毎月、生理が来るたびに気が重くなる。
痛み止めを飲んでもつらい。
仕事や予定を、生理に合わせて考えないといけない。
そんなふうに、生理痛をずっと我慢してきた方は少なくありません。
でも、妊活を考え始めた時には、その痛みを「いつものこと」で終わらせないでほしいと思います。
まず最初に、いちばん大切なことをお伝えします。
生理痛が強いからといって、必ず妊娠しにくいと決まるわけではありません。
ただし、日常生活に影響するほどの強い生理痛は、妊活前から一度確認しておきたいサインです。
とくに、子宮内膜症など妊娠に関わる病気が隠れていることもあるため、早めに整理しておくことが大切です。
生理痛は珍しいものではありません。でも「強すぎる痛み」は別に考えたほうがよいことがあります
アメリカ産科婦人科学会(ACOG)は、月経のある女性の半数以上が、毎月1〜2日ほど何らかの生理痛を経験すると案内しています。
そのため、生理痛そのものは珍しいものではありません。
ただし、ここで大切なのは、
痛みがあることと、
痛みが強くて生活に支障が出ること
を同じにしないことです。
英国のガイドライン(NICE)は、日常生活や生活の質に影響する月経関連痛がある場合には、子宮内膜症を疑うサインとして考えるよう勧めています。
つまり、毎月の痛みで仕事や家事、外出が難しくなるなら、「我慢すべき体質」ではなく、確認したほうがよい症状として考えてよいということです。
強い生理痛の背景に、子宮内膜症が隠れていることがあります
妊活前に知っておいてほしい代表的な病気のひとつが、子宮内膜症です。
ACOGは、子宮内膜症のもっとも多い症状として、月経前後の慢性的な骨盤痛を挙げています。
また、不妊のある女性のほぼ4割に子宮内膜症がみられると案内しています。
NICEでも、子宮内膜症を疑うサインとして、
- 日常生活に影響する生理痛
- 性交時や性交後の深い痛み
- 月経に関連する痛みを伴う排便
- 月経に関連する排尿痛や血尿
- こうした症状に加えて妊娠しにくさがあること
を挙げています。
つまり、
「生理痛が強いだけ」
と思っていたものが、妊活と関わる病気のサインであることもあります。
だからこそ、妊活を始める前から一度整理しておく意味があります。
痛み止めで何とかなるから大丈夫、とは限りません
強い生理痛がある方の中には、
「痛み止めを飲めば動けるから大丈夫」
と思っている方もいます。
もちろん、痛み止めは大切な選択肢です。
NICEでは、子宮内膜症に伴う痛みに対して、パラセタモールや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)をまず検討することが示されています。
一方で、十分な痛みの改善がなければ、ほかの痛みの管理や追加の評価を考えるよう勧めています。
また、NHSではNSAIDsの副作用として、胃もたれや胃の痛み、吐き気、下痢、めまい、発疹、頭痛などを挙げています。
長く使う場合や量が多い場合には、胃や腸への負担にも注意が必要です。
つまり、痛み止めを使うこと自体は悪いことではありません。
ただし、毎月かなり強い痛みがあるのに、薬で抑えるだけで終わっている状態なら、一度は背景を確認しておいたほうが安心です。
妊活前なら、ホルモン治療で痛みを整える考え方もあります
「妊活を始める前に、生理痛を整えておいたほうがいいのかな」
と迷う方もいると思います。
NICEでは、子宮内膜症が疑われる、または確認されている場合、ホルモン治療は痛みを減らす助けになり、将来の妊娠に永久的な悪影響を与えないと説明しています。
そのため、まだ妊活を始めていない時期には、痛みを整えるためにホルモン治療を選ぶことがあります。
一方で、NICEは、すでに妊娠を希望している方に対して、子宮内膜症でホルモン治療だけを続けても自然妊娠率は上がらないとも示しています。
つまり、
妊活前に痛みを整えることと、
妊活中に妊娠しやすさを高めることは、同じではありません。
時期によって考え方が変わるので、自己判断で迷い続けるより、クリニックや病院など、専門の医療機関で相談するほうが安心です。
こんな生理痛は、妊活前から相談して大丈夫です
妊活前に受診してよい目安として、特に知っておいてほしいのは次のような状態です。
- 痛みで仕事や学校、家事に支障が出る
- 痛み止めを使ってもつらい
- 年齢とともに痛みが強くなってきた
- 生理のたびに吐き気や強いだるさが出る
- 性交痛がある
- 排便痛や排尿痛がある
- 家族に子宮内膜症がある
- 生理痛に加えて妊娠しにくさが気になる
NICEは、一親等の親族に子宮内膜症の既往があると、その可能性が高まるとしています。
また、子宮内膜症が疑われる場合には、内診や経腟超音波、必要に応じて腹腔鏡などで評価を進めることがあります。超音波が正常でも、症状があれば子宮内膜症を否定しきれないこともあります。
東洋医学では、強い生理痛を「巡りの滞り」や「冷え」としてみることがあります
東洋医学や中医学では、生理痛を「子宮だけの問題」とは考えません。
古典の『黄帝内経』やその流れをくむ考え方では、気・血・水の巡りと、肝・脾・腎のバランスから体全体をみていきます。
たとえば、
- 温めると少しラクになる
- 経血に塊が出やすい
- 生理前に張ってイライラする
- 足先やお腹が冷えやすい
- 疲れると痛みが強くなる
という方では、
寒凝血瘀(かんぎょうけつお)
気滞瘀血(きたいうけつ)
肝鬱気滞(かんうつきたい)
などの見立てをすることがあります。
難しく聞こえるかもしれませんが、分かりやすく言えば、
冷えや緊張で巡りが滞り、痛みとして出ている状態
です。
ただし、ここも大切です。
東洋医学的に「巡りを整える」ことは役立つことがありますが、強い生理痛の背景に子宮内膜症などがないかを確認することまで省いてよいわけではありません。
西洋医学と東洋医学、どちらかだけに寄せすぎず、両方の視点でみていくことが安心につながります。
不妊・妊活における鍼灸の役割
鍼灸は、強い生理痛の背景にある病気を診断するものではありません。
また、卵管の通り道、精液所見、体外受精(IVF)や胚移植(ET)など、妊活に必要な検査や治療の代わりになるものでもありません。
必要な確認は、クリニックや病院など、専門の医療機関で行うことが大切です。
その一方で、鍼灸は、
- 冷え
- 首肩のこわばり
- 睡眠の浅さ
- 気持ちの張りつめ
- 月経前後の不調
- 自律神経の乱れを感じる状態
などを整える支えにはなり得ます。
アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、鍼は資格のある施術者が滅菌済みの鍼で適切に行えば比較的安全としつつ、健康上の問題で医療機関の受診を先延ばしにするために使わないようにと案内しています。
また、重大な副作用はまれですが、感染や臓器損傷などの重い有害事象が起こる可能性はあります。
当院でも、鍼灸を「結果を約束する方法」としてではなく、
生理痛や冷え、睡眠、自律神経の乱れを感じる状態を含めた心と体の土台を整える補助的な支えとして位置づけています。
今日からできる3つ
1.まずは「いつ、どこが、どのくらい痛いか」を記録する
生理1日目だけつらいのか。
生理前から痛いのか。
排便痛や性交痛があるのか。
痛み止めはどのくらい効くのか。
痛みを言葉にしにくい方ほど、メモが役立ちます。
NICEも、痛みや症状の記録が診察時の話し合いに役立つとしています。
2.温めてラクになるかを見てみる
腹巻き、湯船、温かい飲み物、足首を冷やさないこと。
これで少しラクになる方は少なくありません。
ただし、温めてラクでも、強い痛みが毎月あるなら、それだけで済ませず確認することが大切です。
3.「妊活が始まってから」でなく、今の段階で相談していい
強い生理痛がある方は、妊活を始めてから慌てるより、妊活前から一度整理しておくほうが安心です。
まだ妊活を始めていなくても、相談して大丈夫です。
それは早すぎることではなく、体を大切にする準備です。
自分でやさしく触れやすいツボ
強い生理痛がある方で、冷えや巡りの悪さが気になる時に使いやすいツボがあります。
三陰交(さんいんこう)
内くるぶしのいちばん高いところから、指4本分ほど上。
冷えや婦人科系のお悩み、下半身の巡りを整えたい時に使いやすいツボです。
太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前。
ため息が増える時、生理前の張りやイライラが気になる時に使いやすいツボです。
どちらも、強く押し込む必要はありません。
息を吐きながら、少し気持ちいいくらいでやさしく触れてみてください。
妊娠の可能性がある時や体調に不安がある時は、無理をせずご相談ください。
当院の考え方
当院では、強い生理痛を「よくあること」として済ませません。
でも、必要以上に怖がらせたいわけでもありません。
大切にしているのは、
今の痛みの背景をきちんと整理すること
です。
強い生理痛の中には、
冷えや緊張が強く出ているものもあれば、
子宮内膜症のように医療機関での評価が必要なものもあります。
だからこそ当院では、必要な検査や治療はクリニックや病院など、専門の医療機関で大切に進めていただきながら、
その土台として、
- 冷え
- 睡眠
- 自律神経の乱れを感じる状態
- 気持ちの張りつめ
- 月経前後の不調
- 体質や生活習慣
などを、東洋医学の視点から丁寧にみていくことを大切にしています。
痛みが強いと、
「私の体は妊活に向いていないのでは」
と不安になることもあると思います。
でも、今の段階で知っておくことは、悲観するためではなく、備えるためです。
ひとりで抱えず、まずは今の体の状態を一緒に整理するところから始めていきましょう。
この記事を書いた人
ロータスリーフ 蓮心はり灸堂
院長 菅原 裕万
はり師・きゅう師・医薬品登録販売者
奈良・上牧町で、妊活中の方や女性のお身体のお悩みに向き合い、マタニティケア・産後ケアまで、ライフステージに合わせた鍼灸施術を行っています。
病院での検査や治療を大切にしながら、東洋医学の視点も取り入れ、冷え・睡眠・自律神経・体質・生活習慣などを丁寧に確認し、その方に合った身体づくりを一緒に考えることを大切にしています。
ご自身に合ったセルフケアを知りたい方、妊活中の身体づくりを見直したい方は、当院にご相談ください。
病院での検査や不妊治療を大切にしながら、お身体の状態や生活習慣に合わせて、無理のない形でサポートいたします。

