反復流産の基礎知識

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「一度だけでもつらかったのに、また流産になってしまった」

「2回続いたということは、私の身体に何か問題があるの?」

「次に妊娠しても、また同じことになるのでは……」

流産を繰り返すと、次の妊娠を望む気持ちと、また失うことへの怖さが同時に出てくることがあります。

そして、

「仕事を続けていたから?」

「運動したから?」

「ストレスが多かったから?」

「身体が冷えていたから?」

と、自分の行動の中に原因を探してしまう方も少なくありません。

でも、まず知っていただきたいことがあります。

多くの早期流産は、本人の行動や努力不足によって起こるものではありません。

反復流産を経験した場合には、必要に応じて医学的な評価を受けることが大切です。

今回は、「反復流産」という言葉が何を意味するのか、どのようなことを調べるのかを一緒に整理していきましょう。

目次

「反復流産」とは何回から?

日本産科婦人科学会では、

自然流産を2回繰り返した場合を「反復流産」

と呼びます。

さらに、自然流産を3回以上繰り返した場合は、

「習慣流産」

と呼びます。

なお、生化学的妊娠は、日本産科婦人科学会の反復流産の回数には含めません。

ここで少し分かりにくいのが、海外では定義が完全には統一されていないことです。

欧州生殖医学会(ESHRE)では、2回以上の妊娠喪失から反復妊娠喪失を考えます。

一方、英国王立産婦人科医会(RCOG)は3回以上の早期流産を「反復流産」と定義していますが、状況によっては2回の段階から詳しい評価を行うことも勧めています。

そのためインターネットで調べると、

「2回から」

「3回から」

という両方の情報が出てくるのです。

日本で受診を考える場合には、

2回流産を経験した段階で、一度産婦人科へ相談してよい

と考えてください。

「反復流産」と「不育症」は同じ?

似た言葉として、

不育症

があります。

不育症とは、妊娠そのものは成立するものの、

  • 流産
  • 死産

などを2回以上経験し、妊娠を継続することが難しい状態を広く表す言葉です。

そのため、

反復流産は、不育症に含まれる状態の一つ

と考えると分かりやすいでしょう。

「不妊症」と「不育症」は似た言葉ですが、意味は異なります。

不妊症は妊娠成立までの問題を扱うのに対し、不育症は妊娠が成立したあとに妊娠を継続することが難しい状態を扱います。

もちろん、両方が重なる方もいます。

流産そのものは決して珍しいことではありません

妊娠が分かったあとの流産は、決して珍しいものではありません。

日本産科婦人科学会では、妊娠のおよそ15%が自然流産になるとしています。

また、流産の頻度は年齢とともに上昇します。

特に妊娠12週未満の早期流産では、胚・胎児側の染色体異常が大きな割合を占めています。

つまり、

受精した時点ですでに妊娠を継続することが難しかったケースが少なくありません。

これは、

「何か間違ったことをしたから流産した」

という話とはまったく違います。

仕事や運動、ストレスが流産の原因だった?

流産を経験したあと、

「あの日仕事で無理をしたから」

「少し走ったから」

「夫婦喧嘩をしてストレスがかかったから」

と振り返る方がいます。

しかし、通常の日常生活における、

  • 仕事
  • 運動
  • 性交
  • 一時的なストレス
  • 口論

などが、一般的な早期流産の原因になるとは考えられていません。

もちろん、妊娠中に医師から安静や運動制限を指示されている場合は別です。

大切なのは、

流産の原因を、あとから自分の日常生活の中に無理に探さないこと。

です。

では、なぜ流産を繰り返すことがあるのでしょうか

反復流産では、いくつか確認されているリスク因子があります。

代表的なものを見てみましょう。

1.胚の染色体異常

早期流産で最も多い要因の一つです。

受精するときに染色体の数などに偶発的な異常が生じ、胚の発育が途中で止まることがあります。

年齢が上がるにつれて、卵子由来の染色体異常を持つ胚の割合も増加します。

しかし、これは、

「身体づくりが足りなかったから卵子が悪くなった」

という意味ではありません。

年齢と卵子の生物学的な変化が大きく関係しています。

2.ご夫婦どちらかの染色体構造の違い

ご本人には健康上まったく問題がなくても、ご夫婦のどちらかが「均衡型転座」などの染色体構造を持っている場合があります。

本人自身には症状がなくても、卵子や精子がつくられる過程で染色体の組み合わせによって流産につながることがあります。

必要と判断された場合には、ご夫婦の染色体検査が検討されます。

検査を受ける際には、結果の意味について遺伝カウンセリングを受けることも大切です。

3.子宮の形の問題

生まれつきの子宮形態の違いなどが、妊娠継続に影響することがあります。

子宮の形については、

  • 超音波検査
  • 必要に応じたMRI
  • 子宮鏡検査

などで評価されます。

異常が見つかったからといって、すべて手術が必要というわけではありません。

形態や妊娠歴などを踏まえて治療方針を考えます。

4.抗リン脂質抗体症候群

反復流産・不育症で重要な病気の一つが、

抗リン脂質抗体症候群

です。

自己免疫に関係する病気で、血栓ができやすくなったり、妊娠合併症や流産に関係したりすることがあります。

診断には、

  • 抗リン脂質抗体に関する血液検査
  • これまでの妊娠歴
  • 血栓症の既往

などを合わせて判断します。

抗リン脂質抗体症候群と診断された場合には、妊娠中に低用量アスピリンやヘパリンなどが使用されることがあります。

ただし、

流産を経験したすべての方が、自己判断でアスピリンなどを使うものではありません。

必ず専門医の診断に基づいて治療を行います。

5.甲状腺などの内分泌の問題

甲状腺機能の異常も、不育症の評価で確認される項目の一つです。

必要に応じて、

  • TSH
  • FT4
  • 甲状腺自己抗体

などが確認されることがあります。

すでに甲状腺の治療を受けている方は、妊娠前から主治医と相談しながら数値を管理していくことが大切です。

検査をしても「原因不明」のことがあります

ここも、とても大切です。

反復流産について詳しく検査しても、

はっきりした原因が見つからない方は少なくありません。

日本産科婦人科学会でも、不育症の精密検査を行っても半数以上は原因不明としています。

「原因不明」と聞くと、

「医学でも分からないような問題が私の身体にあるの?」

と不安になるかもしれません。

しかし、

原因不明=次も必ず流産する

という意味ではありません。

明確な治療対象となる病気が確認されなかったという意味でもあります。

検査結果だけで未来の妊娠が決まるわけではありません。

「検査は多ければ多いほど安心」ではありません

流産を繰り返すと、

「できる検査は全部受けたい」

と思うことがあります。

そのお気持ちは自然です。

しかし不育症の分野にも、

  • 根拠が十分に確立している検査
  • 特定の場合に検討される検査
  • 現時点ではルーチンに推奨されていない検査

があります。

海外のガイドラインでも、一部の免疫検査やさまざまな追加検査を全員に行うことは推奨されていません。

検査を提案されたときは、

「何を調べる検査ですか?」

「異常が出た場合、次の妊娠で治療は変わりますか?」

と聞いてみましょう。

検査を受けること自体ではなく、

その結果をどのように治療へ生かすのか

が重要です。

PGT-Aをすれば流産を防げる?

体外受精を行っている方では、

PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)

について聞くこともあると思います。

PGT-Aは、胚の染色体数を調べて移植する胚を選択する検査です。

反復流産を経験した方に検討される場合もありますが、

反復流産なら全員がPGT-Aを受ければよい、というものではありません。

年齢、これまでの採卵・胚移植歴、得られる胚の数などによって意味が異なります。

また、検査そのものにも限界があります。

適応については、生殖医療を行う医師から十分に説明を受けて判断してください。

次の妊娠までに、自分でできることは?

反復流産を経験すると、

「次こそ失敗しないように生活を完璧にしなければ」

と思ってしまうことがあります。

でも、毎日の生活を100点にする必要はありません。

まず大切なのは、

  • 禁煙する
  • 過度な飲酒を避ける
  • 葉酸を適切に摂る
  • 食事を大きく乱さない
  • 無理のない範囲で身体を動かす
  • 持病や服薬について医師に相談する

といった基本的な健康管理です。

特別な食材や温活だけで反復流産を防げる、という根拠はありません。

何かを大量に足すより、

医学的に必要なことを確認しながら、無理なく続けられる生活に戻していくこと

を大切にしてください。

東洋医学では、流産の「原因」を体質で決めません

東洋医学では妊活中の身体を、

  • 腎虚(じんきょ):疲れが強く、身体を支える力が低下している状態
  • 肝鬱気滞(かんうつきたい):不安や緊張が続き、気の巡りが滞っている状態
  • 脾虚(ひきょ):食欲低下や軟便など、胃腸が弱っている状態
  • 血虚(けっきょ):疲れや立ちくらみ、乾燥などがみられる状態
  • 瘀血(おけつ):月経痛や経血の塊など、血の巡りが滞っている状態

などから見ることがあります。

ただし、ここは明確に分けて考える必要があります。

「腎虚だから流産した」
「冷えていたから流産した」
「瘀血があるから妊娠を維持できなかった」

と判断するものではありません。

東洋医学的な体質は、

今の身体のコンディションを整理するための見方

として使います。

流産の原因を医学的に調べることとは別のものです。

反復流産を経験した方が鍼灸を取り入れる意味

ここでも大切な線引きがあります。

鍼灸によって反復流産を治療できる、あるいは次の流産を防げると断定することはできません。

不育症の原因として、

抗リン脂質抗体症候群や甲状腺機能の異常、子宮形態異常などが見つかった場合には、医療機関で適切な治療を受けることが優先されます。

では、鍼灸にはどのような役割があるのでしょうか。

流産を経験したあとには、

  • 眠りが浅くなる
  • 首や肩から力が抜けない
  • 胃腸の調子を崩す
  • 身体の疲れが残る
  • 月経が戻るまで不安が続く
  • 次の妊娠を考えると緊張する
  • 採卵や胚移植を再開することが怖い

など、身体と気持ちの両方に負担が残ることがあります。

鍼灸では、

流産そのものを治すのではなく、次の妊娠や治療に向かう身体のコンディションを一緒に整えていく

という使い方ができます。

不妊治療を受ける女性を対象とした研究では、鍼灸が不安の軽減に役立つ可能性も報告されています。

ただし、この研究結果を「流産予防効果」と置き換えることはできません。

身体を休ませる。

眠りや胃腸を整える。

力が抜けなくなっている身体をゆるめる。

そうした補助的な身体づくりとして考えてください。

蓮心はり灸堂では「次へ急がせる施術」はしません

流産を経験したあと、

「年齢のことを考えると、早く次へ進まなければ」

という気持ちになることがあります。

一方で、

身体はまだ疲れている。

次の妊娠が怖い。

また流産したらと思うと治療を再開できない。

そんな気持ちが同時にある方もいます。

蓮心はり灸堂では、

  • 流産後の身体の回復状況
  • 月経が戻っているか
  • 現在の出血の状態
  • 医師から次の妊娠・治療についてどのように説明されているか
  • 今後の採卵・胚移植予定
  • 睡眠
  • 胃腸
  • 冷えやのぼせ
  • 疲労
  • 首肩の緊張
  • 月経の状態

などを確認しながら施術を考えます。

そして、

「次へ進むために急いで身体を変える」

のではなく、

「今の身体がどこまで回復しているのかを見ながら、次へ進める状態をつくっていく」

ことを大切にしています。

検査や薬については専門医へ。

日々の身体の回復や、妊活を続けるためのコンディションづくりについては鍼灸も一つの選択肢に。

それぞれの役割を分けながらサポートしていきます。

ただし、流産直後は医療機関での確認を優先してください

流産後に、

  • 出血が非常に多い
  • 強い腹痛が続く
  • 発熱がある
  • 悪臭のある分泌物がある
  • めまいやふらつきが強い

場合には、鍼灸やセルフケアよりも医療機関への相談を優先してください。

また、妊娠中に出血や腹痛がある場合も、自己判断で「流産かもしれない」と決めず、まず産婦人科へ連絡しましょう。

医学的に状態を確認してもらったうえで、必要に応じて身体づくりを考えていきます。

病院で確認したい3つのこと

2回以上流産を経験した方は、次回受診時に次の3つを確認してみてください。

1.不育症の検査を考える段階でしょうか?

「2回流産していますが、不育症について検査した方がよい項目はありますか?」

と聞いてみましょう。

年齢や流産した時期、これまでの妊娠歴によって必要な検査は異なります。

2.これまでの流産から分かることはありますか?

流産した週数や超音波所見、胎児・絨毛染色体検査を行っている場合には、その結果も重要な情報になります。

これまでの経過を一度整理してもらいましょう。

3.次の妊娠前に整えておく病気や薬はありますか?

甲状腺疾患などの持病や現在服用している薬がある場合には、次の妊娠を考える前に確認しておくと安心です。

「何をすれば流産しませんか?」

ではなく、

「今の私に医学的に確認しておくことは何ですか?」

と聞くと、必要なことを整理しやすくなります。

流産を繰り返しても、あなたの行動を責める必要はありません

二度目の流産を経験すると、

一度目以上に、

「あのときこうしていれば」

という気持ちが出てくることがあります。

でも、

仕事をしたから。

歩いたから。

一度冷たいものを飲んだから。

ストレスを感じたから。

そんな一つひとつの行動に原因を探して、自分を責め続ける必要はありません。

必要なのは、

責任を探すことではなく、医学的に確認できることを一つずつ整理することです。

そして身体が疲れているなら休ませる。

不安で眠れないなら、その部分も整える。

次の妊娠に向かうかどうかを決めるのも、身体と気持ちの準備ができてからで構いません。

このテーマの続きは、9月10日夜公開の「流産を経験したあと、自分を責めないために」で、

「あのとき○○しなければよかった」

という気持ちから少し離れるための考え方をお話しします。

次の妊娠に向けて、身体を整えたい方へ

流産後は、

「早く次へ進みたい」

という気持ちと、

「また同じことが起きたら怖い」

という気持ちが行ったり来たりすることがあります。

その中で、食事や温活、サプリメントなどを増やし、

「次こそ失敗しない身体にしなければ」

と頑張りすぎてしまう方もいます。

でも、身体づくりは自分を追い込むためのものではありません。

蓮心はり灸堂では、病院での検査や治療内容、次の採卵・胚移植などの予定も確認しながら、睡眠・胃腸・月経・冷え・疲労・緊張など、今の身体に必要なことを一緒に整理しています。

何をすればよいか分からなくなっている段階からでも大丈夫です。

医学的に調べることは医療機関で確認しながら、次に向かう身体を少しずつ整える方法として鍼灸を取り入れることができます。

参考・出典

日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」

厚生労働省「不育症に関する取組み」

欧州生殖医学会(ESHRE)「反復妊娠喪失の管理に関するガイドライン」

英国王立産婦人科医会(RCOG)「反復流産ガイドライン」

アメリカ産科婦人科学会(ACOG)「早期妊娠喪失」

Reproductive BioMedicine Online「IVFに関連する不安に対する鍼灸の効果に関するシステマティックレビュー・メタ解析」

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