報。
それ以上でも、それ以下でもありません。
AMHと同じように「数字を自分の点数」にしない
妊活では、
抗ミュラー管ホルモン(AMH)。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)。
ビタミンD。
いろいろな数字を見ることがあります。
数字は、治療や身体づくりを考えるためには役立ちます。
でも、
「AMHが低いからダメ」
「TSHが高いからダメ」
「ビタミンDが足りないからダメ」
と、自分を評価する点数にしないでください。
身体は、一つの検査値だけでできているわけではありません。
ビタミンDだけで妊活の食事を考えない
妊活中の栄養では、
ビタミンD。
葉酸。
鉄。
たんぱく質。
など、いろいろな栄養素が気になります。
でも、一つを追いかけるほど、
今度は別の栄養素が心配になることがあります。
特定の栄養素を完璧にするより、
食事が取れているか。
極端な制限をしていないか。
胃腸はつらくないか。
体重が大きく変化していないか。
という基本も大切です。
妊活の食事は、栄養素を集めるゲームではありません。
身体が無理なく食べられることも、身体づくりの一部です。
東洋医学では、ビタミンDの数値を「体質」に置き換えません
東洋医学では、
腎虚。
脾虚。
血虚。
などの言葉を使うことがあります。
ただし、
「ビタミンDが低いから腎虚」
といった対応関係があるわけではありません。
腎虚(じんきょ)|疲労や冷え、腰のだるさなどが重なる状態
東洋医学では、生殖や加齢などと「腎」を関連づけて考えます。
脾虚(ひきょ)|胃腸が弱り、食事を取りにくい状態
食欲低下、胃もたれ、軟便、疲れやすさなどが重なる状態です。
血虚(けっきょ)|疲労や眠りの浅さなどが重なる状態
疲れやすい、眠りが浅い、立ちくらみなどを合わせて見ます。
血液検査による栄養状態と東洋医学の体質は、
別のものとして確認します。
鍼灸でビタミンDを増やすわけではありません
ここも整理しておきましょう。
鍼灸を受ければ、
ビタミンDの血中濃度が上がる。
サプリメントが不要になる。
というものではありません。
不足している栄養素があれば、食事や必要な補充を考える。
それは栄養の役割です。
一方で妊活中には、
胃腸が弱って食事が取りにくい。
睡眠が乱れている。
首肩に力が入り続けている。
治療のことで緊張している。
という状態が重なることがあります。
そこで鍼灸では、
栄養素の数字だけでは見えない「今の身体」を一緒に整えていく
ことができます。
「何か足りないものを探す妊活」から少し離れる
妊活が長くなると、
「まだ何か足りないのでは?」
と探し続けてしまうことがあります。
ビタミンD。
鉄。
亜鉛。
サプリメント。
漢方。
次から次へと増やしているうちに、
食事もサプリも「妊娠するための課題」になってしまう。
そんな方もいます。
鍼灸の時間には、
新しいサプリを増やすのではなく、
睡眠。
胃腸。
月経。
冷え・のぼせ。
疲労。
首肩や背中の緊張。
など、今の身体を一度整理します。
「何を追加するか」だけではなく、「今の身体はどうなのか」に戻る時間を持つ。
それも妊活中の身体づくりでは大切だと思います。
蓮心はり灸堂では、サプリメントも確認します
当院では、カウンセリングの際に現在使用している薬だけでなく、漢方やサプリメントについても可能な範囲で確認しています。
たとえば、
ビタミンD単体。
妊活用マルチサプリ。
葉酸。
鉄。
病院から処方されている薬。
いろいろ使っている方もいます。
大切なのは、
「たくさん取っているから安心」
ではありません。
何を、どのくらい使っているのかを一度整理すること。
そのうえで、必要な検査や栄養については主治医や医師・管理栄養士などの専門家へ相談し、鍼灸では今の身体状態を見ながら施術を組み立てます。
今日からできることを3つに絞るなら
1.普段の食事を確認する
魚やきのこ、卵などをほとんど食べていない場合には、無理のない範囲で取り入れます。
2.今使っているサプリのビタミンD量を確認する
複数の製品を飲んでいる場合には、成分の重複がないかを見ます。
3.不足が心配なら自己判断で増量する前に相談する
検査が必要か、補充が必要かは、その方の状態によって変わります。
必要なら主治医へ相談しましょう。
このテーマの続きは9月25日の夜に
今日はビタミンDについて、
検査。
食事。
日光。
サプリメント。
どこまで気にすればよいのかを整理しました。
でも妊活中には、
「鉄は?」
「葉酸は?」
と、ほかの栄養素も気になりますよね。
このテーマの続きは9月25日夜公開の
「ビタミンD・鉄・葉酸を整理する妊活栄養メモ」
で、妊活中に特に気になりやすい栄養素を一度整理し、
「何をどこまで意識すればいい?」
を分かりやすくまとめます。
ビタミンDが足りないのでは、と不安になっている方へ
妊活中は、
少しでも可能性があることなら全部したい。
そう思いますよね。
だから、
「ビタミンDがいい」
と聞けば気になります。
でも、
一つの栄養素だけで妊活の結果が決まるわけではありません。
不足しているなら必要に応じて整える。
足りているなら、もっと増やそうと追いかけすぎない。
そして、
食事。
睡眠。
胃腸。
月経。
疲労。
身体の緊張。
まで含めて、自分の身体を見る。
蓮心はり灸堂では、現在の妊活・不妊治療の段階や使用している薬・サプリメントを確認しながら、その方の身体全体に合わせて施術を組み立てています。
「サプリを増やす前に、一度身体を整理したい」
というご相談でも構いません。
数字やサプリに追われる妊活ではなく、今の身体に本当に必要なことを一緒に整理していきましょう。
参考・出典
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
日本骨代謝学会・日本内分泌学会「ビタミンD不足・欠乏の判定指針」
欧州生殖医学会(ESHRE)「原因不明不妊に関するガイドライン」
Reproductive Sciences「ビタミンD濃度と生殖補助医療の臨床成績との関連:システマティックレビュー・用量反応メタ解析」
Journal of Ovarian Research「不妊患者の生殖成績に対するビタミンD補充の影響:システマティックレビュー・メタ解析」
Cureus「凍結融解胚移植前の母体ビタミンD状態と生殖成績との関連:システマティックレビュー・メタ解析」

