生理が近づくと、
「理由もないのに気持ちが沈む」
「いつもなら気にならないことで涙が出る」
「人と話すのも少ししんどい」
そんな変化を感じることはありませんか。
そして生理が始まると、
「どうしてあんなに落ち込んでいたんだろう」
と少し楽になる。
毎月同じようなことを繰り返していると、
「自分は気持ちが弱いのかな」
と思ってしまう方もいます。
でも、生理前の気分の変化には、月経周期に伴う身体の変化が関係していることがあります。
気合いや我慢だけで乗り切ろうとしなくて大丈夫です。
まずは、
「生理前の自分には、どんな変化が起きているのか」
を知るところから始めてみましょう。
生理前の落ち込みはPMSの症状の一つです
PMSは、
月経前症候群(Premenstrual Syndrome)
の略です。
月経が始まる前の数日から1〜2週間ほどの時期に、心や身体にさまざまな症状が現れ、月経が始まると軽くなっていく状態をいいます。
身体の症状では、
- 胸の張り
- むくみ
- 頭痛
- 腹部の張り
- 眠気
- 疲労感
などがあります。
心の症状では、
- イライラする
- 気持ちが沈む
- 不安になる
- 集中しにくい
- 涙もろくなる
- やる気が出ない
といった変化があります。
PMSの症状の出方は人それぞれです。
「生理前はお腹が痛くなる」という方もいれば、
身体の症状より、
気持ちの変化のほうがつらい
という方もいます。
ホルモンが「多い・少ない」だけでは説明できません
PMSについて、
「ホルモンバランスが崩れているから」
と聞くことがあります。
でも、単純に女性ホルモンの量が多すぎる・少なすぎるという話だけではありません。
排卵後から月経までの黄体期には、エストロゲンやプロゲステロンが変動します。
その変化に対して身体や脳がどのように反応するかが、PMSの症状に関係すると考えられています。
つまり、
PMSがある=女性ホルモンがおかしい
とは限りません。
同じように月経がある方でも、
症状がほとんどない人。
身体症状が強い人。
気分の変化が強い人。
それぞれ違います。
「毎月、生理前につらくなる」が大切な手がかり
生理前の落ち込みを考えるときには、
症状が出る時期
がとても大切です。
たとえば、
生理の1週間ほど前から気持ちが沈み、
生理が始まると数日で落ち着く。
そして生理後から排卵前までは比較的元気に過ごせる。
このように月経周期と連動して症状が繰り返される場合は、PMSを考える手がかりになります。
反対に、
生理周期に関係なく毎日気分が沈んでいる。
生理が終わってもつらさが続く。
という場合には、PMS以外の原因も含めて考える必要があります。
「生理前だから仕方ない」
と決めつけないことも大切です。
PMSより症状が強い「PMDD」もあります
生理前の気分変化が非常に強く、
- 強い抑うつ感
- 強い不安
- 激しいイライラ
- 感情を抑えにくい
- 仕事や学校へ行くことが難しい
- 人間関係に大きな影響が出る
といった状態になる場合、
月経前不快気分障害(PMDD)
が検討されることがあります。
PMDDは、
「PMSが少し強いだけ」
と簡単に片づけるものではありません。
日常生活に大きな支障が出ている場合には、婦人科などで相談してください。
また、生理前に限らず、
「消えてしまいたい」
「自分を傷つけたい」
といった気持ちが出ている場合は、セルフケアだけで抱え込まず、早めに医療機関や相談窓口につながることが大切です。
まず2〜3周期、症状を記録してみましょう
「私の落ち込みはPMSなのかな?」
と感じたら、頭の中だけで思い返すよりも、月経周期と症状を記録してみると分かりやすくなります。
毎日細かく書く必要はありません。
たとえば、
- 月経開始日
- 気分の落ち込み
- イライラ
- 眠気
- 頭痛
- むくみ
- 食欲
- 睡眠
などを、
「なし」
「少し」
「強い」
くらいで記録します。
すると、
「毎月、生理の5日前から落ち込んでいる」
「生理2日目になると楽になる」
といったパターンが見えてくることがあります。
診察を受ける場合にも、自分の状態を伝えやすくなります。
東洋医学では「落ち込み」だけを見ません
東洋医学では、
「生理前に落ち込む」
という一つの症状だけで体質を決めません。
たとえば同じ落ち込みでも、
イライラも強い人。
疲れて何もしたくない人。
不安が強くなる人。
眠れなくなる人。
食欲が落ちる人。
その背景はそれぞれ違います。
東洋医学では、
気・血の状態や五臓の働きなどを含め、身体全体から見ていきます。
ここからは、生理前の気分変化でみられることのある代表的な体質を見てみましょう。
肝鬱気滞タイプ|イライラと落ち込みが行き来する
東洋医学でPMSの相談時によくみられるのが、
肝鬱気滞(かんうつきたい)
です。
「肝」は、東洋医学では気や血の流れ、情緒の調節などと関係づけて考えます。
肝鬱気滞では、
- イライラしやすい
- ため息が増える
- 胸やみぞおちが張る
- 生理前に乳房が張る
- 頭痛が出る
- 気分が沈んだり怒りっぽくなったりする
などがみられることがあります。
「落ち込むだけ」ではなく、
朝は落ち込んでいたのに、夕方にはイライラする。
そんな感情の揺れが大きい方もいます。
このタイプでは、
何かをさらに頑張るより、
張りつめている身体や気持ちを緩めること
を大切にします。
血虚タイプ|生理前になると不安や疲れが強くなる
東洋医学では、
血虚(けっきょ)
という考え方もあります。
これは西洋医学でいう貧血と同じ意味ではありません。
東洋医学で身体や心を支える「血」が不足している状態を表します。
たとえば、
- 疲れやすい
- 顔色が青白い
- めまいを感じる
- 爪が割れやすい
- 眠りが浅い
- 不安になりやすい
- 生理の経血量が少ない
などを一緒にみることがあります。
生理前に、
「理由は分からないけれど不安になる」
「気持ちが弱くなったように感じる」
という方では、ほかの身体症状も含めて状態を確認していきます。
脾虚タイプ|気力がなく、何もしたくなくなる
生理前になると、
イライラより、
「とにかくだるい」
「何もしたくない」
という方もいます。
東洋医学では、このような状態を胃腸の働きと関連する
脾虚(ひきょ)
として考えることがあります。
たとえば、
- 疲れやすい
- 食後に眠くなる
- 胃腸が弱い
- 軟便や下痢になりやすい
- 身体が重い
- むくみやすい
- 考え事をするとさらに疲れる
などが重なることがあります。
このタイプでは、
「運動して気分転換しよう」
と無理をするより、
まず身体の疲れを減らす
という視点が大切なこともあります。
瘀血タイプ|痛みや張りと一緒に気分が重くなる
東洋医学では、血の巡りが滞っている状態を
瘀血(おけつ)
と表現します。
たとえば、
- 生理痛が強い
- 経血に塊が混じる
- 下腹部に刺すような痛みがある
- 肩こりや頭痛が強い
- 生理前に身体が張る感じがする
といった症状と一緒に、気持ちの重さを感じる方もいます。
ただし、
経血に塊があるから必ず瘀血、
という単純な判断ではありません。
東洋医学では、複数の症状を組み合わせながら状態を見ていきます。
体質は一つだけとは限りません
ここまで、
肝鬱気滞。
血虚。
脾虚。
瘀血。
をご紹介しました。
読んでいると、
「私は肝鬱気滞かな」
「血虚も当てはまる」
と思うかもしれません。
実際には、
複数の体質が重なっていることも珍しくありません。
たとえば、
普段は胃腸が弱い脾虚傾向。
生理前になるとストレスで肝鬱気滞も強くなる。
ということもあります。
セルフチェックは、自分の身体を知るきっかけとして使ってください。
診断をするためのものではありません。
生理前だけ「いつもの自分ではない」と感じるとき
PMSのつらいところは、
症状そのものだけではありません。
「こんなことで怒るなんて」
「また泣いてしまった」
「家族にきつく言ってしまった」
と、生理が始まって落ち着いたあとに、自分を責めてしまうことがあります。
でも、
毎月同じ時期に心身の変化が起きているのであれば、
「性格の問題」ではなく「周期の影響もあるかもしれない」
と考えてみてください。
それだけでも、
「またダメだった」
ではなく、
「そろそろ生理前だから、少し余裕をつくろう」
と対応を変えやすくなります。

鍼灸では「PMSだから同じ施術」にはしません
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、
「PMSがあります」
という症状名だけで施術内容を決めません。
生理前に、
イライラするのか。
落ち込むのか。
眠れないのか。
眠くて仕方ないのか。
胃腸が弱るのか。
頭痛や生理痛もあるのか。
などを確認します。
さらに、
睡眠。
食事。
仕事の負担。
生理周期。
冷えやほてり。
なども含めて、その時のお身体を見ていきます。
生理前の心身の変化だけでなく、生理痛や周期の乱れなども含めて身体を一度整理したい方へ、当院で対応している婦人科のお悩みをご案内しています。
今日からできるのは「生理前を予測すること」
PMSのセルフケアというと、
食事。
運動。
睡眠。
ツボ。
いろいろな方法があります。
でも、まず今日から始めてほしいのは、
自分の生理前がいつ始まるのかを知ること
です。
毎月、
「突然落ち込んだ」
と思うのと、
「あと5日くらいで生理だから、そろそろ気分が揺れやすい時期かもしれない」
と思えるのでは、受け止め方が少し変わります。
調子が落ちやすい時期には、
予定を詰め込みすぎない。
大きな決断を急がない。
眠る時間を少し確保する。
自分に余裕を残しておく。
そんな工夫もできます。
自分の周期を知ること自体が、セルフケアの第一歩です。
次の記事では「落ち込む夜」の過ごし方を考えます
生理前だと分かっていても、
夜になると急に気持ちが沈んで、
「今日はもう何もしたくない」
という日もあります。
そんな夜に、
無理に元気になろうとしなくても大丈夫です。
10月12日夜の記事
「生理前に落ち込みやすい夜のセルフケア」
では、気持ちが沈んでいる夜にできることを、もう少し具体的にお伝えします。
毎月繰り返すつらさを、一度整理してみませんか
生理前だから仕方ない。
みんな我慢している。
そう思って、長い間つらさを抱えている方もいます。
でも、
毎月仕事に影響する。
家族との関係がつらくなる。
眠れない。
気持ちの落ち込みが強い。
という状態が続いているなら、一度相談してみてもよいと思います。
婦人科で相談することも大切ですし、当院では病院での診断や治療を大切にしながら、生理周期に伴う体調の変化を東洋医学の視点から一緒に整理しています。
「自分の場合は、どこから整えたらいいのかな」
と感じている方は、今のお身体の状態から一緒に考えていきましょう。
この記事を書いた人
菅原 裕万
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂 院長
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
妊活・婦人科・マタニティなど、女性のライフステージに伴う身体の変化を中心に鍼灸施術を行っています。
参考・出典
日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」
日本産婦人科医会「月経前症候群(PMS)」
American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)「Management of Premenstrual Disorders: Clinical Practice Guideline」(2023)
American Psychiatric Association「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision(DSM-5-TR)」
日本女性心身医学会「女性心身医学」

