婦人科の超音波検査で、
「子宮筋腫がありますね」
と言われた。
妊活中であれば、その瞬間に、
「これが妊娠できない原因?」
「手術しないといけない?」
「体外受精をしても着床しない?」
と不安になる方もいると思います。
でも、子宮筋腫についてまず知っておいてほしいのは、
筋腫があるだけで、妊娠しにくいと決まるわけではない
ということです。
妊活への影響を考えるうえでは、筋腫の大きさだけではなく、どこにあるのか、子宮の内側を変形させているのかがとても重要です。
今日は、子宮筋腫を「粘膜下筋腫」「筋層内筋腫」「漿膜下筋腫」の3つに分けながら、妊活との関係を整理してみましょう。
子宮筋腫は「場所」で大きく分けられます
子宮は、内側に子宮内膜があり、その周囲を厚い筋肉の層が囲んでいます。
子宮筋腫は、その子宮の筋肉から発生する良性の腫瘍です。
できる場所によって、大きく次のように分けられます。
- 子宮の内側へ向かって発育する粘膜下筋腫
- 子宮の筋肉の中にできる筋層内筋腫
- 子宮の外側へ向かって発育する漿膜下筋腫
同じ3cmの筋腫でも、どこにあるかによって妊活への意味が変わります。
ですから、
「筋腫が3cmあります」
という情報だけでは、妊娠への影響を十分に判断することはできません。
妊活で特に確認したいのは「子宮の内側が変形しているか」
受精卵が着床する場所は、子宮の内側にある子宮内膜です。
そのため妊活では、
筋腫が子宮内腔へどの程度影響しているか
が大切になります。
筋腫が子宮の外側にあって、内腔の形にはほとんど影響していない場合。
子宮の筋肉の中にあるけれど、内腔を押していない場合。
内側へ大きく突出し、内腔そのものを変形させている場合。
これらを同じ「子宮筋腫」として扱うことはできません。
病院で筋腫を指摘されたら、
「この筋腫は子宮の内側を変形させていますか?」
と聞いてみると、妊活への影響を理解しやすくなります。
粘膜下筋腫|妊娠への影響を考えやすい場所
粘膜下筋腫は、子宮内膜に近いところにでき、子宮内腔へ向かって発育する筋腫です。
3つのタイプの中では、妊娠への影響が比較的はっきりしているタイプです。
子宮内腔へ突出することで、胚が着床する場所に影響したり、内腔の形を変えたりする可能性があります。
日本産科婦人科学会のガイドラインでも、粘膜下筋腫がある不妊女性では、筋腫がない方と比べて妊娠率や着床率の低下がみられることが示されています。
そのため、妊娠を希望している方で粘膜下筋腫がある場合には、場所や大きさなどによって手術が検討されることがあります。
粘膜下筋腫は小さくても確認が必要なことがあります
筋腫について、
「何cmから問題ですか?」
と聞きたくなると思います。
でも、粘膜下筋腫では大きさだけで判断できません。
比較的小さくても、子宮内腔へ大きく突出していれば影響を考えることがあります。
逆に、同じ大きさでも場所によって意味が違います。
そのため、
「何cmあるか」と「どこへ向かって出ているか」
をセットで確認することが大切です。
単純に、
「3cmだから大丈夫」
「5cmだから手術」
と決められるものではありません。
粘膜下筋腫では子宮鏡手術が検討されることがあります
粘膜下筋腫の位置や形によっては、子宮鏡を使って腟側から筋腫を切除する方法が検討されます。
お腹を切らずに行える場合がありますが、すべての粘膜下筋腫が子宮鏡手術の対象になるわけではありません。
筋腫の大きさや、どのくらい筋層内へ入り込んでいるかなどによって術式は変わります。
妊活中であれば、
手術をするメリット。
手術をしない場合の見通し。
手術後、いつから妊活を再開できるか。
まで含めて説明を受けてください。
筋層内筋腫|一番判断に迷いやすいタイプ
筋層内筋腫は、子宮の筋肉の中にできる筋腫です。
妊活では、非常に判断が難しいタイプでもあります。
というのも、
子宮内腔を変形させている筋層内筋腫と、内腔へほとんど影響していない筋層内筋腫では意味が違うからです。
現在の研究では、子宮内腔を変形させる筋層内筋腫については、妊娠への影響を考えて筋腫核出術が検討されることがあります。
一方、子宮内腔を変形させていない筋層内筋腫については、妊娠率へどの程度影響するのか、手術をすると妊娠成績が改善するのかについて、まだ十分に結論が出ていません。
だからこそ、
「筋層内筋腫があるから手術」
とは一律に決められません。
体外受精をしている場合も「内腔への影響」がポイント
体外受精では、胚を子宮内へ移植します。
そのため筋腫があると、
「せっかく良い胚を移植しても着床しないのでは?」
と心配になることがあります。
特に、子宮内腔を変形させている筋腫では、着床への影響を考える必要があります。
一方、内腔を変形させていない筋層内筋腫については、体外受精の成績がやや低くなる可能性を示した研究がありますが、研究の多くは観察研究であり、筋腫の大きさなども一定ではありません。
そのため、
筋腫があるという理由だけで、移植前に必ず手術するわけではありません。
年齢や胚の状況、筋腫の大きさ、これまでの移植歴などを合わせて考えます。
漿膜下筋腫|子宮の外側へ向かって育つ筋腫
漿膜下筋腫は、子宮の外側へ向かって発育するタイプです。
子宮内腔へ直接影響しないことが多いため、粘膜下筋腫と比べると妊娠への影響は小さいと考えられるケースが多くなります。
現在のガイドラインでも、妊娠率を改善する目的だけで漿膜下筋腫を摘出することを支持する十分な根拠はありません。
つまり、
「筋腫があるから取っておいたほうが妊娠しやすい」
とは言えません。
ただし非常に大きい場合や、多数ある場合、周囲の臓器を圧迫して症状が出ている場合などは別です。
場所だけではなく、大きさや症状を含めて個別に判断します。
3つの違いを簡単に整理すると
妊活との関係をとても簡単に整理すると、次のように考えられます。
- 粘膜下筋腫
子宮内腔へ突出するため、妊娠・着床への影響を比較的考えやすいタイプです。 - 筋層内筋腫
子宮内腔を変形させているかどうかが重要です。内腔へ影響しない場合の手術のメリットについては、まだ明確ではありません。 - 漿膜下筋腫
子宮の外側へ発育するため、妊娠への直接的な影響は比較的小さいと考えられることが多く、妊娠率改善だけを目的とした手術の有効性は確立していません。
ただし、これはあくまで大まかな整理です。
実際の治療方針は、筋腫の大きさや数なども含めて決まります。
大きさは関係ないの?
場所が重要だからといって、大きさが関係ないわけではありません。
日本産科婦人科学会のガイドラインでは、妊孕性を保ちたい方について、過多月経や月経困難症、不妊などの症状がある場合や、おおむね5~6cmを超える筋腫などでは、場所・大きさ・個数・成長速度・妊娠時期などを踏まえて手術の必要性を判断するとされています。
ただし、
5cmを超えたら全員手術という意味ではありません。
逆に5cm未満なら妊活へまったく影響しない、とも限りません。
年齢や治療計画まで含めて考えます。
筋腫の「数」も一緒に確認する
小さな筋腫が一つだけある場合と、複数の筋腫がある場合でも状況は変わります。
複数の筋腫があると、子宮全体の形へ影響する場合があります。
また、一つ一つは小さくても、場所によっては子宮内腔に影響することもあります。
病院で説明を受けるときは、
何個あるか。
一番大きなものは何cmか。
どこにあるか。
子宮内腔への影響があるか。
を確認すると整理しやすくなります。
超音波検査だけでは分かりにくい場合もあります
子宮筋腫は、経腟超音波検査で分かることが多い病気です。
ただ、妊活で重要な子宮内腔との位置関係をさらに詳しく確認するために、必要に応じて追加検査を行うことがあります。
たとえば、
子宮鏡検査。
子宮卵管造影検査。
3D超音波。
MRI。
などです。
すべての方に必要なわけではありません。
通常の超音波だけでは治療方針を決めにくい場合に、追加して確認する
という考え方です。
「筋腫があるから不妊だった」と決めない
筋腫が見つかった瞬間、
「やっと妊娠できない原因が分かった」
と思うことがあります。
でも、不妊にはさまざまな要素が関係します。
排卵。
卵管。
卵子。
精子。
年齢。
子宮内膜。
などがあります。
筋腫がある方でも自然妊娠することはありますし、筋腫以外の原因が同時に存在する場合もあります。
そのため、妊娠を希望する場合には、筋腫だけを見るのではなく、一般的な不妊検査も合わせて考えることが大切です。
筋腫を取れば必ず妊娠率が上がるわけではありません
筋腫があると、
「取ったほうが妊娠しやすいなら、すぐ手術したい」
と思うかもしれません。
特に、子宮内腔を変形させる粘膜下筋腫などでは、手術後に妊娠率の改善が期待できるケースがあります。
一方、すべての筋腫について同じことが言えるわけではありません。
手術には、
出血。
感染。
術後癒着。
子宮への傷。
などのリスクもあります。
また、手術後すぐに妊活を再開できるとは限りません。
手術そのものにも時間と身体への負担がある
ということを含めて考える必要があります。
年齢によって「手術を先にするか」の判断も変わります
妊活では年齢も大切な要素です。
たとえば、筋腫がある30歳の方と40歳の方では、同じ大きさ・同じ場所でも治療の優先順位が変わる可能性があります。
手術を行えば、その後に妊娠を待つ期間が必要になる場合があります。
日本のガイドラインでは、筋腫核出術後の避妊期間について明確な一律の基準はないものの、3~6か月程度としている施設が多いとされています。
そのため年齢や卵巣予備能などによっては、
先に採卵する。
胚を凍結する。
その後に筋腫を治療する。
といった方法が検討されることもあります。
手術するかだけではなく、「いつするか」も妊活では重要です。
採卵と筋腫手術、どちらを先にする?
体外受精を予定している方では、この問題が出ることがあります。
答えは一つではありません。
年齢。
AMH。
筋腫の場所。
筋腫の大きさ。
採卵で卵巣へアクセスできるか。
子宮内腔への影響。
これまでの治療歴。
などによって判断が変わります。
たとえば筋腫が非常に大きく、採卵時に卵巣へ針を進めること自体が難しい場合には、治療順序へ影響することがあります。
反対に、卵巣予備能や年齢を考えて採卵を先に進める場合もあります。
ここは、自己判断より生殖医療施設で相談したい部分です。
生理の出血量が多い場合も筋腫の状態を確認する
子宮筋腫は、妊活だけでなく生理にも影響することがあります。
特に、経血量が多い。
生理期間が長い。
血の塊が増えている。
といった症状がある場合には、筋腫が関係している可能性があります。
出血が多い状態が続くと、鉄欠乏性貧血につながることもあります。
疲れやすい。
息切れする。
動悸がする。
立ちくらみがある。
といった症状がある場合には、冷えや体質だけで考えず婦人科で相談してください。
生理痛も「筋腫だから仕方ない」と我慢しない
子宮筋腫がある方では、月経痛が強くなることがあります。
一方で、強い生理痛には子宮内膜症や子宮腺筋症など、ほかの病気が関係していることもあります。
「筋腫があるから痛いんだろう」
と自己判断し、毎月強い痛みを我慢する必要はありません。
以前より痛みが強くなった場合や、鎮痛薬を使用しても日常生活に影響する場合には、婦人科で相談してください。
筋腫とほかの病気が同時に存在することもあります。
筋腫が大きくなっていないか、経過を見ることも大切
すぐに手術をしない場合には、定期的に超音波などで大きさを確認することがあります。
一度、
「経過観察で大丈夫です」
と言われたからといって、何年もそのままにするのではなく、医師から指示された間隔で確認してください。
特に妊活を始める予定がある場合には、
以前指摘された筋腫があります。
と婦人科や生殖医療施設で伝えておきましょう。
過去の検査時点とは、大きさが変わっている可能性もあります。
妊娠したあとにも筋腫は確認されます
子宮筋腫があっても妊娠することはあります。
妊娠した場合には、筋腫の場所・大きさ・数や、胎盤との位置関係などを確認しながら妊娠経過をみていきます。
筋腫がある妊娠では、筋腫の状態によって早産や胎位異常など一部の妊娠・分娩上のリスクが高くなることがあります。
だからといって、
「筋腫があるから妊娠は危険」
という意味ではありません。
妊娠後は産婦人科で必要な経過観察を受けていきます。
「筋腫を小さくする食べ物」を探さなくて大丈夫
子宮筋腫を指摘されると、
「食生活で小さくできないかな」
と調べる方もいます。
特定の食品を食べたり避けたりするだけで、子宮筋腫を消すことはできません。
妊活中だからと、
乳製品を禁止する。
大豆を禁止する。
砂糖を完全に避ける。
といった自己流の強い食事制限を始める必要もありません。
食事は身体を支えるために大切ですが、
筋腫を治すための食事と、毎日の健康的な食事は分けて考える
ようにしてください。
鍼灸で子宮筋腫そのものをなくすことはできません
子宮筋腫について鍼灸を検索すると、
「筋腫を小さくする」
という情報を目にすることがあります。
しかし、鍼灸で子宮筋腫を取り除くことはできません。
筋腫の場所や大きさを診断することも、鍼灸院ではできません。
必要な画像検査や治療は婦人科で受けることが基本です。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、筋腫そのものを治療するという考え方ではなく、婦人科での診断や治療方針を確認しながら、生理痛、冷え・ほてり、睡眠、胃腸、疲れなど身体全体について施術を行います。
生理痛や生理周期など婦人科のお悩みについては、こちらをご覧ください。
病院で確認しておきたい5つのこと
妊活中に子宮筋腫を指摘されたら、次の5つを確認してみてください。
- 筋腫はどこにありますか?
粘膜下・筋層内・漿膜下のどれに当たるのかを確認します。 - 子宮内腔を変形させていますか?
妊活では特に重要なポイントです。 - 大きさと数はどのくらいですか?
今後の経過観察にも役立ちます。 - 今の妊活に手術は必要ですか?
手術する場合としない場合のメリット・デメリットを聞きます。 - 手術するなら、採卵や移植との順番はどうしますか?
年齢や治療計画も含めて相談します。
全部覚えなくても構いません。
この5つをメモして診察へ持っていけば、説明を整理しやすくなります。
「筋腫があります」の一言だけで未来を決めなくて大丈夫
子宮筋腫がある。
その一言だけを聞くと、とても大きな問題に感じるかもしれません。
でも、実際には、
場所。
大きさ。
数。
子宮内腔への影響。
症状。
年齢。
現在の不妊治療。
などによって意味が変わります。
粘膜下筋腫で手術を検討する方もいれば、筋層内筋腫を経過観察しながら治療を進める方もいます。
漿膜下筋腫があっても、そのまま妊活を進めることもあります。
「筋腫がある=妊娠できない」という式にはなりません。
まずは、自分の筋腫が「どこにあって、何に影響しているのか」を確認することから始めてください。
婦人科での診断や不妊治療の内容を確認しながら、身体づくりについて一度整理してみたい方もご相談ください。
この記事を書いた人
菅原 裕万
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂 院長
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
施術歴17年以上。妊活・不妊治療中の身体づくりを中心に、生理痛・生理不順など婦人科のお悩みについても、医療機関での検査・治療状況を確認しながらサポートしています。
参考・出典
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―産科編2026」
American Society for Reproductive Medicine(ASRM)「Removal of Myomas in Asymptomatic Patients to Improve Fertility and/or Reduce Miscarriage Rate」
American Society for Reproductive Medicine(ASRM)「Recurrent Implantation Failure: A Committee Opinion 2026」
American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)「Management of Symptomatic Uterine Leiomyomas」

