流産を経験したあと、
「どうして起きたんだろう」
という思いが残ることがあります。
それが2回続けば、
「何か原因があるのでは?」
「次に妊娠しても、また同じことになる?」
と不安になるのは自然なことです。
病院から「不育症の検査を考えてみましょう」と言われても、初めて聞く検査名が並び、
「いったい何を調べるの?」
と戸惑う方もいるでしょう。
反復流産の検査は、流産した理由を必ず一つ見つけるための検査ではありません。
次の妊娠を考えるうえで、治療や管理につながる可能性のある要因がないかを整理するために行います。
今日は、どんな検査が行われるのか、その意味を一つずつ見ていきましょう。
「反復流産」と「不育症」はどう違う?
日本では一般に、流産を連続して2回以上経験した場合を「反復流産」、3回以上を「習慣流産」と呼びます。
また、流産や死産を2回以上経験している状態を、広く「不育症」として扱うことがあります。
ただし、こうした言葉の定義は国や学会によって少し異なります。
大切なのは名称そのものより、
流産を繰り返している場合には、必要に応じて原因について調べる選択肢がある
ということです。
「3回流産するまで検査できない」と思い込む必要はありません。
2回の流産を経験した段階で、一度主治医へ相談して構いません。
まず知っておきたい|検査をしても原因が分からないことがあります
不育症の検査を受けると、
「これで原因が分かる」
と思うかもしれません。
でも実際には、検査をしても明確な原因が見つからない方がいます。
これは、
「検査が足りなかった」
「もっと珍しい検査をすれば何か見つかる」
という意味ではありません。
流産の中には、受精卵・胚の染色体の偶発的な変化など、一回ごとの妊娠で起こる要因もあります。
そのため、検査結果がすべて正常だったとしても珍しいことではありません。
原因が見つからないことと、次の妊娠が継続できないことは同じではありません。
ここは最初に知っておいてほしいところです。
検査①|抗リン脂質抗体
反復流産の検査で重要なのが、抗リン脂質抗体に関する血液検査です。
抗リン脂質抗体症候群(APS)は、血栓や妊娠に関連した合併症を起こすことがある自己免疫性の病気で、流産を繰り返す原因の一つになる場合があります。
検査では主に、
- ループスアンチコアグラント
- 抗カルジオリピン抗体
- 抗β2グリコプロテインⅠ抗体
などを調べます。
一度陽性になっただけでは診断が確定せず、一定期間をあけて再検査が必要になる場合があります。
APSと診断された場合には、妊娠中に低用量アスピリンやヘパリンなどを使用する治療が検討されます。
つまり、この検査は、
結果によって次の妊娠の管理方法が変わる可能性がある検査
の一つです。
検査②|カップルの染色体検査
反復流産では、ご夫婦それぞれの染色体を調べることがあります。
「染色体異常」と聞くと、とても強い言葉に感じるかもしれません。
ここで確認する代表的なものの一つが「均衡型転座」です。
均衡型転座を持っている本人は、通常は健康に生活しており、それまで気づかないことも珍しくありません。
ただし、卵子や精子が作られる過程で染色体の組み合わせに偏りが生じることがあり、その結果として流産につながる場合があります。
カップルのどちらかに染色体の構造変化が見つかった場合には、遺伝カウンセリングなどを通して、
- 自然妊娠を続ける
- 今後の妊娠について詳しく説明を受ける
- 生殖医療の選択肢を検討する
など、それぞれの状況に応じて考えていきます。
検査を受けるかどうかも、結果を知る意味を理解したうえで決めることが大切です。
「遺伝したから誰かが悪い」という話ではありません
染色体検査について説明を受けると、
「私が原因だったらどうしよう」
「夫に問題があったら?」
と心配になることがあります。
でも、染色体の構造は本人が選んだものではありません。
生活習慣が悪かったから起きるものでもありません。
どちらかに染色体の変化が見つかったとしても、
誰かに責任があるという話ではありません。
結果を夫婦の責任探しに使わず、次の妊娠について考えるための情報として受け取ることが大切です。
検査③|子宮の形を調べる検査
子宮の形や子宮腔内の状態も確認します。
生まれつき子宮の形に特徴がある場合や、子宮の中に病変がある場合には、妊娠の継続に影響することがあります。
確認には、
- 経腟超音波検査
- 子宮卵管造影検査
- 子宮鏡検査
などが使われます。
病院やこれまでの検査歴によって、どの方法を使用するかは異なります。
確認されるものには、子宮中隔などの子宮形態異常のほか、粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内癒着などがあります。
ただし、何か見つかったからといって、すべて手術が必要になるわけではありません。
大きさや場所、これまでの妊娠歴などを考えて治療方針を決めます。
検査④|流産した組織の染色体検査
流産後、可能であれば流産した組織の染色体を調べることがあります。
初期流産では、胎児・胎芽側の染色体異数性が原因になっていることが少なくありません。
そのため、流産組織を調べることで、
「今回の流産が偶発的な染色体の変化による可能性が高いのか」
を考える材料になります。
最近では、従来の染色体検査だけでなく、より詳しく染色体の過不足を調べる方法が使われる場合もあります。
ただし、流産したあとでは検体を準備できず、検査できないこともあります。
過去の流産組織を後から調べることは通常できないため、必要性については流産時に主治医から説明を受けることになります。
流産組織の染色体異常=次も同じ、ではありません
流産組織の検査で染色体異常が見つかると、
「次の妊娠でも同じことが起こるのでは?」
と心配になります。
しかし、一度の胚の染色体異常が、次の妊娠でも必ず繰り返されるわけではありません。
受精のたびに卵子と精子の組み合わせは変わります。
一方で、女性の年齢が上がるにつれて、卵子由来の染色体異数性が増えることは知られています。
検査結果は、
次の妊娠を予言するものではなく、今回の流産を理解するための一つの情報
として考えることが大切です。
検査⑤|甲状腺機能
甲状腺の状態も確認されることがあります。
主に血液検査でTSHや甲状腺ホルモンなどを調べます。
甲状腺ホルモンは、身体の代謝だけでなく、妊娠にも関係しています。
すでに甲状腺の病気で治療を受けている方は、妊娠前から薬の量を調整することがあります。
ただし、
「TSHが少し高かった=それが流産の原因だった」
と、一つの数値だけですぐに結論を出すものではありません。
検査値や病歴、ほかの検査結果を踏まえて医師が判断します。
必要に応じて追加される検査もあります
ここまでご紹介したものが、反復流産で中心となる検査です。
一方、患者さんの症状や既往歴によっては、さらに検査が追加されることがあります。
たとえば糖代謝の異常が疑われる場合には血糖やHbA1c、排卵障害や乳汁分泌などがある場合にはプロラクチンなどを調べることがあります。
最近では、慢性子宮内膜炎や精子DNA断片化などについて検討されるケースもあります。
ただし、こうした検査を反復流産のすべての方に一律に行うわけではありません。
病歴やこれまでの検査結果を見ながら必要性を判断します。
「検査項目が多い病院ほど安心」とは限りません
流産を繰り返すと、
「考えられる検査は全部受けたい」
と思うかもしれません。
原因が分からない状態がつらいからこそ、その気持ちは理解できます。
ただし、検査には、
費用。
身体的な負担。
偽陽性。
結果の解釈が確立していないもの。
などもあります。
検査項目が多いほど原因が見つかりやすくなり、妊娠率が上がるとは限りません。
大切なのは、
「この検査で何を調べて、結果が出たら治療がどう変わるのか」
を確認することです。
NK細胞やさまざまな免疫検査は?
不育症について検索すると、
「免疫」
「NK細胞」
などの言葉が出てくることがあります。
免疫と妊娠については研究が続いている分野ですが、現在の国際的なガイドラインでは、一般的な反復流産の原因検索として広範な免疫検査を一律に行うことは推奨されていません。
検査で数値が基準から外れていたとしても、
それが本当に流産の原因なのか。
数値を治療すれば出産率が上がるのか。
まで十分に分かっていない項目があります。
検査を提案された場合には、
「この検査は今の私にどんな意味がありますか?」
と聞いてみてください。
血栓が心配だからと、すべての血液凝固検査が必要なわけではありません
抗リン脂質抗体症候群は反復流産の重要な原因の一つですが、
「流産=血液が固まりやすい」
というわけではありません。
遺伝性血栓性素因などについても、反復流産のすべての方に広範な検査を行うことは現在の国際的なガイドラインでは推奨されていません。
過去に血栓症を起こしたことがある、家族歴があるなど、個別の背景によって必要性を判断します。
検査結果だけを理由に、自己判断でアスピリンなどを使うことも避けてください。
AMHは「流産の原因を調べる検査」ではありません
妊活中の方にはAMHという検査になじみがあるかもしれません。
AMHは主に卵巣予備能を考える際に用いられる指標です。
一方、
AMHが低いから流産した
と判断することはできません。
現在の国際的な指針でも、反復流産の原因を調べる目的だけでAMHなどの卵巣予備能検査を一律に行うことは推奨されていません。
不妊治療の方針を考えるためにAMHを測定することと、流産の原因検索は分けて考えましょう。
検査で異常が見つかった場合
何か異常が見つかると、
「やっぱり私に原因があった」
と思ってしまう方がいます。
でも、検査の目的は責任の所在を決めることではありません。
たとえば抗リン脂質抗体症候群なら、次の妊娠で治療を行える可能性があります。
甲状腺機能に問題があれば、必要に応じて治療や調整を行います。
子宮の形に問題がある場合も、その種類によって治療を検討します。
つまり異常が見つかった場合は、
「次にできることが一つ具体的になった」
と捉えてみてください。
すべて正常だった場合も「何も分からなかった」ではありません
一方、検査結果がすべて正常になることもあります。
そのとき、
「結局何も分からなかった」
と感じるかもしれません。
でも、
抗リン脂質抗体症候群ではなかった。
大きな子宮形態異常はなかった。
カップルの染色体に大きな問題は見つからなかった。
甲状腺機能に治療が必要な異常はなかった。
ということも、次の妊娠を考えるうえで大切な情報です。
異常が見つからなかったことも、一つの検査結果です。
原因不明でも、次の妊娠まで悲観しすぎなくて大丈夫
反復流産では、検査をしても原因が特定されないケースがあります。
そこで、
「原因がないのに2回も流産したなら、次も無理なのでは」
と思うかもしれません。
しかし、原因が分からない方でも、その後の妊娠が継続し出産に至るケースは多くあります。
次の妊娠の見通しは、年齢やこれまでの流産回数などによって変わるため、個別に主治医から説明を受けることが大切です。
インターネット上の確率だけを、自分の未来へそのまま当てはめないでください。
「次の妊娠が怖い」と感じるのも自然なことです
検査が終わったあと、
「次を考えてもいいですよ」
と言われても、すぐには前向きになれないことがあります。
妊娠したら、また心拍確認まで怖い。
トイレへ行くたびに出血を確認しそう。
少し腹痛があるだけで不安になりそう。
そう思うのは、流産を経験したからこその反応でもあります。
反復流産の診療では、身体の検査だけでなく、心理的な支援も大切だと考えられています。
次の妊娠へ進む時期は、
検査が終わった日と、気持ちの準備ができる日が同じでなくても構いません。
検査結果を夫婦で「原因探し」に使わない
反復流産では、女性だけでなくカップルとして染色体検査などを行うことがあります。
結果を待っている間、
「どちらに原因があるんだろう」
という気持ちが出てくるかもしれません。
でも妊娠は、どちらか一人だけで成立するものではありません。
そして流産も、
食生活が悪かったから。
仕事を続けていたから。
夫婦生活の時期が悪かったから。
というように、誰か一人の行動へ単純に原因を求められるものではありません。
検査結果は、
責任を決めるためではなく、二人で次の選択肢を考えるための情報
として使ってください。
診察では、この3つを聞いておくと整理しやすくなります
検査の説明を受けるときは、すべての検査名を覚える必要はありません。
次の3つを確認してみてください。
- この検査では何を調べますか?
何の可能性を確認する検査なのかを聞きます。 - 異常が出た場合、次の妊娠で何が変わりますか?
治療や妊娠管理につながる結果なのかを確認します。 - 正常だった場合、次はどうしますか?
さらに検査をするのか、次の妊娠を考えるのかを確認します。
診察室で聞き忘れそうなら、スマートフォンや紙にメモして持っていって構いません。
鍼灸で反復流産の原因検査はできません
反復流産について鍼灸院へ相談されることもあります。
ただし、抗リン脂質抗体や染色体、子宮形態、甲状腺機能などを診断することは鍼灸院ではできません。
これらは医療機関で必要な検査を受けることが大切です。
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、病院での検査や治療に代わるものとして鍼灸を行うのではなく、検査結果や現在の治療状況を確認したうえで、生理周期、睡眠、冷え・ほてり、胃腸、疲れなど身体全体を見ながらサポートしています。
病院での治療と並行して、どのように身体づくりを行っているのか詳しくはこちらをご覧ください。
検査が増えるほど、不安になる夜もあります
反復流産の検査を始めると、これまで聞いたことのない検査名が増えていきます。
結果待ちの時間もあります。
基準値から少し外れただけで、
「これが原因?」
と検索を続けてしまうこともあります。
10月29日夜の記事「検査が増えて不安な夜に整理したいこと」では、検査結果を一つずつ検索して苦しくなったとき、何を主治医に確認し、何をいったん保留にしてよいのかを整理します。
検査は安心するために受けたのに、検査によって不安が増えてしまう。
そんなときに読んでいただきたい記事です。
「原因を全部見つけなければ次へ進めない」と思わなくて大丈夫
流産を経験すると、理由を知りたくなります。
もう二度と同じ経験をしたくないと思うからこそ、
「原因を全部調べたい」
と思うこともあるでしょう。
でも、現在の医学でもすべての流産の理由を特定できるわけではありません。
必要な検査を受けること。
見つかった原因には適切に対応すること。
原因が見つからない場合は、その意味について主治医から説明を受けること。
そこまでできれば十分です。
分からないことが残っているから、何もできていないわけではありません。
次の妊娠へ進む時期も含めて、ご自身とご夫婦のペースで考えていきましょう。
治療や検査の状況を確認しながら、身体づくりについて一度整理してみたい方もご相談ください。
この記事を書いた人
菅原 裕万
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂 院長
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
施術歴17年以上。妊活・婦人科・マタニティなど女性のライフステージに伴う身体の変化を中心に、医療機関での検査・治療状況も確認しながら身体づくりをサポートしています。
参考・出典
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―産科編」
厚生労働省「不育症に関する取組み」
厚生労働省「不育症について」
European Society of Human Reproduction and Embryology(ESHRE)「Guideline on the Management of Recurrent Pregnancy Loss」
American Society for Reproductive Medicine(ASRM)「Recurrent Pregnancy Loss: A Committee Opinion 2026」

