妊活を始めたとき、
「子宮頸がん検診、最後に受けたのはいつだったかな?」
と気づくことがあります。
あるいは不妊治療中に自治体から検診のお知らせが届き、
「今、妊活中だけれど受けても大丈夫?」
「排卵後は避けた方がいい?」
「胚移植の予定があるけれど、どうしたらいい?」
と迷う方もいると思います。
結論からお伝えすると、
妊活中だからという理由だけで、子宮頸がん検診を長期間先延ばしにする必要はありません。
むしろ、検診時期が来ているのであれば、
妊娠前に自分の婦人科の健康状態を確認しておく
という考え方ができます。
ただし、
排卵後で妊娠の可能性がある。
胚移植直後である。
すでに妊娠している。
不正出血がある。
過去の検診で異常を指摘されている。
といった場合には、通常の検診とは少し考え方が変わります。
今回は、妊活中の女性が知っておきたい子宮頸がん検診について整理していきます。
子宮頸がんは妊活世代にも関係する病気です
子宮頸がんは、子宮の入り口にあたる子宮頸部にできるがんです。
多くの場合、
ヒトパピローマウイルス(HPV)
への持続感染が関係しています。
HPVは珍しいウイルスではなく、性的接触の経験がある人であれば誰でも感染する可能性があります。
感染したからといってすぐ子宮頸がんになるわけではありません。
多くのHPV感染は自然に排除されます。
しかし一部では感染が長期間続き、
正常な細胞
↓
異形成
↓
高度な異形成
↓
子宮頸がん
と、年月をかけて変化していくことがあります。
だからこそ、
症状が出る前に検診で異常を見つけること
が大切なのです。
子宮頸がんは30~40代にも多くみられ、妊娠・出産を考える年代と重なります。
妊活とは別の問題として後回しにせず、定期的な検診を受けておきましょう。
日本では何歳から、どのくらいの間隔で受ける?
現在、日本で基本となっている子宮頸がん検診は、
20歳以上の女性に2年に1回行う子宮頸部細胞診
です。
さらに2024年4月からは、厚生労働省の要件を満たしている自治体で、
30歳以上を対象に5年に1回のHPV検査単独法
も導入されています。
ただし、住民検診の場合、
「私は細胞診ではなくHPV検査を選びたい」
と本人が自由に選ぶ仕組みではありません。
どの方法を採用しているかは自治体によって異なります。
そのため検診のお知らせが届いたら、
自分の市区町村ではどの方式なのか
を確認してください。
毎年検査すれば、もっと安心?
「妊活中だから念のため毎年受けた方がいいですか?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、症状がなく通常の検診対象として受ける場合、
検診は多ければ多いほど良いわけではありません。
検診には、
- 偽陽性
- 不必要な追加検査
- 心理的負担
などの不利益もあります。
国が推奨している検査方法・受診間隔には、検診による利益と不利益のバランスが考慮されています。
過去に異常を指摘されておらず、医師から別の指示を受けていないのであれば、
決められた間隔で定期的に受ける
ことが基本です。
一方、過去にHPV陽性や細胞診異常を指摘されている方は、一般的な「2年に1回」「5年に1回」ではなく、
医師から指定された間隔で経過観察
する必要があります。
細胞診とHPV検査は何が違う?
ここは少し分かりにくいところです。
子宮頸部細胞診
子宮頸部をブラシなどで軽くこすり、細胞を採取します。
その細胞を顕微鏡で確認して、
異常な細胞がないか
を調べる検査です。
HPV検査
採取した検体から、
子宮頸がんに関連するハイリスクHPVに感染しているか
を調べます。
HPV検査が陽性だからといって、
子宮頸がんという意味ではありません。
必要に応じて細胞診などを組み合わせ、その後の検査や経過観察を判断します。
「HPV陽性=がん」
と受け取らないことが大切です。
不妊治療の内診を受けていれば、子宮頸がん検診もできている?
ここは非常によくある誤解です。
不妊治療では、
- 経腟超音波
- 卵胞チェック
- 子宮内膜の厚さ
- 採血
- 卵管検査
など、さまざまな検査を行います。
しかし、
通常の経腟超音波検査だけでは、子宮頸がん検診の代わりにはなりません。
「毎月婦人科へ通っているから子宮頸がんも大丈夫」
とは限らないのです。
不妊治療のクリニックによっては細胞診も行っている場合がありますが、すべての方へ毎年行っているとは限りません。
気になる方は、
「子宮頸がん検診は最後にいつ受けていますか?」
と診察時に確認してみましょう。
妊活を始める前に受けた方がいい?
検診時期が近づいているのであれば、
妊娠前は受診しやすいタイミングの一つ
です。
妊娠してからでも必要な検査を受けることはできます。
ただ、
妊娠前であれば、
検査結果を確認する。
必要なら精密検査を受ける。
治療が必要か相談する。
そのうえで妊活や不妊治療の予定を考える。
という流れを取りやすくなります。
ですから、
「2年以上受けていない」
「最後に受けた時期が分からない」
という方は、
妊活を始めたことを一つのきっかけに、婦人科へ確認してみてもよいでしょう。
ただし「検診を受けないと妊活を始めてはいけない」ではありません
ここも大切です。
検診が必要だからといって、
子宮頸がん検診を受けるまで妊活をすべて止めなければならない
という意味ではありません。
年齢。
これまでの検診歴。
不妊治療の状況。
過去の細胞診結果。
などによって優先順位は違います。
特に高度生殖医療を受けている場合には、
採卵。
胚移植。
ホルモン治療。
などの予定があります。
そのため、
「いつ検診を入れるのがよいですか?」
と通院している医療機関へ相談し、
治療予定と検診を両方整理する
のが一番分かりやすい方法です。
排卵後や胚移植前後はどうする?
「排卵後だから検診できない」
「胚移植後に子宮頸部を触ったら着床に影響するのでは?」
と心配になる方もいると思います。
子宮頸がん検診で細胞を採取する場所は、
子宮の入り口である子宮頸部
です。
胚が着床する子宮内膜そのものを採取する検査ではありません。
また、妊娠初期にも必要に応じて子宮頸部細胞診が行われます。
とはいえ、不妊治療中は治療施設ごとの方針や現在の状態があります。
特に、
- 排卵後で妊娠している可能性がある
- 人工授精後
- 胚移植後
- 妊娠判定日前
- 出血がある
場合には、
「妊活中・不妊治療中であること」を検診を受ける医療機関へ必ず伝えてください。
また、胚移植直後などで迷う場合には、通院先へ検診時期を確認すると安心です。
「妊活中だから絶対だめ」
「全く気にしなくていい」
と自分だけで判断する必要はありません。
妊娠してからでも子宮頸がん検診は受けられる?
できます。
日本産科婦人科学会の産科診療ガイドラインでも、妊娠初期には必要性を判断したうえで、
子宮頸部細胞診を行う
ことが示されています。
つまり、
妊娠したら子宮頸部を検査できなくなるわけではありません。
「検診を受ける前に妊娠してしまった」
と焦る必要はありません。
妊婦健診を受ける医療機関で、
「最後の子宮頸がん検診は○年前です」
と伝えてください。
過去の検診歴などを踏まえて、必要な検査を判断してもらえます。
妊娠中に異常が見つかったら?
妊娠中に細胞診異常が見つかっても、
すぐに子宮頸がんと決まるわけではありません。
必要に応じて、
- HPV検査
- コルポスコピー
- 組織検査
などを行い、どの程度の病変なのかを確認します。
妊娠中でも、必要なコルポスコピーや生検が行われることがあります。
一方、前がん病変で浸潤がんが疑われない場合には、病変の程度によって妊娠中は経過観察し、治療を分娩後に行うケースもあります。
つまり、
異常が出た=妊娠を続けられない
ということではありません。
結果が出た段階で自己判断せず、産婦人科・婦人科腫瘍を診る医師と相談してください。
「要精密検査」は「がんです」という通知ではありません
子宮頸がん検診で、
「要精密検査」
という結果が届くことがあります。
この言葉を見ると、
「がんだったらどうしよう」
と強い不安を感じると思います。
しかし検診は、
がんを確定診断する検査ではありません。
異常な細胞がある可能性を拾い上げ、
「もう少し詳しく調べましょう」
という人を見つけるための検査です。
精密検査では、
コルポスコピーという拡大鏡で子宮頸部を観察し、必要に応じて組織を採取して調べます。
大切なのは、
怖いから結果を放置しないこと。
妊活中であっても、指定された精密検査を受けましょう。
異形成が見つかったら、妊活は中止?
これも病変の程度によります。
子宮頸部の異形成には、
軽度。
中等度。
高度。
などがあります。
すべてが直ちに治療の対象になるわけではなく、年齢、病変の程度、HPVの状態などによって経過観察になることもあります。
一方、高度な病変やがんが疑われる場合には治療が必要になることがあります。
そのため、
「異形成があったら妊活できない」
とも、
「妊活を優先して検査を後回しにしてよい」
とも一律には言えません。
不妊治療を受けている場合は、
婦人科の担当医と生殖医療の担当医の両方に、
妊娠を希望していること
を伝えてください。
病変の安全性を確認しながら、治療の必要性や妊娠を目指す時期を考えていきます。
子宮頸がん検診と「子宮の中を調べる検査」は別です
妊活中は、
「子宮の検査」
という言葉がたくさん出てきます。
子宮頸がん検診。
経腟超音波。
子宮鏡検査。
子宮卵管造影検査。
子宮内膜の検査。
名前が似ているので混乱しやすいのですが、それぞれ見ている場所や目的は異なります。
子宮頸がん検診は、
子宮の入り口である「子宮頸部」の異常を確認する検査
です。
一方、子宮鏡検査は、
子宮内膜ポリープなど、子宮の中の状態を直接観察するために行われる検査
です。
「子宮頸がん検診が正常だったから子宮の中も問題ない」
という意味にはなりません。
逆に、
不妊検査をたくさん受けているから子宮頸がん検診は必要ない、
ということにもなりません。
それぞれ役割が違う検査として考えましょう。
生理中でも受けられる?
子宮頸がん検診は、
月経中をなるべく避ける
ことが勧められています。
出血が多いと、採取した細胞を評価しにくくなる場合があるためです。
予約日に月経が重なりそうな場合は、検診施設へ確認してみてください。
ただし、
「生理ではないのに出血している」
場合は話が違います。
その場合は単なる検診ではなく、
婦人科で原因を調べる必要がある可能性
があります。
不正出血があるなら「検診の日まで待つ」ではありません
子宮頸がん検診は、
症状のない人が定期的に受ける検査
です。
もし、
- 月経以外の出血
- 性交後の出血
- おりものの異常
- 繰り返す不正出血
- 下腹部の痛み
などがある場合には、
「次の子宮頸がん検診まで待とう」
ではなく、産婦人科を受診してください。
子宮頸がんだけでなく、
子宮頸管ポリープ。
感染症。
子宮内膜ポリープ。
子宮筋腫。
排卵に伴う出血。
妊娠に関連する出血。
など、さまざまな原因が考えられます。
症状がある場合は「検診」ではなく「診察」へ。
ここは覚えておいてください。
HPVワクチンを受けていても検診は必要?
はい。
HPVワクチンは子宮頸がん予防に非常に重要ですが、
すべての子宮頸がんを完全に防ぐものではありません。
そのためワクチンを接種した方も、対象年齢になれば定期的な子宮頸がん検診が必要です。
反対に、
「もう性交経験があるからHPVワクチンには意味がない」
と一律に判断する必要もありません。
接種対象や年齢、これまでの接種歴について疑問がある場合は婦人科などへ相談しましょう。
妊活中だからこそ「婦人科の健康」と「妊娠できるか」を分けて考える
妊活をしていると、
病院で行うすべての検査について、
「これで妊娠できるかどうかが分かるの?」
という視点になりやすくなります。
でも、子宮頸がん検診の目的は、
妊娠率を調べることではありません。
女性自身の健康を守ること
です。
妊活中だから受ける。
妊娠するために受ける。
というより、
妊活をしていても、していなくても、
対象年齢になった女性が適切な間隔で受ける大切な検診
と考えてください。
東洋医学でも「検診の代わり」はできません
東洋医学では、
月経。
冷え。
おりもの。
疲労。
胃腸。
睡眠。
など、身体に現れるさまざまな変化を確認します。
しかし、
脈を診る。
舌を見る。
お腹を触る。
鍼灸施術を受ける。
ことで、
HPV感染や子宮頸部異形成、子宮頸がんの有無を診断することはできません。
子宮頸部の異常を調べるためには、医学的な検診・検査が必要です。
これは明確に分けて考える必要があります。
鍼灸を取り入れるなら「検診の代わり」ではなく、妊活中の身体づくりとして
子宮頸がん検診を受けたからといって、妊活の身体づくりが終わるわけではありません。
不妊治療中には、
- 通院が続いて疲れている
- 睡眠が浅い
- 胃腸が弱っている
- 月経痛がある
- 冷えやのぼせが気になる
- 首肩に力が入り続けている
- 採卵や胚移植を控えて緊張している
といった身体の負担が重なることがあります。
こうした部分については、
医学的な検診をきちんと受けながら、鍼灸で身体のコンディションを整える
という役割分担ができます。
検診は検診。
不妊治療は不妊治療。
鍼灸は妊活を続けている身体のサポート。
それぞれが同じ役割を持つわけではありません。
蓮心はり灸堂では、婦人科の検査結果も大切な情報として考えます
当院では、妊活中の方から、
「子宮頸がん検診で再検査になりました」
「HPV陽性と言われました」
「今度コルポスコピーを受けます」
とご相談いただくこともあります。
その場合、
鍼灸で結果を判断したり、
「この体質だから異形成になった」
と説明したりすることはありません。
必要な精密検査・経過観察は婦人科で受けていただきます。
そのうえで、
- 現在の不妊治療
- 次の採卵・人工授精・胚移植予定
- 婦人科で予定されている検査
- 月経周期
- 使用している薬
を確認しながら、
睡眠。
胃腸。
冷え・のぼせ。
疲労。
身体の緊張。
などを整える施術を考えます。
必要な医療をきちんと受けながら、妊活を続ける身体を支える。
それが当院の基本的なスタンスです。
「妊活を急ぎたいから検診を後回し」は一度立ち止まって
年齢を考えると、
「一周期も無駄にしたくない」
と思う気持ちはよく分かります。
採卵を急ぎたい。
胚移植を早くしたい。
少しでも早く妊娠したい。
その中で、
「検診は妊娠してからでもいいかな」
と思うこともあるでしょう。
しかし、
検診対象の時期になっている。
過去に異常を指摘された。
精密検査を勧められている。
という場合には、
妊活を優先するために自己判断で放置しないこと
が大切です。
必要な確認をしたうえで妊活を進めることは、
遠回りではありません。
女性自身の健康があってこその妊活です。
今日確認してほしい3つ
最後に、今すぐ確認できることを3つ挙げます。
1.最後の子宮頸がん検診はいつ?
2年以上受けていない。
いつだったか分からない。
という場合は、自治体や婦人科へ確認してみましょう。
2.過去に「要再検査」を放置していない?
HPV陽性。
ASC-US。
LSIL。
要精密検査。
などを以前指摘され、その後受診していない場合は、婦人科へ相談してください。
3.不正出血はない?
月経以外の出血や性交後の出血があるなら、
次の検診まで待たずに診察を受けましょう。
妊活中だからこそ、
妊娠するための検査だけではなく、自分自身の健康を守る検査も忘れないこと。
それが大切です。
妊活と婦人科の健康を一緒に考えたい方へ
妊活を始めると、
排卵。
卵管。
AMH。
精液検査。
採卵。
胚移植。
と、「妊娠するための検査」に意識が集中しやすくなります。
でも、妊活中も女性自身の健康管理は続きます。
子宮頸がん検診など必要な医学的検査は医療機関できちんと受ける。
そのうえで、
「治療が続いて身体が疲れている」
「睡眠や胃腸まで乱れてきた」
「次の採卵・胚移植に向けて身体を整えたい」
という部分には鍼灸を取り入れる方法があります。
蓮心はり灸堂では、婦人科での検査や不妊治療の予定も確認しながら、その時期の身体に必要なサポートを一緒に考えています。
検査を鍼灸に置き換えるのではなく、必要な医療と身体づくりを両方大切にする。
そのような妊活をサポートしています。
参考・出典
厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A・子宮頸がん検診」
国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん検診について」
日本産科婦人科学会「子宮頸がん」
日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―産科編2023」
米国コルポスコピー・子宮頸部病理学会(ASCCP)「妊娠中の子宮頸がん検診異常の管理」

