漢方を飲む前に整理したい体質メモ

東洋医学の視点から体質改善を伝える奈良・上牧町の鍼灸院ブログ画像

「妊活には、どの漢方がいいですか?」

よくいただく質問です。

冷えがあるから。

AMHが低いから。

月経痛があるから。

SNSで同じような人が飲んでいたから。

気になる漢方を見つけることもあると思います。

でも、9月12日の
「妊活中の漢方、何を基準に選ぶ?」
でもお話ししたように、漢方は「妊活中なら全員これ」と選ぶものではありません。

漢方では、

同じ症状でも、その人の身体全体の状態によって選び方が変わります。

そこで今夜は、

「私は何タイプ?」

と自己診断するのではなく、

漢方について相談するときに、自分の身体をどう伝えればいいのか

を整理してみましょう。

スマートフォンのメモでも構いません。

一度書いておくと、漢方だけでなく、鍼灸で身体を整えるときにも役立ちます。

目次

漢方では「病名」だけでなく、今の身体を見る

西洋医学では、

病名。

検査結果。

血液検査。

画像検査。

などから診断や治療を考えます。

漢方医学ではそれに加えて、

寒がりか、暑がりか。

胃腸は強いか。

便通はどうか。

眠れているか。

疲れやすいか。

月経はどうか。

といった身体全体の状態を見ます。

日本東洋医学会では、このようなその時点の心身全体の状態を表す漢方医学的な診断を**「証(しょう)」**と説明しています。

医療用漢方製剤の添付文書にも、

患者の証(体質・症状)を考慮して使用する

ことが記載されています。

だからこそ、

「冷えている=この漢方」

という一項目だけでは決めにくいのです。

体質メモは「自分で漢方を診断する表」ではありません

ここは、とても大切です。

これから紹介する体質メモは、

「3個当てはまったから脾虚」

「私は瘀血だからこの漢方」

と、自分で処方を決めるためのものではありません。

目的は、

自分の身体の状態を言葉にして、相談相手へ伝えやすくすること。

です。

身体のことを聞かれても、

突然だと、

「冷えはあります」

「疲れています」

くらいしか出てこないことがあります。

でも少し整理しておくと、

「夕方になると足先が冷える」

「食後にお腹が張りやすい」

「月経前になると肩こりが強くなる」

と、より具体的に伝えられます。

この違いが大切です。

① 今どの治療段階にいる?

妊活中に漢方を使う場合、

最初に整理したいのは体質だけではありません。

今、どの治療段階にいるか

も重要です。

タイミング法なのか。

人工授精なのか。

採卵周期なのか。

胚移植を予定しているのか。

妊娠判定を待っているのか。

一周期治療を休んでいるのか。

そして、

現在使っている薬があるのか。

ここまでセットで伝えてください。

妊娠している可能性がある時期には使用上の注意が異なる漢方薬もあるため、妊活中であることや治療予定は必ず伝えておきましょう。

② 月経についてメモする

「生理はどうですか?」

と聞かれたときに、

「普通です」

で終わってしまうことがあります。

できれば、

周期。

出血する日数。

経血量の変化。

月経痛。

経血の塊。

月経前後の体調。

などを簡単に確認してみてください。

毎月細かく記録する必要はありません。

「以前と比べてどうか」

も大切な情報です。

たとえば、

「以前より周期が短くなってきた」

「2日目だけ痛みが強い」

「月経前になると頭痛と肩こりが強くなる」

という伝え方で十分です。

③ 「冷えます」だけではなく、どこが・いつ冷える?

妊活では、

「冷え性です」

という方がとても多いです。

でも同じ冷えでも、

手足だけ冷える。

足先が冷える。

お腹が冷える感じがする。

夕方に冷える。

冬だけつらい。

身体は冷えるのに顔はほてる。

など、感じ方は違います。

反対に、

暑がり。

汗をかきやすい。

顔がほてる。

寝汗をかく。

という情報も大切です。

漢方や東洋医学では、

「冷えるかどうか」だけでなく、冷えと熱が身体のどこに、どのように出ているか

を見ていきます。

④ 胃腸と便通は、意外と大切な情報

妊活の相談なのに、

「便はどうですか?」

「食欲はありますか?」

と聞かれて、

不思議に思うかもしれません。

でも東洋医学では、胃腸の状態も身体全体を見る大切な材料です。

食欲があるか、食後に胃が重くならないか、お腹が張らないか、便秘や軟便がないかなどを確認してみましょう。

特に、

「健康のために食べなければ」

と頑張っているのに、

食後につらくなる。

サプリを増やしてから胃が重い。

冷たいものを取ると便がゆるくなる。

ということがあれば、そのまま伝えてください。

胃腸の不調については、9月13日の
「妊活中に便がゆるい・食欲がないとき」
でも詳しくお話ししています。

⑤ 睡眠は「何時間」だけでなく「どう眠れているか」

睡眠時間だけでは、

身体の状態が分からないことがあります。

たとえば、

布団へ入ってもなかなか眠れない。

夜中に何度も目が覚める。

早朝に目が覚める。

夢が多く、寝た気がしない。

朝起きても疲れている。

ということがあります。

「6時間寝ています」

だけではなく、

眠ったあとの身体がどう感じるか

もメモしてみてください。

妊活中は、

採卵。

胚の結果。

移植。

判定日。

などを考えて、治療の節目だけ眠れなくなる方もいます。

その場合は、

「普段は眠れるけれど、採卵前だけ眠れません」

という情報も役立ちます。

⑥ 疲れ・首肩・頭痛なども書いておく

妊活中は、生殖に関係する症状ばかりを伝えようとしてしまいます。

でも、

夕方になるとぐったりする。

朝から疲れている。

首肩がいつもこっている。

頭痛がある。

腰が重い。

目が疲れる。

といったことも、身体全体を見るうえでは大切です。

「妊活とは関係ないから」

と省かなくても大丈夫です。

むしろ、

今の身体で何が一番つらいのか

を伝えてください。

⑦ 気持ちの変化も身体の情報です

イライラする。

焦る。

落ち込みやすい。

ため息が増えた。

病院の前日だけ緊張する。

月経前だけ感情が揺れやすい。

これも、

「性格だから」

と片づけなくて構いません。

特に、

いつから変わったのか。

治療のどの時期に強くなるのか。

月経周期と関係するのか。

まで分かれば、身体の状態を考える手がかりになります。

これだけ書けば十分|妊活中の体質メモ

細かな体質診断表を作る必要はありません。

まずは、次の7項目で十分です。

  • 現在の治療:タイミング法・人工授精・採卵・胚移植・休む周期など
  • 月経:周期、日数、量、痛み、月経前後の変化
  • 冷え・熱:どこが、いつ冷えるか。ほてりや汗はあるか
  • 胃腸・便通:食欲、胃もたれ、張り、便秘、軟便など
  • 睡眠:寝つき、中途覚醒、早朝覚醒、起床時の疲れ
  • その他の体調:疲労、首肩こり、頭痛、腰の重さなど
  • 使用中のもの:処方薬、漢方薬、市販薬、サプリメント

全部埋めなくても大丈夫です。

「今、一番困っていること」

だけは最後に一つ書いておきましょう。

「冷え性です」より具体的なメモにする

たとえば、

「冷え性」

だけではなく、

「夕方になると足先が冷える。でも夜は顔がほてることがある」

と書く。

「胃腸が弱い」

ではなく、

「朝は食べられるけれど、夕食後にお腹が張りやすい。便は軟らかめ」

と書く。

「眠れない」

ではなく、

「移植後だけ夜中に何度も目が覚めて、検索してしまう」

と書く。

こうすると、

身体の状態がずっと分かりやすくなります。

東洋医学では、いくつもの状態が重なっていることがあります

妊活の記事では、

腎虚。

肝鬱気滞。

脾虚。

血虚。

瘀血。

という言葉が出てくることがあります。

でも、

一人の身体を、

「あなたはこの一タイプ」

ときれいに分けられるとは限りません。

腎虚(じんきょ)|疲労や冷え、腰のだるさなどが重なる

東洋医学では、生殖や加齢などと「腎」を関連づけて考えます。

肝鬱気滞(かんうつきたい)|緊張で巡りが滞ったような状態

首肩の張り、ため息、月経前のイライラや張りなどを合わせて見ます。

脾虚(ひきょ)|胃腸の働きが弱っている状態

食欲低下、胃もたれ、軟便、疲労などが重なる状態です。

血虚(けっきょ)|身体を養う「血」が不足したような状態

疲れやすさ、眠りの浅さ、立ちくらみなどを合わせて考えます。

瘀血(おけつ)|血の巡りが滞ったと考える状態

月経痛や同じ場所に続く痛みなどを合わせて見ます。

大切なのは、

どれに当てはまるかを自分で決めることではありません。

複数の状態を見ながら、

今の身体をどう整えるかを考えることです。

漢方は「自然のものだから何種類飲んでも大丈夫」ではありません

漢方薬も医薬品です。

医療用漢方製剤の添付文書では、複数の漢方製剤を併用する場合に、含まれる生薬の重複へ注意するよう記載されています。

たとえば甘草(かんぞう)を含む製剤では、重複などによって摂取量が増えると、低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、筋力低下などを伴う偽アルドステロン症に注意が必要です。

だから、

病院から処方された漢方。

自分で購入した漢方。

風邪や胃腸症状で使っている漢方。

サプリメント。

を別々のものとして考えず、

今使っているものをまとめて伝える

ことが大切です。

妊活中なら「妊娠の可能性があります」と伝える

漢方薬には、

妊娠中や妊娠している可能性がある場合に、使用上の注意が設けられているものがあります。

ですから、

タイミングを取ったあと。

人工授精後。

胚移植後。

妊娠判定前。

などは、

「妊娠している可能性があります」

と必ず伝えてください。

これは、

「漢方は妊活中には使えない」

という意味ではありません。

妊活中だからこそ、

現在の治療や妊娠の可能性まで共有したうえで、その時期に合った使い方を考える

ことが大切なのです。

妊娠を希望している方や妊娠中の薬については、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」でも専門的な相談体制が整えられています。

自己判断で急に中止するのも避けましょう

「妊娠しているかもしれない」

と思った瞬間に、

病院から処方されている薬や漢方をすべて自己判断で中止する必要はありません。

薬には、

継続した方がよいもの。

変更を検討するもの。

妊娠中は避けるもの。

などがあります。

大切なのは、

大切なのは、自分だけで判断せず、処方した医師や薬剤師へ確認することです。
不妊治療で使用している薬も含め、「今、何を飲んでいるのか」が分かるように、お薬手帳や薬の名前を準備しておくと相談しやすくなります。

「飲んでいるのに変わらない」ときも、体質メモが役立つ

漢方は、

一度決めたらずっと同じものを飲み続ければよい、

というものでもありません。

身体の状態は変わります。

季節。

月経周期。

治療。

妊娠。

睡眠。

胃腸。

ストレス。

などによっても変化します。

医療用漢方製剤の添付文書でも、症状や所見の改善がみられない場合には漫然と継続しないよう注意されています。

「3か月飲んでいるから続ける」

ではなく、

今の身体に合っているのかを時々見直す。

そのときにも、体質メモが役立ちます。

漢方だけで身体づくりを全部背負わなくてもいい

妊活中は、

「漢方を飲んだ方がいい?」

「サプリも増やした方がいい?」

と、

身体づくりが、

何かを飲むこと

に偏ってしまうことがあります。

でも身体を整える方法は、それだけではありません。

睡眠を見直す。

胃腸を整える。

身体を動かす。

首肩の緊張をゆるめる。

そして、

鍼灸を取り入れる。

という方法もあります。

特に、

「これ以上飲むものを増やしたくない」

という方にとって、

薬剤を追加せずに身体へアプローチできること

は、鍼灸の大きな特徴です。

漢方と鍼灸は「どちらか一つ」ではありません

漢方と鍼灸は、

東洋医学という共通した考え方を持ちながら、

身体への働きかけ方が違います。

漢方では、

体質や症状を確認しながら身体の内側から薬を使います。

鍼灸では、

身体へ直接刺激を加えながら、

首肩の緊張。

胃腸。

睡眠。

冷え・のぼせ。

月経に伴う不調。

疲労。

など、そのときに出ている身体の状態を見て施術します。

そのため、

漢方を飲んでいるから鍼灸は必要ない

ということではありません。

反対に、

鍼灸をしているから漢方を使ってはいけない、

ということでもありません。

現在使用している薬や漢方を確認しながら、それぞれの役割を考えて組み合わせていくことができます。

妊活中の不安や緊張が強い方にも、鍼灸を取り入れる意味があります

採卵結果が気になる。

胚移植が近づくと眠れない。

年齢のことを考えてしまう。

次の月経が来るのが怖い。

妊活では、

身体だけでなく気持ちも緊張し続けることがあります。

不妊女性を対象にした12件・1,930人のランダム化比較試験をまとめたシステマティックレビュー・メタ解析では、鍼灸を受けた群で複数の不安・抑うつ関連尺度の改善が報告されています。

鍼灸の時間は、

「何を飲めばいい?」

と新しいものを探す時間ではなく、

一度身体を預けて、今の状態を整える時間

として使うこともできます。

蓮心はり灸堂では、漢方の名前だけを見ません

「この漢方を飲んでいます」

という情報は大切です。

でも、

それだけで施術を決めることはありません。

当院では、

  • 現在の妊活・不妊治療の段階
  • 採卵や胚移植の予定
  • 使用している薬・漢方・サプリメント
  • 月経の状態
  • 冷え・のぼせ
  • 胃腸・便通
  • 睡眠
  • 首肩や背中の緊張
  • 疲労

などを確認します。

同じ漢方を飲んでいる方でも、

身体の状態は違います。

そして、

治療が進めば身体も変わります。

「何を飲んでいるか」だけではなく、「今どんな身体なのか」を一緒に見る。

そこを大切にしています。

今夜、体質メモを一つだけ作ってみる

全部きれいに書こうとしなくて大丈夫です。

スマートフォンを開いて、

「今一番困っていること」

を書いてみてください。

そしてその下に、

月経。

冷え・熱。

胃腸。

睡眠。

疲労。

使っている薬や漢方。

を簡単に追加します。

自分の体質に名前をつける必要はありません。

今の身体を、そのまま言葉にする。

それだけで十分です。

漢方を選ぶ前に、自分の身体を知る

漢方を探していると、

「この症状にはこれ」

という情報がたくさん出てきます。

でも、

本当に大切なのは、

漢方の名前をたくさん覚えることではありません。

今、

何に困っているのか。

どんな治療をしているのか。

身体はどう変わっているのか。

そこを確認することです。

そして、

必要なら漢方を相談する。

必要なら鍼灸を取り入れる。

必要な医療は主治医と進める。

一つの方法だけで身体を何とかしようとせず、自分に必要なものを組み合わせていく。

それが、妊活中の身体づくりでは大切だと考えています。

漢方を飲んでいるけれど、身体の不調が残っている方へ

「漢方を飲んでいるから、もう身体づくりはできている」

と思わなくて大丈夫です。

眠れていない。

胃腸が弱っている。

首肩がこわばっている。

月経のたびに身体がつらい。

治療への緊張が抜けない。

そうした状態があるなら、

まだ一緒に整えられるところがあります。

蓮心はり灸堂では、現在使用している漢方や薬、妊活の治療予定まで確認したうえで、今の身体に合わせて鍼灸施術を組み立てています。

漢方をこれから始めたい方も。

すでに飲んでいる方も。

「自分の体質がよく分からない」

というところからでも構いません。

漢方の名前を探す前に、まず今の身体を一緒に整理してみましょう。

参考・出典

一般社団法人日本東洋医学会「漢方Q&A・証とはなんですか?」

一般社団法人日本東洋医学会「漢方専門医について」

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医療用漢方製剤 添付文書・使用上の注意」

国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」

Healthcare「不妊女性の感情的問題に対する鍼灸治療:システマティックレビュー・メタ解析」

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