検査が異常なしなのに妊娠しないとき

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検査では異常なし。
でも、妊娠にはつながらない。
その言葉が、いちばん苦しいことがあります。

何も悪くないなら、どうして妊娠しないのだろう。
自分が気にしすぎなのかな。
もっと頑張り方があるのかな。
そんなふうに、出口のない迷路に入ったような気持ちになる方も少なくありません。

まず最初にお伝えしたいことがあります。
検査が異常なしというのは、「問題がない」という意味ではありません。
多くの場合は、今の標準的な検査で、はっきりした原因が見つかっていないという意味です。
つまり、あなたのつらさが軽いわけでも、気のせいでもありません。

目次

「異常なし」は、原因不明不妊と呼ばれることがあります

世界保健機関(WHO)は、不妊を12か月以上の定期的な避妊のない性交でも妊娠に至らない状態と定義していて、その原因には男性因子、女性因子、そして原因不明の因子があるとしています。

英国のNHSでは、不妊の約4分の1で原因が特定できないと案内しています。
また英国のHFEAは、原因不明不妊を、精液、卵巣予備能、排卵、内分泌の異常、骨盤内の解剖学的な状態を一通り評価しても原因を特定できない状態と説明しています。

つまり、検査が異常なしなのに妊娠しない時は、
「何も問題がない」のではなく、
調べた範囲では明確な原因が見えていない
と受け止めるほうが自然です。

標準的な検査では、何を見ているのでしょうか

アメリカの生殖医学会(ASRM)は、不妊の基本評価として、

  • 排卵しているか
  • 女性の生殖器の形や卵管の通り道に問題がないか
  • 男性側の精液所見に問題がないか

を確認すると示しています。
また、女性側だけでなく、男性側の評価も並行して始めることが勧められています。

さらにASRMは、月経周期が21〜35日で規則的なら、追加の排卵確認検査が必ずしも必要ではないとしています。
つまり、検査で異常なしと言われた背景には、こうした基本項目が大きく崩れていない、という意味合いがあります。

では、なぜ異常なしでも妊娠しないことがあるのでしょうか

ここはとても大事なところです。
HFEAが示すように、原因不明不妊は一通りの評価をしても原因が特定できない状態です。
言い換えると、現在の標準検査はとても大切ですが、妊娠までの過程をすべて完全に説明できるわけではないとも言えます。

たとえば、排卵、受精、胚の発育、子宮内膜とのタイミング、精子や卵子の働きなどは、日常診療で見える部分と見えにくい部分があります。
そのため、検査で大きな異常が出なくても、妊娠しにくさが残ることは不思議ではありません。
これは「気にしすぎ」ではなく、原因の見え方に限界があるということでもあります。これは、HFEAの定義とASRMの評価項目から導ける考え方です。

年齢によって、次の一歩を考えるタイミングは変わります

妊活で次の一歩を考える時、年齢はとても大切です。
ASRMは、35歳未満では12か月、35歳以上では6か月妊娠に至らなければ評価を始めることを勧めています。
また、40歳を超える場合は、より早い評価と治療が考えられるとしています。

つまり、検査が異常なしでも、

  • 年齢
  • 妊活期間
  • 月経や排卵の状態
  • 痛みや既往歴
  • 男性側の所見

によって、次に考える選択肢は変わります。
「異常なしだから、しばらく何もしなくていい」と一律には言えません。

治療は、やみくもに増やすより順序が大切です

原因不明不妊の治療は、はっきりした原因に対する治療ではないため、経験的に進める部分があるとASRMは説明しています。
そのうえでASRMは、多くのカップルでは、最初に経口薬を使った卵巣刺激と人工授精(IUI)を通常3〜4周期行い、妊娠しなければ体外受精(IVF)を考えるのがよいと示しています。
また、自然周期のIUIは勧められず、タイミング法にクロミフェンやレトロゾールだけを足す方法も、待機療法より有効とは言えないとしています。

一方、NHSは、原因不明不妊で卵巣を刺激する薬だけを使っても妊娠率を上げるとは分かっていないため勧めないと案内しています。
さらにNHSでは、原因不明不妊で2年間の定期的な避妊なし性交でも妊娠しなければ、NICEはIVFを提案していると説明しています。

つまり、次の一歩は、
何でも追加することではなく、
年齢と妊活期間に合わせて、順序よく進めること
が大切です。

「異常なし」と言われたあとに苦しくなりやすい理由

原因が分かったつらさもありますが、原因が分からないつらさもあります。
むしろ後者のほうが、言葉にしにくく苦しいことがあります。

「はっきりした原因がないなら、自分が弱いだけなのかな」
「仕事のストレスのせいかな」
「もっと頑張れば変わるのかな」
そんなふうに、自分を責めやすくなるからです。

でも、WHOが示すように、不妊には原因不明の因子があります。
そしてHFEAも、一通り調べても原因が特定できないことがあると説明しています。
だから、原因が見えないことを、そのまま自分の責任にしてしまわなくて大丈夫です。

東洋医学では、「異常なしなのにうまくいかない」をどうみるのでしょうか

東洋医学や中医学では、検査で異常が見つからない時でも、
冷え
眠り
胃腸の弱り
気持ちの張りつめ
月経前後の不調
など、体の全体像から見ていきます。

古典の『黄帝内経』の流れをくむ考え方では、妊娠は子宮だけの話ではなく、気・血・水の巡りと、肝・脾・腎の働きのバランスが整っていることが大切だと考えます。

たとえば、

  • ため息が増える
  • 首肩がこる
  • 生理前に張りつめる
  • 眠りが浅い

という方では、肝鬱気滞(かんうつきたい)

  • 疲れやすい
  • 胃腸が弱い
  • 朝が重い
  • 生理後の回復が遅い

という方では、**脾気虚(ひききょ)や血虚(けっきょ)**のような見方をすることがあります。

もちろん、東洋医学だけで不妊の原因を確定できるわけではありません。
でも、検査では拾いきれない日々の不調や体質の偏りを整理する視点としては役立ちます。
西洋医学と東洋医学を対立させず、両方から見ていくことが大切です。

不妊・妊活における鍼灸の役割

鍼灸は、原因不明不妊を一度で解決するものではありません。
また、排卵の有無、卵管の通り道、精液所見、体外受精(IVF)や胚移植(ET)など、妊活に必要な検査や治療の代わりになるものでもありません。
必要な確認は、クリニックや病院など、専門の医療機関で行うことが大切です。

その一方で、妊活中に重なりやすい

  • 冷え
  • 首肩のこわばり
  • 眠りの浅さ
  • 気持ちの張りつめ
  • 月経前後の不調
  • 自律神経の乱れを感じる状態

などを、東洋医学の視点から整える支えにはなり得ます。

英国ヒト受精・胚研究機構(HFEA)は、鍼灸を含む補完療法について、リラクゼーションやウェルビーイングのために取り入れられることはある一方で、赤ちゃんを得る可能性を高める明確な根拠は十分ではないと案内しています。
当院でも、鍼灸を「結果を約束する方法」としてではなく、検査が異常なしでも続いている冷え、睡眠、自律神経の乱れを感じる状態などを整える補助的な支えとして位置づけています。

今日からできる3つ

1.「異常なし」を「問題なし」と読み替えない

検査で大きな異常が見つからなかったことは大切です。
でも、それで悩みが消えるわけではありません。
今の標準検査で明確な原因が見えなかった、と受け止めることが大切です。

2.年齢と妊活期間を一度整理する

35歳未満なら12か月、35歳以上なら6か月、40歳を超えるならより早い相談が目安です。
「もう少し様子を見よう」を繰り返すより、今の立ち位置を整理すると次の一歩が見えやすくなります。

3.冷え、睡眠、胃腸、気持ちの張りつめを放置しない

原因不明不妊の時ほど、日々の不調を軽く見ないことが大切です。
白湯、湯船、夜更かしを減らすこと、温かい食事を意識すること。
派手ではありませんが、続けやすい土台づくりになります。

自分でやさしく触れやすいツボ

検査が異常なしなのに妊娠しない時、気持ちの張りつめや巡りの悪さが気になる方に使いやすいツボがあります。

太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前。
ため息が増える時、気持ちが張りつめる時に使いやすいツボです。

三陰交(さんいんこう)
内くるぶしのいちばん高いところから、指4本分ほど上。
冷えや婦人科系のお悩み、下半身の巡りを整えたい時に使いやすいツボです。

どちらも、強く押し込まなくて大丈夫です。
息を吐きながら、少し気持ちいいくらいでやさしく触れてみてください。
妊娠の可能性がある時や体調に不安がある時は、無理をせずご相談ください。

当院の考え方

当院では、「検査が異常なし」と言われた方のつらさを軽く見ません。
原因が分からないことは、安心ではなく、不安につながることがあるからです。

だからこそ当院では、必要な検査や治療はクリニックや病院など、専門の医療機関で大切に進めていただきながら、
その土台として、

  • 冷え
  • 睡眠
  • 自律神経の乱れを感じる状態
  • 気持ちの張りつめ
  • 月経前後の不調
  • 体質や生活習慣

などを、東洋医学の視点から丁寧にみていくことを大切にしています。

原因が分からないことは、何もないことではありません。
そして、分からないまま苦しいことも、あなたのせいではありません。

ひとりで抱えず、まずは今の検査内容と体調、生活の流れを一緒に整理するところから始めていきましょう。

この記事を書いた人

ロータスリーフ 蓮心はり灸堂
院長 菅原 裕万
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者

奈良・上牧町で、妊活中の方や女性のお身体のお悩みに向き合い、マタニティケア・産後ケアまで、ライフステージに合わせた鍼灸施術を行っています。
病院での検査や治療を大切にしながら、東洋医学の視点も取り入れ、冷え・睡眠・自律神経・体質・生活習慣などを丁寧に確認し、その方に合った身体づくりを一緒に考えることを大切にしています。

院長プロフィールを見る

ご自身に合ったセルフケアを知りたい方、妊活中の身体づくりを見直したい方は、当院にご相談ください。
病院での検査や不妊治療を大切にしながら、お身体の状態や生活習慣に合わせて、無理のない形でサポートいたします。

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