妊活や不妊治療を続けていると、
「このまま今の病院でいいのかな」
と迷うことがあります。
治療結果が思うように出なかったとき。
先生に聞きたいことを聞けなかったとき。
周りから別の病院を勧められたとき。
SNSで違う治療方法を見つけたとき。
そんな夜は、
「もっと早く病院を変えたほうがよかったのかな」
「転院したら結果が変わるのかな」
と、考えれば考えるほど分からなくなってしまうことがあります。
でも、病院を変えることは「今までの治療が間違っていた」という意味ではありません。
そして、迷ったからといって、すぐに転院を決める必要もありません。
大切なのは、
今の治療で何に困っているのかを整理してから考えること。
今夜は、「変える・変えない」を決める前に、一度頭の中を整理してみましょう。
「病院を変えたい」と感じる理由は一つではありません
病院を変えようか迷う理由は、人によって違います。
例えば、
- なかなか妊娠につながらない
- 同じ治療が続いていて、この先が見えない
- 検査や治療について十分な説明がないと感じる
- 質問したくても診察時間が短く聞けない
- 医師とのコミュニケーションが合わない
- 病院の雰囲気がストレスになっている
- 通院距離や待ち時間の負担が大きい
- 仕事と治療を両立しにくい
- 他の治療方法についても知りたい
ということがあります。
一つひとつを見ると、
「こんなことで病院を変えていいのかな」
と思うかもしれません。

でも、不妊治療は一度の診察で終わるものではなく、何度も通院することがあります。
そのため、治療内容だけでなく、
自分が安心して通い続けられる環境かどうか
も大切です。
ただし、結果が出なかったという理由だけで「この病院はよくない」と判断することも難しいものです。
不妊治療では、適切な治療を行っていても、必ず一度で結果につながるわけではありません。
だからこそ、まずは「何が不満なのか」「何を変えたいのか」を分けて考えることが大切です。
まず整理したいのは「治療」と「通いやすさ」
病院を変えるか迷ったら、今感じている不安を二つに分けてみましょう。
治療そのものへの疑問
例えば、
- なぜ今の治療を続けているのか分からない
- 次の治療段階へ進む目安が分からない
- 検査結果について十分に理解できていない
- 他に受けられる検査があるのか知りたい
- 採卵や移植方法について別の選択肢も知りたい
といったものです。
この場合は、まず現在の主治医に質問することで整理できることもあります。
日本産科婦人科学会の診療ガイドラインでも、不妊治療では女性の年齢、不妊期間、検査結果などを考慮しながら治療方針を検討していくことが示されています。
つまり、
「○回治療したら必ず次へ進む」
と全員に同じ答えがあるわけではありません。
だからこそ、
「私の場合、なぜ今この治療なのですか?」
と確認することには意味があります。
通院環境への負担
一方で、
- 毎回の待ち時間が長く仕事に影響する
- 通院距離が遠すぎる
- 診察のたびに強い緊張を感じる
- 質問しにくい
- 医師やスタッフとの相性が合わない
といった悩みは、治療内容とは別の問題です。
治療が長くなるほど、この「通い続けられるか」という部分は大きくなります。
治療方法だけでなく、
今後数か月、無理なく通院を続けられるか
という視点でも考えてみましょう。
「結果が出ない」だけで判断しないことも大切です
何度か治療をして結果が出ないと、
「病院を変えれば妊娠できるのでは」
と思うことがあります。
その気持ちは自然なものです。
ただ、病院を変えるだけで必ず結果が変わるわけではありません。
治療結果には、
- 年齢
- 卵巣予備能
- 卵子や精子の状態
- 不妊原因
- 子宮や卵管の状態
- 治療方法
- これまでの治療経過
など、さまざまな要素が関係します。
一方で、病院によって、
検査方針。
採卵方法。
培養環境。
使用する薬。
胚移植の考え方。
治療を進めるタイミング。
などに違いがある場合もあります。
そのため、
「結果が出なかったから病院を変える」ではなく、「今の治療方針を理解したうえで、別の考え方も知りたい」
という形で考えるほうが整理しやすくなります。
セカンドオピニオンと転院は同じではありません
ここはとても大切なところです。
※セカンドオピニオンそのものについては、前回の「妊活が長引いたとき セカンドオピニオンの考え方」で詳しくお伝えしています。
セカンドオピニオンを受ける=病院を変える
ではありません。
セカンドオピニオンは、現在の診断や治療内容について、別の医師から意見を聞くためのものです。
その結果、
「今の治療方針で続けよう」
と思えることもあります。
反対に、
「別の治療方法について詳しく相談したい」
と考えるきっかけになることもあります。
生殖医療の分野でも、複雑な治療判断などでは、別の専門家の意見を聞くことが選択肢になるとされています。
つまり、セカンドオピニオンは、
今の病院を否定するためのものではなく、自分が納得して治療を選ぶための情報を増やす方法
と考えるとよいでしょう。
病院を変える前に、5つだけ書き出してみましょう
夜に考え続けていると、不安と事実が混ざってしまうことがあります。
そんなときは、一度紙に書き出してみてください。

1.今までどんな治療を受けたか
タイミング法。
人工授精(AIH)。
体外受精(IVF)。
顕微授精(ICSI)。
採卵回数や胚移植回数。
分かる範囲で十分です。
2.どんな検査を受けたか
血液検査。
卵管検査。
精液検査。
子宮内の検査。
そのほか、これまで受けた検査を確認します。
すべて覚えていなくても大丈夫です。
まずは分かる範囲から整理してみましょう。
3.今、一番分からないことは何か
「なぜ同じ方法を続けているのか」
「次の選択肢は何なのか」
「検査を追加したほうがいいのか」
など、疑問を具体的にします。
4.今の病院で困っていることは何か
治療内容なのか。
説明なのか。
通院時間なのか。
医師とのコミュニケーションなのか。
ここを分けるだけでも、かなり整理しやすくなります。
5.次の病院に何を求めたいのか
これも大切です。
最新の治療を受けたい。
説明をしっかり聞きたい。
自宅から通いやすいところがいい。
仕事と両立したい。
できるだけ同じ医師に診てもらいたい。
何を大切にしたいのかによって、合う病院は変わります。
転院すると決めたら、これまでの治療は無駄になりません
病院を変えると、
「最初から全部やり直しになるのでは」
と心配になる方もいます。
転院するときは、これまでの、
- 検査結果
- 血液検査データ
- 治療内容
- 使用した薬
- 採卵結果
- 受精・培養結果
- 胚移植の記録
などが、新しい病院での治療方針を考える大切な情報になります。
場合によっては、新しい病院で必要な検査を追加したり、一部を再確認したりすることがあります。
でも、
これまで治療してきた時間そのものがゼロになるわけではありません。
積み重ねてきた治療経過も、次の判断材料になります。
病院を変えないという選択もあります
色々調べた結果、
「今の病院でもう少し続けてみよう」
と思うこともあります。
それも一つの選択です。
転院を検討したからといって、必ず変えなければならないわけではありません。
一度立ち止まり、
今の治療方針。
主治医の説明。
自分が大切にしたいこと。
それらを整理したことで、
「今の先生にもう一度相談してみよう」
と思えるのであれば、それも十分意味のある整理です。
妊活の病院選びに「完璧な正解」はありません
インターネットを見ると、
「このクリニックで妊娠しました」
「ここに変えてよかった」
という体験談がたくさんあります。
もちろん参考になることもあります。
でも、その人に合った病院が、自分にも合うとは限りません。
年齢も違います。
不妊原因も違います。
治療歴も違います。
生活環境も違います。
病院選びで大切なのは、
評判だけではなく、自分が納得して治療を続けられるかどうか。
その視点も忘れないでください。
東洋医学では「迷い続けて疲れている身体」にも目を向けます
病院を変えるかどうかを考えている時期は、頭の中が治療のことでいっぱいになりやすくなります。
東洋医学では、長く考え続けたり、心配が続いたりする状態も、身体全体の調子と切り離さずに考えます。
実際に、
「考え始めると眠れない」
「食欲が落ちる」
「胃が重い」
「身体がずっと緊張している」
と感じる方もいます。
病院をどうするかを決めることも大切ですが、
そのことで身体まで疲れ切ってしまわないこと
も同じくらい大切です。
鍼灸では「治療を決める」のではなく、整理する時間も大切にしています
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂では、
「この病院へ行ってください」
「今すぐ転院したほうがいいです」
といった形で病院を決めることはありません。
一方で、施術中に、
「先生にこれを聞きたいけれど、うまく言えなくて」
「次の治療についてよく分かっていなくて」
「転院も考えているけれど整理できない」
と相談されることはあります。
そんなときは、
今まで受けてきた治療。
現在の検査結果。
医師から説明されていること。
今一番気になっていること。
を一緒に整理します。
妊活に鍼灸を取り入れるメリットの一つは、身体を整える施術だけでなく、治療と日常生活の間にある悩みについて、落ち着いて話せる時間を持てることです。
もちろん、治療方針を決めるのは医療機関です。
だからこそ当院では、
「次の診察で先生にここを聞いてみましょう」
と、病院で相談する内容を整理することも大切にしています。
迷っている夜は、答えを出さなくても大丈夫です
夜は、不安が大きく見えやすい時間でもあります。
検索を続けるほど、
「こっちの病院のほうがいいのかな」
「今のままでは遅いのかな」
と迷いが増えてしまうこともあります。
そんな夜に、無理に答えを出さなくても大丈夫です。
まず紙に、
今の病院で困っていること
今後知りたいこと
次の診察で聞くこと
この3つだけ書いてみてください。
病院を変えるかどうかは、それから考えても遅くありません。
大切なのは、
「正しい病院を選ばなければ」
と追い詰めることではなく、
自分が納得して次の治療へ進める環境を探していくこと。
迷っている時間も、これからの治療を考えるための大切な時間です。
参考・出典
日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」
日本生殖医学会「生殖医療ガイドライン」
厚生労働省「不妊治療に関する情報提供」
国立成育医療研究センター「不妊症・不育症に関する情報」
American Society for Reproductive Medicine(ASRM)「Fertility evaluation of infertile women: a committee opinion」(2021)
American Society for Reproductive Medicine(ASRM)「Provision of fertility services for women at increased risk of complications during fertility treatment or pregnancy: an Ethics Committee opinion」(2022)

