脾虚タイプの食養生 胃腸が弱い人の整え方

東洋医学の視点から体質改善を伝える奈良・上牧町の鍼灸院ブログ画像

「妊活中だから、ちゃんと食べないと」

そう思って朝食を増やしたり、たんぱく質や野菜、サプリメントを意識したりしているのに、

食べると胃が重い。

お腹が張る。

便がゆるくなる。

食欲がわかない。

そんなことはありませんか?

9月13日の
「妊活中に便がゆるい・食欲がないとき」
では、胃腸不調を妊活だけの問題と決めつけず、身体全体から確認することについてお話ししました。

今夜はその続きとして、東洋医学でいう**脾虚(ひきょ)**という状態から、胃腸が弱いときの食養生をもう少し具体的に考えてみましょう。

大切なのは、

身体に良いものをたくさん入れることより、今の身体が無理なく受け取れるようにすること。

です。

目次

脾虚とは「胃腸が悪い病名」ではありません

東洋医学では、飲食物を受け取り、そこから身体を養う働きに「脾」が関係すると考えます。

その働きが弱っている状態を、

脾虚(ひきょ)

と表現します。

たとえば、食欲が落ちやすい、食後に重くなる、軟便になりやすい、疲れやすいなどの状態を合わせて考えることがあります。

ただし、脾虚は西洋医学の病名ではありません。

機能性ディスペプシア。

過敏性腸症候群。

胃炎。

甲状腺疾患。

感染症。

薬の影響。

などとは別の、東洋医学から身体を見るための考え方です。

「私は脾虚だから病院へ行かなくていい」という意味ではありません。

胃腸症状が続く場合には、必要な医学的評価を受けながら、食養生や鍼灸を組み合わせていきましょう。

こんな状態が重なるとき、東洋医学では脾虚を考えます

脾虚タイプでは、一つの症状だけではなく、いくつかの状態が重なっていることがあります。

たとえば、

  • 食欲が安定しない
  • 少し食べるだけでお腹がいっぱいになる
  • 食後に胃が重い、眠くなる
  • お腹が張りやすい
  • 軟便や下痢になりやすい
  • 疲れやすく、夕方になるとぐったりする
  • 手足が冷えやすい

などです。

全部当てはまる必要はありません。

また、当てはまったからといって「脾虚」と自己診断する必要もありません。

今の身体を整理するためのヒント

として考えてください。

妊活中ほど「食べなければ」が負担になることがあります

妊活をしていると、食事に関する情報がたくさん入ってきます。

たんぱく質を増やす。

鉄を取る。

ビタミンDを取る。

野菜を食べる。

朝食をしっかり取る。

どれも身体を考えるきっかけにはなります。

でも胃腸が弱っているときに、

「身体に良いから」

と無理に食べる量を増やすと、かえって食後の不快感が強くなることがあります。

食事は、

食べれば食べるほど身体づくりになるわけではありません。

今の胃腸が無理なく受け取れることも大切です。

食養生① 一度にたくさん食べようとしない

食欲がないのに、

「妊活中だから三食しっかり」

と一度にたくさん食べる必要はありません。

少量でお腹がいっぱいになる方は、一回量を少し減らしてみても構いません。

朝に食欲がなければ、朝から大盛りの食事を頑張るのではなく、食べられる量から始めます。

大切なのは、

一食を完璧にすることより、一日を通して無理なく食べられること。

胃腸の状態を見ながら調整してみましょう。

食養生② 「温かいものだけ」にする必要はありません

東洋医学では、脾虚や冷えがある方に、加熱した食事や温かい飲みものを取り入れることがあります。

おかゆ。

雑炊。

汁物。

煮物。

蒸した野菜。

などを「食べやすい」と感じる方もいます。

ただし、

「冷たいものは妊活に悪い」

「生野菜を食べると身体が冷えて妊娠しにくくなる」

と考える必要はありません。

医学的に、冷たい食べものそのものが不妊の原因になるわけではありません。

大切なのは、

自分の胃腸がどう反応するか。

冷たい飲みものを取るとお腹が痛くなるなら控える。

サラダを食べても問題なければ、無理に禁止しない。

自分の身体に合わせて選びましょう。

食養生③ 脂っこい食事でつらくなるなら量を調整する

胃もたれや食後の膨満感がある方では、脂肪の多い食事や脂っこい料理で症状が強くなることがあります。

米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)も、機能性ディスペプシアでは脂肪の多い食事などが症状を悪化させることがあると説明しています。

だからといって、脂質をすべて避ける必要はありません。

揚げ物を食べると毎回つらいなら量を減らす。

夜に重いものを食べると胃がもたれるなら、夕食を少し軽くする。

「禁止する」より「自分がつらくなる量を知る」

という考え方がおすすめです。

食養生④ たんぱく質も「食べやすい形」で考える

妊活中は、

「たんぱく質を取らなければ」

と意識している方も多いと思います。

でも、大きなお肉を無理に食べる必要はありません。

卵、豆腐、魚、ヨーグルトなど、普段食べて問題のない食品の中から、自分が食べやすいものを選びます。

胃腸が疲れている日は、

「今日はどれなら食べられそう?」

と考えるくらいで構いません。

特定の食品だけに偏るのではなく、体調に合わせながら少しずつ組み合わせていきましょう。

食養生⑤ 「妊活に良い食材」を増やしすぎない

黒豆。

ナッツ。

アボカド。

発酵食品。

薬膳食材。

妊活をしていると、

「これが良い」

という食べものがどんどん増えていきます。

でも、それを全部食べる必要はありません。

身体に良いと言われるものでも、自分の胃腸に合わなければ負担になることがあります。

特に、食欲が落ちているときにサプリメントまで何種類も増やすと、胃の不快感につながる場合があります。

足す前に、今食べているものを一度見直す。

脾虚タイプの食養生では、この考え方も大切です。

「妊活中だから食べる」と「お腹が欲しがっている」を分けてみる

妊活を始める前なら、

「今日はあまり食欲がないから少なめにしよう」

と自然にできていたのに、

妊活を始めた途端、

「栄養が足りなくなる」

と怖くなってしまうことがあります。

もちろん、極端な食事制限はおすすめしません。

でも毎食、

「これを食べなければ妊娠できない」

と思いながら食べる必要もありません。

身体づくりは、

食事を怖がることでも、食事を義務にすることでもありません。

胃腸と相談しながら、続けられる食べ方を探していきましょう。

朝ごはんが食べられないときは?

「朝食は絶対に食べた方がいいですか?」

という質問もあります。

朝から食欲があり、問題なく食べられる方は、そのままで構いません。

一方、起きてすぐ食べると気持ち悪い、胃が動かない感じがするという方は、無理に大量の朝食を詰め込まなくても大丈夫です。

量を少なくする。

少し時間を置く。

食べやすいものから始める。

といった調整をしてみてください。

ただし、食欲低下が長く続いて体重が減っている場合などは、食べ方だけで対応せず医療機関へ相談しましょう。

下痢や軟便があるとき、水分まで減らさない

便がゆるいと、

「飲んだらまたトイレへ行きそう」

と水分を控えてしまう方がいます。

でも、下痢が続くと水分や電解質を失います。

少量ずつでも水分を取ることが大切です。

強い下痢が続く、十分に水分を取れない、尿が極端に少ない、強いふらつきがある場合には、脱水の可能性もあるため医療機関へ相談してください。

胃腸の不調をすべて「脾虚」で済ませない

食欲不振や胃もたれ、軟便があると、

「体質だから」

と思って長く我慢してしまうことがあります。

でも、次のような状態がある場合には、まずクリニックや病院など、専門の医療機関へ相談してください。

  • 意図しない体重減少が続いている
  • 黒い便や血便がある
  • 強い腹痛がある
  • 繰り返し吐いてしまう
  • 食事や水分が十分に取れない
  • 発熱を伴う下痢が続く
  • 胃腸症状が長く続く、または悪化している

消化器症状にはさまざまな原因があります。

必要な検査を受けたうえで、食養生や鍼灸を組み合わせることができます。

東洋医学では「脾」だけを見ない

脾虚タイプといっても、

脾だけを整えればよいとは限りません。

脾虚(ひきょ)|胃腸が弱り、疲れやすい

食欲低下、胃もたれ、軟便、だるさなどが重なる状態です。

肝鬱気滞(かんうつきたい)|緊張すると胃腸まで動きにくい

病院へ行く前にお腹が痛くなる、緊張すると食べられない、胸やお腹が張るなどがみられることがあります。

血虚(けっきょ)|疲労や眠りの浅さも重なる

疲れやすい、眠りが浅い、立ちくらみなどを合わせて見ます。

妊活中には、

脾虚だけ。

肝鬱気滞だけ。

ときれいに分かれるとは限りません。

胃腸、睡眠、月経、緊張、疲労まで一緒に見ること

が大切です。

ストレスと胃腸は切り離せないことがあります

「病院の日だけお腹がゆるくなる」

「採卵が近づくと食欲がなくなる」

という方もいます。

これは、

「気の持ちよう」

という意味ではありません。

機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群などでは、脳と消化管の相互作用が病態に関係すると考えられています。

日本消化器病学会のガイドラインでも、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群では、心理社会的要因や生活習慣との関係が検討されています。

だから、

胃腸だけ。

気持ちだけ。

と分けなくてもいいのです。

治療への緊張も含めて身体全体を見る。

鍼灸は、そうした身体づくりと相性のよい方法の一つです。

胃腸が弱い方にも鍼灸を取り入れる意味があります

「妊活で鍼灸へ行くなら、子宮や卵巣のことを施術するのでは?」

と思うかもしれません。

でも当院では、

食べられない。

胃が重い。

便がゆるい。

という状態も大切にします。

なぜなら、

妊活をしているのも、食事を受け取るのも、同じ一つの身体だからです。

2026年に発表された機能性ディスペプシアに対する23件のランダム化比較試験・2,454人をまとめたメタ解析では、鍼灸による症状やQOLの改善が報告されています。

これは「脾虚が治る」「妊娠率が上がる」という研究ではありません。

一方で、

胃の不快感。

早く満腹になる感じ。

食後のつらさ。

など、胃腸症状そのものに対して鍼灸を取り入れる意味を考える材料になります。

妊活中なら「胃腸の施術」と「妊活の施術」を分けなくていい

たとえば、

採卵前で薬を使っている。

人工授精後で結果を待っている。

胚移植へ向けて準備している。

一周期治療を休んでいる。

そのどの時期でも、胃腸がつらいことはあります。

蓮心はり灸堂では、

「今日は妊活の施術だから胃腸は別」

とは考えません。

現在の治療段階や使用している薬を確認したうえで、胃腸、便通、睡眠、月経、冷え・のぼせ、首肩の緊張、疲労まで見ながら施術を組み立てます。

妊活の身体づくりと、今つらい胃腸を一緒に整えられる。

これは妊活中に鍼灸を取り入れる大きなメリットの一つです。

「食べられる身体」に整えることから始めてもいい

妊活中は、

何を食べるか。

どの栄養素を取るか。

に意識が向きやすくなります。

でも、

食欲がない。

食べると胃が重い。

お腹が張る。

便が安定しない。

という状態なら、

「もっと良いものを食べる」より先に、

食事を受け取りやすい身体へ整える

という考え方があってもいいと思います。

鍼灸では、胃腸だけに鍼をするのではなく、その方の緊張や睡眠、疲労まで含めて身体を見ていきます。

食事を頑張っているのに身体が追いついていない方ほど、一度ご相談ください。

今夜から始めるなら、この3つ

1.食べる量を「妊活基準」で決めない

胃が重い日は、一度に食べる量を少し減らします。

無理して満腹まで食べなくても構いません。

2.食べたあとに身体がどう感じるかを見る

冷たいもの、脂っこいもの、生野菜などを一律に禁止せず、自分の場合に何を食べるとつらくなるのかを確認します。

3.「何を足す?」より先に胃腸を休ませる

サプリや健康食品を次々増やす前に、今使っているものや普段の食事を一度整理します。

食事を整えても不調が続くときには、医療機関で原因を確認したり、鍼灸で身体全体を整えたりする方法もあります。

食養生は「完璧な食事」を作ることではありません

毎日、

手作り。

温かい料理。

栄養バランスも完璧。

それができなくても大丈夫です。

仕事から帰って疲れている日もあります。

治療後で何もしたくない日もあります。

食欲がない日もあります。

そんな日は、

「今日は何なら無理なく食べられる?」

と考える。

それも立派な食養生です。

東洋医学の養生は、

自分をさらに頑張らせるためのものではありません。

今の身体に合わせて、負担を少し減らすためのもの。

そう考えてみてください。

胃腸が弱いことを、妊活の失敗にしない

「ちゃんと食べられないから妊娠できないのかな」

「下痢をするから身体が弱いのかな」

と思わないでください。

胃腸不調があることと、

妊娠できないことを、

単純につなげることはできません。

ただ、

毎日つらいなら整えてあげる価値があります。

食べることが楽になる。

お腹の不快感が減る。

便通が少し安定する。

身体の疲れが少し軽くなる。

それだけでも、妊活を続ける毎日は変わります。

胃腸の弱さを「昔からだから」で終わらせている方へ

「子どもの頃から胃腸が弱いんです」

「緊張するとすぐ下痢します」

「食べるとすぐお腹がいっぱいになります」

長く続いていると、

自分では普通になっていることがあります。

でも、

妊活をきっかけに身体全体を見直すなら、

胃腸も後回しにしなくていいのです。

蓮心はり灸堂では、現在の妊活・不妊治療の予定まで確認しながら、胃腸、睡眠、月経、冷え・のぼせ、疲労、首肩の緊張などを一緒に見ています。

「妊活に良いものをもっと食べる」ことからではなく、

今の身体がきちんと受け取れる状態をつくることから。

食養生と鍼灸を組み合わせながら、無理なく整えていきましょう。

参考・出典

日本消化器病学会「機能性ディスペプシア(FD)診療ガイドライン2021」

日本消化器病学会「患者さんとご家族のための機能性ディスペプシア(FD)ガイド2023」

日本消化器病学会「患者さんとご家族のための過敏性腸症候群(IBS)ガイド2023」

米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)「消化不良(ディスペプシア)の食事・栄養」

Frontiers in Medicine「機能性ディスペプシアに対する鍼灸の有効性と安全性:ランダム化比較試験の最新メタ解析」

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