流産を経験したあと、自分を責めないために

東洋医学の視点から体質改善を伝える奈良・上牧町の鍼灸院ブログ画像

「あの日、仕事を休んでいればよかったのかな」

「もっと身体を温めていれば……」

「ストレスを感じすぎたから?」

「私の身体が赤ちゃんを守れなかったのかな」

流産を経験したあと、

何度も何度も、その前の数日を思い返してしまうことがあります。

あのとき何を食べた?

重いものを持った?

歩きすぎた?

仕事が忙しかった?

夫婦喧嘩をした?

そして、

「何か一つでも違っていたら、結果も違ったのではないか」

と、自分の行動の中に原因を探してしまう。

でも、9月4日の記事
「反復流産の基礎知識」
でもお伝えしたように、

早期流産の多くは胚側の染色体異常など、本人の努力では変えることのできない要因と関係しています。

いつもの生活をしていたこと。

仕事をしていたこと。

少し歩いたこと。

冷たいものを飲んだこと。

不安になったこと。

それだけを理由に、

「私が流産させてしまった」

と考える必要はありません。

今夜は次の妊娠のための勉強ではなく、

流産を経験したあなた自身の身体と気持ちを守るためのお話

をしたいと思います。

目次

流産した直後に「原因」を探したくなるのは自然なこと

人は、理由が分からない出来事に直面すると、

「なぜ?」

という答えを探したくなります。

特に妊娠してから、

お酒を控えた。

食事にも気をつけた。

薬にも気をつけた。

身体を大切にした。

そうやって過ごしてきた方ほど、

流産という結果に、

「では、何が足りなかったの?」

と思ってしまうかもしれません。

でも、

すべての流産に、本人が見つけられる明確な理由があるわけではありません。

原因が分からないことと、

あなたが何か間違ったことをしたことは、

同じではありません。

「身体が冷えていたから」と決めつけないでください

妊活中の女性は、

「冷えは妊活の大敵」

という言葉をたくさん目にします。

そのため流産すると、

「手足が冷たかったから?」

「子宮が冷えていたのでは?」

と考える方もいます。

東洋医学では、冷えは身体の状態を知る大切なサインの一つです。

だから当院でも、

手足の冷え。

お腹の冷え。

のぼせ。

月経。

胃腸。

睡眠。

などを確認します。

でも、

冷えがあったから流産した、と判断するものではありません。

冷えは、

自分を責める材料ではなく、

これから身体をより過ごしやすくしていくために確認する一つの情報です。

「ストレスを感じたから」とも考えないでください

流産前に、

仕事が忙しかった。

夫婦喧嘩をした。

不妊治療への不安が強かった。

そんなことがあると、

「ストレスが原因だったのかな」

と思うことがあります。

でも、

不安になったこと。

泣いたこと。

イライラしたこと。

それを一つの原因として自分を責める必要はありません。

妊娠中も、人にはさまざまな感情があります。

妊娠しているから毎日穏やかでいなければならないわけではありません。

まして、

流産したあとまで「あのとき不安になった自分が悪かった」と責め続けなくてもいいのです。

身体は、流産した瞬間に元通りになるわけではありません

流産後は、気持ちだけではなく身体も回復途中です。

妊娠に伴って変化していたホルモン。

子宮。

出血。

月経周期。

体力。

これらが少しずつ妊娠前の状態へ戻っていきます。

その間、

  • 身体がだるい
  • 眠りが浅い
  • 食欲が落ちる
  • 胃腸が乱れる
  • 冷えやほてりを感じる
  • 頭痛や肩こりが強くなる
  • 次の月経がいつ来るのか不安

と感じる方もいます。

ですから、

病院で、

「経過は問題ありません」

と言われたからといって、

翌日から心も身体も元気にならなければいけないわけではありません。

医学的に問題がないことと、

身体が十分に回復したと感じることは別です。

流産後にすぐ次へ進みたくなることもあります

特に妊活中の女性は、

「休んでいる時間がもったいない」

と感じることがあります。

年齢。

AMH。

残っている胚。

採卵できる回数。

そういったことを考えると、

「次の周期からすぐ治療を再開したい」

と思うのも自然です。

反対に、

「また妊娠するのが怖い」

と思う方もいます。

どちらが正しいということではありません。

大切なのは、

医学的にいつ再開できるかを主治医へ確認することと、自分の身体や気持ちが今どんな状態なのかを見ること。

です。

「進める」と「進みたい」が一致していないこともあります。

そんなときは、一度身体を整える時間を持ってもいいと思います。

次の妊娠のために「全部変えよう」としなくて大丈夫

流産を経験すると、

次は同じことが起こらないように、

食事を変える。

サプリを増やす。

温活を始める。

運動を始める。

睡眠を完璧にする。

と、一気に生活を変えたくなることがあります。

でも、

「次は絶対に失敗しないように」

という気持ちで始める身体づくりは、だんだん苦しくなることがあります。

身体づくりは、

流産しなかった自分になるための罰ではありません。

今つらいところを少しずつ戻していく。

眠れていないなら睡眠。

食べられないなら胃腸。

身体に力が入り続けているなら緊張。

疲れているなら休息。

まず一つで十分です。

東洋医学では「今、どこが疲れているか」を見ます

流産後の身体を東洋医学で見る場合も、

「流産した人はこの体質」

とは考えません。

血虚(けっきょ)|疲れやふらつきが目立つ

出血後に、

  • 疲れやすい
  • 立ちくらみ
  • 顔色が気になる
  • 眠りが浅い
  • 動悸を感じる

などがある場合、東洋医学では「血」の不足を考えることがあります。

脾虚(ひきょ)|食欲や胃腸が戻らない

  • 食欲がない
  • 胃が重い
  • 軟便
  • 身体がだるい
  • 食べても元気が戻らない

という方では、「脾」の弱りを考えることがあります。

肝鬱気滞(かんうつきたい)|身体の力が抜けない

  • 首肩がこる
  • 胸が詰まる感じ
  • ため息が多い
  • 寝つけない
  • 気持ちが張りつめている

といった状態です。

腎虚(じんきょ)|治療が続き、消耗感が強い

  • 疲れが抜けない
  • 腰がだるい
  • 冷えが強い
  • 身体に力が戻らない感じがする

という方では、「腎」の弱りを考えることがあります。

これらは、

流産の原因を説明するものではありません。

今の身体がどこから回復を必要としているのかを考えるための見方です。

流産後だからこそ、鍼灸を取り入れてほしいと思う場面があります

流産後、

病院で医学的な確認は終わった。

でも、

身体がまだ重い。

眠れない。

食欲が戻らない。

首肩に力が入り続けている。

また妊娠することを考えると身体まで緊張する。

そんな状態で次の治療へ向かっている女性は少なくありません。

こういうとき、

鍼灸は「次の妊娠のためだけ」に受けるものではありません。

まず、

流産を経験して疲れている今の身体を休ませる。

そこから始めることができます。

鍼灸では、

睡眠。

胃腸。

冷え・のぼせ。

月経。

疲労。

首肩や背中の緊張。

などを一つずつ確認しながら、その日の身体に合わせて施術します。

自分で、

「ちゃんと休まなければ」

「身体を整えなければ」

と頑張るのではなく、

施術を受ける時間だけは身体を預けて休む。

その時間をつくれることも、流産後に鍼灸を取り入れる大きなメリットだと考えています。

鍼灸は「次へ急がせる」ための施術ではありません

流産後の身体づくりというと、

「次の妊娠に向けて早く整えなければ」

と思うかもしれません。

でも当院では、

次へ急がせることを目的にはしていません。

今は休ませる方がよいのか。

月経が戻るのを見ながら整えるのか。

採卵へ向けて身体を整えていくのか。

胚移植へ向かうのか。

状況によって違います。

だからこそ鍼灸は、

「何日後に妊娠するため」という短期的なものだけではなく、現在地を確認しながら次へ向かうための身体づくり

として取り入れることができます。

蓮心はり灸堂では「流産した」という情報だけで施術を決めません

当院では、流産後の方にはまず、

  • 現在出血があるか
  • 医療機関で経過確認が済んでいるか
  • 次回受診予定
  • 医師から今後どのように説明されているか
  • 月経が戻っているか
  • 次の採卵・胚移植予定

などを確認します。

そのうえで、

  • 睡眠
  • 食欲・胃腸
  • 便通
  • 冷え・のぼせ
  • 疲労
  • 首肩や背中の緊張
  • 月経の状態
  • 今、一番つらいこと

を一緒に見ていきます。

流産を経験したあとでも、

「次へ進みたい」という方。

「少し休みたい」という方。

「自分でも分からない」という方。

さまざまです。

その気持ちを無理にどちらかへ向けるのではなく、

今の身体に必要な施術を重ねながら、次へ向かえる状態を一緒につくっていく。

これが蓮心はり灸堂で大切にしていることです。

鍼灸を受ける時間が「妊活から離れる時間」になってもいい

流産後も、

病院。

検査。

次の周期。

採卵。

移植。

という妊活の予定は続いていきます。

だからこそ施術中くらいは、

「次はどうする?」

を考えなくてもいい時間にしてほしいと思います。

ベッドに横になって、

身体を預けて、

少し呼吸が深くなって、

「あ、ずっと力が入っていたんだ」

と気づく。

それだけでも身体にとっては大切な時間です。

鍼灸は、

何かをさらに頑張るために追加するものではなく、

頑張り続けてきた身体を一度休ませるために取り入れる

こともできます。

不妊治療中の女性を対象にした研究でも、鍼灸は治療に伴う不安を和らげる可能性が報告されています。

妊活の身体づくりは、数値だけではありません。

眠れること。

食べられること。

身体の力が抜けること。

また少し動こうと思えること。

そうした回復も大切にしていきましょう。

次の妊娠が怖くなっても、おかしなことではありません

流産を経験すると、

次に妊娠できたとしても、

以前のようにただ喜べないことがあります。

「また出血したら」

「また心拍が止まったら」

「次の診察まで大丈夫かな」

妊娠を望んでいたはずなのに、

妊娠することそのものが怖くなる。

流産後には、このような不安が続くことがあります。

だから、

「次は前向きに妊娠しなければ」

と思わなくても大丈夫です。

次の妊娠では、

嬉しい気持ちと怖い気持ちが一緒にあってもいい

のです。

身体づくりも同じです。

不安がなくなってから鍼灸を始める必要はありません。

「怖いけれど、少しずつ身体を整えていきたい」

という段階からでも始められます。

気持ちのつらさが強いときは、専門的な心のケアも大切です

流産後は、不安や抑うつ、強いストレスがみられることがあります。

  • 気分の落ち込みが長く続く
  • 眠れない状態が続く
  • 食事がほとんど取れない
  • 仕事や家事ができない
  • 何も楽しめない
  • 日常生活へ戻ることが難しい

という場合には、

産婦人科や心療内科、心理職、不妊カウンセリングなどへ相談することも大切です。

鍼灸と心理的なサポートは、どちらか一方を選ぶ必要はありません。

心には必要な支援を。身体には身体からのケアを。

それぞれを組み合わせながら回復を支えていくことができます。

出血や痛みが続いている場合は、まず医療機関へ

流産後に、

  • 出血量が非常に多い
  • 強い腹痛が続く
  • 発熱がある
  • 悪臭のある分泌物がある
  • 強いめまい・ふらつきがある

場合には、鍼灸より先に医療機関へ相談してください。

また、出血が続いている時期に鍼灸を希望される場合も、

病院で現在の状態を確認してから

ご相談いただくと安心です。

必要な医療を受けたうえで、その後の身体の回復を鍼灸で支えていきます。

今夜は「次のため」ではなく「今の自分」のために

流産すると、

周囲から、

「次があるよ」

と言われることがあります。

励まそうとしてくれていることは分かっていても、

今は次のことを考えられないこともあります。

そんなときは、

次の妊娠のためではなく、

今日の身体を休ませるために何をするか

だけ考えてみてください。

温かいものを食べる。

早く寝る。

お風呂に入る。

何もせず横になる。

誰かに話す。

鍼灸を受けて身体を休める。

どれでも構いません。

回復は、

「もう大丈夫」

と急に切り替わるものではありません。

少し眠れるようになった。

食欲が戻った。

身体の力が少し抜けた。

また外へ出ようと思えた。

そういう小さな変化を重ねていけばいいのです。

流産後の身体を、ひとりで整えようと頑張っている方へ

「病院では問題ないと言われたけれど、身体はまだしんどい」

「次の妊活へ進みたいけれど、気持ちと身体がついてこない」

「また同じことが起きるのではと考えてしまう」

そんな状態であれば、一度身体を休ませる時間をつくってみませんか。

蓮心はり灸堂では、

流産後の経過。

次の診察。

月経の戻り。

今後の採卵や胚移植予定。

まで確認しながら、

睡眠・胃腸・冷え・疲労・身体の緊張などを丁寧に見て、その時期に必要な施術を行います。

何かを急いで変えるためではなく、

頑張ってきた身体が、もう一度自分のペースを取り戻すために。

そして次へ向かいたいと思えたときに、その身体を少しでも整えておけるように。

流産後の身体づくりにも、鍼灸を取り入れていただけます。

「今の状態でも施術を受けていいのかな」

というところからでも、どうぞご相談ください。

参考・出典

日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」

欧州生殖医学会(ESHRE)「反復妊娠喪失の管理に関するガイドライン」

The Lancet Psychiatry「流産後の不安・抑うつ・ストレスの世界的有病率に関するシステマティックレビュー・メタ解析」

Reproductive BioMedicine Online「IVFに関連する不安に対する鍼灸の効果に関するシステマティックレビュー・メタ解析」

Journal of Clinical Psychology「不安に対する鍼灸のシステマティックレビュー・メタ解析」

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