冷えを感じる人の体に起きていること

東洋医学の視点から体質改善を伝える奈良・上牧町の鍼灸院ブログ画像

手足がいつも冷たい。
お腹や腰を触ると、じんわり冷えている気がする。
周りは平気そうなのに、自分だけつらい。

そんな日が続くと、
「私はもともと冷え性だから仕方ない」
と飲み込んでしまう方も少なくありません。

でも、まず最初にお伝えしたいことがあります。
冷えは“性格”でも“気のせい”でもなく、身体のどこかで起きている変化を教えてくれるサインのひとつです。
そしてもうひとつ大切なのは、冷えはひとつの原因だけで起こるとは限らないということです。
血流、熱をつくる力、ホルモン、睡眠、食事、月経の状態、ストレス。
そうしたものが重なって、冷えとしてあらわれることがあります。

妊活中は、とくにこの「冷え」という言葉に敏感になりやすいものです。
けれど、冷えを必要以上に怖がることも、逆に軽く見すぎることも、どちらもおすすめできません。
大切なのは、冷えを“ただの体質”で終わらせず、でも単純化もしすぎず、今の身体に何が起きているかを整理することです。

目次

冷えは「病名」ではなく、背景のある症状です

西洋医学では、「冷え」そのものが病名になるわけではありません。
ただ、いつも寒がる、手足が冷たい、冷えに弱いという状態の背景に、いくつかの原因が隠れていることがあります。

代表的なものとして知られているのが、
鉄欠乏性貧血甲状腺機能低下症、そしてレイノー現象です。
鉄欠乏性貧血では、疲れやすさ、めまい、息切れに加えて、手足の冷えが出ることがあります。甲状腺機能低下症では、寒がり、疲れやすさ、便秘、体重増加、肌や髪の乾燥などがみられ、月経が重くなったり不規則になったり、妊孕性に影響することもあります。レイノー現象では、寒さやストレスをきっかけに指先や足先の血管が強く縮み、冷たい・しびれる・色が白や青っぽく変わるといった症状が起こります。

つまり、
「冷える=全部同じ」
ではありません。
冷えを感じる場所、時間帯、月経との関係、疲れやすさや痛みの有無によって、見方はかなり変わります。

妊活中の冷えで、まず見落としたくないこと

妊活中の方で冷えが強い場合、まず見落としたくないのが月経の状態です。
生理が重い、長い、レバーのような血の塊が多い、立ちくらみがある、息切れしやすい。
こうした方では、血液の不足、特に鉄不足が冷えに関わっていることがあります。
ACOGは、月経量が多い方では鉄欠乏性貧血を起こすことがあり、評価には貧血の確認が重要としています。NHLBIも、鉄欠乏性貧血の症状として、疲労感、めまい、冷たい手足などを挙げています。

また、寒がりに加えて、
・疲れやすい
・むくみやすい
・便秘が続く
・体重が増えやすい
・髪が抜けやすい
・生理が重い、または不規則
という変化がある時は、甲状腺の働きも確認したいところです。NIDDKやNHSでは、甲状腺機能低下症の症状として、寒がり、疲労、体重増加、便秘、重いまたは不規則な月経、妊孕性の問題を挙げています。

さらに、指先や足先が冷えるだけでなく、
白くなる
青紫っぽくなる
しびれる
温まると痛む
という変化がある時は、レイノー現象も考えたいサインです。レイノー現象は、寒さだけでなく緊張やストレスで起こることもあり、冷えと心身の張りつめがつながっている例のひとつです。

「冷えは子宮が冷えているから」と単純化しないことが大切です

妊活中は、「冷えがあると妊娠しにくい」といった言葉を目にして、不安が強くなることがあります。
たしかに、冷えを感じやすい方の中には、睡眠不足、食事の乱れ、ストレス、月経トラブル、血流低下を感じやすい状態が重なっていることがあります。
ただし、冷えがあるから妊娠できない、という単純な話ではありません。

病院で見る妊活の基本は、
排卵しているか
卵管が通っているか
子宮の状態に問題がないか
精液所見に大きな課題がないか
という点です。

冷えは大切な訴えではありますが、それだけで妊活のすべてを説明することはできません。

だからこそ、当院では
「冷えがすべての原因です」
とは言いません。
その代わり、冷えをきっかけに、身体の土台がどう乱れているかを一緒に整理することを大切にしています。

東洋医学では、冷えは「熱が足りない」だけではありません

東洋医学では、冷えを単に「体温が低いこと」だけではみません。
冷えがある時、

・熱をつくる力が弱っている
・血が足りず、末端までめぐりにくい
・気の巡りが悪く、温かさが届きにくい
・水分代謝が乱れている
・胃腸が弱って、栄養をうまく土台にできていない

といった状態が重なっていることがあります。

たとえば、

脾腎陽虚(ひじんようきょ)
温める力そのものが弱く、朝がつらい、下半身が冷える、疲れやすい、お腹をこわしやすい。

気血両虚(きけつりょうきょ)
元気と血が不足し、顔色が冴えない、立ちくらみ、動悸、爪や髪が弱い、冷えやすい。

肝鬱気滞(かんうつきたい)
ストレスや我慢で巡りが滞り、手足は冷えるのに顔はほてる、ため息が増える、PMSが強い。

気滞瘀血(きたいうけつ)
巡りの滞りが長く続き、下腹部の冷え、生理痛、血の塊、刺すような痛みがある。

こうした体質の違いによって、同じ「冷え」でも整え方は少しずつ変わります。
だから東洋医学では、冷えがあるから全員同じ施術、という考え方はしません。

春の「肝」の乱れは、冷えとも無関係ではありません

春から初夏にかけては、東洋医学では「肝」のバランスが乱れやすい時期と考えます。
肝は、気の巡り、感情、目、筋肉とも関わるとされるため、この時期に無理や我慢が続くと、

・目が疲れる
・首肩がこる
・ため息が増える
・イライラしやすい
・眠りが浅い
・胸や脇、お腹が張る

といった変化が出やすくなります。

この状態が続くと、気の巡りが悪くなり、**手足の末端まで温かさが届きにくい“冷え”**として感じることがあります。
つまり、冷えは「温め不足」だけではなく、巡りの問題として出ることもあるのです。
手足は冷えるのに、頭はのぼせる。
お腹は冷たいのに、気持ちはずっと焦っている。
そんな方は、単純に厚着を増やすだけでは整いにくいことがあります。

鍼灸でできること、できないこと

ここは誠実にお伝えしたいところです。
鍼灸は、甲状腺機能低下症や貧血、レイノー現象そのものを診断するものではありません。
その確認は、血液検査や診察ができる医療機関で行うことが必要です。

一方で、妊活中の冷えに重なりやすい、
・首肩のこわばり
・眠りの浅さ
・自律神経の乱れを感じる状態
・月経前の張りつめ
・生理痛や下腹部の違和感
・慢性的な疲れ
といった、日々の過ごしにくさを整える支えとして、鍼灸が役立つことはあります。

HFEAは、妊活中の補完療法として鍼灸が用いられることはあるものの、妊娠率や出産率をはっきり上げる決定的な根拠はないとしつつ、リラクゼーションやウェルビーイングのために取り入れられることがあると案内しています。
当院でも、鍼灸を“魔法の方法”としてではなく、病院での検査や治療を大切にしながら、心と身体の緊張をほどく支えとして位置づけています。

こんな冷えは、病院へ相談して大丈夫です

セルフケアで様子を見てよい冷えもありますが、次のような場合は、婦人科や内科で相談して大丈夫です。

・以前より急に冷えが強くなった
・疲れやすさ、息切れ、立ちくらみがある
・生理がかなり重い、長い
・便秘、むくみ、体重増加、髪の変化がある
・指先や足先の色が白や青に変わる
・しびれや痛みを伴う
・妊活中で、月経不順や無月経もある

「冷えくらいで受診していいのかな」と迷う方もいらっしゃいます。
でも、背景に貧血や甲状腺の問題があるなら、早めに確認することで身体はずいぶんラクになることがあります。
つらさを我慢し続けるより、整理してもらう方が安心につながることも少なくありません。

今日からできる3つのこと

1.「どこが、いつ、どう冷えるか」を見てみる

冷えは、ただ「冷える」で終わらせると見えにくいです。

・手足だけなのか
・お腹や腰も冷えるのか
・生理前に強くなるのか
・夜に悪化するのか
・緊張すると冷えやすいのか

これを少し意識するだけでも、身体の傾向が見えてきます。
受診や施術の時にも、とても大事なヒントになります。

2.温める場所をしぼる

全部を完璧に温めようとすると、続きません。
まずは、
お腹
足首
首元
の3か所を守るだけでも十分です。

厚着を増やしすぎるより、冷えやすい場所をむやみにさらさないこと。
それだけでも、日中のつらさが少し変わることがあります。

3.食事を「熱をつくる土台」として考える

冷えが強い時ほど、
甘いものだけで済ませる
食事を抜く
冷たい飲み物ばかりになる
ということが起こりやすくなります。

でも、身体が熱をつくるには、材料が必要です。
妊活中の基本として、ASRMは葉酸400μg/日を勧めており、アルコールやカフェインは最小限から中等度にとどめること、健康的な生活を土台にすることを案内しています。
そのうえで、冷えが気になる日は、
お味噌汁
スープ


大豆製品
温野菜
雑炊
のように、温かくて消化にやさしいものから整えてみてください。
生理が重い方は、自己判断でサプリを増やし続けるより、まずは血液検査を含めて確認する方が安心です。

自分でやさしく使いやすいツボ

冷えが気になる時に、比較的使いやすいツボを2つご紹介します。

三陰交(さんいんこう)
内くるぶしのいちばん高いところから、人差し指から小指までの指幅4本分ほど上。
婦人科系のお悩みや下半身の冷え、巡りを整えたい時によく使われます。

太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前。
ストレスが強い時、ため息が多い時、手足の末端が冷えるのに気持ちは張っている時に使いやすいツボです。

どちらも、強く押し込む必要はありません。
息を吐きながら、少し気持ちいいくらいで、やさしく触れてみてください。
妊娠の可能性がある時や体調に不安がある時は、無理をせずご相談ください。

当院の考え方

当院では、冷えを軽く見ません。
でも、必要以上に怖がらせることもしません。

冷えは、身体からのサインです。
だからこそ、
病院で確認したほうがよい冷えなのか、
生活の乱れや緊張が重なっている冷えなのか、
東洋医学でいう「巡り」や「不足」が強いのか、
そうしたことを丁寧に見ていくことが大切だと考えています。

奈良・上牧町、北葛城郡で、妊活中の冷えや生理前後の不調に悩む方に対しても、当院は病院での検査や治療を大切にしながら、鍼灸で心身の土台を整える立場をとっています。
何でも鍼灸で解決する、とは言いません。
その代わり、ひとりで抱えやすい「つらさ」を、きちんと一緒に整理していきます。

冷えを我慢し続けなくて大丈夫です

冷えは、目に見えにくい不調です。
だからこそ、周りに分かってもらいにくく、
「これくらいで言ったら大げさかな」
と我慢してしまう方が多いのだと思います。

でも、冷えがつらい時、
あなたの身体はちゃんと何かを伝えています。

もっと頑張れ、ではなく。
もっと我慢しろ、でもなく。
少し立ち止まって、今の状態を見てほしい
と伝えているのかもしれません。

冷えを感じる自分を責めなくて大丈夫です。
まずは、どんな冷えなのかを知ること。
必要なら病院で確認すること。
そして、毎日の過ごしにくさを少しずつ整えていくこと。

それは、遠回りではありません。
妊活にも、婦人科の不調にも、
自分の身体を大切に扱う、とても大事な一歩です。

ひとりで抱えず、まずは今の冷え方を一緒に整理するところから始めていきましょう。

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